楽しい軟禁生活
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「……朝だ」
久しぶりに朝日を浴びた気がする。
いつもなら、朝方に寝て昼過ぎに起きる生活をしていたから、午前中に目が覚めるのはいつぶりだろうか。
リビングに出るとすでに佐野くんは起きていて、コンビニのおむすびを食べていた。
「おはよう、佐野くん」
「おはよう、御堂。朝ごはん、なにがいいかわからなくて、おむすび適当に買ってきたけど……パンの方がよかった?」
机の上には、梅や昆布、鮭などのおむすびが乗っていた。
それをひとつ手に取り、「おむすび好きだよ」と言うと、「よかった」と言ってまた食べ始めた。
「御堂、おむすびの具。なにが好き?」
「うーん、ツナマヨかな」
なんとなくで答えると、佐野くんの動きがピタリと止まり「悪い、食っちまった」と言うから、置かれた包装紙を見ればツナマヨと書かれていた。
見るからに落ち込む佐野くんに、「そんな、絶対に食べたいわけじゃないから、気にしないで」と言うも、暗い顔をする。
「梅も好きだよ」
「気使わせて、悪い」
「いや、その、そんなに謝らないで。佐野くんの方が、私に気使いすぎだよ?ほら、私は佐野くんの物なんだから、もっとオラオラしてもいいんだよ?」
一生懸命励ますと、佐野くんは「オラオラ……」と呟き、おもむろに私の腰を抱き寄せ密着し、肩口に頭を乗せた。
これが、佐野くんのオラオラ……。
「佐野くん……控えめだね……」
「えっ……!」
私の指摘に、佐野くんは見るからに狼狽して見せるので、無茶を言ったかと反省し「無理してやらなくていいよ……」と言ったらむくれながら、「絶対にオラオラしてやるからな」と言われてしまった。
「そんで、絶対にドキドキさせてやる」
「がんばれー」
「本気にしてないだろ!絶対に、ぜーったいに!覚悟しとけよ!」
「ふふっ、うん、うん。佐野くんはやっぱり、元気なのが似合うね」
そういう私に、佐野くんはまた暗い顔をして「いまの俺と昔の俺を一緒にしない方がいい」と言った。
「なんの拍子で御堂のことを殺すかもわからない」
「……そうだね、キミは変わったと思う。元気なのが似合うってのは、私は昔の佐野くんしか知らないから、そう思うだけ。私は佐野くんの物だから、殺したくなったらいつでも殺せばいいよ」
「殺したくはない……。だから、御堂。俺の許可なく、この部屋から出るな。出たり、逃げたりしたら、俺は草の根わけてもオマエを探し出して殺す」
据えられた視線は、ハッキリとした殺意をみなぎらせていた。
昔の佐野くんなら、女の子には手を出さなかった。本当に変わってしまったんだな。
「うん、肝に命じておくよ」
「朝からこんな話で悪いな」
「大丈夫。早く食べて出かけよう」
「ああ」
手早く朝食を食べ、昨日着ていた服に着替えて寝室から出ると、佐野くんが「行こう」と少し微笑んで言った。
バイクに乗せてもらえるのかと少し楽しみにしていたが、買った服を持って乗るのは危ないからと電車で行くことを告げられた。
「バイクはまた今度な」
子供に言い聞かせるような言い方は少し納得行かないが、そのうち乗せてくれるのは楽しみだな。
「服、好きなブランドあるか?」
「え、佐野くんが着せたい服買うんじゃないの?」
私の言葉に、佐野くんは目を見開いてからジト目で「それ、どういう意味か理解して言ってるか?」と聞いてきた。
どういう意味?自分好みにしたいとか?と自分なりに答えを出したのだが違ったようで、「違う」と即答された。
「じゃあ、どういう意味?」
「知らなくていい」
気にはなるが、あまり深く聞くと自ら墓穴を掘りそうな予感が、佐野くんの表情からしたので深くは聞かないことにした。
なにか、ヤラシイことなのだろう。あの恥ずかしがり方は。
「本当に、俺が着せたい服着せるからな」
「なんでも着るよ」
「そういうこと、簡単に言うな!色々着せたくなるだろ!」
恥ずかしがる佐野くんと来たのは、六本木にあるエレガントな服が多く並ぶ店だった。
佐野くんのことだから、もっとカジュアルな服を選ぶと思っていたので、少し意外だ。
「佐野くんは私に、エレガントな服を着せたい。なるほど」
「いいだろ、別に」
ほら、行くぞ。とお店に入ると、佐野くんは真っ先にワンピースをいくつか手に取り、私にあてがう。
悩んだ末に、「全部買うから、試着して来て」と試着室に押し込んだ。
着ている間も、どんどん服が投げ入れられ、ストップをかけるまで怒涛の試着タイムが続いた。
佐野くんが一番気に入ったらしいワンピースに着替えて出ると会計済みの商品が入ったショップバッグを両手にさげ、「さすがに重えな」と言っているが、そうだろうに。
「ちょっと鶴蝶呼ぶか」
誰かはわからないが、この間のピンク髪の人はやめてほしいな。いい印象がない。
佐野くんが電話をしていると、辺りを見回して近くのカフェの名前を伝えると電話を切った。
「俺の部下がこれから来るから、あそこで待ってようぜ」
「あの、鶴蝶さんってこの間のピンク色の髪の人?」
そう聞くと、「ああ、あいつは三途。鶴蝶じゃない」と聞けて安心したら、「三途、嫌いか?」と聞かれた。
「ちょっと、出会い方がよくなかったから怖いというか……」
「なら、三途は呼ばないようにするから」
「いや、そもそも三途さんって偉い人なんでしょ?私の用事で呼んじゃ、迷惑だって」
また怒られるのも怖いし、という本音はまた気を使わせてしまいそうだったから伏せておいた。
カフェに入り、軽食と飲み物を頼むと「このあと、靴と……下着も必要だよな?」と言われて、危うく水を吹き出すところだった。
服だけではないんだ。
「靴は……靴はほしいけど、下着は、その……」
「やだ、下着も俺が選ぶ」
「いや、あの……」
「ここまで来たら、全部俺が選ぶ」
ダメだ、佐野くんの目は本気だ。
龍宮寺くんと喧嘩し始めたとき並の本気度合いだ。こんなところで、そんな本気の目をしないでほしい。
なんとか説得を試みるが、「やだ」「ダメ」の一点張りで、私が折れるしかなかった。
しばらく取り止めない話をしていると、カフェに見るからに佐野くんの仲間だろうな、とわかる傷をつけた男の人が入ってきた。
「首領、お待たせしました」
「これ、車に乗せといて。まだ買い物するから、呼んだら来て」
「はい」
三途さんから助けてくれた人もそうだが、この人も礼儀正しく好感を持てた。
靴屋で軽く靴を何点か買うと、佐野くんは足取り重い私の手を引きランジェリーショップに入店した。
「やっぱり、上下はセットがいいよな。白もいいけど、赤もいいと俺は思う」
「うん……うん……。佐野くんが着せたい物を選ぶといいよ……」
私がなにも反抗せずサイズを告げてカゴを持っていたら、次から次へとカゴに下着を入れていく。
一着一万円以上する下着を迷いなく選んでいく佐野くんに、私も店員さんも呆気に取られていた。
あと、なんかセクシーなキャミソールも入れられたけど、これはどのタイミングで着れば……。
ショッパーを持ち、事前に呼んであった車に荷物を乗せると、鶴蝶さんに「俺の部屋に届けといて」と言うと、「これからどうする?」と聞いてきた。
「アクセサリーとか化粧品とかも買いに行くか?」
「きょ、今日はもういいかな……」
「そうか?遠慮なく言えよ、好きな物買ってやるから」
「あの、佐野くん。なんでそんなことまでしてくれるの?」
そこまで佐野くんに尽くしてもらう理由がわからず、むしろ私が佐野くんに尽くさないといけないはずなのに、このいたれり尽くせりな状況に理解が追いつかない。
佐野くんは少し悩んだあと、「御堂に喜んでほしいから」と言った。
「中学のときにしたいって思ったことを、いましてるだけだ」
「中学のとき?」
「……食事に行こう。腹、減っただろ?」
誤魔化すように話題を変えられ、佐野くんからそれ以上深く入ってくるなという意思を感じられ、聞くに聞けなかった。
中学のとき、私は佐野くんになにかしただろうか。
久しぶりに朝日を浴びた気がする。
いつもなら、朝方に寝て昼過ぎに起きる生活をしていたから、午前中に目が覚めるのはいつぶりだろうか。
リビングに出るとすでに佐野くんは起きていて、コンビニのおむすびを食べていた。
「おはよう、佐野くん」
「おはよう、御堂。朝ごはん、なにがいいかわからなくて、おむすび適当に買ってきたけど……パンの方がよかった?」
机の上には、梅や昆布、鮭などのおむすびが乗っていた。
それをひとつ手に取り、「おむすび好きだよ」と言うと、「よかった」と言ってまた食べ始めた。
「御堂、おむすびの具。なにが好き?」
「うーん、ツナマヨかな」
なんとなくで答えると、佐野くんの動きがピタリと止まり「悪い、食っちまった」と言うから、置かれた包装紙を見ればツナマヨと書かれていた。
見るからに落ち込む佐野くんに、「そんな、絶対に食べたいわけじゃないから、気にしないで」と言うも、暗い顔をする。
「梅も好きだよ」
「気使わせて、悪い」
「いや、その、そんなに謝らないで。佐野くんの方が、私に気使いすぎだよ?ほら、私は佐野くんの物なんだから、もっとオラオラしてもいいんだよ?」
一生懸命励ますと、佐野くんは「オラオラ……」と呟き、おもむろに私の腰を抱き寄せ密着し、肩口に頭を乗せた。
これが、佐野くんのオラオラ……。
「佐野くん……控えめだね……」
「えっ……!」
私の指摘に、佐野くんは見るからに狼狽して見せるので、無茶を言ったかと反省し「無理してやらなくていいよ……」と言ったらむくれながら、「絶対にオラオラしてやるからな」と言われてしまった。
「そんで、絶対にドキドキさせてやる」
「がんばれー」
「本気にしてないだろ!絶対に、ぜーったいに!覚悟しとけよ!」
「ふふっ、うん、うん。佐野くんはやっぱり、元気なのが似合うね」
そういう私に、佐野くんはまた暗い顔をして「いまの俺と昔の俺を一緒にしない方がいい」と言った。
「なんの拍子で御堂のことを殺すかもわからない」
「……そうだね、キミは変わったと思う。元気なのが似合うってのは、私は昔の佐野くんしか知らないから、そう思うだけ。私は佐野くんの物だから、殺したくなったらいつでも殺せばいいよ」
「殺したくはない……。だから、御堂。俺の許可なく、この部屋から出るな。出たり、逃げたりしたら、俺は草の根わけてもオマエを探し出して殺す」
据えられた視線は、ハッキリとした殺意をみなぎらせていた。
昔の佐野くんなら、女の子には手を出さなかった。本当に変わってしまったんだな。
「うん、肝に命じておくよ」
「朝からこんな話で悪いな」
「大丈夫。早く食べて出かけよう」
「ああ」
手早く朝食を食べ、昨日着ていた服に着替えて寝室から出ると、佐野くんが「行こう」と少し微笑んで言った。
バイクに乗せてもらえるのかと少し楽しみにしていたが、買った服を持って乗るのは危ないからと電車で行くことを告げられた。
「バイクはまた今度な」
子供に言い聞かせるような言い方は少し納得行かないが、そのうち乗せてくれるのは楽しみだな。
「服、好きなブランドあるか?」
「え、佐野くんが着せたい服買うんじゃないの?」
私の言葉に、佐野くんは目を見開いてからジト目で「それ、どういう意味か理解して言ってるか?」と聞いてきた。
どういう意味?自分好みにしたいとか?と自分なりに答えを出したのだが違ったようで、「違う」と即答された。
「じゃあ、どういう意味?」
「知らなくていい」
気にはなるが、あまり深く聞くと自ら墓穴を掘りそうな予感が、佐野くんの表情からしたので深くは聞かないことにした。
なにか、ヤラシイことなのだろう。あの恥ずかしがり方は。
「本当に、俺が着せたい服着せるからな」
「なんでも着るよ」
「そういうこと、簡単に言うな!色々着せたくなるだろ!」
恥ずかしがる佐野くんと来たのは、六本木にあるエレガントな服が多く並ぶ店だった。
佐野くんのことだから、もっとカジュアルな服を選ぶと思っていたので、少し意外だ。
「佐野くんは私に、エレガントな服を着せたい。なるほど」
「いいだろ、別に」
ほら、行くぞ。とお店に入ると、佐野くんは真っ先にワンピースをいくつか手に取り、私にあてがう。
悩んだ末に、「全部買うから、試着して来て」と試着室に押し込んだ。
着ている間も、どんどん服が投げ入れられ、ストップをかけるまで怒涛の試着タイムが続いた。
佐野くんが一番気に入ったらしいワンピースに着替えて出ると会計済みの商品が入ったショップバッグを両手にさげ、「さすがに重えな」と言っているが、そうだろうに。
「ちょっと鶴蝶呼ぶか」
誰かはわからないが、この間のピンク髪の人はやめてほしいな。いい印象がない。
佐野くんが電話をしていると、辺りを見回して近くのカフェの名前を伝えると電話を切った。
「俺の部下がこれから来るから、あそこで待ってようぜ」
「あの、鶴蝶さんってこの間のピンク色の髪の人?」
そう聞くと、「ああ、あいつは三途。鶴蝶じゃない」と聞けて安心したら、「三途、嫌いか?」と聞かれた。
「ちょっと、出会い方がよくなかったから怖いというか……」
「なら、三途は呼ばないようにするから」
「いや、そもそも三途さんって偉い人なんでしょ?私の用事で呼んじゃ、迷惑だって」
また怒られるのも怖いし、という本音はまた気を使わせてしまいそうだったから伏せておいた。
カフェに入り、軽食と飲み物を頼むと「このあと、靴と……下着も必要だよな?」と言われて、危うく水を吹き出すところだった。
服だけではないんだ。
「靴は……靴はほしいけど、下着は、その……」
「やだ、下着も俺が選ぶ」
「いや、あの……」
「ここまで来たら、全部俺が選ぶ」
ダメだ、佐野くんの目は本気だ。
龍宮寺くんと喧嘩し始めたとき並の本気度合いだ。こんなところで、そんな本気の目をしないでほしい。
なんとか説得を試みるが、「やだ」「ダメ」の一点張りで、私が折れるしかなかった。
しばらく取り止めない話をしていると、カフェに見るからに佐野くんの仲間だろうな、とわかる傷をつけた男の人が入ってきた。
「首領、お待たせしました」
「これ、車に乗せといて。まだ買い物するから、呼んだら来て」
「はい」
三途さんから助けてくれた人もそうだが、この人も礼儀正しく好感を持てた。
靴屋で軽く靴を何点か買うと、佐野くんは足取り重い私の手を引きランジェリーショップに入店した。
「やっぱり、上下はセットがいいよな。白もいいけど、赤もいいと俺は思う」
「うん……うん……。佐野くんが着せたい物を選ぶといいよ……」
私がなにも反抗せずサイズを告げてカゴを持っていたら、次から次へとカゴに下着を入れていく。
一着一万円以上する下着を迷いなく選んでいく佐野くんに、私も店員さんも呆気に取られていた。
あと、なんかセクシーなキャミソールも入れられたけど、これはどのタイミングで着れば……。
ショッパーを持ち、事前に呼んであった車に荷物を乗せると、鶴蝶さんに「俺の部屋に届けといて」と言うと、「これからどうする?」と聞いてきた。
「アクセサリーとか化粧品とかも買いに行くか?」
「きょ、今日はもういいかな……」
「そうか?遠慮なく言えよ、好きな物買ってやるから」
「あの、佐野くん。なんでそんなことまでしてくれるの?」
そこまで佐野くんに尽くしてもらう理由がわからず、むしろ私が佐野くんに尽くさないといけないはずなのに、このいたれり尽くせりな状況に理解が追いつかない。
佐野くんは少し悩んだあと、「御堂に喜んでほしいから」と言った。
「中学のときにしたいって思ったことを、いましてるだけだ」
「中学のとき?」
「……食事に行こう。腹、減っただろ?」
誤魔化すように話題を変えられ、佐野くんからそれ以上深く入ってくるなという意思を感じられ、聞くに聞けなかった。
中学のとき、私は佐野くんになにかしただろうか。