楽しい軟禁生活
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軟禁と言えば、もっと暗くて危ないことをイメージしていた。
実際、佐野くんは言うことを聞かなければ殺すと言った。
しかし、実際はどうだろうか。
「今日、もう遅えから風呂入って寝る?あ、でもまだ腹減ってるなら、なにか食いに行く?服とか、必要な物は明日買いに行こうな。今日のパジャマは、俺のTシャツでいいか?」
どちらかというと、これはお泊り会の雰囲気に近い。
「う、うん。ご飯は仕事始まる前に食べたから、大丈夫かな。お風呂だけ、佐野くんのあとにもらうよ」
「いや、御堂から先に……あ、でも、それなんか嫌だよな。御堂が……。わかった、俺から入る」
これ、今日のパジャマ。と言って丈の長いTシャツを私にわたすと、佐野くんは足早にお風呂に向かった。
手持無沙汰に部屋の中を見て回ったが、物が少ない。
生活している痕跡が見当たらず、本当に住んでいるのかと疑わしくなる。
佐野くん自体も不健康そうな顔つきだったけど、ちゃんと食べてるのかな。
他人の心配より自分の心配をしなくてはならないが、見るからに不安定そうな佐野くんを見ていると、二の次になってしまう。
そんなことを考えていると、佐野くんが出てきた。
「俺、シャワーしか使ってないからゆっくり浸かって」
「気にしなくてよかったのに。でも、ありがとう。借りるね」
借りたTシャツを持ち脱衣場に入ると、ボディーソープのいい匂いがした。
浴室を見ると、うちのユニットバスと違い、バスタブにシャワーがついていないタイプだった。
体を洗って、ゆっくりと湯船に浸かると強張っていた体がほぐれていく。
なんだか普通に会話をしているが、佐野くんは怖い人に変わりなく、私が迂闊に外に出られないことも変わりない。
「やっていけるかな……」
そもそも、佐野くんが私を買った理由がわからない。
あまり、寝る前に考えごとをするのはやめよう、と切り替えてお風呂からあがり、借りたTシャツを着たが、丈が長いとはいえ、やはりズボンがないと心許ない。
「あの、佐野くん。ズボンとか貸してもらえないかな」
そう声をかけると、佐野くんが来て「丈、足りなかったか?」と脱衣場に顔を出した。
「丈は足りてるんだけど、ちょっと短いかなって……」
だから、ズボンを……。と言おうとしたら、「そのままでいい」と遮られた。
「えっと、あの……」
「そのままが、いい」
目が本気のそれだったので、それ以上ズボンの要求はできそうになかった。
佐野くんは私の手を取り、「髪乾かしてやる」と言って自分の膝の間に私を座らせ、雑な手つきでドライヤーをかけていく。
「俺、御堂の長い髪好きだったんだ」
「ごめんね、短くて」
「ううん。短いのも、結構好き。でも、また伸ばしてくれると嬉しい」
髪を乾かし終わると、佐野くんは私の首に腕を回し「なにも聞かないのか」と聞いてきた。
「それは、聞いた方がいいのかな。聞いてなにか変わるなら、聞くよ」
「……変わらないよ。御堂は俺の物になった事実も、ここから、俺から逃げられなくなった事実も」
「佐野くん。私は人から話を引き出すのが上手くないから、佐野くんがなにか話したくなったら話して」
ズルい言い方だとはわかっている。自分で状況を変える自信がないから、佐野くんにすべて任せて。
でも、いまの佐野くんにきっと私の言葉は届かない。私が正論で悪いことは止めましょう、と言ったところで、佐野くんが戻れる場所にいるとは思えない。
「助けてあげられなくて、ごめんね。佐野くん」
「……いいよ。御堂は俺の側にいてくれればいい」
それでキミの気休めになるなら、私はここにいるよ。
キミは買っただけだと言うけど、確かにキミは私を助けたのだから。その恩返しくらいはする。
「御堂、明日は買い物に行こ。服とかたくさん買ってあげる」
「えっ、それは申し訳ないからいいよ」
「いいんだよ、俺が着せたいんだから。そのあと、焼き肉行こう。あ、でも焼き肉だと匂いつくか。バイキングとかの方がいい?」
「いいよ、焼き肉すき」
「じゃあ、焼き肉」
楽しそうに言う佐野くんに、「明日、楽しみだね」と言うと、首筋に擦り寄りながら「楽しみ」と言った。
「なら、今日はもう寝よう」
「もっと話してたい」
「明日たくさん話そう」
「……わかった」
そう言うと、私を解放して寝室まで連れていき「ベッド、御堂が使って」と言うから、「私、ソファーでいいよ」と言ったらグイグイと押され、無理矢理ベッドに寝かしつけられた。
「おやすみ。寝つけなかったら、すぐ言って。話し相手になるから」
じゃ、と言ってそそくさと出ていった佐野くんに、慌てて「おやすみ」と言えば、もう一度、「おやすみ」と返ってきた。
本当に使ってもよかったのだろうか、と思うが、あまり反発するのも不評を買うだろう。やめておこう。
今日は色々あり疲れたからか、すぐに眠りについたが、深夜、喉の乾きを覚え目が覚めた。
ぼんやりとした視界に、白いなにかがぼんやりと浮いている。
「……」
「……悪い」
白いなにか、佐野くんはバツが悪そうに謝りすぐに出ていこうとした。
「佐野くん、眠れないの?」
「……御堂の寝顔見たら寝るつもりだった」
「よくないよ、寝顔の盗み見は」
「……悪い」
ベッドから降り、「眠れるまで話しする?」と聞くと、佐野くんは小さく頷いた。
水のペットボトルを持ちソファーに座ったが、どうしよう。なにを話そう。
「ごめんね、全然話題用意してなかった」
「気にしなくていい」
なにを話そうかと視線を泳がせていると、佐野くんの目の下の隈が目に入った。
「佐野くん、寝るつもりだったって言ってたけど、本当は眠れなかったんじゃない?」
「なんで?」
「目の下、隈できてる。普段から寝つけないんじゃないかなって」
そう聞くと、佐野くんは項垂れ「うまく、眠れないんだ」とこぼした。
「寝てもすぐ目が覚める。見たくもない夢を見る」
淡々としているが、どこか苦しそうな佐野くんの手に触れ、「眠れるまで側にいようか?」と聞くと、少し間を置き「一緒に寝てって言ったら、嫌だ?」と聞き返してきた。
「私は構わないよ。それで眠れるなら」
「……や、やっぱりいい。御堂、もう寝ろって。明日起きられなくなるぞ」
「わかった、おやすみ。……いつでも来ていいからね?」
「行かねー!」
実際、佐野くんは言うことを聞かなければ殺すと言った。
しかし、実際はどうだろうか。
「今日、もう遅えから風呂入って寝る?あ、でもまだ腹減ってるなら、なにか食いに行く?服とか、必要な物は明日買いに行こうな。今日のパジャマは、俺のTシャツでいいか?」
どちらかというと、これはお泊り会の雰囲気に近い。
「う、うん。ご飯は仕事始まる前に食べたから、大丈夫かな。お風呂だけ、佐野くんのあとにもらうよ」
「いや、御堂から先に……あ、でも、それなんか嫌だよな。御堂が……。わかった、俺から入る」
これ、今日のパジャマ。と言って丈の長いTシャツを私にわたすと、佐野くんは足早にお風呂に向かった。
手持無沙汰に部屋の中を見て回ったが、物が少ない。
生活している痕跡が見当たらず、本当に住んでいるのかと疑わしくなる。
佐野くん自体も不健康そうな顔つきだったけど、ちゃんと食べてるのかな。
他人の心配より自分の心配をしなくてはならないが、見るからに不安定そうな佐野くんを見ていると、二の次になってしまう。
そんなことを考えていると、佐野くんが出てきた。
「俺、シャワーしか使ってないからゆっくり浸かって」
「気にしなくてよかったのに。でも、ありがとう。借りるね」
借りたTシャツを持ち脱衣場に入ると、ボディーソープのいい匂いがした。
浴室を見ると、うちのユニットバスと違い、バスタブにシャワーがついていないタイプだった。
体を洗って、ゆっくりと湯船に浸かると強張っていた体がほぐれていく。
なんだか普通に会話をしているが、佐野くんは怖い人に変わりなく、私が迂闊に外に出られないことも変わりない。
「やっていけるかな……」
そもそも、佐野くんが私を買った理由がわからない。
あまり、寝る前に考えごとをするのはやめよう、と切り替えてお風呂からあがり、借りたTシャツを着たが、丈が長いとはいえ、やはりズボンがないと心許ない。
「あの、佐野くん。ズボンとか貸してもらえないかな」
そう声をかけると、佐野くんが来て「丈、足りなかったか?」と脱衣場に顔を出した。
「丈は足りてるんだけど、ちょっと短いかなって……」
だから、ズボンを……。と言おうとしたら、「そのままでいい」と遮られた。
「えっと、あの……」
「そのままが、いい」
目が本気のそれだったので、それ以上ズボンの要求はできそうになかった。
佐野くんは私の手を取り、「髪乾かしてやる」と言って自分の膝の間に私を座らせ、雑な手つきでドライヤーをかけていく。
「俺、御堂の長い髪好きだったんだ」
「ごめんね、短くて」
「ううん。短いのも、結構好き。でも、また伸ばしてくれると嬉しい」
髪を乾かし終わると、佐野くんは私の首に腕を回し「なにも聞かないのか」と聞いてきた。
「それは、聞いた方がいいのかな。聞いてなにか変わるなら、聞くよ」
「……変わらないよ。御堂は俺の物になった事実も、ここから、俺から逃げられなくなった事実も」
「佐野くん。私は人から話を引き出すのが上手くないから、佐野くんがなにか話したくなったら話して」
ズルい言い方だとはわかっている。自分で状況を変える自信がないから、佐野くんにすべて任せて。
でも、いまの佐野くんにきっと私の言葉は届かない。私が正論で悪いことは止めましょう、と言ったところで、佐野くんが戻れる場所にいるとは思えない。
「助けてあげられなくて、ごめんね。佐野くん」
「……いいよ。御堂は俺の側にいてくれればいい」
それでキミの気休めになるなら、私はここにいるよ。
キミは買っただけだと言うけど、確かにキミは私を助けたのだから。その恩返しくらいはする。
「御堂、明日は買い物に行こ。服とかたくさん買ってあげる」
「えっ、それは申し訳ないからいいよ」
「いいんだよ、俺が着せたいんだから。そのあと、焼き肉行こう。あ、でも焼き肉だと匂いつくか。バイキングとかの方がいい?」
「いいよ、焼き肉すき」
「じゃあ、焼き肉」
楽しそうに言う佐野くんに、「明日、楽しみだね」と言うと、首筋に擦り寄りながら「楽しみ」と言った。
「なら、今日はもう寝よう」
「もっと話してたい」
「明日たくさん話そう」
「……わかった」
そう言うと、私を解放して寝室まで連れていき「ベッド、御堂が使って」と言うから、「私、ソファーでいいよ」と言ったらグイグイと押され、無理矢理ベッドに寝かしつけられた。
「おやすみ。寝つけなかったら、すぐ言って。話し相手になるから」
じゃ、と言ってそそくさと出ていった佐野くんに、慌てて「おやすみ」と言えば、もう一度、「おやすみ」と返ってきた。
本当に使ってもよかったのだろうか、と思うが、あまり反発するのも不評を買うだろう。やめておこう。
今日は色々あり疲れたからか、すぐに眠りについたが、深夜、喉の乾きを覚え目が覚めた。
ぼんやりとした視界に、白いなにかがぼんやりと浮いている。
「……」
「……悪い」
白いなにか、佐野くんはバツが悪そうに謝りすぐに出ていこうとした。
「佐野くん、眠れないの?」
「……御堂の寝顔見たら寝るつもりだった」
「よくないよ、寝顔の盗み見は」
「……悪い」
ベッドから降り、「眠れるまで話しする?」と聞くと、佐野くんは小さく頷いた。
水のペットボトルを持ちソファーに座ったが、どうしよう。なにを話そう。
「ごめんね、全然話題用意してなかった」
「気にしなくていい」
なにを話そうかと視線を泳がせていると、佐野くんの目の下の隈が目に入った。
「佐野くん、寝るつもりだったって言ってたけど、本当は眠れなかったんじゃない?」
「なんで?」
「目の下、隈できてる。普段から寝つけないんじゃないかなって」
そう聞くと、佐野くんは項垂れ「うまく、眠れないんだ」とこぼした。
「寝てもすぐ目が覚める。見たくもない夢を見る」
淡々としているが、どこか苦しそうな佐野くんの手に触れ、「眠れるまで側にいようか?」と聞くと、少し間を置き「一緒に寝てって言ったら、嫌だ?」と聞き返してきた。
「私は構わないよ。それで眠れるなら」
「……や、やっぱりいい。御堂、もう寝ろって。明日起きられなくなるぞ」
「わかった、おやすみ。……いつでも来ていいからね?」
「行かねー!」