楽しい軟禁生活
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父親がホステス通いで作った借金の形で売られるなんて話が世の中あるのか、と思っていたが、まさか自分がそうなるとは思わなかった。
しかし、私はお酒も弱く話術も得意でなかった為にホステスとしては使い物にならず、危うくソープの方に流されそうだったが、腕っぷしがたつことと店長の温情で黒服として店に立つことを許された。
嬢と間違われないように髪を短くしたら、元の中性的な顔と相まって違和感がなくなった。
黒服の仕事を覚え慣れてきた頃、梵天が貸し切ると店長が告げ、絶対にミスをするな、失礼をするなと注意喚起をした。
店長の怯え具合から、ヤバい人たちなんだろうなと察しがつく。
「いらっしゃいませ!」
スタッフ一同、頭を下げお出迎え。
店長から「いいと言われるまで頭はあげるな」と言われていたのであげずにいると、目の前に人が来るのがわかった。
「オマエ、なんでまだ頭を下げてんだ?」
「上げろと言われるまであげるなと言われているので……」
「律儀だなぁ!オマエ以外、もうあげてるぞ!」
そう言われ、視界に入る限りのスタッフを確認すれば、確かに皆あげていた。
ならば、とあげようとしたら、「ダーメだ!あげんな!」と頭を指で押されもとの位置へと戻される。
「もっと下げろ!」
「……」
言われるまま、直角からさらに下げるも「まだだ!もっとだ!」とさらに押される。
なにがしたいんだと思いながらも、怖い人に逆らうのは得策ではないと自分に言い聞かせる。
少しずつ下げていくと、最終的に前屈のような姿勢になった。
「そのまま、頭後ろ持っていけ!」
「えっ!」
さすがに、そんな中国雑技団のような真似はできない、どうしよう。と困っていると、別の声が「いい加減にしろ、ヤク中」と止める声がした。
「んだよ、シラけんな……」
「うちのヤク中が悪かったねー。顔あげていいよ」
言われるまま顔をあげると、つまらなそうにしているピンク髪の男と、七三分けの一見品の良さそうな男が視界に入った。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
そう言うと、二人は他の怖そうな人たちのところへと合流した。
変なのに絡まれちゃったな、と思いながらバーカウンターに入ると、すぐに「さっきの黒服こーい!」とピンク髪の男の声がした。
うへぇ……。
呼ばれるまま赴くと、ピンク髪に「余興しろ」と無茶を言われる。
「余興、ですか……」
「つまんなかったら、殺すからな」
ゲラゲラと笑っているが、持っているものは明らかに拳銃だ。本当に殺されるかも知れない。
「できることと言えば、蹴りでペットボトルの蓋を開けるくらいでしょうか」
そこそこすごい技だと思うのだが、ピンク髪は「うちの首領の蹴りの方がすげーわ!」と言い出す。
知らん、知らん、知らん。首領、誰だよ。と思っていたら、一人の男と目があった。
黒黒とした瞳に白い髪の男。どこかで見たことがある気がする。
──俺、オマエの髪すきだな。
後ろの席で、よく私の髪をいじっていた子。
「佐野くん?」
「御堂?」
思いがけないところで中学のときのクラスメイトに出くわしてしまった。
「なに馴れ馴れしく首領の名前呼んでんだ、クソが。死体にされてえのか?」
「っ!」
「やめろ」
激昂し、拳銃の照準を向けてきたピンク髪を止めたのは、他でもない佐野くんだった。
「なんで黒服なんかやってんだ」
「恥ずかしい話ですが、父がこの店で借金を作りその形に……」
「売られたの?」
まあ、と答えると佐野くんは店長に「コイツの借金、俺が払うからコイツ頂戴」と言った。
店長は慌てながら「お金なんていりませんよ!どうぞ、どうぞ、お好きにしてください!」と、なんの迷いもなく売り渡した。いや、お金の授受はなかったので売られてはいないのだが。
その言葉を聞いた佐野くんは「俺帰るから、あとは任せた」と男たちに言うと、私に向き直り「荷物まとめてきて」と言った。
展開が飲み込めない私ではあったが、ピンク髪の「首領のお言葉が聞けねえのか、グズ!」と怒鳴ったので、慌てて着替えて戻ってきたら、佐野くんに腕を掴まれ店を足早に出ることになった。
「あ、あの、佐野くん!」
「なに」
「そんな、借金肩代わりしてもらうなんてできないよ!」
「なんで」
「だって、理由がないじゃん!」
「理由ならあるけど」
突然とまり、振り返った佐野くんは真っ直ぐに私を見て「俺が御堂を欲しかったから」と言った。
「俺は御堂を助けたんじゃない。買ったんだ」
「買った……」
呆然と復唱する私から、一瞬視線をそらしてから佐野くんは「腹減ってない?」と聞いてきた。
唐突な問いかけに戸惑いながら、「ちょっと、減ってるかも」と答えれば、「なら、たい焼き買いに行こう」と言って、また歩き出す。
目的地であるたい焼き屋さんで二つ買い、ひとつを私にくれた。
そしてまた、歩き出す。
「ねえ、どこ行くの」
「俺の……俺たちの家」
俺たちの家?と疑問に思いながらついて行くと、一軒のマンションに着いた。
そのまま手を引かれ一室に入ると、ごく普通の間取りの、簡素に家具が置かれたリビングに通された。
「水しかないけど、いい?」
「う、うん……」
所在なさげに立っていると、水のペットボトルを持った佐野くんが、「ソファー座って」と言うから大人しく座ると、佐野くんはテーブルにペットボトルを置くと、私に覆いかぶさるように乗り上げてきた。
「今日から、御堂は俺の物だ。つまり、俺が主人で絶対。いい?」
基本的、この部屋を俺の許可なく出ることは許さない。と、軟禁を示唆するようなことを言われた。
「勝手なことしなかったら、悪いようにはしない」
死にたくなかったら、言うことを聞け。という言葉に、乾く口で「わかった……」と返事をした。
「本当はこんな方法じゃなければよかった……。でも、これでやっと俺の物だ……」
どこか悲しそうに、しかし満足そうな顔を佐野くんはした。
こうして、私の軟禁生活は始まった。
しかし、私はお酒も弱く話術も得意でなかった為にホステスとしては使い物にならず、危うくソープの方に流されそうだったが、腕っぷしがたつことと店長の温情で黒服として店に立つことを許された。
嬢と間違われないように髪を短くしたら、元の中性的な顔と相まって違和感がなくなった。
黒服の仕事を覚え慣れてきた頃、梵天が貸し切ると店長が告げ、絶対にミスをするな、失礼をするなと注意喚起をした。
店長の怯え具合から、ヤバい人たちなんだろうなと察しがつく。
「いらっしゃいませ!」
スタッフ一同、頭を下げお出迎え。
店長から「いいと言われるまで頭はあげるな」と言われていたのであげずにいると、目の前に人が来るのがわかった。
「オマエ、なんでまだ頭を下げてんだ?」
「上げろと言われるまであげるなと言われているので……」
「律儀だなぁ!オマエ以外、もうあげてるぞ!」
そう言われ、視界に入る限りのスタッフを確認すれば、確かに皆あげていた。
ならば、とあげようとしたら、「ダーメだ!あげんな!」と頭を指で押されもとの位置へと戻される。
「もっと下げろ!」
「……」
言われるまま、直角からさらに下げるも「まだだ!もっとだ!」とさらに押される。
なにがしたいんだと思いながらも、怖い人に逆らうのは得策ではないと自分に言い聞かせる。
少しずつ下げていくと、最終的に前屈のような姿勢になった。
「そのまま、頭後ろ持っていけ!」
「えっ!」
さすがに、そんな中国雑技団のような真似はできない、どうしよう。と困っていると、別の声が「いい加減にしろ、ヤク中」と止める声がした。
「んだよ、シラけんな……」
「うちのヤク中が悪かったねー。顔あげていいよ」
言われるまま顔をあげると、つまらなそうにしているピンク髪の男と、七三分けの一見品の良さそうな男が視界に入った。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
そう言うと、二人は他の怖そうな人たちのところへと合流した。
変なのに絡まれちゃったな、と思いながらバーカウンターに入ると、すぐに「さっきの黒服こーい!」とピンク髪の男の声がした。
うへぇ……。
呼ばれるまま赴くと、ピンク髪に「余興しろ」と無茶を言われる。
「余興、ですか……」
「つまんなかったら、殺すからな」
ゲラゲラと笑っているが、持っているものは明らかに拳銃だ。本当に殺されるかも知れない。
「できることと言えば、蹴りでペットボトルの蓋を開けるくらいでしょうか」
そこそこすごい技だと思うのだが、ピンク髪は「うちの首領の蹴りの方がすげーわ!」と言い出す。
知らん、知らん、知らん。首領、誰だよ。と思っていたら、一人の男と目があった。
黒黒とした瞳に白い髪の男。どこかで見たことがある気がする。
──俺、オマエの髪すきだな。
後ろの席で、よく私の髪をいじっていた子。
「佐野くん?」
「御堂?」
思いがけないところで中学のときのクラスメイトに出くわしてしまった。
「なに馴れ馴れしく首領の名前呼んでんだ、クソが。死体にされてえのか?」
「っ!」
「やめろ」
激昂し、拳銃の照準を向けてきたピンク髪を止めたのは、他でもない佐野くんだった。
「なんで黒服なんかやってんだ」
「恥ずかしい話ですが、父がこの店で借金を作りその形に……」
「売られたの?」
まあ、と答えると佐野くんは店長に「コイツの借金、俺が払うからコイツ頂戴」と言った。
店長は慌てながら「お金なんていりませんよ!どうぞ、どうぞ、お好きにしてください!」と、なんの迷いもなく売り渡した。いや、お金の授受はなかったので売られてはいないのだが。
その言葉を聞いた佐野くんは「俺帰るから、あとは任せた」と男たちに言うと、私に向き直り「荷物まとめてきて」と言った。
展開が飲み込めない私ではあったが、ピンク髪の「首領のお言葉が聞けねえのか、グズ!」と怒鳴ったので、慌てて着替えて戻ってきたら、佐野くんに腕を掴まれ店を足早に出ることになった。
「あ、あの、佐野くん!」
「なに」
「そんな、借金肩代わりしてもらうなんてできないよ!」
「なんで」
「だって、理由がないじゃん!」
「理由ならあるけど」
突然とまり、振り返った佐野くんは真っ直ぐに私を見て「俺が御堂を欲しかったから」と言った。
「俺は御堂を助けたんじゃない。買ったんだ」
「買った……」
呆然と復唱する私から、一瞬視線をそらしてから佐野くんは「腹減ってない?」と聞いてきた。
唐突な問いかけに戸惑いながら、「ちょっと、減ってるかも」と答えれば、「なら、たい焼き買いに行こう」と言って、また歩き出す。
目的地であるたい焼き屋さんで二つ買い、ひとつを私にくれた。
そしてまた、歩き出す。
「ねえ、どこ行くの」
「俺の……俺たちの家」
俺たちの家?と疑問に思いながらついて行くと、一軒のマンションに着いた。
そのまま手を引かれ一室に入ると、ごく普通の間取りの、簡素に家具が置かれたリビングに通された。
「水しかないけど、いい?」
「う、うん……」
所在なさげに立っていると、水のペットボトルを持った佐野くんが、「ソファー座って」と言うから大人しく座ると、佐野くんはテーブルにペットボトルを置くと、私に覆いかぶさるように乗り上げてきた。
「今日から、御堂は俺の物だ。つまり、俺が主人で絶対。いい?」
基本的、この部屋を俺の許可なく出ることは許さない。と、軟禁を示唆するようなことを言われた。
「勝手なことしなかったら、悪いようにはしない」
死にたくなかったら、言うことを聞け。という言葉に、乾く口で「わかった……」と返事をした。
「本当はこんな方法じゃなければよかった……。でも、これでやっと俺の物だ……」
どこか悲しそうに、しかし満足そうな顔を佐野くんはした。
こうして、私の軟禁生活は始まった。
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