ゆるふわリクエスト企画
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明日は久しぶりのオフだし買い物にでも行こうかと思っていたら、山田から「明日、飲みにでも行かね?」という丁度いい誘いの連絡がきていた。
「ストッパーはちゃんと連れてくる?」と送れば、今度は電話がかかってきたのでスリーコールで出れば「俺と二人きりは不満なの?」と拗ねた声。
「不満じゃないけど、飲むなら相澤も一緒がいいじゃん。私に声かける時って、二人してお疲れの時だし」
『……アタリ。悪いな、こんな時ばっかり頼って』
「辛い時こそ、頼って」
『サンキュー』
いつになく静かな山田の声が、少し私の気持ちをざわつかせた。
ただでさえヒーローとラジオパーソナリティーで休む暇がないのに、雄英の教師もしている。
山田はストレスを溜め込んでからぶっ倒れるタイプだから、心配だ。
相澤も、雄英の教師をしてヒーロー活動もしている。
あいつは何だかんだで体調管理はできているが、いかんせん優しすぎるところがある。
それで精神を磨耗させていないだろうかと、こちらも心配なのだ。
「店はいつもの店でいい?」
『歌ってくれるなら、どこでもいいぜ』
「オッケー。私の美声に酔いしれさせてあげるわよ」
そんなやり取りをしていたら、休憩時間が終わった。
山田に「また明日」と告げて電話を切る。
翌日、約束の時間に待ち合わせ場所へ行けば、私服の山田と相澤が待っていた。
心なしか元気がない。
あまり「どうしたの」と聞くのもよくないと思い、いつも通りの声で馴染みのジャズバーへと足を運んだ。
いつものお酒に、いつもの食事。
いつも通りではないのは、いつもより憔悴している同期二人。
張りつめた表情に、相当なことがあったのだろうと察しはついた。
最近の雄英はゴタゴタしてはいるが、二人がこんな顔をするなんて初めてかもしれない。
山田の空元気なトークショーとそれに無理に乗ろうとする相澤に、「無理しないで」と個性『ゆらぎ』を使って気分を強制的に落ち着かせれば、黙った二人がぼろぼろと涙を流しはじめた。
いままでこんなことなかったから、さすがに「なにがあったの?」と聞けばしゃくりあげながら「外部には言えないんだ」と相澤が言う。
山田は声をあげないようにするので精一杯だ。
外部には言えないということは、雄英関係なのだろう。
そうなると私にはもう、それ以上聞くことはできず、個性で二人の気持ちを一時的に落ち着かせることしかできない。
恐らく、二人ともそれを望んでいる。
話せないが為に押し潰されそうになる気持ちを癒したい、そんな状況なのだ。
泣きじゃくる二人に、ゆっくりと最近の話をすれば少しずつ、少しずつ、いつもの調子で相づちを打ち、笑い、お酒を飲み、食事をして、バカな話に花を咲かせた。
「癒音ちゃーん。お店湿っぽくさせたんだから、一曲くらい歌ってちょうだいよー」
女性バーテンダーの要望に「喜んでー」と軽く請け負い、「なにかリクエストはある?」と二人に聞けば、「前は俺がリクエストしたから、消太決めていいぜ」とリクエスト権が相澤へと移った。
相澤は少し考え「What a wonderful worldが聴きたい」とリクエストをだしてきた。
What a wonderful world、日本語ではこの素晴らしき世界というタイトルの名曲だ。
この曲は、作詞・作曲のG・ダグラスがベトナム戦争を嘆き、平和な世界を夢見て書いた曲と言われている。
オールマイト無きいま、不安と混乱、活発化した敵や敵連合への恐怖で均衡を崩しそうなこの国の平和な未来を望む相澤らしい選曲だ。
「オッケー。任せておいて」
舞台に置かれたマイクの前に立ち、バンド隊に視線を送り個性を乗せて歌い出せば、聴いた者すべてがうっとりとした表情で聞き入る。
相澤と山田も、今度は泣かずにゆったりとしたリラックスした状態で安心した。
いまは地獄かも知れないけど、いつかは夢見た平和な世界が待っているから。
その為に私たちは戦って、後進を育てているのだから。
そんな気持ちを込めて歌いきり、拍手と指笛を受け止め席についた。
「やっぱ、癒音の歌は最高にリラックスすんなー」
「あぁ、個性だからかも知れないが、それ抜きでも優しい声で落ち着く」
「べた褒めしてくれるわね、ありがとう。それじゃあ、飲みなおしますか?」
「YAHHHH!賛成!」
「しかたねえから、付き合うよ」
口では仕方ないとは言っているが飲む気満々の相澤と、完全復活した山田と三時間ほど飲んでから、酔いざましに公園で缶ジュースを飲んでいたら、相澤が「今日は本当にありがとうな」と申し訳なさそうに言われた。
「こんな風にお前の個性利用するみたいなことして……」
「なーに言ってんのよ!私を誰だと思っているの?ヒーリングヒーロー『ヒールソング』よ。癒してなんぼなんだから、気にしないで」
「けど、感謝はマジでしてんだぜ。癒音がいなかったら、俺たち怒りで腸煮えくり返って吹き零れてただろうしな」
「……それだけ辛いことがあったんだね」
二人とも私の質問に答えはしなかったが、黙って俯き缶ジュースを握りしめる姿を見ただけで、辛さが痛いほど伝わった。
「……私には、一時気持ちを安らげることしかできないけど、どうしようもなく辛くなったら、言ってね」
私の精一杯の気づかいに、山田は唇を尖らせ「辛くなったら時しか飲みに付き合ってくれねーのかよー」と拗ね、相澤も下唇をむい、とだして「用がなきゃ誘ったらダメなのか」とこちらも拗ねる。
まったくもう、元気になったようでよかったよ。
「いつでも誘ってよ。時間が合えば行くから」
「そう来ねーとな!」
「さすが、A組の三バカのお袋」
一瞬、白雲のことを思い出し泣きそうになったが、なんとか持ちこたえて「私は未婚だー!」といつものノリで怒ったら、唐突に山田と相澤に抱きしめられ「ごめんな」「悪い」と謝られた。
「どういう意味……」と聞こうとしたが、すぐに離れて「もう帰るか!」といつもの笑顔で言われ、有耶無耶にされた。
「送るよ、暗いしな」
「なに言ってんのよ!私もヒーローよ?」
「そういうの関係なく、女の子を男が送ってくのは当たり前っしょ?」
そう言い、私の手の片方を山田が、もう片方を相澤が繋いだ。
まるで小学生みたいだとはしゃぐ私は、二人が直面し、私には絶対に教えてはならないと決めた悲しい現実を知るよしもなかったのだった。
「ストッパーはちゃんと連れてくる?」と送れば、今度は電話がかかってきたのでスリーコールで出れば「俺と二人きりは不満なの?」と拗ねた声。
「不満じゃないけど、飲むなら相澤も一緒がいいじゃん。私に声かける時って、二人してお疲れの時だし」
『……アタリ。悪いな、こんな時ばっかり頼って』
「辛い時こそ、頼って」
『サンキュー』
いつになく静かな山田の声が、少し私の気持ちをざわつかせた。
ただでさえヒーローとラジオパーソナリティーで休む暇がないのに、雄英の教師もしている。
山田はストレスを溜め込んでからぶっ倒れるタイプだから、心配だ。
相澤も、雄英の教師をしてヒーロー活動もしている。
あいつは何だかんだで体調管理はできているが、いかんせん優しすぎるところがある。
それで精神を磨耗させていないだろうかと、こちらも心配なのだ。
「店はいつもの店でいい?」
『歌ってくれるなら、どこでもいいぜ』
「オッケー。私の美声に酔いしれさせてあげるわよ」
そんなやり取りをしていたら、休憩時間が終わった。
山田に「また明日」と告げて電話を切る。
翌日、約束の時間に待ち合わせ場所へ行けば、私服の山田と相澤が待っていた。
心なしか元気がない。
あまり「どうしたの」と聞くのもよくないと思い、いつも通りの声で馴染みのジャズバーへと足を運んだ。
いつものお酒に、いつもの食事。
いつも通りではないのは、いつもより憔悴している同期二人。
張りつめた表情に、相当なことがあったのだろうと察しはついた。
最近の雄英はゴタゴタしてはいるが、二人がこんな顔をするなんて初めてかもしれない。
山田の空元気なトークショーとそれに無理に乗ろうとする相澤に、「無理しないで」と個性『ゆらぎ』を使って気分を強制的に落ち着かせれば、黙った二人がぼろぼろと涙を流しはじめた。
いままでこんなことなかったから、さすがに「なにがあったの?」と聞けばしゃくりあげながら「外部には言えないんだ」と相澤が言う。
山田は声をあげないようにするので精一杯だ。
外部には言えないということは、雄英関係なのだろう。
そうなると私にはもう、それ以上聞くことはできず、個性で二人の気持ちを一時的に落ち着かせることしかできない。
恐らく、二人ともそれを望んでいる。
話せないが為に押し潰されそうになる気持ちを癒したい、そんな状況なのだ。
泣きじゃくる二人に、ゆっくりと最近の話をすれば少しずつ、少しずつ、いつもの調子で相づちを打ち、笑い、お酒を飲み、食事をして、バカな話に花を咲かせた。
「癒音ちゃーん。お店湿っぽくさせたんだから、一曲くらい歌ってちょうだいよー」
女性バーテンダーの要望に「喜んでー」と軽く請け負い、「なにかリクエストはある?」と二人に聞けば、「前は俺がリクエストしたから、消太決めていいぜ」とリクエスト権が相澤へと移った。
相澤は少し考え「What a wonderful worldが聴きたい」とリクエストをだしてきた。
What a wonderful world、日本語ではこの素晴らしき世界というタイトルの名曲だ。
この曲は、作詞・作曲のG・ダグラスがベトナム戦争を嘆き、平和な世界を夢見て書いた曲と言われている。
オールマイト無きいま、不安と混乱、活発化した敵や敵連合への恐怖で均衡を崩しそうなこの国の平和な未来を望む相澤らしい選曲だ。
「オッケー。任せておいて」
舞台に置かれたマイクの前に立ち、バンド隊に視線を送り個性を乗せて歌い出せば、聴いた者すべてがうっとりとした表情で聞き入る。
相澤と山田も、今度は泣かずにゆったりとしたリラックスした状態で安心した。
いまは地獄かも知れないけど、いつかは夢見た平和な世界が待っているから。
その為に私たちは戦って、後進を育てているのだから。
そんな気持ちを込めて歌いきり、拍手と指笛を受け止め席についた。
「やっぱ、癒音の歌は最高にリラックスすんなー」
「あぁ、個性だからかも知れないが、それ抜きでも優しい声で落ち着く」
「べた褒めしてくれるわね、ありがとう。それじゃあ、飲みなおしますか?」
「YAHHHH!賛成!」
「しかたねえから、付き合うよ」
口では仕方ないとは言っているが飲む気満々の相澤と、完全復活した山田と三時間ほど飲んでから、酔いざましに公園で缶ジュースを飲んでいたら、相澤が「今日は本当にありがとうな」と申し訳なさそうに言われた。
「こんな風にお前の個性利用するみたいなことして……」
「なーに言ってんのよ!私を誰だと思っているの?ヒーリングヒーロー『ヒールソング』よ。癒してなんぼなんだから、気にしないで」
「けど、感謝はマジでしてんだぜ。癒音がいなかったら、俺たち怒りで腸煮えくり返って吹き零れてただろうしな」
「……それだけ辛いことがあったんだね」
二人とも私の質問に答えはしなかったが、黙って俯き缶ジュースを握りしめる姿を見ただけで、辛さが痛いほど伝わった。
「……私には、一時気持ちを安らげることしかできないけど、どうしようもなく辛くなったら、言ってね」
私の精一杯の気づかいに、山田は唇を尖らせ「辛くなったら時しか飲みに付き合ってくれねーのかよー」と拗ね、相澤も下唇をむい、とだして「用がなきゃ誘ったらダメなのか」とこちらも拗ねる。
まったくもう、元気になったようでよかったよ。
「いつでも誘ってよ。時間が合えば行くから」
「そう来ねーとな!」
「さすが、A組の三バカのお袋」
一瞬、白雲のことを思い出し泣きそうになったが、なんとか持ちこたえて「私は未婚だー!」といつものノリで怒ったら、唐突に山田と相澤に抱きしめられ「ごめんな」「悪い」と謝られた。
「どういう意味……」と聞こうとしたが、すぐに離れて「もう帰るか!」といつもの笑顔で言われ、有耶無耶にされた。
「送るよ、暗いしな」
「なに言ってんのよ!私もヒーローよ?」
「そういうの関係なく、女の子を男が送ってくのは当たり前っしょ?」
そう言い、私の手の片方を山田が、もう片方を相澤が繋いだ。
まるで小学生みたいだとはしゃぐ私は、二人が直面し、私には絶対に教えてはならないと決めた悲しい現実を知るよしもなかったのだった。
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