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甘い匂いと恋の予感、そしてピリピリとした商戦空気と非モテ野郎の怒りが街を包みだす季節。
今年はあの筋肉ワンコになにを作ってやろうかと、最新のチョコレートをネットで見ていたら筋肉ワンコが「今年は私が作ってわたすよ!」と不吉な宣言した。
「去年のホワイトデーに、俺が言ったこと覚えてる?」
「うん!でも、やっぱり当日サプライズしたいじゃん!だから、一人で作ろうと思うの!」
「お前のサプライズは味で驚かしに来るだろうが。ダメ、絶対にダメ。食材が可哀想。作るなら、俺と」
なおもあーだこーだと、自力で作ることに拘る苗字に、「約束破るのは男らしくないんじゃない」と言えば、ぐっ、とつまり「わかったよ……一緒に作ってください……」とゴニョゴニョお願いされた。
普通、女子なら「男じゃないし!」とキーキー言う部分を完全スルーするところは、好きな……
「うぇ……」
「ど、どうしたの?!どこがスイッチだったの?!」
どこがと言うか完全なる自爆なので、大丈夫だとジェスチャーで示し、競り上がる嫌悪感、吐き気、涙を押さえ付け顔を上げれば、不安そうな顔をした苗字。
「その顔やめろ……」
俺を、心配するな……。
苗字の瞳に映る苦し気な表情をした自分の顔。
まだ、俺はあんたの優しさを受け入れられないんだ……。
察した苗字は顔をぎゅっと中心に寄せて不細工な顔になってから、パッと顔を開き笑顔を作り「それで、なにを作りますか?先生!」と話題を変えるように聞いてきた。
「基本の基本……」
「クッキー!」
「溶かして固めたチョコです」
「なんて?」
「溶かして固めたチョコ」
俺が発表した物にブーブーと文句を言う苗字に、にっこりとお久しぶりな作り笑いを向けたら、俺の綺麗な笑みに慣れていない苗字はびくっ!と肩を跳ねさせた。
「うん、うん。苗字さんは、溶かして固めたチョコは嫌なんだね。じゃあ聞くけど、苗字さんはクッキー生地やパイ生地を均一に伸ばせるのかな?言った通り、計量できる?入れるなって言った物は入れない?」
「え、えっと……その……できま……」
「できま?」
「せん……」
「じゃあ、文句はないよねー?」
笑顔で圧をかける俺に、苗字はそれ以上の反論はせずに「溶かして固めたチョコでいいです」と、観念した。
「んじゃ、今日の帰りに材料買ってうちで作っちゃおう」
「はーい!」
何だかんだと文句を言っていたのに、ウキウキとした表情をしている。
同い年に言うのは失礼かも知れないけど、本当に子供だなぁ……。
帰りに、苗字の財布キャパに合わせたスーパーで材料を選び、苗字が入れたハチミツやらりんごを元に戻させる。
お前がこれから作るのはカレーじゃなくてチョコレートだ。
会計も済ませ、苗字に予備のエプロンをわたして、まずは板チョコを細かく均一に刻むように言ったら、板チョコのど真ん中に包丁振り下ろされた。
「うん、細かく均一は無理そうだから、やめよう」
なにより俺が怖い。
致し方ないので、板チョコを適当な大きさに割らせてボールへ入れ、めん棒でさらに砕かせる。
あれ、生地伸ばす為の道具なんだけどなぁ……。
チョコを砕く苗字の隣で、俺も苗字と旦那用のエクレアを作り始めた。
「猿飛くんも作るの?」
「まぁね」
「なに作るの?」
「エクレア」
「なにそれ、かっこいい!私も作りたい!」
「ははっ、どの口か言ってんの?」
小馬鹿にされ、不貞腐れた表情をしてチョコを砕きながら「こんなんでいいですかー?せんせー?」と、聞いてきた。
「はいはい、十分ですよー」
その後、俺監修のもとで溶かして固めるチョコを完成させ、達成感に満ち溢れた苗字が「イエーイ!ハッピーバレンタインー!」と、デコレーションだけは任せた少し不格好なチョコを皿にのせて寄越してきた。
「ハッピーなのは、お前の頭だけだよ。はい、エクレア」
俺が作った完璧なエクレアに目を輝かせ、「いただきます!」としっかり手を合わせてから、女子が男子には見せてはいけない大口でかぶりつく。
気持ちのいい食べっぷりだと、作り手としては嬉しく思いながら、テンパリングを何回もリトライした苗字のチョコを口にふくむ。
「甘い」
「チョコだからね。……余計な物は入れてないよ!」
「入れてたら、俺がすぐ気がつくっての」
そうではなく、普段なら味なんてほとんど感じないのに、今日はいやにしっかりとチョコレートの甘さを感じるんだよ。
なんでだろうね?
今年はあの筋肉ワンコになにを作ってやろうかと、最新のチョコレートをネットで見ていたら筋肉ワンコが「今年は私が作ってわたすよ!」と不吉な宣言した。
「去年のホワイトデーに、俺が言ったこと覚えてる?」
「うん!でも、やっぱり当日サプライズしたいじゃん!だから、一人で作ろうと思うの!」
「お前のサプライズは味で驚かしに来るだろうが。ダメ、絶対にダメ。食材が可哀想。作るなら、俺と」
なおもあーだこーだと、自力で作ることに拘る苗字に、「約束破るのは男らしくないんじゃない」と言えば、ぐっ、とつまり「わかったよ……一緒に作ってください……」とゴニョゴニョお願いされた。
普通、女子なら「男じゃないし!」とキーキー言う部分を完全スルーするところは、好きな……
「うぇ……」
「ど、どうしたの?!どこがスイッチだったの?!」
どこがと言うか完全なる自爆なので、大丈夫だとジェスチャーで示し、競り上がる嫌悪感、吐き気、涙を押さえ付け顔を上げれば、不安そうな顔をした苗字。
「その顔やめろ……」
俺を、心配するな……。
苗字の瞳に映る苦し気な表情をした自分の顔。
まだ、俺はあんたの優しさを受け入れられないんだ……。
察した苗字は顔をぎゅっと中心に寄せて不細工な顔になってから、パッと顔を開き笑顔を作り「それで、なにを作りますか?先生!」と話題を変えるように聞いてきた。
「基本の基本……」
「クッキー!」
「溶かして固めたチョコです」
「なんて?」
「溶かして固めたチョコ」
俺が発表した物にブーブーと文句を言う苗字に、にっこりとお久しぶりな作り笑いを向けたら、俺の綺麗な笑みに慣れていない苗字はびくっ!と肩を跳ねさせた。
「うん、うん。苗字さんは、溶かして固めたチョコは嫌なんだね。じゃあ聞くけど、苗字さんはクッキー生地やパイ生地を均一に伸ばせるのかな?言った通り、計量できる?入れるなって言った物は入れない?」
「え、えっと……その……できま……」
「できま?」
「せん……」
「じゃあ、文句はないよねー?」
笑顔で圧をかける俺に、苗字はそれ以上の反論はせずに「溶かして固めたチョコでいいです」と、観念した。
「んじゃ、今日の帰りに材料買ってうちで作っちゃおう」
「はーい!」
何だかんだと文句を言っていたのに、ウキウキとした表情をしている。
同い年に言うのは失礼かも知れないけど、本当に子供だなぁ……。
帰りに、苗字の財布キャパに合わせたスーパーで材料を選び、苗字が入れたハチミツやらりんごを元に戻させる。
お前がこれから作るのはカレーじゃなくてチョコレートだ。
会計も済ませ、苗字に予備のエプロンをわたして、まずは板チョコを細かく均一に刻むように言ったら、板チョコのど真ん中に包丁振り下ろされた。
「うん、細かく均一は無理そうだから、やめよう」
なにより俺が怖い。
致し方ないので、板チョコを適当な大きさに割らせてボールへ入れ、めん棒でさらに砕かせる。
あれ、生地伸ばす為の道具なんだけどなぁ……。
チョコを砕く苗字の隣で、俺も苗字と旦那用のエクレアを作り始めた。
「猿飛くんも作るの?」
「まぁね」
「なに作るの?」
「エクレア」
「なにそれ、かっこいい!私も作りたい!」
「ははっ、どの口か言ってんの?」
小馬鹿にされ、不貞腐れた表情をしてチョコを砕きながら「こんなんでいいですかー?せんせー?」と、聞いてきた。
「はいはい、十分ですよー」
その後、俺監修のもとで溶かして固めるチョコを完成させ、達成感に満ち溢れた苗字が「イエーイ!ハッピーバレンタインー!」と、デコレーションだけは任せた少し不格好なチョコを皿にのせて寄越してきた。
「ハッピーなのは、お前の頭だけだよ。はい、エクレア」
俺が作った完璧なエクレアに目を輝かせ、「いただきます!」としっかり手を合わせてから、女子が男子には見せてはいけない大口でかぶりつく。
気持ちのいい食べっぷりだと、作り手としては嬉しく思いながら、テンパリングを何回もリトライした苗字のチョコを口にふくむ。
「甘い」
「チョコだからね。……余計な物は入れてないよ!」
「入れてたら、俺がすぐ気がつくっての」
そうではなく、普段なら味なんてほとんど感じないのに、今日はいやにしっかりとチョコレートの甘さを感じるんだよ。
なんでだろうね?
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