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真田の旦那が保有する土地の一画に作られた、花々が彩る広大な霊園はその日も多くの人間がとある少女の墓参りに訪れていた。
霊園の最奥にある、日の光が一番綺麗に入る場所に少女ーー名前の墓標がある。
魔王が討たれ、俺様たちが一度は死に、名前が二度目の永い眠りについたあの日、俺様たちは話し合いの結果名前の遺骨を持ち帰り全てを公表する事にした。
こんな場所に英雄である彼女を野晒しにできるはずもなく、そして祖先が犯した罪の上に築かれた栄華などあってはならない。
それが総意だった。
俺様たちの話は、どう聞いても好意的に受け入れられる筈もない内容であったが、それでも領民たちは俺様たちに変わらずこの場所を護ってほしいと願った。
旦那たちの人徳故か、それとも護られるならば誰でもよかったのかはわからない。
渋る旦那たちを領民たちが説得し、俺様たちは変わらず今の生活をしている。
名前の墓を作り、彼女が好きだった花を植え、英雄として石像も造った。
像を造る際、表情やポーズはどうしようかとあれこれ話し合ったな。
勇者なのだから凛々しくしよう、いやあいつには似合わないだろ、鬼気迫るあの表情はどうだろうか?
そんな感じで話し合っていたのに、最終的には「笑っている名前が一番らしい」という場所に落ち着き、勇者の石像なのにピースサインで緩い笑みを浮かべている締まりのない物となった。
だが、これが彼女の一番似合う表情だろう。
言ってしまえば、俺様たちの記憶に一番鮮烈に残っている表情は、最後に見た憎しみと殺意に満ちた表情だが、あれは本来の彼女の本質ではない。
間違いなく、あの憎しみは彼女が持った本当の感情ではあるが、自身の事など省みず他者を守り、憎むべき相手である俺様たちの命を奪ったとは言え最後には後悔し蘇生させた優しさこそが名前という人間の本質と言えよう。
その日、真田の旦那と片倉の旦那、おまけの独眼竜を交え、名前の墓前で酒盛りをした。
彼女の墓には、生前、彼女が好んでいたココアを供えて。
彼女と過ごした短い日々を語らいながら酒を飲んでいると、真田の旦那がポツリと「本当にこれでよかったのだろうか」と呟く。
片倉の旦那も独眼竜も、なにがとは聞かない。
だから、俺様が敢えて「なにが?」と聞いた。
でないと、話はこのまま進まず空気は暗く淀む一方だから。
「名前の墓を、造る事がだ。名前の命を奪った、謂わば裏切り者である者の子孫に弔われるのは、あやつにとっては不本意ではないのだろうか。俺たちの……自己満足に過ぎないのではないか……」
真田の旦那の考えはわかっていたし、俺様たち全員が考えていた事だ。
名前の気持ちを考えれば、裏切った相手の子孫に弔われ今さら祭り上げられるなど腸が煮えくり返っていてもおかしくはない。
「……じゃあ、旦那はあんな場所に名前をそのままにしておいてもよかったの?」
「そうでは……ないが……」
「なら、これでよかったんだよ。自己満足だろうと、後ろめたさがあろうと、あの子をあんな墓とも呼べない場所に置き去りにはできなかった。文句なんて言えないよ、死人に口なしだからね」
そう言い、酒を煽り飲んだら「本当ですよ!と言いますか、こんな立派なお墓建ててもらったのに文句なんてあるわけないじゃないですか!」と、懐かしい幼い声が響き渡る。
生きていれば、これほど聞けて嬉しい声はない。
それは、生きていればの話だ……。
辺りを警戒し、周囲に視線を走らせていたはずなのに、彼女は平然と、当たり前に、真田の旦那と独眼竜の間に座りココアを飲みながら「この私の姿を、そんな簡単に捉えられるわけないじゃないですか」と、ニコニコしながら言った。
「あんまりにも辛気臭い顔をしていたので、化けて出てきちゃいましたよ」
洒落にならない洒落を述べ、悪戯っ子の笑みで最後に「なんちゃって」と付け加えたようだが、真田の旦那と独眼竜の叫び声に掻き消された。
その後、ちゃんとした説明をさせたら「神様が、さすがに可哀想だから蘇生させてあげるって言ってくれたんですよ」とあっけらかんと説明された。
「そういう大切な事を茶化しながら出てくるのはやめなさい!」
「すみませーん、佐助さん!」
霊園の最奥にある、日の光が一番綺麗に入る場所に少女ーー名前の墓標がある。
魔王が討たれ、俺様たちが一度は死に、名前が二度目の永い眠りについたあの日、俺様たちは話し合いの結果名前の遺骨を持ち帰り全てを公表する事にした。
こんな場所に英雄である彼女を野晒しにできるはずもなく、そして祖先が犯した罪の上に築かれた栄華などあってはならない。
それが総意だった。
俺様たちの話は、どう聞いても好意的に受け入れられる筈もない内容であったが、それでも領民たちは俺様たちに変わらずこの場所を護ってほしいと願った。
旦那たちの人徳故か、それとも護られるならば誰でもよかったのかはわからない。
渋る旦那たちを領民たちが説得し、俺様たちは変わらず今の生活をしている。
名前の墓を作り、彼女が好きだった花を植え、英雄として石像も造った。
像を造る際、表情やポーズはどうしようかとあれこれ話し合ったな。
勇者なのだから凛々しくしよう、いやあいつには似合わないだろ、鬼気迫るあの表情はどうだろうか?
そんな感じで話し合っていたのに、最終的には「笑っている名前が一番らしい」という場所に落ち着き、勇者の石像なのにピースサインで緩い笑みを浮かべている締まりのない物となった。
だが、これが彼女の一番似合う表情だろう。
言ってしまえば、俺様たちの記憶に一番鮮烈に残っている表情は、最後に見た憎しみと殺意に満ちた表情だが、あれは本来の彼女の本質ではない。
間違いなく、あの憎しみは彼女が持った本当の感情ではあるが、自身の事など省みず他者を守り、憎むべき相手である俺様たちの命を奪ったとは言え最後には後悔し蘇生させた優しさこそが名前という人間の本質と言えよう。
その日、真田の旦那と片倉の旦那、おまけの独眼竜を交え、名前の墓前で酒盛りをした。
彼女の墓には、生前、彼女が好んでいたココアを供えて。
彼女と過ごした短い日々を語らいながら酒を飲んでいると、真田の旦那がポツリと「本当にこれでよかったのだろうか」と呟く。
片倉の旦那も独眼竜も、なにがとは聞かない。
だから、俺様が敢えて「なにが?」と聞いた。
でないと、話はこのまま進まず空気は暗く淀む一方だから。
「名前の墓を、造る事がだ。名前の命を奪った、謂わば裏切り者である者の子孫に弔われるのは、あやつにとっては不本意ではないのだろうか。俺たちの……自己満足に過ぎないのではないか……」
真田の旦那の考えはわかっていたし、俺様たち全員が考えていた事だ。
名前の気持ちを考えれば、裏切った相手の子孫に弔われ今さら祭り上げられるなど腸が煮えくり返っていてもおかしくはない。
「……じゃあ、旦那はあんな場所に名前をそのままにしておいてもよかったの?」
「そうでは……ないが……」
「なら、これでよかったんだよ。自己満足だろうと、後ろめたさがあろうと、あの子をあんな墓とも呼べない場所に置き去りにはできなかった。文句なんて言えないよ、死人に口なしだからね」
そう言い、酒を煽り飲んだら「本当ですよ!と言いますか、こんな立派なお墓建ててもらったのに文句なんてあるわけないじゃないですか!」と、懐かしい幼い声が響き渡る。
生きていれば、これほど聞けて嬉しい声はない。
それは、生きていればの話だ……。
辺りを警戒し、周囲に視線を走らせていたはずなのに、彼女は平然と、当たり前に、真田の旦那と独眼竜の間に座りココアを飲みながら「この私の姿を、そんな簡単に捉えられるわけないじゃないですか」と、ニコニコしながら言った。
「あんまりにも辛気臭い顔をしていたので、化けて出てきちゃいましたよ」
洒落にならない洒落を述べ、悪戯っ子の笑みで最後に「なんちゃって」と付け加えたようだが、真田の旦那と独眼竜の叫び声に掻き消された。
その後、ちゃんとした説明をさせたら「神様が、さすがに可哀想だから蘇生させてあげるって言ってくれたんですよ」とあっけらかんと説明された。
「そういう大切な事を茶化しながら出てくるのはやめなさい!」
「すみませーん、佐助さん!」