婆娑羅横丁
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佐助さんに散歩でもしてきな、と言われ散歩していたら男の人が倒れていた。
この奇っ怪な横丁で倒れている人間が本当に人間かと問われると、違うだろうな、となる。
それでも見捨てていくのは忍びなく、近寄り「大丈夫ですか?」と声をかければ微かな声で「血が足りない」と言った気がした。
「血?」
「きさ……ま……人か……」
「えっと……魔女見習いです……」
「なら……好都合だ……。少し血を……わけろ……」
血をわける、とは?と小首を傾げた瞬間だった。
弱りきっていると思っていた男に強く腕を引かれ、血走った目で大きく口を開き鋭い犬歯を私の首筋へとつきたてた。
一瞬、痛みはあったがすぐに甘い痺れへと変わる。
このまま、血をすべて吸われてしまうのかと思ったら、少しだけ吸われただけで牙は抜けベロリと傷口を舐められた。
「貴様の魔力量が多くてさほど飲む必要がなくて助かった。しかし、貴様の魔力どこか……で……貴様!一花か!戻ってきていたのなら、なぜ秀吉様へ挨拶に来なかった!秀吉様がどれほどお待ちしていたと思っている!」
なにやら怒鳴られているが、どうも上手く頭が回らない。
彼の言葉も右から左で、なにを言っているのかまでわからない。
「ちっ!麻酔の所為か!まぁ、いい!どの道、秀吉様の元にお連れするまでだ!」
そう言うや否や肩に私を担ぎ上げ、先ほどまでの弱りきった姿など嘘のような俊足でどこかへと連れ去った。
家を出る時に見た、佐助さんの「ヤバいのはいないから、安心しな~」というアホ面を殴り倒したくなった。
どこがやねん。
私を担いだ男に連れていかれた先のカフェで、全体的に白く儚いゆるふわ白髪ウェーブが素敵な男性によって正気に戻された。
「すまないね、一花くん。せっかく戻ってきたのに、手荒な迎えになってしまったね」
優しいお兄さんに「その上、首筋噛まれて血を吸われました」と、縦に長い犯人を指差せば「しっかり治してただろう!血も最低限しか吸っていない!」とキレられた。
お兄さんに差し出された手鏡で確認すれば、確かに点程度しか傷はなかった。
「吸血鬼の唾液には治癒作用があるんだ」
「へー。でも乙女の肌に傷をつけたことに対しては謝罪すべきだと思います」
「ぐっ……!貴様!可愛げとやらがなくなってるぞ!」
「なんかそれ、どっかのすかした猿にも言われましたね」
そう、あのへらへらした顔を思い浮かべたのだが、「秀吉様を侮辱するつもりか、貴様!」と座っている私の頭を鷲掴んだ。
この吸血鬼、血よりカルシウムとった方がよいのでは?
美貌のお兄さんが愉快そうに、「たぶん、佐助くんのことだよ。三成くん」と止めてくれる。
「いまも、彼の世話になっているんだろう?」
「はい、不本意ながら」
「なら仕方ないけど、僕らの中で“猿”と言えば猿神である秀吉を指すから気を付けてくれ」
ニッコリと、有無を言わせない笑顔にコクコクと赤べこみたいに頷いてしまった。
彼の目が、一瞬、ヤギのような不気味な瞳になったのが怖かった。
「その、失礼なのを承知でお聞きしたいのですが、いいですか?」
「畏まってどうしたんだい?」
「実は私、みなさんのことを覚えていなくて、お名前を聞いても?あと、秀吉さんという方はどこに……」
「あぁ、魔力封印の影響かな。佐助くんから説明なかったかい?」
「一切なかったですねぇ……」
あの野郎、ちゃんと説明しろやボケナス。と怨念を送っていたら、後頭部にバシリ!と痛みが走った。
原理はわからんが、たぶん佐助さんだ。
「僕は竹中半兵衛。このカフェバーの経理をしているよ。彼は石田三成くん。ここで、朝はカフェのマスター、夜はバーテンダーをしてるよ。もう一人、奥でカジノのディーラーを任せてる島左近くんがいるが、少し煩くなるから今度紹介するよ。あとは、昼間だけ後藤又兵衛くんが給仕をしてくれてるよ。それと、体が弱くて別の仕事をしている大谷吉継くんと、ちょっとした罰で肉体労働にまわってもらってる黒田官兵衛くんがいるね」
一気に説明され、とりあえず「わからん」な人たちが多すぎるので、竹中さんと石田さんは覚えておこう。
「それで、秀吉さんは……」
「おや、ずいぶんと秀吉に会いたがってくれるんだね」
「さっき、石田さんが待っていてくれたって聞いたから……。ちゃんと会って挨拶しないとって……」
正直、神様と聞いて内心「っべー。そんな高位の存在後回しにしてたのかよー」と焦っている部分もある。
竹中さんは嬉しそうに「ありがとう」と表情を綻ばせお礼を言う。
「秀吉は体が大きいからね。いきなりだと驚かせると思って、ちょっと待っていてくれたんだ。秀吉、もう出てきて大丈夫だよ」
そう、奥の大きめの扉から世紀末覇者を思わせる大きさの、いかつい男性がでてきた。
大きさ以外は、とても落ち着いた雰囲気で神々しいとも言えよう厳かさだった。
だからか、そんな怖いとは感じなかった。
自然と立ち上がり、ゆっくりと頭を下げ「お久しぶりです」と口にしていた。
「息災ないか、一花」
「は……い?」
息災には、災難ないかという意味も含まれているので、あの家庭環境が災難ではないかと聞かれると即答できず悩んでしまう。
悩んでしまっている間に、竹中さんが「劣悪な家庭環境の中にいたから、息災とは言えないね」と、ニッコー!と私を見て言った。
何で知ってるんだ、あなた。
秀吉さんは、暫し間を置き「その者らには神罰をくだそう。安心せよ」と不穏な過保護を申し出された。
「あ、あの、死なない程度で」
「そうだね。死んだ方がましくらいの方がいいと思うよ」
「竹中さん!」
「おい!一花!秀吉様の発言がまだ終わっていないのに発言をするな!」
べしんっ!とぶっ叩かれ、黙って秀吉さんを見上げれば険しかった表情を崩し、「旺然たるはよきことだ」と言い私の頭を優しく撫でてくれた。
暖かい、気持ちになる。
この大きな手を、私は昔、忘れる前に感じている。
「あ、あの……!私、忘れちゃいましたけど!また、約束しましょう!今度は、守りますから!」
私がそう言えば、秀吉さんは「ならば、次こそは茶会の約束を果たせ」と言った。
「はい!喜んで!」
「じゃあ、一花くん用の着物を仕立てないとね」
「なんて?」
「馬鹿か、貴様は。茶会と言えば、茶湯に決まっているだろ」
「秀吉も見たいだろ?」
竹中さんの問いかけに、秀吉さんも静かに頷いた。
茶道の所作、勉強しなきゃ……!
この奇っ怪な横丁で倒れている人間が本当に人間かと問われると、違うだろうな、となる。
それでも見捨てていくのは忍びなく、近寄り「大丈夫ですか?」と声をかければ微かな声で「血が足りない」と言った気がした。
「血?」
「きさ……ま……人か……」
「えっと……魔女見習いです……」
「なら……好都合だ……。少し血を……わけろ……」
血をわける、とは?と小首を傾げた瞬間だった。
弱りきっていると思っていた男に強く腕を引かれ、血走った目で大きく口を開き鋭い犬歯を私の首筋へとつきたてた。
一瞬、痛みはあったがすぐに甘い痺れへと変わる。
このまま、血をすべて吸われてしまうのかと思ったら、少しだけ吸われただけで牙は抜けベロリと傷口を舐められた。
「貴様の魔力量が多くてさほど飲む必要がなくて助かった。しかし、貴様の魔力どこか……で……貴様!一花か!戻ってきていたのなら、なぜ秀吉様へ挨拶に来なかった!秀吉様がどれほどお待ちしていたと思っている!」
なにやら怒鳴られているが、どうも上手く頭が回らない。
彼の言葉も右から左で、なにを言っているのかまでわからない。
「ちっ!麻酔の所為か!まぁ、いい!どの道、秀吉様の元にお連れするまでだ!」
そう言うや否や肩に私を担ぎ上げ、先ほどまでの弱りきった姿など嘘のような俊足でどこかへと連れ去った。
家を出る時に見た、佐助さんの「ヤバいのはいないから、安心しな~」というアホ面を殴り倒したくなった。
どこがやねん。
私を担いだ男に連れていかれた先のカフェで、全体的に白く儚いゆるふわ白髪ウェーブが素敵な男性によって正気に戻された。
「すまないね、一花くん。せっかく戻ってきたのに、手荒な迎えになってしまったね」
優しいお兄さんに「その上、首筋噛まれて血を吸われました」と、縦に長い犯人を指差せば「しっかり治してただろう!血も最低限しか吸っていない!」とキレられた。
お兄さんに差し出された手鏡で確認すれば、確かに点程度しか傷はなかった。
「吸血鬼の唾液には治癒作用があるんだ」
「へー。でも乙女の肌に傷をつけたことに対しては謝罪すべきだと思います」
「ぐっ……!貴様!可愛げとやらがなくなってるぞ!」
「なんかそれ、どっかのすかした猿にも言われましたね」
そう、あのへらへらした顔を思い浮かべたのだが、「秀吉様を侮辱するつもりか、貴様!」と座っている私の頭を鷲掴んだ。
この吸血鬼、血よりカルシウムとった方がよいのでは?
美貌のお兄さんが愉快そうに、「たぶん、佐助くんのことだよ。三成くん」と止めてくれる。
「いまも、彼の世話になっているんだろう?」
「はい、不本意ながら」
「なら仕方ないけど、僕らの中で“猿”と言えば猿神である秀吉を指すから気を付けてくれ」
ニッコリと、有無を言わせない笑顔にコクコクと赤べこみたいに頷いてしまった。
彼の目が、一瞬、ヤギのような不気味な瞳になったのが怖かった。
「その、失礼なのを承知でお聞きしたいのですが、いいですか?」
「畏まってどうしたんだい?」
「実は私、みなさんのことを覚えていなくて、お名前を聞いても?あと、秀吉さんという方はどこに……」
「あぁ、魔力封印の影響かな。佐助くんから説明なかったかい?」
「一切なかったですねぇ……」
あの野郎、ちゃんと説明しろやボケナス。と怨念を送っていたら、後頭部にバシリ!と痛みが走った。
原理はわからんが、たぶん佐助さんだ。
「僕は竹中半兵衛。このカフェバーの経理をしているよ。彼は石田三成くん。ここで、朝はカフェのマスター、夜はバーテンダーをしてるよ。もう一人、奥でカジノのディーラーを任せてる島左近くんがいるが、少し煩くなるから今度紹介するよ。あとは、昼間だけ後藤又兵衛くんが給仕をしてくれてるよ。それと、体が弱くて別の仕事をしている大谷吉継くんと、ちょっとした罰で肉体労働にまわってもらってる黒田官兵衛くんがいるね」
一気に説明され、とりあえず「わからん」な人たちが多すぎるので、竹中さんと石田さんは覚えておこう。
「それで、秀吉さんは……」
「おや、ずいぶんと秀吉に会いたがってくれるんだね」
「さっき、石田さんが待っていてくれたって聞いたから……。ちゃんと会って挨拶しないとって……」
正直、神様と聞いて内心「っべー。そんな高位の存在後回しにしてたのかよー」と焦っている部分もある。
竹中さんは嬉しそうに「ありがとう」と表情を綻ばせお礼を言う。
「秀吉は体が大きいからね。いきなりだと驚かせると思って、ちょっと待っていてくれたんだ。秀吉、もう出てきて大丈夫だよ」
そう、奥の大きめの扉から世紀末覇者を思わせる大きさの、いかつい男性がでてきた。
大きさ以外は、とても落ち着いた雰囲気で神々しいとも言えよう厳かさだった。
だからか、そんな怖いとは感じなかった。
自然と立ち上がり、ゆっくりと頭を下げ「お久しぶりです」と口にしていた。
「息災ないか、一花」
「は……い?」
息災には、災難ないかという意味も含まれているので、あの家庭環境が災難ではないかと聞かれると即答できず悩んでしまう。
悩んでしまっている間に、竹中さんが「劣悪な家庭環境の中にいたから、息災とは言えないね」と、ニッコー!と私を見て言った。
何で知ってるんだ、あなた。
秀吉さんは、暫し間を置き「その者らには神罰をくだそう。安心せよ」と不穏な過保護を申し出された。
「あ、あの、死なない程度で」
「そうだね。死んだ方がましくらいの方がいいと思うよ」
「竹中さん!」
「おい!一花!秀吉様の発言がまだ終わっていないのに発言をするな!」
べしんっ!とぶっ叩かれ、黙って秀吉さんを見上げれば険しかった表情を崩し、「旺然たるはよきことだ」と言い私の頭を優しく撫でてくれた。
暖かい、気持ちになる。
この大きな手を、私は昔、忘れる前に感じている。
「あ、あの……!私、忘れちゃいましたけど!また、約束しましょう!今度は、守りますから!」
私がそう言えば、秀吉さんは「ならば、次こそは茶会の約束を果たせ」と言った。
「はい!喜んで!」
「じゃあ、一花くん用の着物を仕立てないとね」
「なんて?」
「馬鹿か、貴様は。茶会と言えば、茶湯に決まっているだろ」
「秀吉も見たいだろ?」
竹中さんの問いかけに、秀吉さんも静かに頷いた。
茶道の所作、勉強しなきゃ……!