婆娑羅横丁
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呻く隻眼の男性、伊達さんをソファーに横たわらせ、右目の旦那、片倉さんにお茶とクッキーを差し出す。
「あの、この度は本当に申し訳ありませんでした……」
「気にするな。まだ、不慣れなんだろ?不慮の事故だ」
「そうそう、気にしない気にしない」
「お前は頭上不注意で反省しろ!」
片倉さんのどすの効いた怒鳴り声に「やだー。こわーい」と一切怖がった様子のない佐助さん。
佐助さんに代わりもう一度、片倉さんに謝罪をする。
師の非礼は弟子の不始末でもある。
「Ah……ここは……?」
気だるげな声をあげ、伊達さんが上体を起こした。
「あ、おはようございます。その、お体大丈夫ですか?」
ソファーの側に腰を下ろし伊達さんの表情を窺うと、そっと私の頬に手を添わせ「ここはheavenか?オレにmuseが微笑んでる……」とうっとりとした表情で言った。
「やばい、打ち所が悪かったのかも知れない」
「その異常は通常装備だから心配しなくてもいいよ、一花」
佐助さんの言葉に伊達さんが「誰がabnormalだ」と低い声で返すも、佐助さんには効かない様で「あんたの事だよ、脳味噌ハピネス男」と反撃は続く。
「Ha!否定はしねえ!オレはアンタと違って毎日が楽しいからな!」
「ざーんねん。俺様の所にはハッピーの塊である一花がいるんでーす」
「ちょっとやめてくださいよ。私が脳味噌お花畑みたいな言い方」
巻き込み事故に会い思わず否定する。
「まあ、いい。一花、久しぶりだな。オレの事、覚えてるか?」
先程までの凶悪な表情から一変して、慈しむ様な表情で問いかけられたが、申し訳ない事に何も覚えていない事を伝えると一瞬寂しそうな顔をするも直ぐに綺麗に微笑み「いい。また、ゆっくり関係を築けば」と言った。
「昔話をすると、アンタは子供の時にオレと婚姻を結ぶって約束したんだぜ?」
おいおい、子供の時の私。
不用意に約束事をし過ぎではないか?
しかも、婚姻って……。
「婚姻届だってある。オレと、小十郎の分だ。見せてやれ」
「はっ」
そういい、片倉さんが二枚の古びた紙を取り出した。
そこには、拙い字で「だてまさむねさんとけっこんします」「かたくらこじゅうろうさんとけっこんします」と書かれ、最後に名前と判が押されていた。
後ろで「我が弟子ながら尻が軽いわー」と言いながら佐助さんが笑った。
「あの、その、これは有効なんですか……?」
恐々と聞くと、伊達さんは悪い顔をして「有効だ」と言った。
「口約束、幼い頃の約束であろうと、それら全ては神と成した契約。必ず果たしてもらうのが常だ」
「そして、残念ながらこの人達は竜神とその眷属なんだよね」
片倉さんの重い言葉に顔から血の気が下がるのを感じ、にこにことその様子を楽しそうに眺める佐助さんへ必死に救難信号を送るも逆に面白がらせるだけだった。
「安心しろ。覚えてねえ約束を守らせるつもりはねえ」
「だ、伊達さん……」
「アンタの気が向いたら、また申し込んでくれればいい。さて、長居しちまったな。行くぞ、小十郎」
「はい。一花、菓子美味かったぜ。また来る」
「ありがとうございます」
「右目の旦那一人なら大歓迎だよ」
帰って行く二人に深く礼をし、遠ざかって行くのを確認しながら佐助さんに「……佐助さん。私、あと幾つくらいここの人達と約束事してます?」と尋ねると、佐助さんは考える間もなく「たくさん」と言った。
「風来坊とは花見をしよう、雪ん子とは雪合戦しよう、真田の旦那とは槍の稽古をつけてもらう、勝家とは怪談をしよう、徳川とは香合わせしようとか。色々。色々約束して、一花はいなくなった。ここの住人、みんなに愛されて育ってたんだよ、一花は」
愛されていた、その言葉が胸に胸に突き刺さり、じんわりと幸せの色へと変わっていった。
「あの、この度は本当に申し訳ありませんでした……」
「気にするな。まだ、不慣れなんだろ?不慮の事故だ」
「そうそう、気にしない気にしない」
「お前は頭上不注意で反省しろ!」
片倉さんのどすの効いた怒鳴り声に「やだー。こわーい」と一切怖がった様子のない佐助さん。
佐助さんに代わりもう一度、片倉さんに謝罪をする。
師の非礼は弟子の不始末でもある。
「Ah……ここは……?」
気だるげな声をあげ、伊達さんが上体を起こした。
「あ、おはようございます。その、お体大丈夫ですか?」
ソファーの側に腰を下ろし伊達さんの表情を窺うと、そっと私の頬に手を添わせ「ここはheavenか?オレにmuseが微笑んでる……」とうっとりとした表情で言った。
「やばい、打ち所が悪かったのかも知れない」
「その異常は通常装備だから心配しなくてもいいよ、一花」
佐助さんの言葉に伊達さんが「誰がabnormalだ」と低い声で返すも、佐助さんには効かない様で「あんたの事だよ、脳味噌ハピネス男」と反撃は続く。
「Ha!否定はしねえ!オレはアンタと違って毎日が楽しいからな!」
「ざーんねん。俺様の所にはハッピーの塊である一花がいるんでーす」
「ちょっとやめてくださいよ。私が脳味噌お花畑みたいな言い方」
巻き込み事故に会い思わず否定する。
「まあ、いい。一花、久しぶりだな。オレの事、覚えてるか?」
先程までの凶悪な表情から一変して、慈しむ様な表情で問いかけられたが、申し訳ない事に何も覚えていない事を伝えると一瞬寂しそうな顔をするも直ぐに綺麗に微笑み「いい。また、ゆっくり関係を築けば」と言った。
「昔話をすると、アンタは子供の時にオレと婚姻を結ぶって約束したんだぜ?」
おいおい、子供の時の私。
不用意に約束事をし過ぎではないか?
しかも、婚姻って……。
「婚姻届だってある。オレと、小十郎の分だ。見せてやれ」
「はっ」
そういい、片倉さんが二枚の古びた紙を取り出した。
そこには、拙い字で「だてまさむねさんとけっこんします」「かたくらこじゅうろうさんとけっこんします」と書かれ、最後に名前と判が押されていた。
後ろで「我が弟子ながら尻が軽いわー」と言いながら佐助さんが笑った。
「あの、その、これは有効なんですか……?」
恐々と聞くと、伊達さんは悪い顔をして「有効だ」と言った。
「口約束、幼い頃の約束であろうと、それら全ては神と成した契約。必ず果たしてもらうのが常だ」
「そして、残念ながらこの人達は竜神とその眷属なんだよね」
片倉さんの重い言葉に顔から血の気が下がるのを感じ、にこにことその様子を楽しそうに眺める佐助さんへ必死に救難信号を送るも逆に面白がらせるだけだった。
「安心しろ。覚えてねえ約束を守らせるつもりはねえ」
「だ、伊達さん……」
「アンタの気が向いたら、また申し込んでくれればいい。さて、長居しちまったな。行くぞ、小十郎」
「はい。一花、菓子美味かったぜ。また来る」
「ありがとうございます」
「右目の旦那一人なら大歓迎だよ」
帰って行く二人に深く礼をし、遠ざかって行くのを確認しながら佐助さんに「……佐助さん。私、あと幾つくらいここの人達と約束事してます?」と尋ねると、佐助さんは考える間もなく「たくさん」と言った。
「風来坊とは花見をしよう、雪ん子とは雪合戦しよう、真田の旦那とは槍の稽古をつけてもらう、勝家とは怪談をしよう、徳川とは香合わせしようとか。色々。色々約束して、一花はいなくなった。ここの住人、みんなに愛されて育ってたんだよ、一花は」
愛されていた、その言葉が胸に胸に突き刺さり、じんわりと幸せの色へと変わっていった。