婆娑羅横丁
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昨日は三成さんの吸血行為で、散々な目にあった。
帰ってから佐助さんに話したら、「吸血鬼の歯には麻酔効果があるんだよ。覚えておきな」と言われ、思わず「蚊……」と呟いたら佐助さんと遊びに来ていた政宗さんが盛大に笑いだし、幸村さんの「言い得て妙……!」というセリフで笑いを加速させていた。
あの小十郎さんすら、ちょっと笑っていた。
そんな爆笑ヒットパレード飛ばしたつもりはないのだけれど……。
「一花も飛行術上手くなったし、学校に飛んで行ったら?」
「いいんですか?」
「バレなきゃいいんじゃない?」
そんな、無許可自転車通学をする学生みたいなノリでやっていい事なの?
「因みに、バレるとなにかありますか?」
「カエルになる」
「やめておきます」
なにそのピリカピリララポポリナペペルトな罰。
絶対に嫌だと首を振る私に、佐助さんはしれっと「まあ、嘘だけど」と言い出したから、本当にこいつは息をするように嘘をつくよな。
「別になにかあるわけじゃないよ。そもそも、人が空飛んでたなんて現代社会人は普通信じないでしょ」
けらけらと笑う佐助さんだが、突然口元だけの笑みを浮かべ「まあ、見つからないようにはしてね」と言われ、やはりバレたらなにかしらの制裁があるのではなかろうか。
未だに佐助さんの感情が読めない。
それでも、佐助さんの飛行許可が下りたのでふわふわと空中登校をし、前日に鍵を壊しておいた屋上へと降り立つ。
因みに、このバレない鍵の壊し方は佐助さんから伝授された。
魔法での開け方とかピッキングのやり方を聞いたが、「まだ早い」と言われて教えてもらえなかった。
屋上なんて、不良の溜まり場というイメージしかなかったが、中々素敵な風景が広がっている。
鍵も壊したし、立ち入り禁止の屋上にも入った。
「不良デビュー?」
なんて冗談に自分で笑いながら、教室に行こうと振り向いたら、レモン牛乳の紙パックを持った銀髪眼帯制服気崩しアクセサリーじゃらじゃらな本物の不良がポカン、とした顔で立っていた。
脳内佐助さんが、あの口元だけの笑みで「見つからないようにって言わなかった?」と聞いてきた。
なにか、なにか誤魔化さないと……。
「……イッツ・マジック!」
「マジかよ!」
私の苦し紛れの嘘に騙されてくれた!チョロい!と思ったのに、「て、んなわけねえだろ!」と突っ込まれた。
だよね。
「いま、絶対に空飛んでただろ!」
「飛んでない、飛んでない!」
「俺は見たぞ!」
「眼科か脳外科に行こう!」
「病気じゃねえ!」
屈強な不良に詰め寄られ、ホウキ片手にジリジリぐるぐると逃げ回る。
もう、誤魔化しはきかないと腹を括るしかないと覚悟を決め、「実は私、魔女なんですよ」と言えば「すげー!」とキラキラした顔で喜ばれた。
そこは信じるの?!
「他にもなにかできんのか?!」
「い、いや、まだ見習いで飛ぶ事しか……」
「じゃあ、これから色々できるようになるんだな!いいじゃねえか!お前、名前とクラスは!」
「い、一年二組、椎名一花……です……」
「俺様は一年四組、長曾我部元親よ!覚えときな!」
なんで?面は覚えたぜ!という意味で?
なんちゃって不良デビューした私とは格の違う不良力の長曾我部さんに戦き、なんとか逃げられないかと思うが恐怖で動けない。
先ほどから、長曾我部さんはなにやら悪役笑顔を浮かべていらっしゃる。
ジリジリと距離を詰められ、なにをされるんだと怯える私の前に、長曾我部さんはズボンで手を拭き「握手してくれねえかな」と照れながら言う。
「実は、昔から魔法使いとかライダーとか好きでよぉ。記念に、握手できないか?」
この人……ピュアだ……。
照れ照れする長曾我部さんの大きくて武骨な手を自分の小さな手で握れば、ぱっ!と笑顔になりふわっ、と優しく握り返してきた。
見た目に反して優しい、この人。
「やっぱり、秘密なんだろ?」
「はい、まあ……」
「安心しろ!海の男は口が固い!絶対に言わねえ!」
ぱぁ!と輝く笑顔に、ここ最近キャラが苛烈な人たちばかりと触れあっていたので、屈強な不良少年に言うべきではないだろうが、とても癒される。
私の中で不良怖いという感想が一瞬で吹き飛んでいると、長曾我部さんは「話さねえし、普段は話しかけねえから、よかったらまたここで魔法見せてくれねえか?」ハニカミ笑いが素敵な長曾我部さんのお願いに、全力で頷けば嬉しそうに「約束だぜ!」と言われた。
これは仲良くなれる。
「あの、私から話しかけるのはいいですか?」
「いや、構わねえけど……。見ての通り、俺は教師ウケが悪いぜ?」
「私も別にいいわけじゃないですし。その、最近ちょっと疲れる感じの人と付き合っているので、長曾我部さんで一息つきたいなって思ったのですが……」
「ははっ!箸休めか!構わねえさ!なら、その畏まった話し方はやめようぜ。元親でいい」
「元親くん」
「やめろ!むず痒くてしょうがねえ!」
むず痒いと言うよりも恥ずかしいのか、耳を赤く染めて「元親だ!」と主張してくるので「元親」と呼べば、闊達な笑顔で「おう!」と返事をされるが、どうも今度は私が恥ずかしくて仕方がない。
元親とは、その日はそれで終わりだったが私の中では癒しエネルギーが充電され、気持ち浮き足だって横丁に足を踏み入れた瞬間だった。
「焼け焦げよ!」
「うわぁ!」
強烈な熱光線をギリギリで避ければ、薄緑色の着物に薄黄色のフェイスヴェールをした細身の男性が目をつり上げ、大きな輪の形をした刃物を振り上げていた。
新しいドきついキャラ来たなぁ。
「あの粗暴な鬼の気配を持ち込むとは、どういう了見か説明せよ!一花!」
「粗暴な鬼?」
合点がいかず聞き返した私に、男性は「しらを切る気か!」と、刃物を振り上げるとそこに光が集まり出した。
佐助さんの、「命にかかわるようなヤバいやつはいないよ~」というユルい笑みを思い出し、マジであいつの大丈夫は金輪際信用しないと心に誓ったが、次が私にあるのだろうか。
あれは当たったら死ぬ。
照射された瞬間、力強く固いなにかにその場から移動させられ、気が付いた時には私がいた場所は黒く焦げていた。
「よくやった、忠勝!」
家康さんの言葉に、私を助けてくれた忠勝さんという方は駆動音を鳴らし返事をした。
「ロボ?」
「違う!わしと同じ狸だ!」
ほら、茶色いだろ!と装甲の色を指摘しているが、こんな角角した固い狸が世にいるのだろうか。
あと、あの角は鹿では……?
角に視線が釘付けの私に、家康さんは「そういう狸もいるんだ!」と言うがいてたまるか。
「それより、元就!少し落ち着け!なにがあったんだ!」
「そこの痴れ者が、あの鬼の気配を持ち帰った。故に滅却処分をしたまでよ!」
「鬼……?」
首をかしげながら、家康さんはくんくんと私の匂いを嗅ぐと「元親の匂いじゃないか!」と嬉しそうにしたが、すぐに驚いた顔になった。
元親って、あの私の癒しである元親?
「おかしいな。元親はずいぶん昔に人と交わって亡くなったはずだが」
「ふんっ、どうせ生まれ変わったのであろう。奴が死んでから、三百年は経っている」
匂いだか気配たかがついた私を滅却処分しようとするレベルで嫌いな相手の命日数えてるんだな、この人。
などと暢気に考えていたら、また光を集めだしたので「すぐにお風呂入りますから!」と言えば、舌打ちをひとつして、刃物をどこかに消し「早々に、その汗と磯の混じった不快な臭いを落とせ」と袖を口元にあて吐き捨てる様に言い、男性は行ってしまった。
「私のことではないにしろ、私が臭いと言われたみたいで……うっ……」
「大丈夫だ。一花はいい匂いだ!な、忠勝?」
家康さんの問いかけに、忠勝さんはまたも駆動音で返事をする。
ありがとうございます。
「さっきのはな、太陽神の使いの毛利元就だ。元親とは昔、少しだけ仲が悪くてだな」
「少し仲が悪いレベルのキレ方じゃないですよね?」
「普段は、口は悪いが物静かな男だから安心してくれ」
口が悪い時点で安心もなにもないんですけど。
「けど、あの元親が鬼……。人間だと思ったのに……」
遠い目をしながら言う私に、「生まれ変わりだから、人間だろう」と家康さんが訂正を入れた。
「先祖返りで匂いや気配が濃いだけだろうさ。ワシの代わりに、変わらず人間として付き合ってくれ」
「代わり?」
「元親とワシは、生前親友だったんだ」
そう言い、昔を思い出したのか懐かしそうに目を細めて柔らかく微笑んだ家康さん。
亡くなったあとも思い出せてこんな表情をできるなんて、本当に仲がよかったのだろう。
私も元親と、そんな風に仲良くなれるだろうか。
帰ってから佐助さんに話したら、「吸血鬼の歯には麻酔効果があるんだよ。覚えておきな」と言われ、思わず「蚊……」と呟いたら佐助さんと遊びに来ていた政宗さんが盛大に笑いだし、幸村さんの「言い得て妙……!」というセリフで笑いを加速させていた。
あの小十郎さんすら、ちょっと笑っていた。
そんな爆笑ヒットパレード飛ばしたつもりはないのだけれど……。
「一花も飛行術上手くなったし、学校に飛んで行ったら?」
「いいんですか?」
「バレなきゃいいんじゃない?」
そんな、無許可自転車通学をする学生みたいなノリでやっていい事なの?
「因みに、バレるとなにかありますか?」
「カエルになる」
「やめておきます」
なにそのピリカピリララポポリナペペルトな罰。
絶対に嫌だと首を振る私に、佐助さんはしれっと「まあ、嘘だけど」と言い出したから、本当にこいつは息をするように嘘をつくよな。
「別になにかあるわけじゃないよ。そもそも、人が空飛んでたなんて現代社会人は普通信じないでしょ」
けらけらと笑う佐助さんだが、突然口元だけの笑みを浮かべ「まあ、見つからないようにはしてね」と言われ、やはりバレたらなにかしらの制裁があるのではなかろうか。
未だに佐助さんの感情が読めない。
それでも、佐助さんの飛行許可が下りたのでふわふわと空中登校をし、前日に鍵を壊しておいた屋上へと降り立つ。
因みに、このバレない鍵の壊し方は佐助さんから伝授された。
魔法での開け方とかピッキングのやり方を聞いたが、「まだ早い」と言われて教えてもらえなかった。
屋上なんて、不良の溜まり場というイメージしかなかったが、中々素敵な風景が広がっている。
鍵も壊したし、立ち入り禁止の屋上にも入った。
「不良デビュー?」
なんて冗談に自分で笑いながら、教室に行こうと振り向いたら、レモン牛乳の紙パックを持った銀髪眼帯制服気崩しアクセサリーじゃらじゃらな本物の不良がポカン、とした顔で立っていた。
脳内佐助さんが、あの口元だけの笑みで「見つからないようにって言わなかった?」と聞いてきた。
なにか、なにか誤魔化さないと……。
「……イッツ・マジック!」
「マジかよ!」
私の苦し紛れの嘘に騙されてくれた!チョロい!と思ったのに、「て、んなわけねえだろ!」と突っ込まれた。
だよね。
「いま、絶対に空飛んでただろ!」
「飛んでない、飛んでない!」
「俺は見たぞ!」
「眼科か脳外科に行こう!」
「病気じゃねえ!」
屈強な不良に詰め寄られ、ホウキ片手にジリジリぐるぐると逃げ回る。
もう、誤魔化しはきかないと腹を括るしかないと覚悟を決め、「実は私、魔女なんですよ」と言えば「すげー!」とキラキラした顔で喜ばれた。
そこは信じるの?!
「他にもなにかできんのか?!」
「い、いや、まだ見習いで飛ぶ事しか……」
「じゃあ、これから色々できるようになるんだな!いいじゃねえか!お前、名前とクラスは!」
「い、一年二組、椎名一花……です……」
「俺様は一年四組、長曾我部元親よ!覚えときな!」
なんで?面は覚えたぜ!という意味で?
なんちゃって不良デビューした私とは格の違う不良力の長曾我部さんに戦き、なんとか逃げられないかと思うが恐怖で動けない。
先ほどから、長曾我部さんはなにやら悪役笑顔を浮かべていらっしゃる。
ジリジリと距離を詰められ、なにをされるんだと怯える私の前に、長曾我部さんはズボンで手を拭き「握手してくれねえかな」と照れながら言う。
「実は、昔から魔法使いとかライダーとか好きでよぉ。記念に、握手できないか?」
この人……ピュアだ……。
照れ照れする長曾我部さんの大きくて武骨な手を自分の小さな手で握れば、ぱっ!と笑顔になりふわっ、と優しく握り返してきた。
見た目に反して優しい、この人。
「やっぱり、秘密なんだろ?」
「はい、まあ……」
「安心しろ!海の男は口が固い!絶対に言わねえ!」
ぱぁ!と輝く笑顔に、ここ最近キャラが苛烈な人たちばかりと触れあっていたので、屈強な不良少年に言うべきではないだろうが、とても癒される。
私の中で不良怖いという感想が一瞬で吹き飛んでいると、長曾我部さんは「話さねえし、普段は話しかけねえから、よかったらまたここで魔法見せてくれねえか?」ハニカミ笑いが素敵な長曾我部さんのお願いに、全力で頷けば嬉しそうに「約束だぜ!」と言われた。
これは仲良くなれる。
「あの、私から話しかけるのはいいですか?」
「いや、構わねえけど……。見ての通り、俺は教師ウケが悪いぜ?」
「私も別にいいわけじゃないですし。その、最近ちょっと疲れる感じの人と付き合っているので、長曾我部さんで一息つきたいなって思ったのですが……」
「ははっ!箸休めか!構わねえさ!なら、その畏まった話し方はやめようぜ。元親でいい」
「元親くん」
「やめろ!むず痒くてしょうがねえ!」
むず痒いと言うよりも恥ずかしいのか、耳を赤く染めて「元親だ!」と主張してくるので「元親」と呼べば、闊達な笑顔で「おう!」と返事をされるが、どうも今度は私が恥ずかしくて仕方がない。
元親とは、その日はそれで終わりだったが私の中では癒しエネルギーが充電され、気持ち浮き足だって横丁に足を踏み入れた瞬間だった。
「焼け焦げよ!」
「うわぁ!」
強烈な熱光線をギリギリで避ければ、薄緑色の着物に薄黄色のフェイスヴェールをした細身の男性が目をつり上げ、大きな輪の形をした刃物を振り上げていた。
新しいドきついキャラ来たなぁ。
「あの粗暴な鬼の気配を持ち込むとは、どういう了見か説明せよ!一花!」
「粗暴な鬼?」
合点がいかず聞き返した私に、男性は「しらを切る気か!」と、刃物を振り上げるとそこに光が集まり出した。
佐助さんの、「命にかかわるようなヤバいやつはいないよ~」というユルい笑みを思い出し、マジであいつの大丈夫は金輪際信用しないと心に誓ったが、次が私にあるのだろうか。
あれは当たったら死ぬ。
照射された瞬間、力強く固いなにかにその場から移動させられ、気が付いた時には私がいた場所は黒く焦げていた。
「よくやった、忠勝!」
家康さんの言葉に、私を助けてくれた忠勝さんという方は駆動音を鳴らし返事をした。
「ロボ?」
「違う!わしと同じ狸だ!」
ほら、茶色いだろ!と装甲の色を指摘しているが、こんな角角した固い狸が世にいるのだろうか。
あと、あの角は鹿では……?
角に視線が釘付けの私に、家康さんは「そういう狸もいるんだ!」と言うがいてたまるか。
「それより、元就!少し落ち着け!なにがあったんだ!」
「そこの痴れ者が、あの鬼の気配を持ち帰った。故に滅却処分をしたまでよ!」
「鬼……?」
首をかしげながら、家康さんはくんくんと私の匂いを嗅ぐと「元親の匂いじゃないか!」と嬉しそうにしたが、すぐに驚いた顔になった。
元親って、あの私の癒しである元親?
「おかしいな。元親はずいぶん昔に人と交わって亡くなったはずだが」
「ふんっ、どうせ生まれ変わったのであろう。奴が死んでから、三百年は経っている」
匂いだか気配たかがついた私を滅却処分しようとするレベルで嫌いな相手の命日数えてるんだな、この人。
などと暢気に考えていたら、また光を集めだしたので「すぐにお風呂入りますから!」と言えば、舌打ちをひとつして、刃物をどこかに消し「早々に、その汗と磯の混じった不快な臭いを落とせ」と袖を口元にあて吐き捨てる様に言い、男性は行ってしまった。
「私のことではないにしろ、私が臭いと言われたみたいで……うっ……」
「大丈夫だ。一花はいい匂いだ!な、忠勝?」
家康さんの問いかけに、忠勝さんはまたも駆動音で返事をする。
ありがとうございます。
「さっきのはな、太陽神の使いの毛利元就だ。元親とは昔、少しだけ仲が悪くてだな」
「少し仲が悪いレベルのキレ方じゃないですよね?」
「普段は、口は悪いが物静かな男だから安心してくれ」
口が悪い時点で安心もなにもないんですけど。
「けど、あの元親が鬼……。人間だと思ったのに……」
遠い目をしながら言う私に、「生まれ変わりだから、人間だろう」と家康さんが訂正を入れた。
「先祖返りで匂いや気配が濃いだけだろうさ。ワシの代わりに、変わらず人間として付き合ってくれ」
「代わり?」
「元親とワシは、生前親友だったんだ」
そう言い、昔を思い出したのか懐かしそうに目を細めて柔らかく微笑んだ家康さん。
亡くなったあとも思い出せてこんな表情をできるなんて、本当に仲がよかったのだろう。
私も元親と、そんな風に仲良くなれるだろうか。
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