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リーグ専任のカウンセラーの質問に「大丈夫だ、問題ないぞ!」と答えると、「さすがチャンピオンです」と言われた。
そうだ、俺はチャンピオンだから弱音なんて吐いていられないんだ。
だから、立ち止まらない、振り返らない、大丈夫だからと言い聞かせて歩いていてるのに、一人、俺の強がりを見抜いて突き飛ばして膝をつかせる人間がいる。
「よっす、元気?」
「帰ってくれ」
インターホンの画面いっぱいに映った件の女性に告げインターホンを切るが、怒濤のチャイム連打をされ致し方なくまた出れば青筋浮かべて笑う彼女が再度映る。
「切るな、ダンデ」
「カタバミ……。すまないが、今日は帰ってくれないか?」
「やーだね。ダンデがそういうことを言う時は、絶対に放置したらいけない時じゃん」
付き合いが長いと、本当に気がついてほしくない部分に気がつかれてしまう。
キバナやソニアに隠せても、彼女には会ってもいないのにすぐバレるのは、カウンセラーという職業柄なのかも知れないがそれだけではない気もする。
カタバミの粘りだしたらそう簡単には諦めない質は理解しているので、渋々迎え入れれば両手のエコバッグいっぱいに食材やワインを持っていた。
「用意がいいな」
「まぁねぇ?褒めてくれていいのよ」
そんな軽口を叩き中に入ろうとするカタバミの進行方向に立ち塞がり、もう一度「今日は、帰ってほしい」と伝えたが、返事はやはり「いやよ」だった。
「そんな今にも泣き崩れそうな友達を放っておけるわけないでしょ。私がここで帰ったら、あんたまた一人で抱え込むつもりでしょ」
「俺は大丈夫だ」
「目の下に隈作って空元気してる人間が、どの口で大丈夫だなんて言ってるのよ」
「大丈夫ったら、大丈夫なんだ!放っといてくれ!」
力任せに壁を叩いてしまい、正気に戻りカタバミに謝ろうとしたが、怯える様子もなく俺を見つめていた。
「大丈夫って言う人ほど大丈夫じゃないのよ、ダンデ。別に悩みを話せなんて言わないけど、せめて食事はとって。やつれてるじゃない……」
エコバッグを置き心配そうな顔で俺の頬に触ろうとしたのでときめいたのに、流れる動作で絞め落とされた。
そうだな、カタバミはそういう女性だったな。
ここ最近の寝不足もあったのか久しぶりに夢も見ずに深く寝ていたが、喉の乾きと空腹をおぼえ目を覚ませばきっちりベッドに寝かされていた。
毎度のことの様に、カタバミに担がれてここまで運ばれたのかと思うと、何度経験しても男としてのプライドが削られるな。
フラフラと部屋から出れば、ワイン片手にダラダラと我が家の様に映画を観ているカタバミ。
俺の家だよな?
「おはよー」
「おはよう……。相変わらずの寛ぎっぷりだな」
「何度も来てるしね。食事あっためるね」
「いや、あまり食欲がなくて……」
断ろうとするも、怖い顔と低い声で「あ?なんか言ったか?」と言われてしまい、「頂きます」としか言えない状況になった。
未だに、一緒にジムチャレンジしていた時の不良さながらの柄の悪さが時折見せられると反射的に従ってしまう。
いや、暴力的で怖いとかではなく、母親に絶対逆らえない気持ちに近い。
カタバミの料理は好きだが、空腹ではあるが食欲のない状態で完食できるか不安だ。
抵抗すればアイアンクローの刑なので席につけば、目の前に見慣れない料理がどんどん並べられていく。
「どこの料理だ?」
「カブさんの故郷の料理。胃に優しいらしいから、食べられると思うよ」
何気なく発せられた言葉に、「俺のためか?」と聞けば一瞬だけ動きを止め「私がわざわざ人の為に、他人に教えを乞うとでも?」と、馬鹿馬鹿しいといった態度をとるが。
「あぁ、思うよ。カタバミは昔から優しいから、いつもそうやって気遣ってくれる」
「強めの幻覚みてんじゃないの?」
「照れると悪い態度をとる所も変わらないな」
「早く食べろ!」
顔を真っ赤にしながら、最後に透明なスープを俺とカタバミの前に置いて着席した。
こうして同じ食卓で家族以外と「頂きます」と一緒に言うのは、なんだか恥ずかしくも嬉しくある。
透明なスープを少量口に含めば、体からゆっくりとあったまっていく優しい味だった。
「食べられそう?」
「あぁ、食べられそうだ」
「そう、ならよかった」
それ以上はなにも聞かず、黙々と食べるカタバミとの時間はやはり落ち着く。
ささくれだった感情が、ゆっくり、ゆっくりとなだらかになってきて、漸くぼろりと涙がこぼれ「疲れた」と無意識に口にしていた。
「うん、がんばってるよ。お疲れ様」
ただ、それだけ。
チャンピオンに対してではなく、ダンデという一個人にかけられた労いの言葉に、みっともなくも涙が止まらない。
こうなるから、カタバミには会いたくないんだ。
弱って立つのも苦しい時に現れては、お疲れ様の一言で完全に気を抜かせにくる。
そのあとは、「側にいようか?」と分かりきっていることを聞いてくるんだ。
「側に……いてくれ……」
なんとか笑顔を作ったつもりだが、いつもの様に笑えている気がしない。
そんなことも気にせず、カタバミは「ご飯とりあえず食べよう」と促す。
だされた料理はどれも優しい味で、最近まともな食べ物を入れていなかった胃に染み渡り、突如として食欲が戻ってきた。
「カタバミ……おかわり……」
「いきなりそんな大量にお腹に入れたら、お腹がびっくりするから、だぁめ」
却下されてしょんぼりしたら、「まだ作り置きあるから、明日食べな」と言われたが、そうではないんだ。
「カタバミと食べたい……」
「なら明日も来る」
なんの迷いもなく言ってくれたことが嬉しくて、今度は心から笑えた気がする。
食器を洗うカタバミの背後から抱きつき、変わらず止まらない涙を流しながら「すまない、こんなカッコ悪い姿を見せた上に甘えて」と謝るも、「別に心配だっから来ただけで、カッコいい姿が見たいわけじゃない」と切り返された。
「食事、美味しかった」
「よかった。昨日デートドタキャンされたストレス発散で作ってたから、ちょっと味付けに雑念が出てたらどうしようかと思った」
カタバミはストレスを料理で発散するタイプの人間で、その度にキバナとソニアとネズでご相伴に与っている。
まぁ、大抵のストレスの理由が男にフラれるなのだが、原因は俺とキバナとネズにあるのはヒミツだ。
カタバミを俺たちから奪っていくのだから、俺たちを倒す気概を見せてくれと秘密裏に相手の男に言っているだけなのだが、未だに気概を見せてくれる男がいない。
別に、カタバミがとられるのが嫌とかではない。
全然、いや、本当に……。
「嫌だぁ……」
「話の繋がりがわからないわ」
「うっ……すまない……。じゃあ、昨日も料理してたのか……?」
「昨日は、キバナとソニアとネズと一緒に飲んで誤魔化した。ダンデも誘ったのに電話出ないんだもん」
そういえば最近、夜は電源を切っていたし通知も流し見だったなと思い出し確認すれば、確かにネズ以外から何度か電話が来ていた。
「まぁ、それで勘づいて今日来たんだけどね。キバナも、最近ちょっと様子がおかしいから見に行ってほしいって言ってたし。たっく、心配なら自分で行けよって話だよ」
「キバナの判断が正しいな……。キバナはカタバミほど気も長くないし、心の隙間に入るのも上手くない」
「私は詐欺師か」
「キバナが来たら、たぶん殴り合いになってた。俺が絶対に弱味を話さなくてキバナがイライラして、俺も自分が制御できなくて。だから、カタバミが来てくれてよかった」
追い返してすまない、ありがとう。そう言ってカタバミを抱き締めれば「気にしてない」と優しい言葉が返ってくるのが心地いい。
「カタバミはもう少し、俺たちがカタバミ離れできない原因を理解すべきだな」
「私が原因ってかぁ?」
「甘やかすからだー」
「別に甘やかしちゃいないっていうか、元気になってない?」
「美味しい食事と優しい友人のおかげだぞ」
ぐりぐりとカタバミの頭に頬擦りをしたら、「やめろ」と言うものの本当に嫌がっている時は武力行使してでも抵抗するのは知ってるぞ。
上機嫌になった俺に、「なんか話す気になったか?」と頃合いを見たように聞いてきた。
「聞かないんじゃなかったのか?」
「悩みについてじゃなくて、“なにか”話したいことがあるんじゃないかって聞いただけだろ」
「ずるいなぁ。なら、俺が眠るまで話を聞いてもらおうか」
「いいよぉ」
もう少し悩んでほしかったが、それでも今晩はカタバミが側にいてくれることが嬉しかった。
そうだ、俺はチャンピオンだから弱音なんて吐いていられないんだ。
だから、立ち止まらない、振り返らない、大丈夫だからと言い聞かせて歩いていてるのに、一人、俺の強がりを見抜いて突き飛ばして膝をつかせる人間がいる。
「よっす、元気?」
「帰ってくれ」
インターホンの画面いっぱいに映った件の女性に告げインターホンを切るが、怒濤のチャイム連打をされ致し方なくまた出れば青筋浮かべて笑う彼女が再度映る。
「切るな、ダンデ」
「カタバミ……。すまないが、今日は帰ってくれないか?」
「やーだね。ダンデがそういうことを言う時は、絶対に放置したらいけない時じゃん」
付き合いが長いと、本当に気がついてほしくない部分に気がつかれてしまう。
キバナやソニアに隠せても、彼女には会ってもいないのにすぐバレるのは、カウンセラーという職業柄なのかも知れないがそれだけではない気もする。
カタバミの粘りだしたらそう簡単には諦めない質は理解しているので、渋々迎え入れれば両手のエコバッグいっぱいに食材やワインを持っていた。
「用意がいいな」
「まぁねぇ?褒めてくれていいのよ」
そんな軽口を叩き中に入ろうとするカタバミの進行方向に立ち塞がり、もう一度「今日は、帰ってほしい」と伝えたが、返事はやはり「いやよ」だった。
「そんな今にも泣き崩れそうな友達を放っておけるわけないでしょ。私がここで帰ったら、あんたまた一人で抱え込むつもりでしょ」
「俺は大丈夫だ」
「目の下に隈作って空元気してる人間が、どの口で大丈夫だなんて言ってるのよ」
「大丈夫ったら、大丈夫なんだ!放っといてくれ!」
力任せに壁を叩いてしまい、正気に戻りカタバミに謝ろうとしたが、怯える様子もなく俺を見つめていた。
「大丈夫って言う人ほど大丈夫じゃないのよ、ダンデ。別に悩みを話せなんて言わないけど、せめて食事はとって。やつれてるじゃない……」
エコバッグを置き心配そうな顔で俺の頬に触ろうとしたのでときめいたのに、流れる動作で絞め落とされた。
そうだな、カタバミはそういう女性だったな。
ここ最近の寝不足もあったのか久しぶりに夢も見ずに深く寝ていたが、喉の乾きと空腹をおぼえ目を覚ませばきっちりベッドに寝かされていた。
毎度のことの様に、カタバミに担がれてここまで運ばれたのかと思うと、何度経験しても男としてのプライドが削られるな。
フラフラと部屋から出れば、ワイン片手にダラダラと我が家の様に映画を観ているカタバミ。
俺の家だよな?
「おはよー」
「おはよう……。相変わらずの寛ぎっぷりだな」
「何度も来てるしね。食事あっためるね」
「いや、あまり食欲がなくて……」
断ろうとするも、怖い顔と低い声で「あ?なんか言ったか?」と言われてしまい、「頂きます」としか言えない状況になった。
未だに、一緒にジムチャレンジしていた時の不良さながらの柄の悪さが時折見せられると反射的に従ってしまう。
いや、暴力的で怖いとかではなく、母親に絶対逆らえない気持ちに近い。
カタバミの料理は好きだが、空腹ではあるが食欲のない状態で完食できるか不安だ。
抵抗すればアイアンクローの刑なので席につけば、目の前に見慣れない料理がどんどん並べられていく。
「どこの料理だ?」
「カブさんの故郷の料理。胃に優しいらしいから、食べられると思うよ」
何気なく発せられた言葉に、「俺のためか?」と聞けば一瞬だけ動きを止め「私がわざわざ人の為に、他人に教えを乞うとでも?」と、馬鹿馬鹿しいといった態度をとるが。
「あぁ、思うよ。カタバミは昔から優しいから、いつもそうやって気遣ってくれる」
「強めの幻覚みてんじゃないの?」
「照れると悪い態度をとる所も変わらないな」
「早く食べろ!」
顔を真っ赤にしながら、最後に透明なスープを俺とカタバミの前に置いて着席した。
こうして同じ食卓で家族以外と「頂きます」と一緒に言うのは、なんだか恥ずかしくも嬉しくある。
透明なスープを少量口に含めば、体からゆっくりとあったまっていく優しい味だった。
「食べられそう?」
「あぁ、食べられそうだ」
「そう、ならよかった」
それ以上はなにも聞かず、黙々と食べるカタバミとの時間はやはり落ち着く。
ささくれだった感情が、ゆっくり、ゆっくりとなだらかになってきて、漸くぼろりと涙がこぼれ「疲れた」と無意識に口にしていた。
「うん、がんばってるよ。お疲れ様」
ただ、それだけ。
チャンピオンに対してではなく、ダンデという一個人にかけられた労いの言葉に、みっともなくも涙が止まらない。
こうなるから、カタバミには会いたくないんだ。
弱って立つのも苦しい時に現れては、お疲れ様の一言で完全に気を抜かせにくる。
そのあとは、「側にいようか?」と分かりきっていることを聞いてくるんだ。
「側に……いてくれ……」
なんとか笑顔を作ったつもりだが、いつもの様に笑えている気がしない。
そんなことも気にせず、カタバミは「ご飯とりあえず食べよう」と促す。
だされた料理はどれも優しい味で、最近まともな食べ物を入れていなかった胃に染み渡り、突如として食欲が戻ってきた。
「カタバミ……おかわり……」
「いきなりそんな大量にお腹に入れたら、お腹がびっくりするから、だぁめ」
却下されてしょんぼりしたら、「まだ作り置きあるから、明日食べな」と言われたが、そうではないんだ。
「カタバミと食べたい……」
「なら明日も来る」
なんの迷いもなく言ってくれたことが嬉しくて、今度は心から笑えた気がする。
食器を洗うカタバミの背後から抱きつき、変わらず止まらない涙を流しながら「すまない、こんなカッコ悪い姿を見せた上に甘えて」と謝るも、「別に心配だっから来ただけで、カッコいい姿が見たいわけじゃない」と切り返された。
「食事、美味しかった」
「よかった。昨日デートドタキャンされたストレス発散で作ってたから、ちょっと味付けに雑念が出てたらどうしようかと思った」
カタバミはストレスを料理で発散するタイプの人間で、その度にキバナとソニアとネズでご相伴に与っている。
まぁ、大抵のストレスの理由が男にフラれるなのだが、原因は俺とキバナとネズにあるのはヒミツだ。
カタバミを俺たちから奪っていくのだから、俺たちを倒す気概を見せてくれと秘密裏に相手の男に言っているだけなのだが、未だに気概を見せてくれる男がいない。
別に、カタバミがとられるのが嫌とかではない。
全然、いや、本当に……。
「嫌だぁ……」
「話の繋がりがわからないわ」
「うっ……すまない……。じゃあ、昨日も料理してたのか……?」
「昨日は、キバナとソニアとネズと一緒に飲んで誤魔化した。ダンデも誘ったのに電話出ないんだもん」
そういえば最近、夜は電源を切っていたし通知も流し見だったなと思い出し確認すれば、確かにネズ以外から何度か電話が来ていた。
「まぁ、それで勘づいて今日来たんだけどね。キバナも、最近ちょっと様子がおかしいから見に行ってほしいって言ってたし。たっく、心配なら自分で行けよって話だよ」
「キバナの判断が正しいな……。キバナはカタバミほど気も長くないし、心の隙間に入るのも上手くない」
「私は詐欺師か」
「キバナが来たら、たぶん殴り合いになってた。俺が絶対に弱味を話さなくてキバナがイライラして、俺も自分が制御できなくて。だから、カタバミが来てくれてよかった」
追い返してすまない、ありがとう。そう言ってカタバミを抱き締めれば「気にしてない」と優しい言葉が返ってくるのが心地いい。
「カタバミはもう少し、俺たちがカタバミ離れできない原因を理解すべきだな」
「私が原因ってかぁ?」
「甘やかすからだー」
「別に甘やかしちゃいないっていうか、元気になってない?」
「美味しい食事と優しい友人のおかげだぞ」
ぐりぐりとカタバミの頭に頬擦りをしたら、「やめろ」と言うものの本当に嫌がっている時は武力行使してでも抵抗するのは知ってるぞ。
上機嫌になった俺に、「なんか話す気になったか?」と頃合いを見たように聞いてきた。
「聞かないんじゃなかったのか?」
「悩みについてじゃなくて、“なにか”話したいことがあるんじゃないかって聞いただけだろ」
「ずるいなぁ。なら、俺が眠るまで話を聞いてもらおうか」
「いいよぉ」
もう少し悩んでほしかったが、それでも今晩はカタバミが側にいてくれることが嬉しかった。
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