旅する心
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彼女を初めて見たのは、ジムリーダー就任後、息抜きになにか面白いコンテンツがないかと他の地方の映画を漁っていたら、イッシュ地方のポケウッドに出演していた彼女を見つけた。
Webレンタルの、アサガオ特集として銘打たれた昔の映画の一番最初、彼女のデビュー作は気の狂った悪役だったが、それでも悪役の美学を感じられる演技だった。
本人のはまり役だったのかとも思ったが、次の役柄は清純な女学生という真反対の役柄で度肝をぬかれた。
その後も熱血キャラやホラーで真っ先に死ぬ臆病者など、多種多様のキャラを演じて見せ、一気にファンになった。
まぁ、やはり悪役が一番多かったからはまり役ではあったのだろうし、俺様も好きだ。
しかし、彼女の名前はクレジットに載らない、というか毎回謎の点で書かれていてわからなかった。
最初はどっかのファンが解読して名前を判明させたのかとも思ったがどうやら違うようで、イッシュ以外の地方でもポケモンのコンテストやポケスロンというポケモンとするトライアスロンにも出ていたようで、そこから名前が判明。
ついでに、若気のいたりと思われる野次馬が撮影した面白動画なんかも見つけた。
俺様のお気に入りは、「カビゴンとポケモンの笛を吹きながら踊るミニスカート」だ。
野良バトルやバトルサブウェイなどのバトル動画も上がっており、どの映像もポケモンと一緒に全力で楽しんでいる姿が好きだった。
パワーごり押しで弱いが。
バトル中の顔が悪役してる時の顔で、納得のはまり役の理由だと笑ってしまった。
腐りかけていたが、この人のお陰で馬鹿馬鹿しい悩みだと思えた。
いつか会えた時に感謝を伝えたいが、どうも色んな地方を飛び回っているらしいので難しいだろう。
そう考えていた何度目かのチャンピオンリーグ開催時。
早めにエンジンシティへ来たら、ジムの受付で品のよさそうな子供が困惑した顔で受付のスタッフと問答していた。
なにか問題でもあったのかとファンに断りを入れて受付に近寄り、「どうかしたか?」と声をかければスタッフが「キバナさん!」と助かった安堵の表情をされる。
なんだ、モンスタークレーマーか?
「その、こちらの方がどうしてもジムチャレンジをしたいと仰っていて……。推薦状がなければ参加できないとお伝えしているのですが……」
「そこをなんとか!せめて、推薦状いただけるところを教えてください!」
「無理ですよ!スクールの子や、ジムトレーナーすら貰えるかわからないのに、他地方の人が推薦状貰えるわけないですよ!」
「やってみなければわからないじゃないですか!」
なるほど、この熱意でずっと張り付かれていたらそりゃスタッフも困るだろう。
しかし、このまま説得を試みたところで納得しなさそうな子供をどうしたものか。
スタッフが言った通り、他地方の子供がリーグ開催までの一週間そこらの期間で推薦状を貰えるほど、甘いものではない。
勝手のわからない場所でもちゃんとやっていけるかどうか、実力はどうか、途中で心折れない精神力があるか。
それをしっかり見極めなければ、このジムチャレンジの時点でトレーナーを辞めてしまう。
そうでなくても、リーグまで行き着けず諦めてしまうトレーナーは多いのだから。
「……なら、こうしようぜ。このドラゴンタイプのジムリーダーであるキバナ様がいまから特別に、お前が推薦状だしても問題ないトレーナーか見極めてやる」
「見極める?」
「対話じゃ時間がないからな。手っ取り早く、ポケモン勝負といこうじゃないか」
ポケモンボールからフライゴンをとりだし挑発すれば、きょとんとしながら「ポケモン勝負ですか?」と尋ねてきた。
怖じ気づいたかと思い、畳み掛けるように「負けたら、今回は大人しく観戦側に回れよ」と諦めるように仕向けたのだが、子供は先ほどまでの大人しそうな顔を一変させ、悪役染みた笑顔を剥き出し「いいですよ」と受けてたった。
豹変ぶりに一瞬身を引いたがこの悪役スマイル、どこかで見た気がする。
どこだっただろうか。
「ところでキバナさんの手持ちのレベルはいくつですか?」
「レベル?……あぁ、安心しろって。30くらいに制限かけてやるから」
レベル差の心配をしての質問かと思いそう答えたが、子供は満面の笑みで「50でいいですよ」と鞄からレベル制限装置をとりだして見せた。
普通、そんな装置を持ち歩いている人間いないぞ。
「なにもんだ、お前」
「長く旅をしていると、手持ちのレベルが上がりきってしまいましてね。バトル施設以外でまともな勝負ができないとつまらないので、もらいました」
長くって、どう見たって十代半ばかいっても後半くらいだろ。
そんな短期間でレベル上がりきるって、どんな育成狂いだよ。
「さぁさぁさぁ!バトルしましょう!」
「お、おぅ」
目の色変えて俺様の腕を引っ張る子供を連れ、ワイルドエリアで互いの手持ちに制限をかけいざバトル。
「行け!フライゴン!」
「行ってこい!ドンカラス!」
ガラルでは見かけない、アーマーガーに似たひこうタイプと思われるポケモン。
ひこうとなると、じしんは効かない。
「まあ、関係ないけどな!フライゴン!すなあらし!」
俺の掛け声と同時にすなあらしが発生し、目を開けるのも難しい状況になる。
慣れている俺なら、薄目でも十分フライゴンがどの位置にいるかは判断がつく。
さて、あの子供はどうだろうなと次の指示を出そうとしたが、それより先に「ドンカラス!右から攻撃来てる!避けてつじぎり!」と的確な指示が聞こえてきた。
見えてるのか!と視線をやれば、がっちりゴーグルをいつの間にやら装着していた。
「準備がいいじゃねぇか!かわせ、フライゴン!」
俺の声に反応するようにフライゴンは動いたが、さすがにつじぎりの素早さを回避しきるのは難しかったようで急所は外したが当たったようだ。
あれは直撃したらたまったもんじゃないな。
「やり返せ、フライゴン!ドラゴンクロー!」
「避けなさい、ドンカラス!」
「逃がさねぇよ!」
身を引いたドンカラスだったが、追撃のドラゴンクローは避けきれず直撃し、さらにすなあらしのダメージを受けひんし手前。
状況は劣勢。
それでも消えぬドンカラスと子供の闘争心にこちらまで興奮してきた。
いいな、そういうギラついた目好きだぜ。
長く旅をしてきたと言っていただけあり、手持ちとの信頼関係や技のみ極めは上手かったが、天候での戦闘が苦手らしく、さらにダイマックスを知らないのが決定打となった。
最後のポケモンであったサザンドラをしまい、一瞬だけ泣きそうな顔をしながらもすぐに最初に会った時に浮かべていた穏やかな笑顔を見せ、「ありがとうございました」と言った。
「残念ですが、今回のジムチャレンジは諦めます」
「そうだな、そうした方がいい。ダイマックスはこの先、頻繁に出会すからな。ちゃんと対策を練った方がいいし、その手持ちは強すぎてフェアじゃない」
「そうですよね。大丈夫です、もとからジムチャレンジ用のポケモンはこちらで捕まえる予定だったので、ゆっくり来年を待ちます」
苦笑いする子供に、そういえば名前を聞いてなかったなと思い尋ねれば「ジョウト地方、エンジュシティのアサガオです」と答え手を差し出され、固まった。
たしか、例のポケウッドの女優もエンジュシティ出身ではなかっただろうか。
そういえば、面差しが同じだ。
緊張しながら手を握り返し、「よろしく」と返し「前にポケウッドに出てなかったか?」と聞けば、「えぇ、お恥ずかしながら」と照れながら肯定される。
「名前も出していないですし、有名でもないのによくご存じでしたね。メイちゃんやキョウヘイくんの方が有名なのに」
「あ、あの二人もいいけ……いいですけど、俺はあなたの演技が好きです……」
「そうなんですか?ありがとう」
年齢を逆算し、歳上だと判断してすぐに敬語に直せば、おかしそうに笑いながら「改まらないでください」と言われたが、好きな女優かつ歳上相手に馴れ馴れしい口はきけない。
「すみません、見た目がずいぶんと若かったんで……」
「よく言われます。ジョウトとカントーの人間は若作りだって。一応、メイクや髪型には気を付けてはいるんですけどね」
「上品で綺麗だと思いますよ」
俺の言葉に、アサガオさんはハニカミ笑いで「嬉しい」と言うが、上品なメイクや髪型が幼さを逆に引き立ててしまって可愛さしかない。
Webレンタルの、アサガオ特集として銘打たれた昔の映画の一番最初、彼女のデビュー作は気の狂った悪役だったが、それでも悪役の美学を感じられる演技だった。
本人のはまり役だったのかとも思ったが、次の役柄は清純な女学生という真反対の役柄で度肝をぬかれた。
その後も熱血キャラやホラーで真っ先に死ぬ臆病者など、多種多様のキャラを演じて見せ、一気にファンになった。
まぁ、やはり悪役が一番多かったからはまり役ではあったのだろうし、俺様も好きだ。
しかし、彼女の名前はクレジットに載らない、というか毎回謎の点で書かれていてわからなかった。
最初はどっかのファンが解読して名前を判明させたのかとも思ったがどうやら違うようで、イッシュ以外の地方でもポケモンのコンテストやポケスロンというポケモンとするトライアスロンにも出ていたようで、そこから名前が判明。
ついでに、若気のいたりと思われる野次馬が撮影した面白動画なんかも見つけた。
俺様のお気に入りは、「カビゴンとポケモンの笛を吹きながら踊るミニスカート」だ。
野良バトルやバトルサブウェイなどのバトル動画も上がっており、どの映像もポケモンと一緒に全力で楽しんでいる姿が好きだった。
パワーごり押しで弱いが。
バトル中の顔が悪役してる時の顔で、納得のはまり役の理由だと笑ってしまった。
腐りかけていたが、この人のお陰で馬鹿馬鹿しい悩みだと思えた。
いつか会えた時に感謝を伝えたいが、どうも色んな地方を飛び回っているらしいので難しいだろう。
そう考えていた何度目かのチャンピオンリーグ開催時。
早めにエンジンシティへ来たら、ジムの受付で品のよさそうな子供が困惑した顔で受付のスタッフと問答していた。
なにか問題でもあったのかとファンに断りを入れて受付に近寄り、「どうかしたか?」と声をかければスタッフが「キバナさん!」と助かった安堵の表情をされる。
なんだ、モンスタークレーマーか?
「その、こちらの方がどうしてもジムチャレンジをしたいと仰っていて……。推薦状がなければ参加できないとお伝えしているのですが……」
「そこをなんとか!せめて、推薦状いただけるところを教えてください!」
「無理ですよ!スクールの子や、ジムトレーナーすら貰えるかわからないのに、他地方の人が推薦状貰えるわけないですよ!」
「やってみなければわからないじゃないですか!」
なるほど、この熱意でずっと張り付かれていたらそりゃスタッフも困るだろう。
しかし、このまま説得を試みたところで納得しなさそうな子供をどうしたものか。
スタッフが言った通り、他地方の子供がリーグ開催までの一週間そこらの期間で推薦状を貰えるほど、甘いものではない。
勝手のわからない場所でもちゃんとやっていけるかどうか、実力はどうか、途中で心折れない精神力があるか。
それをしっかり見極めなければ、このジムチャレンジの時点でトレーナーを辞めてしまう。
そうでなくても、リーグまで行き着けず諦めてしまうトレーナーは多いのだから。
「……なら、こうしようぜ。このドラゴンタイプのジムリーダーであるキバナ様がいまから特別に、お前が推薦状だしても問題ないトレーナーか見極めてやる」
「見極める?」
「対話じゃ時間がないからな。手っ取り早く、ポケモン勝負といこうじゃないか」
ポケモンボールからフライゴンをとりだし挑発すれば、きょとんとしながら「ポケモン勝負ですか?」と尋ねてきた。
怖じ気づいたかと思い、畳み掛けるように「負けたら、今回は大人しく観戦側に回れよ」と諦めるように仕向けたのだが、子供は先ほどまでの大人しそうな顔を一変させ、悪役染みた笑顔を剥き出し「いいですよ」と受けてたった。
豹変ぶりに一瞬身を引いたがこの悪役スマイル、どこかで見た気がする。
どこだっただろうか。
「ところでキバナさんの手持ちのレベルはいくつですか?」
「レベル?……あぁ、安心しろって。30くらいに制限かけてやるから」
レベル差の心配をしての質問かと思いそう答えたが、子供は満面の笑みで「50でいいですよ」と鞄からレベル制限装置をとりだして見せた。
普通、そんな装置を持ち歩いている人間いないぞ。
「なにもんだ、お前」
「長く旅をしていると、手持ちのレベルが上がりきってしまいましてね。バトル施設以外でまともな勝負ができないとつまらないので、もらいました」
長くって、どう見たって十代半ばかいっても後半くらいだろ。
そんな短期間でレベル上がりきるって、どんな育成狂いだよ。
「さぁさぁさぁ!バトルしましょう!」
「お、おぅ」
目の色変えて俺様の腕を引っ張る子供を連れ、ワイルドエリアで互いの手持ちに制限をかけいざバトル。
「行け!フライゴン!」
「行ってこい!ドンカラス!」
ガラルでは見かけない、アーマーガーに似たひこうタイプと思われるポケモン。
ひこうとなると、じしんは効かない。
「まあ、関係ないけどな!フライゴン!すなあらし!」
俺の掛け声と同時にすなあらしが発生し、目を開けるのも難しい状況になる。
慣れている俺なら、薄目でも十分フライゴンがどの位置にいるかは判断がつく。
さて、あの子供はどうだろうなと次の指示を出そうとしたが、それより先に「ドンカラス!右から攻撃来てる!避けてつじぎり!」と的確な指示が聞こえてきた。
見えてるのか!と視線をやれば、がっちりゴーグルをいつの間にやら装着していた。
「準備がいいじゃねぇか!かわせ、フライゴン!」
俺の声に反応するようにフライゴンは動いたが、さすがにつじぎりの素早さを回避しきるのは難しかったようで急所は外したが当たったようだ。
あれは直撃したらたまったもんじゃないな。
「やり返せ、フライゴン!ドラゴンクロー!」
「避けなさい、ドンカラス!」
「逃がさねぇよ!」
身を引いたドンカラスだったが、追撃のドラゴンクローは避けきれず直撃し、さらにすなあらしのダメージを受けひんし手前。
状況は劣勢。
それでも消えぬドンカラスと子供の闘争心にこちらまで興奮してきた。
いいな、そういうギラついた目好きだぜ。
長く旅をしてきたと言っていただけあり、手持ちとの信頼関係や技のみ極めは上手かったが、天候での戦闘が苦手らしく、さらにダイマックスを知らないのが決定打となった。
最後のポケモンであったサザンドラをしまい、一瞬だけ泣きそうな顔をしながらもすぐに最初に会った時に浮かべていた穏やかな笑顔を見せ、「ありがとうございました」と言った。
「残念ですが、今回のジムチャレンジは諦めます」
「そうだな、そうした方がいい。ダイマックスはこの先、頻繁に出会すからな。ちゃんと対策を練った方がいいし、その手持ちは強すぎてフェアじゃない」
「そうですよね。大丈夫です、もとからジムチャレンジ用のポケモンはこちらで捕まえる予定だったので、ゆっくり来年を待ちます」
苦笑いする子供に、そういえば名前を聞いてなかったなと思い尋ねれば「ジョウト地方、エンジュシティのアサガオです」と答え手を差し出され、固まった。
たしか、例のポケウッドの女優もエンジュシティ出身ではなかっただろうか。
そういえば、面差しが同じだ。
緊張しながら手を握り返し、「よろしく」と返し「前にポケウッドに出てなかったか?」と聞けば、「えぇ、お恥ずかしながら」と照れながら肯定される。
「名前も出していないですし、有名でもないのによくご存じでしたね。メイちゃんやキョウヘイくんの方が有名なのに」
「あ、あの二人もいいけ……いいですけど、俺はあなたの演技が好きです……」
「そうなんですか?ありがとう」
年齢を逆算し、歳上だと判断してすぐに敬語に直せば、おかしそうに笑いながら「改まらないでください」と言われたが、好きな女優かつ歳上相手に馴れ馴れしい口はきけない。
「すみません、見た目がずいぶんと若かったんで……」
「よく言われます。ジョウトとカントーの人間は若作りだって。一応、メイクや髪型には気を付けてはいるんですけどね」
「上品で綺麗だと思いますよ」
俺の言葉に、アサガオさんはハニカミ笑いで「嬉しい」と言うが、上品なメイクや髪型が幼さを逆に引き立ててしまって可愛さしかない。
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