夢女子殺人事件
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休日とは惰眠を貪る為にある。
どんなに夜ちゃんとした時間に寝ようとも、翌日が休みで予定がない場合、昼まで起きない。
否、起きたくない。
この白昼夢特有の、夢と現実の境目でフワフワしている感覚が好きだ。
白昼夢は自分の空想が強くでる。
だから、ほら。
降谷さんが私の部屋で本を読む、なんて都合のいい夢を見てる。
「零……」
「……なんだい、深湖」
「好き」
「……知ってるよ」
「零は?」
「……好きだよ」
降谷さんはゆっくりと私の頭を撫で、「もう起きたらどうだい?」と言った。
「ん……もうちょっと……」
「じゃあ、僕も一緒に寝ていいかな?」
「いいよ」
スペースを空けると、そこに降谷さんが入ってくる。
うーん、白昼夢。
願望がアクセル全開だぜ。
現実味のある温もりを感じながら意識が落ちていく感覚に飲まれていく。
次に目が覚めたとき、目の前には胸板。
上には推しの顔。
まだ夢を見ているみたいだ。
そろそろ起きないと、とは思うが幸せな夢ほど抜け出しにくい。
降谷さんの胸板にすり寄り、離れたくないと脚を絡めると「今日は積極的だな」と、楽しそうな声。
「夢ならなにをしても許されるでしょ?」
「……ふーん、夢だと思っているのか」
本当に夢だと思う?
耳元で囁かれる声に、ぞわり、とした感覚が背中を走った。
スルスルと這うように撫でられる背中に、段々と意識がハッキリしてきた。
白昼夢にしては感覚がハッキリし過ぎている。
これは夢ではない。
顔を青くする私に、降谷さんは甘ったるい笑顔で「おはよう、深湖」と言った。
「あー↑あー↓あー↑あ↑ーーーーーー!!!!」
「音階を奏でるな」
奏でるやろうが!
なにを、え??!!?!なにをしてる??!!?!!?腹を抱えて笑っとる場合ちゃうぞ???!!!?!!?!
「ていうか、どっから夢?!」
「僕を零って呼び捨てにした所から現実」
「全部じゃねえか!!」
待って!!!!お願い待って!!!!!!私が現実受け入れるまで、時よ止まってくれ!!!!!!
羞恥で泣き出す私、ベッドから降りて引くほど笑う推し。
なんだ、この地獄の空間は!
「推しぃ。来るときは、事前告知してくださぃ……」
「朝思い立ったったから、連絡忘れた」
「お散歩感覚で来ないでください!」
一通り降谷さんに文句をぶつけてから、「それで、なんの用ですか」と落ち着きを取り戻し聞くと、「約束してただろ、ピクニック」と言う。
してないんだわ。
してても、都合を聞くだろうが。
「ほら、早く出掛けよう」
楽しそうにする降谷さんには悪いが、推しとの穏やかな日常が出だしの話は、大体“なにかが起きる”。
なにかというか、犯罪なのだが。
しかし、降谷さん単体ならばまだ確率は低いはず。
「あれ~?安室さんたちも、ピクニック?」
眼鏡の死神だけではなく、少年探偵団まで揃ってしまった。
まあ、公園だしいてもいいんだが。
これは確実になにかが起きる。
犯罪のにおいしかしない。
胃がキリキリする私に、降谷さんは「どうかしたか?」と心配してくれるが、どうかするのはこの公園の中の誰かである。
杞憂であってくれ、と願ったが私の耳にするりと入ってくる、中原茂ボイス。
ふぇぇ……捨て駒になっちゃう……。
声の方を向くと、大学生集団と思われる男女グループ。
恐らく、あの有川譲みのある学生が中原茂ボイスの持ち主で、犯人または被害者。
食べ物か飲み物になにかしこんであるか、物理的な殺人が行われる。
どっちだ!
ぐぬぬ、と学生たちを見ていると、耳元で「僕そっちのけで何を見ているんだ?」と聞いてきた。
「推し!こら、推し!」
「怒りたいのはこっちだ。余所見なんてして」
拗ねる降谷さんに、どうせ信じないとは思いつつ斯々然々と説明すると、胡散臭そうな顔で「またスピリチュアル的な話か」と言った。
そうなんですけど~。
「まあ、前例があるからな。気にはしてみるよ」
「なにもなければいいんですけど」
思わず眉間に皺が寄ってしまうと、目の前にお茶がさしだされた。
「そんな顔をして見ていると、警戒されるぞ」
「私は探偵ではないので、そう言われましても」
「なら、気にするな。本職に任せなさい」
柔らかく微笑まれ、頭から「誰か死ぬかも」という事実がすっぽ抜けた。
また音階奏でてしまう、好き。
しかし、それはそうなので私は学生たちを気にするのを止め、サッカーをする少年探偵団たちを眺めることにした。
ぼんやりと眺めていると、元太くんが蹴ったボールがこちらに飛んでくる。
おやおや。
「姉ちゃーん!こっち!こっち!」
「おーし!行くぞー!」
調子に乗って蹴って返そうとしたが、私は大変ノーコン女である。
ボールは弧を描き、学生集団のお食事を目茶苦茶にした。
Bloody hell!
「なにしやがんだ!!」
「大変申し訳ありませんー!!」
気性の荒そうな男が怒鳴り、半泣きで駆け寄り謝る。
男がさらに怒鳴ろうとしたが、CV中原茂が「武谷、そんなに怒ったら可哀想だろ」と仲裁に入ってくれた。
この中原茂、もしや白い中原茂では?
「今度は手加減して蹴るんだよ?」
「はい、すみま……」
ボールを受けとる瞬間、かち合った視線はあまりにも冷徹な目であった。
あ、ダメだこれ。
有川譲の中原茂ではなく、毛利元就の中原茂だ。
ゆっくりと距離を取り、コナンくんの所に行きソッと「あのお兄さんに盗聴器つけて」と耳打ちする。
「どうして?」
「……一応。お願い、コナンくん」
訝しみながらも、器用にCV中原茂に盗聴器をつけてくるコナンくん。
少年探偵団がいるとややこしくなりそうだが、コナンくんの眼鏡がないと音声聞けないからなぁ。
まあ、なるようになるか。
あとは任せた、とお茶をすすっているとコナンくんと降谷さんが神妙な顔になった。
なにか証拠になる音声がとれたのだろう。
あのCV中原茂のお兄さんが、仮に元就様タイプだとすれば、恐らく自分で手を下さない。
誰か他の、例えばいま一緒に席を外している正義感の強そうな男を言葉巧みに誘導し、実行させる。
そして、元就様は一度やると決めたら必ずやる方だ。
ならば、もし毒殺が目的だった場合、先ほど私が邪魔をしたとて別の策を用意している。
それを実行する為に呼び出すはず。
メッセージのやり取りは、ばれたときに証拠になってしまうからやらないだろう。
という予想をたてたのだが、こうも綺麗に回収されると夜神月になっちゃうな。
そして、なんやかんや降谷さんとコナンくんが解決してくれて、主犯とCV中原茂は捕まった。
まあ主犯は未遂だし、中原茂は殺人教唆なのでどこまで罪に問えるかは知らん。
「今日は折角出掛けたのに、事件に巻き込んですまない」
「安室さんが謝ることじゃないですよ」
巻き込まれるのは察していたし。
気にしてませんよ、と言うとまた拗ねた顔をされた。
今日はよく拗ねるな、推し。
「ピクニック、楽しみにしていたのは僕だけだったっんですね」
「急な敬語やめてください、ちびっちゃう」
「僕は楽しみにしていたのに、残念です」
「楽しんだつもりなんですけど……」
「具体的になにを楽しんだのか言ってもらわないと、納得できませんねー」
「安室さんと一緒にいられたら、全部楽しいですし幸せですよ」
「……」
推しと時間を共有できることは、何にも変えがたい時間ではないだろうか。
いや、でもそれは私が降谷さんが大好きだからであって、降谷さんは私の珍行動を見たいから降谷さんは楽しくなかったかも知れない。
「次はもっと楽しんでもらえるよう、がんばります」
「いや、別に楽しくなかったわけじゃ……」
ゴニョゴニョと降谷さんが言っているうちに、いつの間にやら家に着いていた。
「それでは、またバイトのときに」
「深湖」
「はい?」
「今日、僕も一緒にいられて楽しかった。だから、また誘う」
「安室さん……。安室×自分は地雷です!やめてください!」
「なっ……!そ、そういう意味じゃない!勘違いするな!女子高生をそういう目で見るわけないだろ!」
「そりゃそうだ!」
じゃあ、また~!と別れ、降谷さんが見えなくなってから「そんな力強く否定しなくてもいいじゃん!」と床を殴ってしまった。
地雷は地雷だけど、否定はしてほしくないクソ面倒くさい女だぞ、私は!
◇
「風見。やはり、一回りも違う子をそういう目で見るのはあり得ないことなのか?」
なんの脈略もない質問。
誰と誰の話とは聞かずともわかる。
#氷室#くんとなにかあったのだろう。
確かに、二十九歳と十七歳では犯罪である。
「ですが、#氷室#くんもそのうち成人しますし」
「そのとき、僕は三十代だ。そもそも深湖が心変わりしないとは限らない」
普段の#氷室#くんを思い出し、あの#氷室#くんが降谷さん以外に思いを寄せる姿は想像できない。
とはいえ、ないとは限らない。
「それに、あの子は僕が踏み込もうとすると全力で嫌がる」
「照れ隠しでは?」
「どうだかな。案外、本当に恋愛関係は嫌なのかも知れないぞ」
自嘲気味に笑う降谷さんに、「人の考えは変わりますから」と言葉をかけると、小さく息を吐き「そうだな」と言った。
「あと三年待てば、法的に許されることが増える。そこで畳み掛けてやる」
「降谷さん、ダメです。それは#氷室#くんが泣いてしまいます」
どんなに夜ちゃんとした時間に寝ようとも、翌日が休みで予定がない場合、昼まで起きない。
否、起きたくない。
この白昼夢特有の、夢と現実の境目でフワフワしている感覚が好きだ。
白昼夢は自分の空想が強くでる。
だから、ほら。
降谷さんが私の部屋で本を読む、なんて都合のいい夢を見てる。
「零……」
「……なんだい、深湖」
「好き」
「……知ってるよ」
「零は?」
「……好きだよ」
降谷さんはゆっくりと私の頭を撫で、「もう起きたらどうだい?」と言った。
「ん……もうちょっと……」
「じゃあ、僕も一緒に寝ていいかな?」
「いいよ」
スペースを空けると、そこに降谷さんが入ってくる。
うーん、白昼夢。
願望がアクセル全開だぜ。
現実味のある温もりを感じながら意識が落ちていく感覚に飲まれていく。
次に目が覚めたとき、目の前には胸板。
上には推しの顔。
まだ夢を見ているみたいだ。
そろそろ起きないと、とは思うが幸せな夢ほど抜け出しにくい。
降谷さんの胸板にすり寄り、離れたくないと脚を絡めると「今日は積極的だな」と、楽しそうな声。
「夢ならなにをしても許されるでしょ?」
「……ふーん、夢だと思っているのか」
本当に夢だと思う?
耳元で囁かれる声に、ぞわり、とした感覚が背中を走った。
スルスルと這うように撫でられる背中に、段々と意識がハッキリしてきた。
白昼夢にしては感覚がハッキリし過ぎている。
これは夢ではない。
顔を青くする私に、降谷さんは甘ったるい笑顔で「おはよう、深湖」と言った。
「あー↑あー↓あー↑あ↑ーーーーーー!!!!」
「音階を奏でるな」
奏でるやろうが!
なにを、え??!!?!なにをしてる??!!?!!?腹を抱えて笑っとる場合ちゃうぞ???!!!?!!?!
「ていうか、どっから夢?!」
「僕を零って呼び捨てにした所から現実」
「全部じゃねえか!!」
待って!!!!お願い待って!!!!!!私が現実受け入れるまで、時よ止まってくれ!!!!!!
羞恥で泣き出す私、ベッドから降りて引くほど笑う推し。
なんだ、この地獄の空間は!
「推しぃ。来るときは、事前告知してくださぃ……」
「朝思い立ったったから、連絡忘れた」
「お散歩感覚で来ないでください!」
一通り降谷さんに文句をぶつけてから、「それで、なんの用ですか」と落ち着きを取り戻し聞くと、「約束してただろ、ピクニック」と言う。
してないんだわ。
してても、都合を聞くだろうが。
「ほら、早く出掛けよう」
楽しそうにする降谷さんには悪いが、推しとの穏やかな日常が出だしの話は、大体“なにかが起きる”。
なにかというか、犯罪なのだが。
しかし、降谷さん単体ならばまだ確率は低いはず。
「あれ~?安室さんたちも、ピクニック?」
眼鏡の死神だけではなく、少年探偵団まで揃ってしまった。
まあ、公園だしいてもいいんだが。
これは確実になにかが起きる。
犯罪のにおいしかしない。
胃がキリキリする私に、降谷さんは「どうかしたか?」と心配してくれるが、どうかするのはこの公園の中の誰かである。
杞憂であってくれ、と願ったが私の耳にするりと入ってくる、中原茂ボイス。
ふぇぇ……捨て駒になっちゃう……。
声の方を向くと、大学生集団と思われる男女グループ。
恐らく、あの有川譲みのある学生が中原茂ボイスの持ち主で、犯人または被害者。
食べ物か飲み物になにかしこんであるか、物理的な殺人が行われる。
どっちだ!
ぐぬぬ、と学生たちを見ていると、耳元で「僕そっちのけで何を見ているんだ?」と聞いてきた。
「推し!こら、推し!」
「怒りたいのはこっちだ。余所見なんてして」
拗ねる降谷さんに、どうせ信じないとは思いつつ斯々然々と説明すると、胡散臭そうな顔で「またスピリチュアル的な話か」と言った。
そうなんですけど~。
「まあ、前例があるからな。気にはしてみるよ」
「なにもなければいいんですけど」
思わず眉間に皺が寄ってしまうと、目の前にお茶がさしだされた。
「そんな顔をして見ていると、警戒されるぞ」
「私は探偵ではないので、そう言われましても」
「なら、気にするな。本職に任せなさい」
柔らかく微笑まれ、頭から「誰か死ぬかも」という事実がすっぽ抜けた。
また音階奏でてしまう、好き。
しかし、それはそうなので私は学生たちを気にするのを止め、サッカーをする少年探偵団たちを眺めることにした。
ぼんやりと眺めていると、元太くんが蹴ったボールがこちらに飛んでくる。
おやおや。
「姉ちゃーん!こっち!こっち!」
「おーし!行くぞー!」
調子に乗って蹴って返そうとしたが、私は大変ノーコン女である。
ボールは弧を描き、学生集団のお食事を目茶苦茶にした。
Bloody hell!
「なにしやがんだ!!」
「大変申し訳ありませんー!!」
気性の荒そうな男が怒鳴り、半泣きで駆け寄り謝る。
男がさらに怒鳴ろうとしたが、CV中原茂が「武谷、そんなに怒ったら可哀想だろ」と仲裁に入ってくれた。
この中原茂、もしや白い中原茂では?
「今度は手加減して蹴るんだよ?」
「はい、すみま……」
ボールを受けとる瞬間、かち合った視線はあまりにも冷徹な目であった。
あ、ダメだこれ。
有川譲の中原茂ではなく、毛利元就の中原茂だ。
ゆっくりと距離を取り、コナンくんの所に行きソッと「あのお兄さんに盗聴器つけて」と耳打ちする。
「どうして?」
「……一応。お願い、コナンくん」
訝しみながらも、器用にCV中原茂に盗聴器をつけてくるコナンくん。
少年探偵団がいるとややこしくなりそうだが、コナンくんの眼鏡がないと音声聞けないからなぁ。
まあ、なるようになるか。
あとは任せた、とお茶をすすっているとコナンくんと降谷さんが神妙な顔になった。
なにか証拠になる音声がとれたのだろう。
あのCV中原茂のお兄さんが、仮に元就様タイプだとすれば、恐らく自分で手を下さない。
誰か他の、例えばいま一緒に席を外している正義感の強そうな男を言葉巧みに誘導し、実行させる。
そして、元就様は一度やると決めたら必ずやる方だ。
ならば、もし毒殺が目的だった場合、先ほど私が邪魔をしたとて別の策を用意している。
それを実行する為に呼び出すはず。
メッセージのやり取りは、ばれたときに証拠になってしまうからやらないだろう。
という予想をたてたのだが、こうも綺麗に回収されると夜神月になっちゃうな。
そして、なんやかんや降谷さんとコナンくんが解決してくれて、主犯とCV中原茂は捕まった。
まあ主犯は未遂だし、中原茂は殺人教唆なのでどこまで罪に問えるかは知らん。
「今日は折角出掛けたのに、事件に巻き込んですまない」
「安室さんが謝ることじゃないですよ」
巻き込まれるのは察していたし。
気にしてませんよ、と言うとまた拗ねた顔をされた。
今日はよく拗ねるな、推し。
「ピクニック、楽しみにしていたのは僕だけだったっんですね」
「急な敬語やめてください、ちびっちゃう」
「僕は楽しみにしていたのに、残念です」
「楽しんだつもりなんですけど……」
「具体的になにを楽しんだのか言ってもらわないと、納得できませんねー」
「安室さんと一緒にいられたら、全部楽しいですし幸せですよ」
「……」
推しと時間を共有できることは、何にも変えがたい時間ではないだろうか。
いや、でもそれは私が降谷さんが大好きだからであって、降谷さんは私の珍行動を見たいから降谷さんは楽しくなかったかも知れない。
「次はもっと楽しんでもらえるよう、がんばります」
「いや、別に楽しくなかったわけじゃ……」
ゴニョゴニョと降谷さんが言っているうちに、いつの間にやら家に着いていた。
「それでは、またバイトのときに」
「深湖」
「はい?」
「今日、僕も一緒にいられて楽しかった。だから、また誘う」
「安室さん……。安室×自分は地雷です!やめてください!」
「なっ……!そ、そういう意味じゃない!勘違いするな!女子高生をそういう目で見るわけないだろ!」
「そりゃそうだ!」
じゃあ、また~!と別れ、降谷さんが見えなくなってから「そんな力強く否定しなくてもいいじゃん!」と床を殴ってしまった。
地雷は地雷だけど、否定はしてほしくないクソ面倒くさい女だぞ、私は!
◇
「風見。やはり、一回りも違う子をそういう目で見るのはあり得ないことなのか?」
なんの脈略もない質問。
誰と誰の話とは聞かずともわかる。
#氷室#くんとなにかあったのだろう。
確かに、二十九歳と十七歳では犯罪である。
「ですが、#氷室#くんもそのうち成人しますし」
「そのとき、僕は三十代だ。そもそも深湖が心変わりしないとは限らない」
普段の#氷室#くんを思い出し、あの#氷室#くんが降谷さん以外に思いを寄せる姿は想像できない。
とはいえ、ないとは限らない。
「それに、あの子は僕が踏み込もうとすると全力で嫌がる」
「照れ隠しでは?」
「どうだかな。案外、本当に恋愛関係は嫌なのかも知れないぞ」
自嘲気味に笑う降谷さんに、「人の考えは変わりますから」と言葉をかけると、小さく息を吐き「そうだな」と言った。
「あと三年待てば、法的に許されることが増える。そこで畳み掛けてやる」
「降谷さん、ダメです。それは#氷室#くんが泣いてしまいます」
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