夢女子殺人事件
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
この間、盛大に自ら墓穴を掘ってしまい、慎重にならねばと気を引き締めていたはずなのに、どうして私は降谷さんと並んでハムサンドを食べているのか。
ハムサンドおいしー。
「どうですか?一応、得意料理なんですよ」
「トテモオイシイデス」
なんでこうなった。
いや、いつも通り休みに出掛けていたら捕まったのだから、なんでもなにもないのだけれども。
いつもと違うのは、手料理持参して退路を塞ぎにかかってきたところだろうか。
恐らく、毎度私が逃げて中々情報が得られないので少しでも時間が稼げる手段をとったのではないか。知らんけど。
「ところで、降谷零さんってどんな方なんですか?」
「ひゅっ……!」
見計らったようにされた質問に、またもや夢女子の呼吸がでてしまった。
よかった、口になにも入れてなくて。
え、どうする?なんて答える?そんな、即座にキャラメイクできるタイプの夢女子ではないのですが?
からからになった口を紅茶で湿らせ、ついでに黙る口実を作る。
ヤバいヤバいヤバい、視線が突き刺さる。
「そ……その……素敵な方です……。強くて、真面目で、優しいんですけど表現が素直じゃないから伝わりにくいんですけど……あと顔がいい……」
「へぇ、本当に素敵な人ですね。ご職業は?」
「公務員……」
「へぇ……いまはどちらに……?」
「風の噂で亡くなったとかそんなことはないとか……」
「そうなんですか……。どういったご関係だったんですか?」
「……広義での恋人」
とりかえしのつかないミスを連発している気がするが、先も言った通り私は即興でキャラメイクできない夢女子であり、降谷零の解釈凝り固まった私に解釈違いな降谷零像を語ることは不可能。
そんなことをするくらいなら疑われた方がましだ。
そもそも私は何もしていないから、叩いても埃すらでないのだからどっしり構えてようぜ。
「その降谷零さん、僕も知っている気がしますね」
そりゃ、あなたの話をしてますからね。
「どこでどうやって出会ったんですか?」
「ヴァッ」
一般人に「彼氏いるのー?」と聞かれ、推しを彼氏として語った末に聞かれるような質問をされてしまい、思わず初代ポケモン時代のピカチュウの鳴き声をだしてしまった。
オタクに……オタクにその質問はやめろ……。
私と降谷さんの出会い?
それはどの時空の私の話?
原作と妄想の境が思い出せないわ。
私はあなたに何度も出会ってるの。
ちょっと黙ってて、夢女子の私。
「どうしました?顔色が悪いですよ?」
「はっ……!だ、大丈夫です……。えっと……どこで会ったか、ですよね……」
どこで?
そうですね、強いて言えば自宅でコミックを読んだ時でしょうか。
くっ、しかし素直にゲロって「私、トリップして来たんです」なんて言ったら、確実に痛い女判定だ。
推しに痛い女なんて思われたくない!
私だって、二次元に対してだが一端の恋する女!
その尊厳は守ってみせる!
「友達の兄の友達の友達でして……。私が一方的に慕っていただけなんですよ!」
嘘はちょっとしか言っていない。
二次元の恋は一方的なものだ。
よしよし、これで「僕は知らないなぁ」と言われても誤魔化しがきくぞ。
「そのお友達の名前は?」
「ふぇ……ともだちのなまえ……?」
答えを用意していない質問をされ、顔が宇宙猫。
なんでそんなこときくのぉ?もう、そこは「そうなんですか」でながそうよぉ。
いまの私の顔はたぶん、FXで有り金全部溶かした人状態であろう。
咄嗟に元世界の友人の名前を答えたが、「そうですか。僕の知ってる“降谷零さん”とは違うみたいですね」と言われたのでダメだったろうな。
その日も、用事があると言って結局は鍵アカウントに引きこもった。
この生活、いつまで続くんだろう……。
ーー今日も降谷さんが襲来した、相変わらず顔がいい。
ーー出会いとか聞かれたけど、言えるわけない。
ーーというか、律儀に出会いについて語る必要なかったのでは?
ーー「あの人のことは……思い出したくないんです……」
ーーこ れ だ !
ーー広義の恋人って言ったのに、一方的に慕っていたとはこれ如何に。
ーー完全にストーカー。ありがとうございません。
ぽこぽこと更新されていく呟きを見ながら「詰めが甘いな」と呆れ半分、面白半分でこぼした。
彼女と話せば話すほど、理解できない部分が増えていく。
安室透について深く知っているならば、ただのストーカーと言えよう。
しかし、彼女の知識はそこにとどまらない。
一度は組織の人間かと疑ったが、あのジンがこんな詰めの甘い人間を野放しにするかと考えると否。
確実にNOCの疑いをかけられて処刑されるだろう。
ならばどこかのエージェントかと聞かれると、それも無理がある気がする。
整合性のない話、動揺も隠せず、こうして簡単にスマホも覗き見盗聴させてくれ、ハッキングも苦もなくできてしまう。
僕だったらこんな部下は絶対に使いたくない。
それとも、これは本当の姿を隠すためのブラフか?
裏の裏を読んでも、なんだか最終的に馬鹿馬鹿しい帰結を迎えそうな気がしなくもないが、この国に害なすかも知れない人間を野放しにできない。
まだ暫く監視が続きそうだと、若干の目眩を覚えた。
「おっ、きた」
ーーいや、しかし顔がよすぎて本当に心臓に悪いな。
ーー追い詰められる感じは嫌だけど、降谷さんと話せるのはやっぱり多幸感。
ーー日本の為にがんばる男はかっこいい。好き。
ーーでも、こんな小娘なんて放っておいていいのよ。私は妄想で十分だから。
ーー心なしか疲れている気がしたから、早く帰ってお風呂入って寝てほしい。
「なら、早く本当のことを話してほしいね」
愚痴ツイートのあとにくる、怒濤の恋する女の子ツイートはそこそこ楽しみだったりするので、最近は疲れた時に眺めて気力を回復していたりする。
というか、やはり安室透の正体が降谷零だと知っているんだな。
なるほど、これは次回もう少し詰められそうだな。
ほら、もっと惚気てみてくれ、と続きを待っていたら不穏なツイートが。
ーーやっばーい。銀行強盗にあってるよね、これ?助けてベビーフェイスゴリラ。
「……このベビーフェイスゴリラって、僕のことじゃないだろうな」
彼女が事件に巻き込まれるのはよくあることなので、あまり焦りはしないのだが……ベビーフェイスゴリラ……?
イラッとしていないかと聞かれれば、聞いてきた相手に「そう見えるか?」と威嚇する程度にはイラッとした。
どうしようかな、助けなくても助かるとは思っているし、人のことをベビーフェイスゴリラと呼んでおいて助けを求める無礼な人間をわざわざ僕が出向いて救助する必要はあるのか?
いやいや、落ち着け僕。
喧嘩は売っているが彼女もまた守るべき国民。
そんな軽率に見限るなんてらしくないぞ、と思い腰をあげると、また呟きが。
銀行強盗に巻き込まれているのに、随分と余裕だな。
「……仕方がない人だな」
ーー降谷さん疲れてたから、炎上覚悟でポアロに甘い物でも差し入れしに行こうかと思ったんだけどなぁ。
是非とも来てもらいましょうか。
ハムサンドおいしー。
「どうですか?一応、得意料理なんですよ」
「トテモオイシイデス」
なんでこうなった。
いや、いつも通り休みに出掛けていたら捕まったのだから、なんでもなにもないのだけれども。
いつもと違うのは、手料理持参して退路を塞ぎにかかってきたところだろうか。
恐らく、毎度私が逃げて中々情報が得られないので少しでも時間が稼げる手段をとったのではないか。知らんけど。
「ところで、降谷零さんってどんな方なんですか?」
「ひゅっ……!」
見計らったようにされた質問に、またもや夢女子の呼吸がでてしまった。
よかった、口になにも入れてなくて。
え、どうする?なんて答える?そんな、即座にキャラメイクできるタイプの夢女子ではないのですが?
からからになった口を紅茶で湿らせ、ついでに黙る口実を作る。
ヤバいヤバいヤバい、視線が突き刺さる。
「そ……その……素敵な方です……。強くて、真面目で、優しいんですけど表現が素直じゃないから伝わりにくいんですけど……あと顔がいい……」
「へぇ、本当に素敵な人ですね。ご職業は?」
「公務員……」
「へぇ……いまはどちらに……?」
「風の噂で亡くなったとかそんなことはないとか……」
「そうなんですか……。どういったご関係だったんですか?」
「……広義での恋人」
とりかえしのつかないミスを連発している気がするが、先も言った通り私は即興でキャラメイクできない夢女子であり、降谷零の解釈凝り固まった私に解釈違いな降谷零像を語ることは不可能。
そんなことをするくらいなら疑われた方がましだ。
そもそも私は何もしていないから、叩いても埃すらでないのだからどっしり構えてようぜ。
「その降谷零さん、僕も知っている気がしますね」
そりゃ、あなたの話をしてますからね。
「どこでどうやって出会ったんですか?」
「ヴァッ」
一般人に「彼氏いるのー?」と聞かれ、推しを彼氏として語った末に聞かれるような質問をされてしまい、思わず初代ポケモン時代のピカチュウの鳴き声をだしてしまった。
オタクに……オタクにその質問はやめろ……。
私と降谷さんの出会い?
それはどの時空の私の話?
原作と妄想の境が思い出せないわ。
私はあなたに何度も出会ってるの。
ちょっと黙ってて、夢女子の私。
「どうしました?顔色が悪いですよ?」
「はっ……!だ、大丈夫です……。えっと……どこで会ったか、ですよね……」
どこで?
そうですね、強いて言えば自宅でコミックを読んだ時でしょうか。
くっ、しかし素直にゲロって「私、トリップして来たんです」なんて言ったら、確実に痛い女判定だ。
推しに痛い女なんて思われたくない!
私だって、二次元に対してだが一端の恋する女!
その尊厳は守ってみせる!
「友達の兄の友達の友達でして……。私が一方的に慕っていただけなんですよ!」
嘘はちょっとしか言っていない。
二次元の恋は一方的なものだ。
よしよし、これで「僕は知らないなぁ」と言われても誤魔化しがきくぞ。
「そのお友達の名前は?」
「ふぇ……ともだちのなまえ……?」
答えを用意していない質問をされ、顔が宇宙猫。
なんでそんなこときくのぉ?もう、そこは「そうなんですか」でながそうよぉ。
いまの私の顔はたぶん、FXで有り金全部溶かした人状態であろう。
咄嗟に元世界の友人の名前を答えたが、「そうですか。僕の知ってる“降谷零さん”とは違うみたいですね」と言われたのでダメだったろうな。
その日も、用事があると言って結局は鍵アカウントに引きこもった。
この生活、いつまで続くんだろう……。
ーー今日も降谷さんが襲来した、相変わらず顔がいい。
ーー出会いとか聞かれたけど、言えるわけない。
ーーというか、律儀に出会いについて語る必要なかったのでは?
ーー「あの人のことは……思い出したくないんです……」
ーーこ れ だ !
ーー広義の恋人って言ったのに、一方的に慕っていたとはこれ如何に。
ーー完全にストーカー。ありがとうございません。
ぽこぽこと更新されていく呟きを見ながら「詰めが甘いな」と呆れ半分、面白半分でこぼした。
彼女と話せば話すほど、理解できない部分が増えていく。
安室透について深く知っているならば、ただのストーカーと言えよう。
しかし、彼女の知識はそこにとどまらない。
一度は組織の人間かと疑ったが、あのジンがこんな詰めの甘い人間を野放しにするかと考えると否。
確実にNOCの疑いをかけられて処刑されるだろう。
ならばどこかのエージェントかと聞かれると、それも無理がある気がする。
整合性のない話、動揺も隠せず、こうして簡単にスマホも覗き見盗聴させてくれ、ハッキングも苦もなくできてしまう。
僕だったらこんな部下は絶対に使いたくない。
それとも、これは本当の姿を隠すためのブラフか?
裏の裏を読んでも、なんだか最終的に馬鹿馬鹿しい帰結を迎えそうな気がしなくもないが、この国に害なすかも知れない人間を野放しにできない。
まだ暫く監視が続きそうだと、若干の目眩を覚えた。
「おっ、きた」
ーーいや、しかし顔がよすぎて本当に心臓に悪いな。
ーー追い詰められる感じは嫌だけど、降谷さんと話せるのはやっぱり多幸感。
ーー日本の為にがんばる男はかっこいい。好き。
ーーでも、こんな小娘なんて放っておいていいのよ。私は妄想で十分だから。
ーー心なしか疲れている気がしたから、早く帰ってお風呂入って寝てほしい。
「なら、早く本当のことを話してほしいね」
愚痴ツイートのあとにくる、怒濤の恋する女の子ツイートはそこそこ楽しみだったりするので、最近は疲れた時に眺めて気力を回復していたりする。
というか、やはり安室透の正体が降谷零だと知っているんだな。
なるほど、これは次回もう少し詰められそうだな。
ほら、もっと惚気てみてくれ、と続きを待っていたら不穏なツイートが。
ーーやっばーい。銀行強盗にあってるよね、これ?助けてベビーフェイスゴリラ。
「……このベビーフェイスゴリラって、僕のことじゃないだろうな」
彼女が事件に巻き込まれるのはよくあることなので、あまり焦りはしないのだが……ベビーフェイスゴリラ……?
イラッとしていないかと聞かれれば、聞いてきた相手に「そう見えるか?」と威嚇する程度にはイラッとした。
どうしようかな、助けなくても助かるとは思っているし、人のことをベビーフェイスゴリラと呼んでおいて助けを求める無礼な人間をわざわざ僕が出向いて救助する必要はあるのか?
いやいや、落ち着け僕。
喧嘩は売っているが彼女もまた守るべき国民。
そんな軽率に見限るなんてらしくないぞ、と思い腰をあげると、また呟きが。
銀行強盗に巻き込まれているのに、随分と余裕だな。
「……仕方がない人だな」
ーー降谷さん疲れてたから、炎上覚悟でポアロに甘い物でも差し入れしに行こうかと思ったんだけどなぁ。
是非とも来てもらいましょうか。