夢女子殺人事件
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「深湖ちゃん!一生のお願いです!手料理振る舞ってください!」
「ダルいので嫌でーす!」
学校でのことを根掘り葉掘り聞かれ、降谷さんにからかい倒され帰ろうとしているところへ、公安の水戸部さんに襲撃された。
は~?手料理~?ダルい~。
「作ってやればいいじゃないか」
お茶を飲みながら現れた降谷さん。
くそ~自分が簡単に作れるからって軽く言ってくれやがるな~。
「いいですか、降谷さん。降谷さんは苦にならないかも知れませんが、世間一般的に料理とは労働なんですよ?対価なしに働くなんて、私は嫌です。等価交換って知ってますか?」
そう言うと、降谷さんは何事かを考えると、私の頬に軽くキスをしてから「これだけじゃ足りないかな?」と聞いてきた。
1カメ
2カメ
3カメ
「持っていかれた!!!!」
飛び出す鼻血を手で受け止めたがダメだった。
服が完全に事故現場の人間になってしまった。
慣れてしまった面々は「あーあ、また降谷さんが深湖ちゃん殺した」「あれは心がない」と言いながら箱ティッシュを差し出してくれる。ありがとうございます。
ティッシュを鼻に詰めながら「人の心がないんですか、あなたは?!」と文句を言うも、「マサカコンナコトニナルトハー」と取り繕う様子もない。
こいつ~!
「それで、作ってやるんですか?」
「これで作らなかったら、アルフォンスになっちゃうので作ってきます」
「やった~!他人が作った飯~!」
「あ、でも米は自分たちで用意してください。はい、リクエスト募集中です」
手帳のメモ部分を切りとり、ペンと一緒に置くと水戸部さんが嬉しそうに書き始めた。
それを「よかったな、水戸部~」と見守る他の人たちに「書かないんですか?」と聞くと、「書いてもいいの?」と返ってきた。
「むしろ、降谷さんのアレに対して水戸部さんにだけは対価がデカすぎるので、私の身の安全を思うなら書いてほしいです」
「書かないとどうなるんですか?」
「四肢欠損くらいはするかも知れない……」
「お前らー。どんどんリクエスト書けー」
「やったー」
わらわらと書きに集まってくる皆さんを横目に、「降谷さんは書かないでくださいね」と釘を刺したら、ニコリと微笑まれた。
「サワラの西京焼き追加しといてくれー」
「なんでよ、もー!」
「いや、振りなのかなと思って」
「残念!本気でした!」
「君がなにも言わなかったら僕もなにもしなかったんだが、ここぞとばかりに隙を見せたから。つい」
「ついじゃねえ~!」
反射的にいびり倒すな~!
「いいじゃないか。好きな相手に手料理を振る舞えるんだぞ?」
「それが平均的な能力値の男ならいいですけど、能力値マッターホルンにお出ししたらチクチクなんか言われるでしょ!」
「その流れも楽しんでいるんだろうな、と思った上で言う」
「心折れるわ、アホー!」
キレ散らかす私を風見さんが押さえながら、「買い物、手伝おうか?」と聞いてきた。
仏~!
「自分は忙しいから、誰か手の空いた者に行かせよう」
「わーい!ありがとうございます!」
「誰か行けるか?」
「……」
何名か手を上げたが、降谷さんが手を上げたのを見て下ろした。
「い……嫌だぁ!クソハイパードラテク野郎の運転で買い物なんていきたくない!」
「まだ僕の助手席に乗ったことないだろ」
「私は知ってるんだなぁ、これが!」
ゼロの日常履修済みなもんでね!
降谷さんがどんな運転をするかは知っているんだな!
やだ、やだ、と風見さんにしがみつく私を、降谷さんはお茶をすすりながら見つめ、「知っているとは思うが」と前振りをする。
「僕は君の泣き顔が好きでね。そう嫌がられると、もっと泣かせたくなる……」
「ミ゛ッ」
肉食獣に狙いを定められてしまい、風見さんにすがるが「大人しく一緒に行った方が身のためだよ」と諭されてしまった。
ミ゛……。
「じゃあ明日、君の家まで迎えに行くから」
「ぐぇぇ。喜びとストレスで胃に穴が開く」
あまり現実を直視したくなかった為か、その日はすっ、と眠りにつくことができた。
しかし、目覚まし時計により強制的に起こされてしまい、野太い声を出しながら起き上がった。朝だ。
買い物だし、荷物多いだろうから動きやすい服にしようと着替えて外に出ると、すでによく見知った白い車とそこに寄りかかる推しが視界に入った。
くそ、絵になる。
「おはよう」
「おはようございます」
「よく眠れたようだね」
「なにを根拠に……」
「寝言で僕の名前呼ぶくらい、いい夢見たんだろ?」
「なんて?????」
いや、たしかに夢で降谷さんとイチャコラする夢は見たが、寝言なんてどうして知っているんだ?!と心臓を掴まれた感覚に教われながら聞くと、降谷さんは笑顔で自分のスマホを指した。
スマホ……はっ!
「盗聴しましたね!」
「聞こえてきただけですよ」
文句を言おうとする私を助手席に押し込み、ご丁寧にシートベルトまでしめてくれた。
推し、めっちゃいい匂いする。
運転席に乗り込んだ降谷さんに、「法定速度と常識的なドラテクでお願いします」と念を押すが、「そう言われると、無茶をしたくなりますね」と言われて、すぐにでも降りたくなった。
「冗談ですよ。緊急時以外は、スピードだしませんよ」
「あ~ダメだ~フラグがたった~」
「大丈夫。君が夢にみるまで楽しみにしてくれたドライブデートを、台無しにはさせないさ」
「くっ……!殺せ……!」
まあ結果としては、フラグ回収をしっかりしてから、大型外資系スーパーに連れてこられた。
私は比較的ジェットコースターは得意だが、降谷さんの運転はジェットコースターとは別次元の恐怖がある。
携帯にメモしていた買う物一覧を見ていたら、横から降谷さんが覗き込んできたから距離をとってしまった。
「……なんで離れたんだ」
「むしろディスタンス守ってください」
「別に非常識な距離じゃないだろ」
「いやいやいや、推しとファンの適切な距離ではないです」
「推しとファンじゃないだろ。そんな逃げられると、くっつきたくなるな……」
嫌な予感がした瞬間、降谷さんは私の頭を抱き寄せ自分の頭を乗っけてきた。
「ひょぇ、お……あ、あ、んふ……はっ……推し……あふ……」
「なんて声をだしてるんだ。ほら、なに買うんだ」
「いっぱい……」
「それは知ってる」
推しとの距離が近すぎて、いまにもぶっ倒れそうになりながらも買い物を終了し、荷物を持とうとしたら降谷さんが全部持っていった。
パワー!!!!
「作るのは明日ですか?」
「そうですね。朝から一気に作る予定です」
「じゃあ、そのときお邪魔しようかな」
「しないでください」
「そうは言っても、作った食事を持っていく人手は必要だろ?」
ぐぇぇ、推し本当に上手。
翌朝、エプロンを引っ張りだして「よし、やるぞ」と気合いをいれた、キッチンカウンターから見ている色黒イケメンを視界にいれないようにして。
煮込み系は昨日のうちにやったし、冷えても美味しいものから作っていく。
「手際いいですね」
「生前は作り置き代行とか、キッチンとかやっていたので」
「へー」
「安室さん、暇ならできたもの詰めてください」
「つまみ食いは?」
「不許可です」
「ちぇっ」
出来上がった物をダイニングデスクに置くと、降谷さんは粛々と保存容器に詰めていく。
よーし、次。と作ろうとしたら、母さんと姉さんが寄ってきて、「彼氏?彼氏?」と期待に満ちた様子で聞いてきた。
「バイト先の先輩」
「よしきた!じゃあ、アタックしちゃお!」
嬉々として降谷さんにアタックする姉を見ながら、なにもしていないのに女を魅了する推し、さすがだと誇らしくなってしまった。
それはそうと飯を作る手は休めない。
「やった~!終わった~!」
「じゃあ、行きますよ」
その言葉にたいし、姉さんが「どこ行くんですかー?」と聞くも「秘密です」の一言とウィンクで、姉さんはメロメロになって深くは聞かなかった。
チョロい。
そのまま保温バッグに保存容器を詰めていき、降谷さんが軽々持ち上げて去っていく姿に、「かっこい~♡」と母さんと姉さんが黄色い声をあげる。
わかる。
今度は約束通り、法定速度を守った一般常識の範囲で走行してくれた。
「野郎共ー!飯だー!」
「わー!飯だー!」
「他人が作った飯だー!」
素早い動きで長机と使い捨て食器が用意され、ワクワクとした表情で待っている野郎共。
降谷さんが保温バッグがら保存容器を置いていくと、我先にとふたを開け取り分け用のスプーンでよそっていく。
「うま……!」
「あったかい味……!」
「ママ……!」
「いっぱい食べるんですよー」
私も自分用に取り分けて離れた所で食べていたら、隣に降谷さんがきた。
「うん、美味しい」
「い、嫌味を言われない……!」
「言ってほしいんですか?」
「滅相もない!」
世の中に嫌味を言われて喜ぶのはドMくらいだ。
しかし、それはそれとして推しに褒められるのは嬉しいので、表情が緩む。
「こういう、温かい料理を帰ってきて食べたり、一緒に作ったりするのも楽しそうですね」
「ん?」
「そういう人生もいいな、と思っただけですよ」
「もしそういう警察やめて家庭に入る人生を進むことになったら、ご一報ください。推すのやめるんで」
「……は?」
すっとんきょうな表情をする降谷さんを見て、レアなもん見たな、と思いながら料理を口にする。
降谷さんは信じられないという様子で、「それは、君が僕のことが嫌いになるってことか?」と聞いてきた。
「嫌いにはなりません。興味がなくなるだけです」
「もっと酷い。理由を聞いても?」
「私、降谷さんのなにがあっても信念を貫き通す姿に惚れているので、その信念ほっぽりだしてただのイケメンに成り下がったら興味もなくなりますよ」
私の言葉に、降谷さんは「それは、君との関係を後回しにしたとしても、僕のことが好きということか?」と聞いてきた。
なぜ私、と思いながらも「そういう降谷さんが好きです」と口にしてから、なんか告白みたいで恥ずかしくなる。
「そういう僕で、女性と長続きしなかったわけだが……」
「愛より信念をとるところが推せるんですよ~!」
「ふーん……。そう……、そうか……」
「どうしました?」
「いや……。今回は君に負けた気がするな、と思っただけだ」
「なんか勝負してました?顔赤くありません?」
「うるさいなぁ……」
「ダルいので嫌でーす!」
学校でのことを根掘り葉掘り聞かれ、降谷さんにからかい倒され帰ろうとしているところへ、公安の水戸部さんに襲撃された。
は~?手料理~?ダルい~。
「作ってやればいいじゃないか」
お茶を飲みながら現れた降谷さん。
くそ~自分が簡単に作れるからって軽く言ってくれやがるな~。
「いいですか、降谷さん。降谷さんは苦にならないかも知れませんが、世間一般的に料理とは労働なんですよ?対価なしに働くなんて、私は嫌です。等価交換って知ってますか?」
そう言うと、降谷さんは何事かを考えると、私の頬に軽くキスをしてから「これだけじゃ足りないかな?」と聞いてきた。
1カメ
2カメ
3カメ
「持っていかれた!!!!」
飛び出す鼻血を手で受け止めたがダメだった。
服が完全に事故現場の人間になってしまった。
慣れてしまった面々は「あーあ、また降谷さんが深湖ちゃん殺した」「あれは心がない」と言いながら箱ティッシュを差し出してくれる。ありがとうございます。
ティッシュを鼻に詰めながら「人の心がないんですか、あなたは?!」と文句を言うも、「マサカコンナコトニナルトハー」と取り繕う様子もない。
こいつ~!
「それで、作ってやるんですか?」
「これで作らなかったら、アルフォンスになっちゃうので作ってきます」
「やった~!他人が作った飯~!」
「あ、でも米は自分たちで用意してください。はい、リクエスト募集中です」
手帳のメモ部分を切りとり、ペンと一緒に置くと水戸部さんが嬉しそうに書き始めた。
それを「よかったな、水戸部~」と見守る他の人たちに「書かないんですか?」と聞くと、「書いてもいいの?」と返ってきた。
「むしろ、降谷さんのアレに対して水戸部さんにだけは対価がデカすぎるので、私の身の安全を思うなら書いてほしいです」
「書かないとどうなるんですか?」
「四肢欠損くらいはするかも知れない……」
「お前らー。どんどんリクエスト書けー」
「やったー」
わらわらと書きに集まってくる皆さんを横目に、「降谷さんは書かないでくださいね」と釘を刺したら、ニコリと微笑まれた。
「サワラの西京焼き追加しといてくれー」
「なんでよ、もー!」
「いや、振りなのかなと思って」
「残念!本気でした!」
「君がなにも言わなかったら僕もなにもしなかったんだが、ここぞとばかりに隙を見せたから。つい」
「ついじゃねえ~!」
反射的にいびり倒すな~!
「いいじゃないか。好きな相手に手料理を振る舞えるんだぞ?」
「それが平均的な能力値の男ならいいですけど、能力値マッターホルンにお出ししたらチクチクなんか言われるでしょ!」
「その流れも楽しんでいるんだろうな、と思った上で言う」
「心折れるわ、アホー!」
キレ散らかす私を風見さんが押さえながら、「買い物、手伝おうか?」と聞いてきた。
仏~!
「自分は忙しいから、誰か手の空いた者に行かせよう」
「わーい!ありがとうございます!」
「誰か行けるか?」
「……」
何名か手を上げたが、降谷さんが手を上げたのを見て下ろした。
「い……嫌だぁ!クソハイパードラテク野郎の運転で買い物なんていきたくない!」
「まだ僕の助手席に乗ったことないだろ」
「私は知ってるんだなぁ、これが!」
ゼロの日常履修済みなもんでね!
降谷さんがどんな運転をするかは知っているんだな!
やだ、やだ、と風見さんにしがみつく私を、降谷さんはお茶をすすりながら見つめ、「知っているとは思うが」と前振りをする。
「僕は君の泣き顔が好きでね。そう嫌がられると、もっと泣かせたくなる……」
「ミ゛ッ」
肉食獣に狙いを定められてしまい、風見さんにすがるが「大人しく一緒に行った方が身のためだよ」と諭されてしまった。
ミ゛……。
「じゃあ明日、君の家まで迎えに行くから」
「ぐぇぇ。喜びとストレスで胃に穴が開く」
あまり現実を直視したくなかった為か、その日はすっ、と眠りにつくことができた。
しかし、目覚まし時計により強制的に起こされてしまい、野太い声を出しながら起き上がった。朝だ。
買い物だし、荷物多いだろうから動きやすい服にしようと着替えて外に出ると、すでによく見知った白い車とそこに寄りかかる推しが視界に入った。
くそ、絵になる。
「おはよう」
「おはようございます」
「よく眠れたようだね」
「なにを根拠に……」
「寝言で僕の名前呼ぶくらい、いい夢見たんだろ?」
「なんて?????」
いや、たしかに夢で降谷さんとイチャコラする夢は見たが、寝言なんてどうして知っているんだ?!と心臓を掴まれた感覚に教われながら聞くと、降谷さんは笑顔で自分のスマホを指した。
スマホ……はっ!
「盗聴しましたね!」
「聞こえてきただけですよ」
文句を言おうとする私を助手席に押し込み、ご丁寧にシートベルトまでしめてくれた。
推し、めっちゃいい匂いする。
運転席に乗り込んだ降谷さんに、「法定速度と常識的なドラテクでお願いします」と念を押すが、「そう言われると、無茶をしたくなりますね」と言われて、すぐにでも降りたくなった。
「冗談ですよ。緊急時以外は、スピードだしませんよ」
「あ~ダメだ~フラグがたった~」
「大丈夫。君が夢にみるまで楽しみにしてくれたドライブデートを、台無しにはさせないさ」
「くっ……!殺せ……!」
まあ結果としては、フラグ回収をしっかりしてから、大型外資系スーパーに連れてこられた。
私は比較的ジェットコースターは得意だが、降谷さんの運転はジェットコースターとは別次元の恐怖がある。
携帯にメモしていた買う物一覧を見ていたら、横から降谷さんが覗き込んできたから距離をとってしまった。
「……なんで離れたんだ」
「むしろディスタンス守ってください」
「別に非常識な距離じゃないだろ」
「いやいやいや、推しとファンの適切な距離ではないです」
「推しとファンじゃないだろ。そんな逃げられると、くっつきたくなるな……」
嫌な予感がした瞬間、降谷さんは私の頭を抱き寄せ自分の頭を乗っけてきた。
「ひょぇ、お……あ、あ、んふ……はっ……推し……あふ……」
「なんて声をだしてるんだ。ほら、なに買うんだ」
「いっぱい……」
「それは知ってる」
推しとの距離が近すぎて、いまにもぶっ倒れそうになりながらも買い物を終了し、荷物を持とうとしたら降谷さんが全部持っていった。
パワー!!!!
「作るのは明日ですか?」
「そうですね。朝から一気に作る予定です」
「じゃあ、そのときお邪魔しようかな」
「しないでください」
「そうは言っても、作った食事を持っていく人手は必要だろ?」
ぐぇぇ、推し本当に上手。
翌朝、エプロンを引っ張りだして「よし、やるぞ」と気合いをいれた、キッチンカウンターから見ている色黒イケメンを視界にいれないようにして。
煮込み系は昨日のうちにやったし、冷えても美味しいものから作っていく。
「手際いいですね」
「生前は作り置き代行とか、キッチンとかやっていたので」
「へー」
「安室さん、暇ならできたもの詰めてください」
「つまみ食いは?」
「不許可です」
「ちぇっ」
出来上がった物をダイニングデスクに置くと、降谷さんは粛々と保存容器に詰めていく。
よーし、次。と作ろうとしたら、母さんと姉さんが寄ってきて、「彼氏?彼氏?」と期待に満ちた様子で聞いてきた。
「バイト先の先輩」
「よしきた!じゃあ、アタックしちゃお!」
嬉々として降谷さんにアタックする姉を見ながら、なにもしていないのに女を魅了する推し、さすがだと誇らしくなってしまった。
それはそうと飯を作る手は休めない。
「やった~!終わった~!」
「じゃあ、行きますよ」
その言葉にたいし、姉さんが「どこ行くんですかー?」と聞くも「秘密です」の一言とウィンクで、姉さんはメロメロになって深くは聞かなかった。
チョロい。
そのまま保温バッグに保存容器を詰めていき、降谷さんが軽々持ち上げて去っていく姿に、「かっこい~♡」と母さんと姉さんが黄色い声をあげる。
わかる。
今度は約束通り、法定速度を守った一般常識の範囲で走行してくれた。
「野郎共ー!飯だー!」
「わー!飯だー!」
「他人が作った飯だー!」
素早い動きで長机と使い捨て食器が用意され、ワクワクとした表情で待っている野郎共。
降谷さんが保温バッグがら保存容器を置いていくと、我先にとふたを開け取り分け用のスプーンでよそっていく。
「うま……!」
「あったかい味……!」
「ママ……!」
「いっぱい食べるんですよー」
私も自分用に取り分けて離れた所で食べていたら、隣に降谷さんがきた。
「うん、美味しい」
「い、嫌味を言われない……!」
「言ってほしいんですか?」
「滅相もない!」
世の中に嫌味を言われて喜ぶのはドMくらいだ。
しかし、それはそれとして推しに褒められるのは嬉しいので、表情が緩む。
「こういう、温かい料理を帰ってきて食べたり、一緒に作ったりするのも楽しそうですね」
「ん?」
「そういう人生もいいな、と思っただけですよ」
「もしそういう警察やめて家庭に入る人生を進むことになったら、ご一報ください。推すのやめるんで」
「……は?」
すっとんきょうな表情をする降谷さんを見て、レアなもん見たな、と思いながら料理を口にする。
降谷さんは信じられないという様子で、「それは、君が僕のことが嫌いになるってことか?」と聞いてきた。
「嫌いにはなりません。興味がなくなるだけです」
「もっと酷い。理由を聞いても?」
「私、降谷さんのなにがあっても信念を貫き通す姿に惚れているので、その信念ほっぽりだしてただのイケメンに成り下がったら興味もなくなりますよ」
私の言葉に、降谷さんは「それは、君との関係を後回しにしたとしても、僕のことが好きということか?」と聞いてきた。
なぜ私、と思いながらも「そういう降谷さんが好きです」と口にしてから、なんか告白みたいで恥ずかしくなる。
「そういう僕で、女性と長続きしなかったわけだが……」
「愛より信念をとるところが推せるんですよ~!」
「ふーん……。そう……、そうか……」
「どうしました?」
「いや……。今回は君に負けた気がするな、と思っただけだ」
「なんか勝負してました?顔赤くありません?」
「うるさいなぁ……」