短編
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「このカス!なにしたら、そんなバカなミスすんだよ!俺に尻拭いさせんな!」
小気味よい音を立てて、書類で頭を叩かれた。
凡ミス中の凡ミスをかましてしまい、その処理を三途さんに泣きついてしてもらった、まさに身から出た錆である。
しかし、三途さんの暴言と暴力は私が凡ミスしなくても理不尽に飛んでくる。
こんな理不尽になぜ耐えているのかと聞かれると、まあ、平たく言えば私が借金のカタに三途さんに買われたわけだが。
逃げたらなにをされるかわからない。
DVはあるものの、三途さんにはそれなりによくしてもらっている。
衣食住はそれなりに保証してくれているし、病気や怪我をしたらそれなりに気遣ってくれる。
ありがたいことだ。
そんな三途さんが唯一絶対的に優しくなるのは、私が生理のとき。
その日も全体的な鈍痛と朦朧とした意識のなか出勤すると、私が何か言う前に三途さんが「体調は?」と聞いてきた。
前々から薄っすら気がついてはいたが、この人、私の生理周期を把握してないか?
気持ち悪っ、と思うも体調が悪くそれどころではないので、生理中の体調の悪さ全部乗せをお伝えする。
「今回も結構重いな。時間できたら家まで送ってやるから、それまでソファーで寝てろ」
「でも、仕事が……」
「そんな状態でできるわけねえだろ、バカ。貧血来そうなんじゃねえの?」
三途さんの問いかけに弱く頷くと「じゃあ、大人しく寝てろ」とソファーまでそれとなく誘導してくれた。
「マイキーには俺が言っとくから」
「すみません……お願いします……」
「ん」
短く返事をし、自分のコートを私にかけて三途さんは部屋を出ていく。
こういうさり気ない優しさが女心をくすぐるんだろう。
横になったことで気が抜けたのか、一気に眠気が襲ってきた。
下手に寝るとなにをされるかわからないので起きていたい気持ちはある。
蘭さんとか蘭さんとか蘭さんとか!
しかし、生理中の眠気は抗うことを許さない。
◇
マイキーに撫子を帰す旨を伝えると「大丈夫そうか?」と聞かれた。
「薬効いてないみたいなんで、無理はさせられないっすね」
「なら、三途もそのまま休んで側にいてやれ」
「いや流石にそれは」
「俺も心配だから、命令」
マイキーの命令という名の気遣いに申し訳なくなりつつ、受け入れることにする。
部屋に戻ると、撫子がのんきに寝息をたてていた。
起こそうかとも思ったが、足元覚束ないうえに貧血でぶっ倒れかねない状態でこいつを歩かせるのは不安しかない。
疲れるがしかたない、運ぶか。
寝ている撫子を抱き上げると、出会った当初より随分と重くなった。
もやし生活をしていた頃の撫子は鶏ガラだったからなぁ。
「もっと肥えろよー」
「兄貴、聞いた?三途がサイテーなこと言ってる」
「女に言ったらダメだよなぁ、竜胆」
「うるせえぞ、お前ら」
灰谷共を睨みつけ、事務所近くのこいつの家まで歩いて送っていく途中、猫みたいに俺の肩口に頭を擦り寄せてきた。
……ふーん、可愛いじゃん。
「撫子、家着いたぞ。起きろ」
「ん……三途さん……」
「鍵開けろ」
「んー……」
寝起きでぽけっとした状態で鍵を開け、フラフラとベッドまで一直線に向かう。
「買い物行ってくるから、大人しく寝とけよ」
「んー……」
まあ、どうせ起きないだろうし、ほっとくか。
「うまい飯食わしてやるから、期待しとけよ」
俺の言葉に撫子は反応することなく、静かに寝息をたてはじめた。
撫子に黙って作った合鍵で、静かに鍵を閉める。
小気味よい音を立てて、書類で頭を叩かれた。
凡ミス中の凡ミスをかましてしまい、その処理を三途さんに泣きついてしてもらった、まさに身から出た錆である。
しかし、三途さんの暴言と暴力は私が凡ミスしなくても理不尽に飛んでくる。
こんな理不尽になぜ耐えているのかと聞かれると、まあ、平たく言えば私が借金のカタに三途さんに買われたわけだが。
逃げたらなにをされるかわからない。
DVはあるものの、三途さんにはそれなりによくしてもらっている。
衣食住はそれなりに保証してくれているし、病気や怪我をしたらそれなりに気遣ってくれる。
ありがたいことだ。
そんな三途さんが唯一絶対的に優しくなるのは、私が生理のとき。
その日も全体的な鈍痛と朦朧とした意識のなか出勤すると、私が何か言う前に三途さんが「体調は?」と聞いてきた。
前々から薄っすら気がついてはいたが、この人、私の生理周期を把握してないか?
気持ち悪っ、と思うも体調が悪くそれどころではないので、生理中の体調の悪さ全部乗せをお伝えする。
「今回も結構重いな。時間できたら家まで送ってやるから、それまでソファーで寝てろ」
「でも、仕事が……」
「そんな状態でできるわけねえだろ、バカ。貧血来そうなんじゃねえの?」
三途さんの問いかけに弱く頷くと「じゃあ、大人しく寝てろ」とソファーまでそれとなく誘導してくれた。
「マイキーには俺が言っとくから」
「すみません……お願いします……」
「ん」
短く返事をし、自分のコートを私にかけて三途さんは部屋を出ていく。
こういうさり気ない優しさが女心をくすぐるんだろう。
横になったことで気が抜けたのか、一気に眠気が襲ってきた。
下手に寝るとなにをされるかわからないので起きていたい気持ちはある。
蘭さんとか蘭さんとか蘭さんとか!
しかし、生理中の眠気は抗うことを許さない。
◇
マイキーに撫子を帰す旨を伝えると「大丈夫そうか?」と聞かれた。
「薬効いてないみたいなんで、無理はさせられないっすね」
「なら、三途もそのまま休んで側にいてやれ」
「いや流石にそれは」
「俺も心配だから、命令」
マイキーの命令という名の気遣いに申し訳なくなりつつ、受け入れることにする。
部屋に戻ると、撫子がのんきに寝息をたてていた。
起こそうかとも思ったが、足元覚束ないうえに貧血でぶっ倒れかねない状態でこいつを歩かせるのは不安しかない。
疲れるがしかたない、運ぶか。
寝ている撫子を抱き上げると、出会った当初より随分と重くなった。
もやし生活をしていた頃の撫子は鶏ガラだったからなぁ。
「もっと肥えろよー」
「兄貴、聞いた?三途がサイテーなこと言ってる」
「女に言ったらダメだよなぁ、竜胆」
「うるせえぞ、お前ら」
灰谷共を睨みつけ、事務所近くのこいつの家まで歩いて送っていく途中、猫みたいに俺の肩口に頭を擦り寄せてきた。
……ふーん、可愛いじゃん。
「撫子、家着いたぞ。起きろ」
「ん……三途さん……」
「鍵開けろ」
「んー……」
寝起きでぽけっとした状態で鍵を開け、フラフラとベッドまで一直線に向かう。
「買い物行ってくるから、大人しく寝とけよ」
「んー……」
まあ、どうせ起きないだろうし、ほっとくか。
「うまい飯食わしてやるから、期待しとけよ」
俺の言葉に撫子は反応することなく、静かに寝息をたてはじめた。
撫子に黙って作った合鍵で、静かに鍵を閉める。
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