短編
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「撫子さんって、いっつもフワッとしてるっすよね」
兎原の言葉に、なにか違和感を感じた。
フワッと……。
そんな可愛い表現ではない気がする。
小学生のときから付き合いはあるが、思い出すのは要領よく面倒事を避けていた。
のらりくらり、その言葉がよくに合う女だ。
というより、面倒事が撫子を避けて通っていた気がする。
撫子自体は別に能力が低いとかミスが多いというわけではない。
逆に能力が高く、先を見通す力が高過ぎて周りが理解しきれずついていけない。
それを撫子は理解しているので、面倒事が降りかかりそうなときは「どうなってもいいなら、いいよ」と先手を打つ。
あのアルカイックスマイルで念押しするように、「どうなっても、いいんだね?」と聞かれて「はい、いいです」と答える人間は、まあ、いない。
あの熊谷すら「やっぱりいいです」と、まだ撫子という人間がわかっていなかったときに折れたくらいだ。
一度、理由はわからないが撫子を放課後に呼び出した女の先輩がいたが、果敢にも呼び出したものの、校内放送でオーディエンスを集められ尻尾巻いて逃げたことがある。
撫子に面倒事をふっかけてはいけないと、俺は強く思ったものだ。
「あの人が焦ったり慌てたりすることって、あるんすかね」
「あるよ」
ついうっかり食い気味に答えてしまった。
兎原が嫌な笑みで「え~!なんすか、それ!気になる!」と食いついてきた。
「教えるわけないだろ」
「いいじゃないっすか~。減るもんじゃないし~」
「減る」
あと、お前と撫子との思い出を共有したくない。
絡んでくる兎原を無視して帰ると、つい、撫子があのアルカイックスマイルを崩して焦ったり泣いたりしていた瞬間を思い出して、笑みがこぼれた。
どれも俺がヤバいときで、意外と助けられてたんだな。
『死にたくなったら、言って。一緒に死んであげるから』
いつだったか、そんなことを言っていた。
冗談か本気か、いや、アイツの場合これは脅しだな。
「私に死なれるのは嫌だろ」という、脅し。
確かに、撫子に死なれるのは嫌だが。
でも――
「どうしたの、機嫌いいじゃん」
飲みに誘った那琴が、不思議そうな顔で聞いてきた。
「いいや。お前と一緒に死ぬのも悪くないな、て思っただけ」
「は?なに?縁起でもない」
「死んでくれるんだろ、俺と」
撫子はなんの話だ、と首を傾げているが、別にいいよ。
俺だけが覚えてても。
その脅しが、俺にとって救いなのはたしかだし、撫子はきっと俺が死んだら追いかけてきてくれる。
「信じてるからな、撫子」
「う、うん」
兎原の言葉に、なにか違和感を感じた。
フワッと……。
そんな可愛い表現ではない気がする。
小学生のときから付き合いはあるが、思い出すのは要領よく面倒事を避けていた。
のらりくらり、その言葉がよくに合う女だ。
というより、面倒事が撫子を避けて通っていた気がする。
撫子自体は別に能力が低いとかミスが多いというわけではない。
逆に能力が高く、先を見通す力が高過ぎて周りが理解しきれずついていけない。
それを撫子は理解しているので、面倒事が降りかかりそうなときは「どうなってもいいなら、いいよ」と先手を打つ。
あのアルカイックスマイルで念押しするように、「どうなっても、いいんだね?」と聞かれて「はい、いいです」と答える人間は、まあ、いない。
あの熊谷すら「やっぱりいいです」と、まだ撫子という人間がわかっていなかったときに折れたくらいだ。
一度、理由はわからないが撫子を放課後に呼び出した女の先輩がいたが、果敢にも呼び出したものの、校内放送でオーディエンスを集められ尻尾巻いて逃げたことがある。
撫子に面倒事をふっかけてはいけないと、俺は強く思ったものだ。
「あの人が焦ったり慌てたりすることって、あるんすかね」
「あるよ」
ついうっかり食い気味に答えてしまった。
兎原が嫌な笑みで「え~!なんすか、それ!気になる!」と食いついてきた。
「教えるわけないだろ」
「いいじゃないっすか~。減るもんじゃないし~」
「減る」
あと、お前と撫子との思い出を共有したくない。
絡んでくる兎原を無視して帰ると、つい、撫子があのアルカイックスマイルを崩して焦ったり泣いたりしていた瞬間を思い出して、笑みがこぼれた。
どれも俺がヤバいときで、意外と助けられてたんだな。
『死にたくなったら、言って。一緒に死んであげるから』
いつだったか、そんなことを言っていた。
冗談か本気か、いや、アイツの場合これは脅しだな。
「私に死なれるのは嫌だろ」という、脅し。
確かに、撫子に死なれるのは嫌だが。
でも――
「どうしたの、機嫌いいじゃん」
飲みに誘った那琴が、不思議そうな顔で聞いてきた。
「いいや。お前と一緒に死ぬのも悪くないな、て思っただけ」
「は?なに?縁起でもない」
「死んでくれるんだろ、俺と」
撫子はなんの話だ、と首を傾げているが、別にいいよ。
俺だけが覚えてても。
その脅しが、俺にとって救いなのはたしかだし、撫子はきっと俺が死んだら追いかけてきてくれる。
「信じてるからな、撫子」
「う、うん」