短編
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今日は立て続けによくないことが起こり、機嫌が悪い。
いま兎原がちょっかいをかけてきたら無関心を怒りが上回ってしまう。
なんとかして気持ちを落ち着けようと無心でハンドグリップを握っていると、部屋の外がドタバタとうるさい。
兎原だな、来い。捻ってやる。
扉の方を向くと、熊谷がなにかを部屋に投げ入れすぐに出ていった。
なんだ?
「いったぁ……。なんなのよ、熊谷のやつ……」
「撫子?」
「あ、裏道さん」
大丈夫?と言いながら立ち上がらせると、困ったように笑いながら「ありがとうございます」と、手を握られた。
俺の機嫌が少しよくなった。
「なんかあったのか?」
「いや、熊谷が突然うちの部署に来て「面貸せ」て言って引きずって来られました」
「あー……なるほど……」
熊谷なりに気を遣ってくれたのだろう。
うん、まあ、助かったと言えば助かった。
「ちょっとだけ、話していかないか?」
「いいですよ。裏道さん、大丈夫ですか?なんだか顔色悪いですけど」
「うん、まあ。ちょっと、不運続きだったというか……」
「そうでしたか。私になにかできることありますか?」
なにか……。
俺のこと大好きって言って抱き締めてキスしてくれたら、たぶんこのあと一ヶ月くらいは耐えられる気がするが、さすがにそれは気持ち悪い。
「……手、握っててくれない?」
「それだけでいいんですか?」
「うん」
不思議そうにしながらも、俺の手を両手で握ってくれる。
じんわりとした温かさが伝わり、少し泣きそうになった。
安心する。
「ありがとう。おかげで、今日乗りきれそう」
「よかったです。私も、裏道さんに会えて元気もらえました」
「撫子……」
「やっぱ、推しに会うと元気になりますね!」
ちょっとロマンスを期待してしまったが、まあ、うん、そうだよな……。
彼女の中で、俺は推しでしかない……。
「はぁ……」
「え、なんで元気になくなったんですか」
「ちょっと悲しくなった」
「え、え~?なんで?」
おろおろしながら俺の頭を撫でる撫子の頭を撫で返していると、次の収録の時間になった。
「ありがとう。気持ち回復した」
「なら、よかったですが……」
「撫子も仕事がんばれ」
「はい……」
楽屋前で別れると、兎原と熊谷がこちらの様子を伺っていた。
このまま機嫌が悪かったら、兎原に嫌がらせでもしてやろうかと思ったが、いまの機嫌はややプラス。
「熊谷、ありがとう」
「いえ」
「裏道さん、なにもしてないですよね?」
「は?」
なにも、てどういう意味だよ。
なにかするわけねえだろうが。
心持ち足取り軽く収録に入ると、子供たちに「むしろ不安」と言われたが、俺には撫子がいる。
今日のお礼に食事に誘おうかと思ったら、「あっ!裏道さん!」とちょうど聞きたかった声が。
「ちょうどよかった。食事行かな――」
「話はあとで聞きますから、いまは逃げますよ!!」
「え?」
走ってきた勢いのまま手を掴まれ走り出され、何事かと思いつつも一緒に走る。
適当な場所まで走ると、周辺を警戒しながら「いないな……いや、あの虚弱が私の足に追い付けるはずない……」と呟く。
「なにから逃げてるんだよ……」
「木角さんからです」
聞くと、上武さんの独断専行により煽りを受けた木角さんに、尻拭いをしろと捕まりかけて逃げていたらしい。
しかし、通信機器からは逃げられなかったようで、さっきからずっとケータイが鳴っている。
「電源切っておこう……」
「大丈夫か?あとから面倒なんじゃ……」
「逃げた時点で面倒なのは確定ですから」
まあ、それはそう。
あの木角さんが逃げた相手にキレないわけがない。
「すみません、なんか勢いで引っ張ってしまって。裏道さん、関係ないのに」
「それは別に構わないけど。食事に誘うつもりだったし、ちょうどよかった」
「そうなんですか?喜んで行きます!どこに行きましょうか」
「焼き肉行く?」
「行きます!」
はしゃぐ撫子に、いまだに俺と手を繋いでいることを指摘すべきか悩んだが、はっきり言って美味しいので黙っていた。
結局、店で席に通されるまで気づかず、気づいたときの慌てようはなかなか面白かった。
いま兎原がちょっかいをかけてきたら無関心を怒りが上回ってしまう。
なんとかして気持ちを落ち着けようと無心でハンドグリップを握っていると、部屋の外がドタバタとうるさい。
兎原だな、来い。捻ってやる。
扉の方を向くと、熊谷がなにかを部屋に投げ入れすぐに出ていった。
なんだ?
「いったぁ……。なんなのよ、熊谷のやつ……」
「撫子?」
「あ、裏道さん」
大丈夫?と言いながら立ち上がらせると、困ったように笑いながら「ありがとうございます」と、手を握られた。
俺の機嫌が少しよくなった。
「なんかあったのか?」
「いや、熊谷が突然うちの部署に来て「面貸せ」て言って引きずって来られました」
「あー……なるほど……」
熊谷なりに気を遣ってくれたのだろう。
うん、まあ、助かったと言えば助かった。
「ちょっとだけ、話していかないか?」
「いいですよ。裏道さん、大丈夫ですか?なんだか顔色悪いですけど」
「うん、まあ。ちょっと、不運続きだったというか……」
「そうでしたか。私になにかできることありますか?」
なにか……。
俺のこと大好きって言って抱き締めてキスしてくれたら、たぶんこのあと一ヶ月くらいは耐えられる気がするが、さすがにそれは気持ち悪い。
「……手、握っててくれない?」
「それだけでいいんですか?」
「うん」
不思議そうにしながらも、俺の手を両手で握ってくれる。
じんわりとした温かさが伝わり、少し泣きそうになった。
安心する。
「ありがとう。おかげで、今日乗りきれそう」
「よかったです。私も、裏道さんに会えて元気もらえました」
「撫子……」
「やっぱ、推しに会うと元気になりますね!」
ちょっとロマンスを期待してしまったが、まあ、うん、そうだよな……。
彼女の中で、俺は推しでしかない……。
「はぁ……」
「え、なんで元気になくなったんですか」
「ちょっと悲しくなった」
「え、え~?なんで?」
おろおろしながら俺の頭を撫でる撫子の頭を撫で返していると、次の収録の時間になった。
「ありがとう。気持ち回復した」
「なら、よかったですが……」
「撫子も仕事がんばれ」
「はい……」
楽屋前で別れると、兎原と熊谷がこちらの様子を伺っていた。
このまま機嫌が悪かったら、兎原に嫌がらせでもしてやろうかと思ったが、いまの機嫌はややプラス。
「熊谷、ありがとう」
「いえ」
「裏道さん、なにもしてないですよね?」
「は?」
なにも、てどういう意味だよ。
なにかするわけねえだろうが。
心持ち足取り軽く収録に入ると、子供たちに「むしろ不安」と言われたが、俺には撫子がいる。
今日のお礼に食事に誘おうかと思ったら、「あっ!裏道さん!」とちょうど聞きたかった声が。
「ちょうどよかった。食事行かな――」
「話はあとで聞きますから、いまは逃げますよ!!」
「え?」
走ってきた勢いのまま手を掴まれ走り出され、何事かと思いつつも一緒に走る。
適当な場所まで走ると、周辺を警戒しながら「いないな……いや、あの虚弱が私の足に追い付けるはずない……」と呟く。
「なにから逃げてるんだよ……」
「木角さんからです」
聞くと、上武さんの独断専行により煽りを受けた木角さんに、尻拭いをしろと捕まりかけて逃げていたらしい。
しかし、通信機器からは逃げられなかったようで、さっきからずっとケータイが鳴っている。
「電源切っておこう……」
「大丈夫か?あとから面倒なんじゃ……」
「逃げた時点で面倒なのは確定ですから」
まあ、それはそう。
あの木角さんが逃げた相手にキレないわけがない。
「すみません、なんか勢いで引っ張ってしまって。裏道さん、関係ないのに」
「それは別に構わないけど。食事に誘うつもりだったし、ちょうどよかった」
「そうなんですか?喜んで行きます!どこに行きましょうか」
「焼き肉行く?」
「行きます!」
はしゃぐ撫子に、いまだに俺と手を繋いでいることを指摘すべきか悩んだが、はっきり言って美味しいので黙っていた。
結局、店で席に通されるまで気づかず、気づいたときの慌てようはなかなか面白かった。