短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「好きで済む感情じゃねえんだよ」
「えぇ……」
兎原の「裏道さん、撫子のこと好きなんすよね?」という暇潰しの茶化しに、上記のように返す。
そんな純粋で生易しい感情なら、もっと昔に解決してる。
「好きを煮詰めて煮詰めて煮詰めて……原型がわかんねえ状態なんだよ、こっちは……」
「それってヤバい状態じゃないですか?」
「ヤバいに決まってんだろ。法と倫理と道徳と体操のお兄さんって立場がなかったら……」
「……なかったら?」
「放送禁止用語に引っかかる」
「そんなに?」
そんなになんだよ。
この煮詰まった感情をギリギリのところでコントロールしてんだ。
「ちなみに、どんなことしたいんですか?」
「熊谷?!話聞いてた?!」
「おおよそのヤバい願望知っとけば、いざというとき対処できるだろ」
「あ、そっか。ささっ!裏道さん!どんどん言ってください」
撫子にやりたいこと……。
「とりあえず、キスで窒息させたい」
「とりあえずがおかしい!」
「あと、誰の目にも触れないように、食べたい」
「怖い怖い怖い」
「背骨折れるまで抱き締めたい」
「力加減間違えたロボっすか?!」
熊谷と兎原が「ヤバいですね……」と重苦しく言う。
だから、ヤバいってさっきから言ってんだろうが。
「普通に近寄らせたらダメなんじゃね?」
「別にいいけど、裏道さんのストレスが向かう先はお前だからな」
「あ~、そっか。じゃあ、いいか」
「なにがいいの?」
「それが、裏道さんがさ~……うっ!!」
兎原がいつの間にか会話に参加していた撫子に、ヤバい会話内容を話そうとした為、思わずきつめに首を絞めてしまった。
大丈夫か?死んでないか?よかった。
「また兎原なんかしたんですか?」
「そう。撫子は、なんかあった?」
そう聞くと、苦笑いをしながら「木角さんから、裏道さんをなにがなんでも連れてこいと……」と言われ、俺の心の扉が閉じた。
そうか……お前もそっち側の人間なんだな……。
「でも、裏道さん疲れてるし、こっちの尻拭いさせたくないって反抗したら木角さんにキレ散らかされて、怖くて一回ここに避難しに来ました」
「うん、怖かったな。もう戻らず俺と帰ろう」
手のひら返しで心を開く俺に、撫子は首を振り「それはできません」と言う。
しかし、その表情は疲れきっている。
帰さないと……俺みたいにしたらダメだ……。
「撫子……。いいか、やりたくないことからは、ときとして逃げてもいいんだ」
「え、裏道さんいつも逆のこといってないっすか?」
「それはそれ!これはこれ!兎原!お前はいいのか!撫子が木角さんに怒鳴り散らされても!可哀想だろ!」
「え~~~~~~~酷いな~~~~~。そんなことしませんよ~~~~~~」
「ひっ」
背後からした情緒不安定な声に、思わず小さい悲鳴がでた。
び、びっくりした……。
「それはそうと~~~~~……苗樫、てめぇ、なに仕事サボってんだよ。お前のうらみちお兄さんグッズ、醤油で漬けられてぇのか?」
「やめてください」
木角さんに胸元を締め上げられる撫子をそっと救出して背中に隠し「それで、俺になんの用ですか?」と聞くと、あの情緒不安定な笑みで「実はですね~~~~」と話し始める。
「デジタル企画部が、また勝手に商品の予約開始しまして~~~~~。それの特典に、うらみちお兄さんのサインをつけるらしくて~~~~~~」
「え、聞いてないんですけど……」
「俺もなんですよ~~~~!聞いたとき、本当にあいつを窓から投げ飛ばしてやろうかと思いましたよ~~~~!!というわけで、お兄さん~~~~~~いまからサイン五百枚書いてください……」
「ご……」
ちょっと理解できない枚数を言われ、思考がとまってしまった。
五百枚って何枚?
放心する俺の後ろから撫子が出てきて、「木角さん!うちのミスです、うちで対処します!」と勇猛果敢に言う。
撫子……強くなったな……。
「へぇ……どう対処するつもりか言ってみろ……」
「……ノープランです」
「なんか考えてから偉そうな発言しろや!!!!!!で~~~~~うらみちお兄さん~~~~。お願いできますか~~~~~?」
「いや……」
「え!!!??!?」
「……やります」
木角さんの勢いが怖くて受けたが、このまま逃げれば撫子に被害がでるだろう。
罪悪感で顔色を悪くした撫子に「大丈夫だから」と言って、帰した。が、失敗したかも知れない。
百枚書いたあたりから、虚無が襲いかかってきている。
あと、まだ三百残っている……。
「帰りたい……」
そう呟いた瞬間、ノックがして思わず背筋が伸びた。
木角さんかと思い身構えたが、顔をだしたのは撫子だった。
「帰ったんじゃなかったのか?」
「やっぱり気になって、戻ってきました」
申し訳なさそうにする撫子に、「気にしなくてよかったのに」と口では言うが、正直戻ってきてくれてよかった。
あのまま一人で作業をしていたら、ただでさえやられているメンタルがさらにやられていた。
隣のイスを引いて座るように促すと、机におむすびと飲み物を置き「休憩しましょ」と誘ってきた。
ああ……うん、好き……。
「本当なら、甘いもので血糖値上げほしいんですけどね。苦手なのに無理強いはできませんからね~」
……好き。
この気遣いを兎原が一センチでも見習えば……。
「フルーツもダメですか?」
「好き」
「どうぞ」
「……」
少し、悪い考えがよぎった。
食べさせてもらえないか、これ。
しかし、直接的に「食べさせてくれないか?」は気持ち悪すぎる。
なにか、どうにかして……。
「あー……実はサイン書きすぎて、手が痛いな……なんて……」
「そうなんですね!じゃあ、私が食べさせてあげます!」
「あぁ、うん。ありがとう」
思惑通りに差し出された果物に心拍数が上がる。
ゆっくりと口で受け取り、咀嚼する。
「美味しいですか?」
「うん……」
「そうだ!手のマッサージしますよ!実は、いい匂いのハンドクリーム持ってるんです!」
これなんですけど、と鞄から取り出したハンドクリームを少し手にだし「嫌いじゃないですか?」と少し近づける。
フワリと、涼やかな花の匂いがした。
撫子の匂いだ。
「うん、嫌いじゃない。むしろ好き」
「じゃあ、マッサージしますね」
失礼しまーす、と手の甲にクリームを少しだし、塗り込むように手の平を揉まれる。
暖かく指圧が気持ちいい……のだが、音が不味い。
出しすぎたのか、ヌチャヌチャとした音が理性に揺さぶりをかけられる。
「あ……うん……撫子……あの……」
「裏道さん」
「う、うん」
「気持ちいいですか?」
上目使いで「気持ちいいか」とねちっこい音をたてながら聞かれ、理性が切れそうだ。
抑えろ……抑えろ……。
「今日は、ご迷惑をおかけしました。でも私、裏道さんのそういうとこ、好きです」
あ、ダメだ好き。
「撫子」
「はい」
「背骨どれくらい頑丈?」
「は?」
「えぇ……」
兎原の「裏道さん、撫子のこと好きなんすよね?」という暇潰しの茶化しに、上記のように返す。
そんな純粋で生易しい感情なら、もっと昔に解決してる。
「好きを煮詰めて煮詰めて煮詰めて……原型がわかんねえ状態なんだよ、こっちは……」
「それってヤバい状態じゃないですか?」
「ヤバいに決まってんだろ。法と倫理と道徳と体操のお兄さんって立場がなかったら……」
「……なかったら?」
「放送禁止用語に引っかかる」
「そんなに?」
そんなになんだよ。
この煮詰まった感情をギリギリのところでコントロールしてんだ。
「ちなみに、どんなことしたいんですか?」
「熊谷?!話聞いてた?!」
「おおよそのヤバい願望知っとけば、いざというとき対処できるだろ」
「あ、そっか。ささっ!裏道さん!どんどん言ってください」
撫子にやりたいこと……。
「とりあえず、キスで窒息させたい」
「とりあえずがおかしい!」
「あと、誰の目にも触れないように、食べたい」
「怖い怖い怖い」
「背骨折れるまで抱き締めたい」
「力加減間違えたロボっすか?!」
熊谷と兎原が「ヤバいですね……」と重苦しく言う。
だから、ヤバいってさっきから言ってんだろうが。
「普通に近寄らせたらダメなんじゃね?」
「別にいいけど、裏道さんのストレスが向かう先はお前だからな」
「あ~、そっか。じゃあ、いいか」
「なにがいいの?」
「それが、裏道さんがさ~……うっ!!」
兎原がいつの間にか会話に参加していた撫子に、ヤバい会話内容を話そうとした為、思わずきつめに首を絞めてしまった。
大丈夫か?死んでないか?よかった。
「また兎原なんかしたんですか?」
「そう。撫子は、なんかあった?」
そう聞くと、苦笑いをしながら「木角さんから、裏道さんをなにがなんでも連れてこいと……」と言われ、俺の心の扉が閉じた。
そうか……お前もそっち側の人間なんだな……。
「でも、裏道さん疲れてるし、こっちの尻拭いさせたくないって反抗したら木角さんにキレ散らかされて、怖くて一回ここに避難しに来ました」
「うん、怖かったな。もう戻らず俺と帰ろう」
手のひら返しで心を開く俺に、撫子は首を振り「それはできません」と言う。
しかし、その表情は疲れきっている。
帰さないと……俺みたいにしたらダメだ……。
「撫子……。いいか、やりたくないことからは、ときとして逃げてもいいんだ」
「え、裏道さんいつも逆のこといってないっすか?」
「それはそれ!これはこれ!兎原!お前はいいのか!撫子が木角さんに怒鳴り散らされても!可哀想だろ!」
「え~~~~~~~酷いな~~~~~。そんなことしませんよ~~~~~~」
「ひっ」
背後からした情緒不安定な声に、思わず小さい悲鳴がでた。
び、びっくりした……。
「それはそうと~~~~~……苗樫、てめぇ、なに仕事サボってんだよ。お前のうらみちお兄さんグッズ、醤油で漬けられてぇのか?」
「やめてください」
木角さんに胸元を締め上げられる撫子をそっと救出して背中に隠し「それで、俺になんの用ですか?」と聞くと、あの情緒不安定な笑みで「実はですね~~~~」と話し始める。
「デジタル企画部が、また勝手に商品の予約開始しまして~~~~~。それの特典に、うらみちお兄さんのサインをつけるらしくて~~~~~~」
「え、聞いてないんですけど……」
「俺もなんですよ~~~~!聞いたとき、本当にあいつを窓から投げ飛ばしてやろうかと思いましたよ~~~~!!というわけで、お兄さん~~~~~~いまからサイン五百枚書いてください……」
「ご……」
ちょっと理解できない枚数を言われ、思考がとまってしまった。
五百枚って何枚?
放心する俺の後ろから撫子が出てきて、「木角さん!うちのミスです、うちで対処します!」と勇猛果敢に言う。
撫子……強くなったな……。
「へぇ……どう対処するつもりか言ってみろ……」
「……ノープランです」
「なんか考えてから偉そうな発言しろや!!!!!!で~~~~~うらみちお兄さん~~~~。お願いできますか~~~~~?」
「いや……」
「え!!!??!?」
「……やります」
木角さんの勢いが怖くて受けたが、このまま逃げれば撫子に被害がでるだろう。
罪悪感で顔色を悪くした撫子に「大丈夫だから」と言って、帰した。が、失敗したかも知れない。
百枚書いたあたりから、虚無が襲いかかってきている。
あと、まだ三百残っている……。
「帰りたい……」
そう呟いた瞬間、ノックがして思わず背筋が伸びた。
木角さんかと思い身構えたが、顔をだしたのは撫子だった。
「帰ったんじゃなかったのか?」
「やっぱり気になって、戻ってきました」
申し訳なさそうにする撫子に、「気にしなくてよかったのに」と口では言うが、正直戻ってきてくれてよかった。
あのまま一人で作業をしていたら、ただでさえやられているメンタルがさらにやられていた。
隣のイスを引いて座るように促すと、机におむすびと飲み物を置き「休憩しましょ」と誘ってきた。
ああ……うん、好き……。
「本当なら、甘いもので血糖値上げほしいんですけどね。苦手なのに無理強いはできませんからね~」
……好き。
この気遣いを兎原が一センチでも見習えば……。
「フルーツもダメですか?」
「好き」
「どうぞ」
「……」
少し、悪い考えがよぎった。
食べさせてもらえないか、これ。
しかし、直接的に「食べさせてくれないか?」は気持ち悪すぎる。
なにか、どうにかして……。
「あー……実はサイン書きすぎて、手が痛いな……なんて……」
「そうなんですね!じゃあ、私が食べさせてあげます!」
「あぁ、うん。ありがとう」
思惑通りに差し出された果物に心拍数が上がる。
ゆっくりと口で受け取り、咀嚼する。
「美味しいですか?」
「うん……」
「そうだ!手のマッサージしますよ!実は、いい匂いのハンドクリーム持ってるんです!」
これなんですけど、と鞄から取り出したハンドクリームを少し手にだし「嫌いじゃないですか?」と少し近づける。
フワリと、涼やかな花の匂いがした。
撫子の匂いだ。
「うん、嫌いじゃない。むしろ好き」
「じゃあ、マッサージしますね」
失礼しまーす、と手の甲にクリームを少しだし、塗り込むように手の平を揉まれる。
暖かく指圧が気持ちいい……のだが、音が不味い。
出しすぎたのか、ヌチャヌチャとした音が理性に揺さぶりをかけられる。
「あ……うん……撫子……あの……」
「裏道さん」
「う、うん」
「気持ちいいですか?」
上目使いで「気持ちいいか」とねちっこい音をたてながら聞かれ、理性が切れそうだ。
抑えろ……抑えろ……。
「今日は、ご迷惑をおかけしました。でも私、裏道さんのそういうとこ、好きです」
あ、ダメだ好き。
「撫子」
「はい」
「背骨どれくらい頑丈?」
「は?」