短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ、裏道さん。お疲れ様で」
「……」
「ぐえっ」
出会い頭に抱き締められた。
なに??
ホールドされながらべしべしと裏道さんの背中を叩けば、静かに体を離し「俺のこと、好き?」と焦げた鍋の底みたいな目で聞いてきた。
え、なに、こわ……。口裂け女か?
「は……はい……」
「本当か?忖度してないだろうな?」
「し、してません……」
「じゃあ、好きなとこ言って……」
なに本当に怖い……。
言え、と前後に振られて怖すぎて泣きそうだ。
「えっと、厳しいこと言うけど心配しっかりしてくれるし、年下とかに意外と優しいし、嫌なことでも引き受けちゃうお人好しなとことか……好きです……」
「……本当に好きじゃん」
「えぇ、まあ……」
「……」
数秒黙ったかと思ったら、またきつめの包容をされた。
なんなんだろう。
「おっ、撫子が裏道さんに捕まってる」
「助けろ、兎原」
「嫌だピョーン」
ムカつく。
「熊谷ー、助けてー。ダメなら、この状況の説明して」
「子供たちに好きでも嫌いでもないって言われた」
「なるほど」
それは切ない。
大丈夫、大丈夫。と宥めるように抱き締め返すと、抱き締める力が増した。
無理ムリむり、圧死する。
「今日泊まっていけ」
「はい、はい。いいですよ。飲んでいきますか?」
「マジ?!じゃあ、俺も裏道さんの奢りで!」
「来るな」
一刀に伏しても来るのがメンタル強男な兎原なわけで。
そして、熊谷もついてくる。
「俺思うんだけど、撫子が体操のお姉さんとか面白くね?」
「なにが面白いか説明してみろ、ちゃらんぽらん」
「え、当たりきつ……」
当たり前だろうが。
こちとら、卒業以来トレーニングもなにもしてないぷにぶにだぞ。
しかも、体操やりたくなくてデジタル企画部に入ったのに、なにまたやらせようとしてんだ、しばくぞ。
私の殺気に兎原は怯えながら「裏道さーん!熊谷ー!」と助けを求めるが、そこ二人が助けるわけないだろ。
「面白くはないけど、撫子がいたら俺の負担は減るな。道連れにできる人間がいると、気持ちも楽になる」
「道連れ……」
そんな穏やかな顔をされても、やらないものはやりませんよ。
「出木田さんに打診してみるか……」
「不吉なこと言わないでください、裏道さん」
「聞くだけだろ。採用されるとは限らない」
「熊谷、あの出木田さんが話に乗らない確率はどれくらいだと思う?」
「……」
目をそらすんじゃねえよ。
ほぼ決定なのは目に見えてるんだろ?
ワイングラスが飛ぶ五秒前な私の肩を、裏道さんが軽く叩き「まあ、聞くだけだよ。大丈夫、大丈夫」と、歪んだ三日月みたいな目で笑っていた。
「撫子ちゃ~ん!体操できるんだって~?」
「……っす」
出木田さんのうしろで、生け贄を見つめる悪魔のような笑みを浮かべる裏道さん。
あれよ、あれよという間にわたされたピンクジャージを見つめてから「辞退します」と言うと、裏道さんの顔が死んだ。
怖……。
「え~?なんで?裏道くんが嫌い?」
「そうじゃないですけど、私は卒業してから体操をしていませんし……」
「まあまあ、そう言わず!ちょっとだけ!ちょっとだけ、ね!」
「いや、あの……!」
出木田さんの押しに押されてしまい、渋々着替えてスタジオに入ると、なんかワクワクした兎原と熊谷がいた。
帰れや。
「じゃあ、ちょっと動いてみようか」
「動く……」
ステージを見る。
え……せまっ……。
「えっ、裏道さん。こ、え?ここ、で?やれ、る?え?」
「大丈夫だって、ロンダートとバク宙しとけば」
「いや、それでも危ないでしょ?!無理でしょ?!」
ごちゃごちゃ言ってやらない私の肩を掴み、あの歪な笑みを浮かべ「やるんだよ」と詰め寄る裏道さん。
あ、はい……。
上手いこと失敗したいけど、わざと失敗したら裏道さん怒るだろうなぁ……。
「……はぁ。いきます!」
腹をくくってポージングからのロンダートとバク宙をする。
「はい、もしもーし。あ、どーもー!お世話になってます!」
「……」
見てねえじゃねえか、テメー。
怒りで頭の血管が切れそうなのに、追い討ちをかけるように指差して笑っている兎原。
お前、あとでヤンキーキックするからな。
大人、会社、仕事。我慢!
急激なストレスで胃が痛くなりながらも耐える私に、出木田さんが「あー、ごめんね~!やっぱり、裏道くんだけの方がいいかも!おつかれちゃ~ん!」と言って、さっさと帰った。
「……」
「……綺麗なロンダートだったよ」
「アリガトウゴザイマス」
「……奢るけど、飲みに行く?」
「はい……」
やりたくもない体操やらされたのに、見てないとかメンタル削られる。
あの人が偉い人じゃなかったら髪を全部むしりとっているところだ。
「マジやり損過ぎる……。やりたくないこと頑張ってやったのに……」
「お前、なんで体操やってたんだよ」
熊谷の質問に、ワインをあおってからお答えする。
「裏道さんの演技が好きだったから。正直、私の体操は裏道さんの真似なんだよね。裏道さんがやってたあの技、かっこいいな~、て。できたら裏道さん褒めてくれるし。裏道さんが辞めちゃってからは、私もいいやってなっちゃって」
「……」
「へぇ~。んじゃあ、裏道さんが体操またやり始めたら、お前もやんの?」
「するよ。けど、人に生きる理由を見いだしてると嫌われちゃ」
「うるせぇ!!!!大好きに決まってんだろ!!!!」
食いぎみにひていするじゃないですか……。
「……」
「ぐえっ」
出会い頭に抱き締められた。
なに??
ホールドされながらべしべしと裏道さんの背中を叩けば、静かに体を離し「俺のこと、好き?」と焦げた鍋の底みたいな目で聞いてきた。
え、なに、こわ……。口裂け女か?
「は……はい……」
「本当か?忖度してないだろうな?」
「し、してません……」
「じゃあ、好きなとこ言って……」
なに本当に怖い……。
言え、と前後に振られて怖すぎて泣きそうだ。
「えっと、厳しいこと言うけど心配しっかりしてくれるし、年下とかに意外と優しいし、嫌なことでも引き受けちゃうお人好しなとことか……好きです……」
「……本当に好きじゃん」
「えぇ、まあ……」
「……」
数秒黙ったかと思ったら、またきつめの包容をされた。
なんなんだろう。
「おっ、撫子が裏道さんに捕まってる」
「助けろ、兎原」
「嫌だピョーン」
ムカつく。
「熊谷ー、助けてー。ダメなら、この状況の説明して」
「子供たちに好きでも嫌いでもないって言われた」
「なるほど」
それは切ない。
大丈夫、大丈夫。と宥めるように抱き締め返すと、抱き締める力が増した。
無理ムリむり、圧死する。
「今日泊まっていけ」
「はい、はい。いいですよ。飲んでいきますか?」
「マジ?!じゃあ、俺も裏道さんの奢りで!」
「来るな」
一刀に伏しても来るのがメンタル強男な兎原なわけで。
そして、熊谷もついてくる。
「俺思うんだけど、撫子が体操のお姉さんとか面白くね?」
「なにが面白いか説明してみろ、ちゃらんぽらん」
「え、当たりきつ……」
当たり前だろうが。
こちとら、卒業以来トレーニングもなにもしてないぷにぶにだぞ。
しかも、体操やりたくなくてデジタル企画部に入ったのに、なにまたやらせようとしてんだ、しばくぞ。
私の殺気に兎原は怯えながら「裏道さーん!熊谷ー!」と助けを求めるが、そこ二人が助けるわけないだろ。
「面白くはないけど、撫子がいたら俺の負担は減るな。道連れにできる人間がいると、気持ちも楽になる」
「道連れ……」
そんな穏やかな顔をされても、やらないものはやりませんよ。
「出木田さんに打診してみるか……」
「不吉なこと言わないでください、裏道さん」
「聞くだけだろ。採用されるとは限らない」
「熊谷、あの出木田さんが話に乗らない確率はどれくらいだと思う?」
「……」
目をそらすんじゃねえよ。
ほぼ決定なのは目に見えてるんだろ?
ワイングラスが飛ぶ五秒前な私の肩を、裏道さんが軽く叩き「まあ、聞くだけだよ。大丈夫、大丈夫」と、歪んだ三日月みたいな目で笑っていた。
「撫子ちゃ~ん!体操できるんだって~?」
「……っす」
出木田さんのうしろで、生け贄を見つめる悪魔のような笑みを浮かべる裏道さん。
あれよ、あれよという間にわたされたピンクジャージを見つめてから「辞退します」と言うと、裏道さんの顔が死んだ。
怖……。
「え~?なんで?裏道くんが嫌い?」
「そうじゃないですけど、私は卒業してから体操をしていませんし……」
「まあまあ、そう言わず!ちょっとだけ!ちょっとだけ、ね!」
「いや、あの……!」
出木田さんの押しに押されてしまい、渋々着替えてスタジオに入ると、なんかワクワクした兎原と熊谷がいた。
帰れや。
「じゃあ、ちょっと動いてみようか」
「動く……」
ステージを見る。
え……せまっ……。
「えっ、裏道さん。こ、え?ここ、で?やれ、る?え?」
「大丈夫だって、ロンダートとバク宙しとけば」
「いや、それでも危ないでしょ?!無理でしょ?!」
ごちゃごちゃ言ってやらない私の肩を掴み、あの歪な笑みを浮かべ「やるんだよ」と詰め寄る裏道さん。
あ、はい……。
上手いこと失敗したいけど、わざと失敗したら裏道さん怒るだろうなぁ……。
「……はぁ。いきます!」
腹をくくってポージングからのロンダートとバク宙をする。
「はい、もしもーし。あ、どーもー!お世話になってます!」
「……」
見てねえじゃねえか、テメー。
怒りで頭の血管が切れそうなのに、追い討ちをかけるように指差して笑っている兎原。
お前、あとでヤンキーキックするからな。
大人、会社、仕事。我慢!
急激なストレスで胃が痛くなりながらも耐える私に、出木田さんが「あー、ごめんね~!やっぱり、裏道くんだけの方がいいかも!おつかれちゃ~ん!」と言って、さっさと帰った。
「……」
「……綺麗なロンダートだったよ」
「アリガトウゴザイマス」
「……奢るけど、飲みに行く?」
「はい……」
やりたくもない体操やらされたのに、見てないとかメンタル削られる。
あの人が偉い人じゃなかったら髪を全部むしりとっているところだ。
「マジやり損過ぎる……。やりたくないこと頑張ってやったのに……」
「お前、なんで体操やってたんだよ」
熊谷の質問に、ワインをあおってからお答えする。
「裏道さんの演技が好きだったから。正直、私の体操は裏道さんの真似なんだよね。裏道さんがやってたあの技、かっこいいな~、て。できたら裏道さん褒めてくれるし。裏道さんが辞めちゃってからは、私もいいやってなっちゃって」
「……」
「へぇ~。んじゃあ、裏道さんが体操またやり始めたら、お前もやんの?」
「するよ。けど、人に生きる理由を見いだしてると嫌われちゃ」
「うるせぇ!!!!大好きに決まってんだろ!!!!」
食いぎみにひていするじゃないですか……。