珍しく伊達君と猿飛君が激しい口論をしていた。
いつもは猿飛君が軽くかわして事なきを終えるのに、今日はそうならなかったらしい。
猿飛君の虫の居所が悪かったのだろう。
教室は気まずい雰囲気になり、言葉を発しているのは二人だけだった。
先に手が出たのは伊達君だった。
キレて猿飛君にビンタした。
もう一度言おう、ビンタだ。
これに対しキレた猿飛君は、女子が恍惚の吐息を漏らすあの伊達君の顔面にグーパンチだ。
女子の小さな悲鳴が上がる。
一発で終わるかと思われたこのグーパンチだったが、猿飛君は迷うことなく連打した。
全部顔面である。
それはもう、お前ボクシングやってたのかと聞きたくなるような鋭いパンチだった。
止めにヘッドバットをかました猿飛君は「撫子ちゃん痛い～！」と泣きついてきたが、誰よりも泣きたいのは倍返しどころではない報復を受けた伊達君であろう。
とりあえず猿飛君を保健室に連れていく事にする。
伊達君は誰かが連れていってくれるだろうし。