短編
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「キミ、明日休みなんだね」
「それ、一週間前から言ってますよね」
基本的に、私とスティーブンさんの休みは一緒だ。
スティーブンさんになにかあったとき、スティーブンさんの穴を一時的に埋める役割を私が担っているため、私たちはほぼ一緒にいる。
そこを無理言って休ませて貰ったのには、理由がある。
明日はスティーブンさんの誕生日だ。
この歳で親とも兄とも言える相手に、正面切ってプレゼントするのは恥ずかしい。あと、そういうのをさらっとできる性格ではない、私は。
だから、休みもらって家でケーキ作って、そっと事務所に置いて、後日あるスティーブンさんの誕生日会でさらっと人に紛れて「お誕生日おめでとうございます」と言ってプレゼントを流れでわたす魂胆だ。
「明日がなんの日か覚えてるかい?」
「スティーブンさんのお誕生日ですよね?私が知らないとは思ってないですよね?」
「……いや、うん、そうか。うん、いいんだ。そういう歳でもないしな」
と言いながら、全身でしょんぼりを表現するスティーブンさん。
知ってますよ、それが罠だってことを。
そんなスティーブンさんを無視して早めにあがらせてもらい、ケーキの材料を買いにいく。
深煎りコーヒーにあうショートケーキをとは思ったが、年齢が年齢だけに胃もたれしてしまう気がする。
それでも、ワンホール一人で食べようとする気もするし、それなら一人で食べきれそうなケーキにしよう。
さっぱりしたケーキなら、レモンタルトなんてどうだろうか。
レモンの酸味がきいていて食べやすいと思う。
よし、これでいこう、と材料を買って帰り明日に備えて早めに眠りに着いた。
朝が苦手な私にしては、よくがんばった方の午前中の目覚め。
「よし、やるぞ」
眠い頭を切り替え、レモンタルト作りを開始する。
正直、お菓子作りは好きではない。
なぜなら、お菓子作りは力が必要だから。
そして、私はレオくんにすら儚まれるパワーなのだ。
お菓子作りは大抵、途中で息切れしている。
もう、生地作りの時点でめげそう。
でもまあ、祝いたい気持ちはあるので、もうちょっとがんばる。
ようやく最終オーブンでブンの段階に入り、まだかまだかと見ていると、鍵の開く音。
そして、ドアロックの外れる音。
私の部屋の鍵を持っていて、なおかつドアロックを外せる人間と言えば限られてくる。
転びそうになりながら玄関へ行くと、やはりスティーブンさんがいて、「どうしたんだい」と聞いてきた。
それはこっちのセリフだ!
「仕事は!?」
「クラウスに休んでいいって言われた」
「なんで?!」
「誕生日はやっぱりキミといたかったから」
照れたように笑うスティーブンさんに、こちらも照れそうになる。
「はい、ティティ。誕生日おめでとう」
そう、今日は私の誕生日でもある。
誕生日のない私に、スティーブンさんが自分と同じ日にしようと言ってくれたのだ。
「ありがとうございます。誕生日……おめでとうございます……。スティーブンさん……」
「ありがとう、ティティ。ところで、甘い匂いがするけど、俺のためにケーキでも焼いてくれてたのかな?」
「わかってて聞いてますよね。底意地が悪い」
「よく言われる」
一緒にリビングに行くと、タルトはすでに焼きあがっていた。
オーブンからとりだし、少し冷ましてから切り分けてスティーブンさんにおだしすれば、相好を崩し食べ始めた。
「うん、美味しい」
「普段スティーブンさんが食べているものに比べたら、全然ですよ」
「テクニックはそりゃ勝てないかも知れないけど、その分、愛情ぎっしりだから負けてないよ」
「愛情が絶対に入ってるって疑わないところが嫌ですね」
「ティティが俺になにかしてくれるときは、いつも俺を思ってくれているのは知ってるよ」
「嫌な人」
スティーブンさんが残した分は自分用にしようと思ったのに、ぺろりと完食してしまった。
朝からよく入る、と感心していると「ところで」と聞いてくる。
「これ、作ったあとどうするつもりだったんだ?」
「別に。作ること自体、自己満足でしたし。こっそり事務所に置いてくるつもりでした」
「ふーん。まあ、こっそり置いてかれても、誰がやったかはすぐわかっただろうね」
「あはは、愛情の味でですか?」
「まあね」
こうして数多の女たちは騙されていくんだろうな、と身をもって理解してしまう。
これで刺されたことがないというんだから、奇跡もいいところだ。
「さて、ティティ。実は、今日は絶対にキミとディナーをすると決めていたから、レストランの予約をとってあるんだが」
「それ、私が断ってたらどうなるんですか」
「そうだな。俺は一人寂しくキミを思いながら、二人のために用意したバースデーケーキを食べることになるかな」
「それはそれで見てみたいですね」
「まあ、ここに来た時点で無理矢理にでも連れていかれると思ってくれ!」
「言うと思った」
ケラケラと屈託なく笑うスティーブンさんにため息を吐いてみせると、おもむろに私の頬を指の背で撫でる。
「生まれてきてくれて、ありがとう。ティティ」
「……今日まで生きてくれて、ありがとう。スティーブンさん」
「それ、一週間前から言ってますよね」
基本的に、私とスティーブンさんの休みは一緒だ。
スティーブンさんになにかあったとき、スティーブンさんの穴を一時的に埋める役割を私が担っているため、私たちはほぼ一緒にいる。
そこを無理言って休ませて貰ったのには、理由がある。
明日はスティーブンさんの誕生日だ。
この歳で親とも兄とも言える相手に、正面切ってプレゼントするのは恥ずかしい。あと、そういうのをさらっとできる性格ではない、私は。
だから、休みもらって家でケーキ作って、そっと事務所に置いて、後日あるスティーブンさんの誕生日会でさらっと人に紛れて「お誕生日おめでとうございます」と言ってプレゼントを流れでわたす魂胆だ。
「明日がなんの日か覚えてるかい?」
「スティーブンさんのお誕生日ですよね?私が知らないとは思ってないですよね?」
「……いや、うん、そうか。うん、いいんだ。そういう歳でもないしな」
と言いながら、全身でしょんぼりを表現するスティーブンさん。
知ってますよ、それが罠だってことを。
そんなスティーブンさんを無視して早めにあがらせてもらい、ケーキの材料を買いにいく。
深煎りコーヒーにあうショートケーキをとは思ったが、年齢が年齢だけに胃もたれしてしまう気がする。
それでも、ワンホール一人で食べようとする気もするし、それなら一人で食べきれそうなケーキにしよう。
さっぱりしたケーキなら、レモンタルトなんてどうだろうか。
レモンの酸味がきいていて食べやすいと思う。
よし、これでいこう、と材料を買って帰り明日に備えて早めに眠りに着いた。
朝が苦手な私にしては、よくがんばった方の午前中の目覚め。
「よし、やるぞ」
眠い頭を切り替え、レモンタルト作りを開始する。
正直、お菓子作りは好きではない。
なぜなら、お菓子作りは力が必要だから。
そして、私はレオくんにすら儚まれるパワーなのだ。
お菓子作りは大抵、途中で息切れしている。
もう、生地作りの時点でめげそう。
でもまあ、祝いたい気持ちはあるので、もうちょっとがんばる。
ようやく最終オーブンでブンの段階に入り、まだかまだかと見ていると、鍵の開く音。
そして、ドアロックの外れる音。
私の部屋の鍵を持っていて、なおかつドアロックを外せる人間と言えば限られてくる。
転びそうになりながら玄関へ行くと、やはりスティーブンさんがいて、「どうしたんだい」と聞いてきた。
それはこっちのセリフだ!
「仕事は!?」
「クラウスに休んでいいって言われた」
「なんで?!」
「誕生日はやっぱりキミといたかったから」
照れたように笑うスティーブンさんに、こちらも照れそうになる。
「はい、ティティ。誕生日おめでとう」
そう、今日は私の誕生日でもある。
誕生日のない私に、スティーブンさんが自分と同じ日にしようと言ってくれたのだ。
「ありがとうございます。誕生日……おめでとうございます……。スティーブンさん……」
「ありがとう、ティティ。ところで、甘い匂いがするけど、俺のためにケーキでも焼いてくれてたのかな?」
「わかってて聞いてますよね。底意地が悪い」
「よく言われる」
一緒にリビングに行くと、タルトはすでに焼きあがっていた。
オーブンからとりだし、少し冷ましてから切り分けてスティーブンさんにおだしすれば、相好を崩し食べ始めた。
「うん、美味しい」
「普段スティーブンさんが食べているものに比べたら、全然ですよ」
「テクニックはそりゃ勝てないかも知れないけど、その分、愛情ぎっしりだから負けてないよ」
「愛情が絶対に入ってるって疑わないところが嫌ですね」
「ティティが俺になにかしてくれるときは、いつも俺を思ってくれているのは知ってるよ」
「嫌な人」
スティーブンさんが残した分は自分用にしようと思ったのに、ぺろりと完食してしまった。
朝からよく入る、と感心していると「ところで」と聞いてくる。
「これ、作ったあとどうするつもりだったんだ?」
「別に。作ること自体、自己満足でしたし。こっそり事務所に置いてくるつもりでした」
「ふーん。まあ、こっそり置いてかれても、誰がやったかはすぐわかっただろうね」
「あはは、愛情の味でですか?」
「まあね」
こうして数多の女たちは騙されていくんだろうな、と身をもって理解してしまう。
これで刺されたことがないというんだから、奇跡もいいところだ。
「さて、ティティ。実は、今日は絶対にキミとディナーをすると決めていたから、レストランの予約をとってあるんだが」
「それ、私が断ってたらどうなるんですか」
「そうだな。俺は一人寂しくキミを思いながら、二人のために用意したバースデーケーキを食べることになるかな」
「それはそれで見てみたいですね」
「まあ、ここに来た時点で無理矢理にでも連れていかれると思ってくれ!」
「言うと思った」
ケラケラと屈託なく笑うスティーブンさんにため息を吐いてみせると、おもむろに私の頬を指の背で撫でる。
「生まれてきてくれて、ありがとう。ティティ」
「……今日まで生きてくれて、ありがとう。スティーブンさん」