短編
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「遊園地行ったんだね〜。いいな〜」
「……」
「……」
どこから情報を仕入れたのか、ウォルターパークの話を持ち出してくる撫子に、「理事長にお守りを押し付けられただけだ」と言うも、恨めしそうに「いいな〜」と俺とシチロウを睨んでくる。
こうなったら、しばらくは「いいな〜」と言い続けるだろう。
「わかった、わかった。週末にどこかに連れて行ってやる」
「やったぜぃ!」
はしゃぐ撫子にどこへ行きたいのか聞けば、真っ直ぐな瞳で「プール」と言うのでシチロウを連れて帰ろうとしたら、腰にまとわりついて引き止めてくる。
「冗談です。冗談だから、チャンスをください」
「チッ。次はないぞ」
よく考えて発言しろ、と忠告してから考えさせれば、閃いたらしく「ボウリング行こう」と提案した。
まあ、それならいいだろう。
「シチロウくんも、週末ボウリングでいい?」
「僕は週末ちょっと用事があるから、カルエゴくんと二人で行ってきてよ」
「そうなの?じゃあ、別の日にしようよ。夏休みは長いんだぜぃ!」
そう撫子が提案するが、シチロウは頑なに二人で行くように勧めてくる。
恐らく、シチロウに週末予定は入っていない。
シチロウは、俺が撫子に片恋をしているのを知っている。
これを機に、二人で出かけてこいという意味合いで、一緒に行こうとしないのだろう。
そうはさせるか、撫子と二人で出かけるなど心臓がもたん。
シチロウという緩衝材いるからこそ、保てている関係性だ。
「シチロウが行けないなら、今回はお預けだな」
「だね〜」
そう話がまとまりかけたが、シチロウが「いいから行ってきなさい」と有無を言わせぬ圧力をかけてくる。
いつも俺たちの意見を受け入れるシチロウの圧力に、俺と撫子は「はい……」と思わず口にしていた。
出かける前日に、シチロウから「カルエゴくん、日和っちゃダメだよ!」といらん激励のメッセージが届いた。
別に、ただ出かけるだけだ。なにかあるわけではない。
そう思いながら身支度を整えていると、「カールエッゴくーん!準備できてるー?」と、いい大人が発するとは思えない浮かれた声がした。
扉を開けると、普段のゆるいかっこうとは違い、しっかりとしたオシャレ着で長めのため息がでた。
滅多に見ることのない真面目な私服に、自分が動揺しているのが情けない。
「おうおう!迎えに来た友人に、なんだいそのため息は!」
「そうだな。教員寮の入口で待っていろと言ったのに部屋まで来た、浮かれた馬鹿者に呆れたらついな」
「カルエゴくんと二人で出かけるなんて、滅多にないからね!」
はしゃぐ撫子の言う通り、俺たちが出かけるときは必ずここにシチロウがいた。
シチロウ越しに見ていた笑顔を直射で受けると、めまいがするな。
道中、仔犬のようにはしゃぐ撫子に連れてこられた大型スポーツ施設のボーリング場で靴を履き替えていると、撫子が「賭けをしないか?」としょうもない提案をしてくる。
「やっぱり、ただ勝負するだけじゃつまらないじゃん?」
「別に俺はただのスコア勝負だけで構わないが、今日は貴様に付き合う約束だ。好きにしろ」
「やったぜぃ!じゃあ、私が勝ったら一曲歌っていただきましょうか!私が負けたら、三遍回ってワンと鳴く」
別に、撫子が三遍回ってワンと鳴く姿を見たいわけではないが、歌いたくもなければ手を抜くなどという厳粛さのない行為もしたくない。
つまり、俺がやることはひとつ。
「ぐぁー!フルスコア!」
完膚なきまでに叩き潰すのみ。
スコア僅差で負け、「また負けたぁ……」と項垂れている撫子に、「ほら、早く三遍回ってワンと鳴け」と促すと「鬼畜!」とそしられた。
それもそうだろう。
フルスコアを叩き出した俺と、フルスコアとまでは行かずともストライクとスペアを何度もだしたメアルを、その場にいた来場者たちが観客となっていた。
その注目の中やれ、と言っているのだからそしられても仕方がないだろう。が、しかし。俺は厳粛な悪魔だ。やると宣言されたことはやらせる。
「わ……」
「わ?」
「ワンチャンください!」
往生際悪くもう一勝負挑んでくる撫子に、どうしたものかと考える。
恐らく、もう一勝負したところで俺が勝つだろうが、やると言わない限り引き下がらないだろう。
まあ、満足するまで付き合ってやるか、と了承すれば意気揚々と受付へと駆けていった。
だが、勝負の行方は予想通り俺の連戦連勝。
撫子にいたっては、連戦により体力がなくなっていき、手を抜いたとしても俺が勝ってしまいそうだ。
「いい加減、諦めたらどうだ?」
「えーん……」
ベンチで伸びている撫子に飲み物を差し出せば、半分ほどを一気に飲み干し、「なかせていただきます」と観念した。
フラフラと立ち上がり、まだそんな余力が残っていたのかと感心するほど美しい、グラン・ピルエットで三回転し、腹式呼吸のよくできた張りのある「ワン!」という声がボーリング場に響き渡った。
「カルエゴくんの歌、聞きたかったなー」
「誰が歌うか」
「だって、カルエゴくん歌上手いじゃん。お手本で歌ってくれたの、忘れてないぜぃ!」
親指を立てる撫子に「忘れろ」と言ったのと同時に、撫子は大あくびをして眠そうに目をこする。
朝からあれだけはしゃいで八ゲームしたのだ。眠くもなるだろう。
「帰るまで寝るなよ」
「任せとけぃ……」
本当に大丈夫かと不安にはなったが、一応、職員寮まではなんとか飛んで帰ってきたが、入口でシチロウに出迎えられた瞬間に意識が落ちた。
メアルを寝かせてから食堂に行くと、シチロウに今日あったことを聞かれ掻い摘んで話せば、「歌ってあげればいいんじゃないかな?」ととんでもないことを言う。
「なんで、俺が」
「だって、撫子ちゃんが寝てるときによく子守唄歌ってあげてるでしょ?」
「……なぜ知っている」
「気付かれてないと思ってたの?」
撫子ちゃんが絡むと、ちょっと抜けるよね。カルエゴくんって。
そう言うシチロウに、「絶対に言うなよ」と念押ししたが、この笑顔がなぜだか不安を煽る。
「……」
「……」
どこから情報を仕入れたのか、ウォルターパークの話を持ち出してくる撫子に、「理事長にお守りを押し付けられただけだ」と言うも、恨めしそうに「いいな〜」と俺とシチロウを睨んでくる。
こうなったら、しばらくは「いいな〜」と言い続けるだろう。
「わかった、わかった。週末にどこかに連れて行ってやる」
「やったぜぃ!」
はしゃぐ撫子にどこへ行きたいのか聞けば、真っ直ぐな瞳で「プール」と言うのでシチロウを連れて帰ろうとしたら、腰にまとわりついて引き止めてくる。
「冗談です。冗談だから、チャンスをください」
「チッ。次はないぞ」
よく考えて発言しろ、と忠告してから考えさせれば、閃いたらしく「ボウリング行こう」と提案した。
まあ、それならいいだろう。
「シチロウくんも、週末ボウリングでいい?」
「僕は週末ちょっと用事があるから、カルエゴくんと二人で行ってきてよ」
「そうなの?じゃあ、別の日にしようよ。夏休みは長いんだぜぃ!」
そう撫子が提案するが、シチロウは頑なに二人で行くように勧めてくる。
恐らく、シチロウに週末予定は入っていない。
シチロウは、俺が撫子に片恋をしているのを知っている。
これを機に、二人で出かけてこいという意味合いで、一緒に行こうとしないのだろう。
そうはさせるか、撫子と二人で出かけるなど心臓がもたん。
シチロウという緩衝材いるからこそ、保てている関係性だ。
「シチロウが行けないなら、今回はお預けだな」
「だね〜」
そう話がまとまりかけたが、シチロウが「いいから行ってきなさい」と有無を言わせぬ圧力をかけてくる。
いつも俺たちの意見を受け入れるシチロウの圧力に、俺と撫子は「はい……」と思わず口にしていた。
出かける前日に、シチロウから「カルエゴくん、日和っちゃダメだよ!」といらん激励のメッセージが届いた。
別に、ただ出かけるだけだ。なにかあるわけではない。
そう思いながら身支度を整えていると、「カールエッゴくーん!準備できてるー?」と、いい大人が発するとは思えない浮かれた声がした。
扉を開けると、普段のゆるいかっこうとは違い、しっかりとしたオシャレ着で長めのため息がでた。
滅多に見ることのない真面目な私服に、自分が動揺しているのが情けない。
「おうおう!迎えに来た友人に、なんだいそのため息は!」
「そうだな。教員寮の入口で待っていろと言ったのに部屋まで来た、浮かれた馬鹿者に呆れたらついな」
「カルエゴくんと二人で出かけるなんて、滅多にないからね!」
はしゃぐ撫子の言う通り、俺たちが出かけるときは必ずここにシチロウがいた。
シチロウ越しに見ていた笑顔を直射で受けると、めまいがするな。
道中、仔犬のようにはしゃぐ撫子に連れてこられた大型スポーツ施設のボーリング場で靴を履き替えていると、撫子が「賭けをしないか?」としょうもない提案をしてくる。
「やっぱり、ただ勝負するだけじゃつまらないじゃん?」
「別に俺はただのスコア勝負だけで構わないが、今日は貴様に付き合う約束だ。好きにしろ」
「やったぜぃ!じゃあ、私が勝ったら一曲歌っていただきましょうか!私が負けたら、三遍回ってワンと鳴く」
別に、撫子が三遍回ってワンと鳴く姿を見たいわけではないが、歌いたくもなければ手を抜くなどという厳粛さのない行為もしたくない。
つまり、俺がやることはひとつ。
「ぐぁー!フルスコア!」
完膚なきまでに叩き潰すのみ。
スコア僅差で負け、「また負けたぁ……」と項垂れている撫子に、「ほら、早く三遍回ってワンと鳴け」と促すと「鬼畜!」とそしられた。
それもそうだろう。
フルスコアを叩き出した俺と、フルスコアとまでは行かずともストライクとスペアを何度もだしたメアルを、その場にいた来場者たちが観客となっていた。
その注目の中やれ、と言っているのだからそしられても仕方がないだろう。が、しかし。俺は厳粛な悪魔だ。やると宣言されたことはやらせる。
「わ……」
「わ?」
「ワンチャンください!」
往生際悪くもう一勝負挑んでくる撫子に、どうしたものかと考える。
恐らく、もう一勝負したところで俺が勝つだろうが、やると言わない限り引き下がらないだろう。
まあ、満足するまで付き合ってやるか、と了承すれば意気揚々と受付へと駆けていった。
だが、勝負の行方は予想通り俺の連戦連勝。
撫子にいたっては、連戦により体力がなくなっていき、手を抜いたとしても俺が勝ってしまいそうだ。
「いい加減、諦めたらどうだ?」
「えーん……」
ベンチで伸びている撫子に飲み物を差し出せば、半分ほどを一気に飲み干し、「なかせていただきます」と観念した。
フラフラと立ち上がり、まだそんな余力が残っていたのかと感心するほど美しい、グラン・ピルエットで三回転し、腹式呼吸のよくできた張りのある「ワン!」という声がボーリング場に響き渡った。
「カルエゴくんの歌、聞きたかったなー」
「誰が歌うか」
「だって、カルエゴくん歌上手いじゃん。お手本で歌ってくれたの、忘れてないぜぃ!」
親指を立てる撫子に「忘れろ」と言ったのと同時に、撫子は大あくびをして眠そうに目をこする。
朝からあれだけはしゃいで八ゲームしたのだ。眠くもなるだろう。
「帰るまで寝るなよ」
「任せとけぃ……」
本当に大丈夫かと不安にはなったが、一応、職員寮まではなんとか飛んで帰ってきたが、入口でシチロウに出迎えられた瞬間に意識が落ちた。
メアルを寝かせてから食堂に行くと、シチロウに今日あったことを聞かれ掻い摘んで話せば、「歌ってあげればいいんじゃないかな?」ととんでもないことを言う。
「なんで、俺が」
「だって、撫子ちゃんが寝てるときによく子守唄歌ってあげてるでしょ?」
「……なぜ知っている」
「気付かれてないと思ってたの?」
撫子ちゃんが絡むと、ちょっと抜けるよね。カルエゴくんって。
そう言うシチロウに、「絶対に言うなよ」と念押ししたが、この笑顔がなぜだか不安を煽る。