短編
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遠目にチラチラと見られる不愉快な朝。
毎年のことだが、この視線には嫌気がさす。
用があるなら堂々と来いと思うが、用件が用件なだけにそうはいかないことは理解している。
しかし、鬱陶しい。
「みんな、カルエゴくんにチョコわたしたいんだろうね」
シチロウの言葉に「さあな」とだけ返し席につくと、廊下から「受け取れません!受け取れません!本人に直接お願いします!」という大声が響き、撫子が教室に飛び込んできた。
「おはよう、二人とも〜」
「おはよう、撫子ちゃん」
「おはよう。朝からやかましいぞ」
俺の文句に、撫子は「誰のせいだと思ってるんだよ」と眉を釣り上げて怒るが、もとがまったく怖くないから怖さの欠片も感じられない。
「カルエゴくんが怖いから、隠れカルエゴくんファンの子に、代わりにわたしてくれー!て追いかけ回されたんだから!」
「モテて悪いな」
「わ、悪びれてねー!」
キャンキャンとうるさい撫子に、「それで、まさか預かってきてないだろうな」と睨みをきかせながら尋ねれば、ぐったりとした様子で「まさか」と言う。
「甘い物が苦手な上、少食なカルエゴくんにバレンタイン&バースデープレゼントでご用意されたチョコを持って行ったら私がしばかれる」
「よくわかっているな」
肯定する俺とは逆に、シチロウは「カルエゴくんは、女の子には手を出さないから」とフォローを入れているが、俺は撫子相手なら容赦なく鞭を振るうぞ。
その程度で泣き喚く女でないことは、よくわかっているからな。
「あ、一応、私からのバレンタインと誕生日兼ねたプレゼントは、私がブレンドしたハーブティーです!」
「貴様が持っていろ」
「なんでだよ!」
「俺は飲むのが専門で、淹れるのは貴様の専門だ」
「遠回しに淹れろと言ってくるわね……。シチロウくんは、もらってくれるよね……?」
わざとらしく弱々しく聞くメアルの頭を撫でながら、シチロウが「もちろんだよ、ありがとう」と言うと、「シチロウくん……好き……」とシチロウに抱きつく撫子。
こいつらはスキンシップ過剰すぎて、相手に勘違いを起こさせている自覚を持ったほうがいい。
見ろ。シチロウのスキンシップで勘違いした女子の嫉妬に染まった目を。とは思うが、精神がオリハルコンな撫子にはそれが効かないのが悲しいところだな。
「あと、それとは別にポプリも作ったから、三人でお揃いで持とうぜぃ!」
「断る」
「どうして……」
悲哀に満ちた顔で言われても、嫌なものは嫌だ。
なぜ、いい歳して揃いの物など持たねばならんのだ。
「会心の出来なのに……」
「僕は欲しいかな」
「えーん、シチロウくん!」
シチロウの手に乗せられた小さなポプリから、少し撫子が作ったにしてはスパイシーさのある優しい香りが、ほのかにこちらまで漂ってくる。
「こちら、二人をイメージしたポプリとなっております!テーマは「強さと大人っぽさと優しさ」!」
テーマが長い上、どんなイメージでそのテーマになったのかがわからん。
困惑するシチロウと呆れる俺の視線など無視して、メアルは期待に満ちた顔で俺とシチロウに褒められるのを待っている。
「僕、そんなに強くも大人っぽくもないと思うけど」
「強いし大人っぽいよ!」
「俺も優しくしているつもりはない」
「優しいよ!」
頑として主張を譲らない撫子だったが、褒められない可能性を見出したのか、眉を八の字にして「ダメ……?」と聞いてくる。
俺とシチロウの脳裏には、完全に破夢星(ハムスター)が過ぎっただろう。
「受け取るだけだからな」
「使ってくれよ〜」
翌日、登校するとシチロウからあのポプリの香りがし、「使ってるのか?」と聞けば「クローゼットに入れてるんだ」と言う。
「そういうカルエゴくんも使ってるんだね」
「……うっかり枕元に置きっぱなしにしたら、匂いが移っただけだ」
俺の下手な嘘に気付きつつも、シチロウは追求せずに「撫子ちゃん、きっと喜ぶよ」とだけ言う。
確実に鬱陶しいレベルで喜ぶだろうな、と思っていたら、登校して挨拶そこそこに俺たちの匂いに気が付き「す……好き……!」と感極まった状態で抱きついてきた。
軽率に抱きつくな、馬鹿者。
毎年のことだが、この視線には嫌気がさす。
用があるなら堂々と来いと思うが、用件が用件なだけにそうはいかないことは理解している。
しかし、鬱陶しい。
「みんな、カルエゴくんにチョコわたしたいんだろうね」
シチロウの言葉に「さあな」とだけ返し席につくと、廊下から「受け取れません!受け取れません!本人に直接お願いします!」という大声が響き、撫子が教室に飛び込んできた。
「おはよう、二人とも〜」
「おはよう、撫子ちゃん」
「おはよう。朝からやかましいぞ」
俺の文句に、撫子は「誰のせいだと思ってるんだよ」と眉を釣り上げて怒るが、もとがまったく怖くないから怖さの欠片も感じられない。
「カルエゴくんが怖いから、隠れカルエゴくんファンの子に、代わりにわたしてくれー!て追いかけ回されたんだから!」
「モテて悪いな」
「わ、悪びれてねー!」
キャンキャンとうるさい撫子に、「それで、まさか預かってきてないだろうな」と睨みをきかせながら尋ねれば、ぐったりとした様子で「まさか」と言う。
「甘い物が苦手な上、少食なカルエゴくんにバレンタイン&バースデープレゼントでご用意されたチョコを持って行ったら私がしばかれる」
「よくわかっているな」
肯定する俺とは逆に、シチロウは「カルエゴくんは、女の子には手を出さないから」とフォローを入れているが、俺は撫子相手なら容赦なく鞭を振るうぞ。
その程度で泣き喚く女でないことは、よくわかっているからな。
「あ、一応、私からのバレンタインと誕生日兼ねたプレゼントは、私がブレンドしたハーブティーです!」
「貴様が持っていろ」
「なんでだよ!」
「俺は飲むのが専門で、淹れるのは貴様の専門だ」
「遠回しに淹れろと言ってくるわね……。シチロウくんは、もらってくれるよね……?」
わざとらしく弱々しく聞くメアルの頭を撫でながら、シチロウが「もちろんだよ、ありがとう」と言うと、「シチロウくん……好き……」とシチロウに抱きつく撫子。
こいつらはスキンシップ過剰すぎて、相手に勘違いを起こさせている自覚を持ったほうがいい。
見ろ。シチロウのスキンシップで勘違いした女子の嫉妬に染まった目を。とは思うが、精神がオリハルコンな撫子にはそれが効かないのが悲しいところだな。
「あと、それとは別にポプリも作ったから、三人でお揃いで持とうぜぃ!」
「断る」
「どうして……」
悲哀に満ちた顔で言われても、嫌なものは嫌だ。
なぜ、いい歳して揃いの物など持たねばならんのだ。
「会心の出来なのに……」
「僕は欲しいかな」
「えーん、シチロウくん!」
シチロウの手に乗せられた小さなポプリから、少し撫子が作ったにしてはスパイシーさのある優しい香りが、ほのかにこちらまで漂ってくる。
「こちら、二人をイメージしたポプリとなっております!テーマは「強さと大人っぽさと優しさ」!」
テーマが長い上、どんなイメージでそのテーマになったのかがわからん。
困惑するシチロウと呆れる俺の視線など無視して、メアルは期待に満ちた顔で俺とシチロウに褒められるのを待っている。
「僕、そんなに強くも大人っぽくもないと思うけど」
「強いし大人っぽいよ!」
「俺も優しくしているつもりはない」
「優しいよ!」
頑として主張を譲らない撫子だったが、褒められない可能性を見出したのか、眉を八の字にして「ダメ……?」と聞いてくる。
俺とシチロウの脳裏には、完全に破夢星(ハムスター)が過ぎっただろう。
「受け取るだけだからな」
「使ってくれよ〜」
翌日、登校するとシチロウからあのポプリの香りがし、「使ってるのか?」と聞けば「クローゼットに入れてるんだ」と言う。
「そういうカルエゴくんも使ってるんだね」
「……うっかり枕元に置きっぱなしにしたら、匂いが移っただけだ」
俺の下手な嘘に気付きつつも、シチロウは追求せずに「撫子ちゃん、きっと喜ぶよ」とだけ言う。
確実に鬱陶しいレベルで喜ぶだろうな、と思っていたら、登校して挨拶そこそこに俺たちの匂いに気が付き「す……好き……!」と感極まった状態で抱きついてきた。
軽率に抱きつくな、馬鹿者。