短編
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「撫子ー。俺たち、いまいくつか知ってるか?」
人が束の間の休憩しているときに、蘭が聞いてきた質問に、ふと、いま自分がいくつか思い出せないことを思い出した。
年齢とか、深く考えずに生きてきたからなあ。
「いくつだっけ……」
「み、そ、じ」
「うわ……うわ、マジか……」
知らないうちにそこそこの歳になっていて、驚いた。
キラキラした青春、あった?反社にキラキラ吸われてない?吸われた。
「それで、それがどうしたの?」
「え〜?蘭ちゃんとの約束覚えてないの〜?」
「約束……」
蘭との約束は怖いからした記憶がないので、なんの約束なのかわからない。
宙を見つめ思い出そうとがんばるが、なにも思い出せない。
「蘭ちゃんと結婚するって約束、忘れちゃった?」
「はい、ダウト。絶対にしない、そんな約束」
「しましたー。俺はちゃんと覚えてますー」
「はーい、ダウトー。蘭が人との約束を覚えてるはずがありませーん」
「んだと、テメェ。耳もがれてえのか?」
あまりにも生々しくて嫌な脅しだな。
しかし、蘭が人との約束を覚えている確率は低いので、やはり虚偽を述べている可能性が高い。
そもそも、あの人に捉われることを嫌う蘭が結婚の約束とか、ないない。
貴重な休憩時間を無駄話に使ってしまった、と思いながら仕事に戻ろうとしたら、蘭に手を掴まれた。
「本当に、覚えてねえの?」
不安そうな色をした目をする蘭。
珍しい。
だがしかし、本当に覚えてないものは覚えていない。
「覚えていないね」
ぎゅっ、と少し強めに手を握られ、下唇を噛んで上目遣いに睨んでくる姿は、拗ねた竜胆とよく似ている。
仕事が溜まってるから、離してほしいんだけどなあ。
「蘭、そんなしたかどうかわからない約束持ち出さないで、素直にプロポーズすればいいのに」
「……」
蘭はそのまま黙って、私の手を離して事務所から出ていった。
あんなしょぼくれた蘭、久々に見たな。
その日の夜に見た夢には、幼いときの蘭が現れた。
『撫子、大きくなったら結婚しような』
『いいけど。蘭、すぐ忘れちゃうじゃん』
『忘れねえよ。ずっと、ずっと、忘れない。だから、撫子も忘れんなよ』
朝イチから罪悪感を強く感じる夢見の悪さだ。
ああ、したね。したわ。
こんな子供の頃の約束を、あの蘭が忘れずにいたことにビックリだわ。
本当にしていたとは思っていなかったから完全否定してしまったが、これは謝った方がいいかな……。
いや、でもそれにかこつけて結婚迫られるのは嫌だな……。
いい感じに、やんわり謝りつつ、約束は覚えていないことにしたい。
事務所に行き、九井くんと三途にあいさつをしてから蘭に連絡をいれようとしたら、その蘭本人が出社してきた。
「……」
「……」
「……」
「……」
蘭の姿を見て、私と九井くんと三途は固まった。
「いや、なんか言えよ」
竜胆の言葉で我に返り、「なに、その花束」とようやく聞けた。
蘭の手には大きめの花束。
はっきり言って、似合わない。
プロポーズでもしに行くのか?と思って、プロポーズ……まさか……。と嫌な気配を察知してしまった。
「撫子、俺と結婚を前提に付き合ってほしい」
「あ……」
差し出された花束に困惑する私と、似合わない頬染めをする蘭と、殺気立った竜胆。
え、なにこの公開処刑……。
「……ご、ごめんなさい」
「え……」
見る間に顔色が悪くなる蘭に、「蘭のことは友だちとしか見れない……」と言うと、ノータイムで竜胆にタックルされ、流れる動作で腕ひしぎ十字固めを決められた。
「痛い!痛い!」
「オマエ!兄ちゃんがどんだけ長い間、オマエのこと好きだったと思ってんだよ!その気もないなら、その気にさせること言うな!」
「ごめんー!まさか、蘭がそんな本気だとは思わなかったからー!」
「兄ちゃんもなんか言ってや……れ……」
「……」
竜胆が言葉をつまらせるから、どうしたのかと上体を起こすと、蘭の目からボロボロと涙がこぼれ落ちていた。
「あ……あー!あー!撫子が蘭泣かせたー!いけないんだー!マイキーにいいつけてやろー!」
「うるせー、三途!小学生か!マイキーに言わないでください!」
「オマエの所為で、兄ちゃんが人間らしい感情を取り戻しちゃったじゃんか!」
「落ち着いて、竜胆!蘭は元から人間!」
「可哀想な兄ちゃん!何十年も好きだったのに今更フラレて!俺がきっちり、手足の骨折るから!」
やめてー!と騒ぐ私たちに、蘭は静かに「竜胆、もういいよ」と言う。
た、助かった?と安堵したのも束の間。
花束を置いた蘭がとりだしたのは、拳銃。わあ、よく似合うね……。
蘭は銃口を私の眉間に押し当て、泣き顔そのままに「俺と結婚するのと、いま眉間に風穴空けるの。どっちがいい?」と聞いてきた。
「そういうところが、嫌!」
「俺らしくていいだろ?で、それは後者がいいってことでいいんだよな?」
カチリ、とトリガーが引かれる。
ここからはもうチキンレースなのだが、蘭が本当に撃つかどうかの二択だと、こいつは絶対に撃つ。
自分の物にならないなら殺すタイプだって、私知ってるんだから。
「し……します……」
「なにを?」
「蘭と結婚します……」
震える声で言うと、蘭は微笑んで「幸せになろうな」と言うが、蘭の幸せは基本的に地獄でダンスを踊るような幸せなんだよな。
人が束の間の休憩しているときに、蘭が聞いてきた質問に、ふと、いま自分がいくつか思い出せないことを思い出した。
年齢とか、深く考えずに生きてきたからなあ。
「いくつだっけ……」
「み、そ、じ」
「うわ……うわ、マジか……」
知らないうちにそこそこの歳になっていて、驚いた。
キラキラした青春、あった?反社にキラキラ吸われてない?吸われた。
「それで、それがどうしたの?」
「え〜?蘭ちゃんとの約束覚えてないの〜?」
「約束……」
蘭との約束は怖いからした記憶がないので、なんの約束なのかわからない。
宙を見つめ思い出そうとがんばるが、なにも思い出せない。
「蘭ちゃんと結婚するって約束、忘れちゃった?」
「はい、ダウト。絶対にしない、そんな約束」
「しましたー。俺はちゃんと覚えてますー」
「はーい、ダウトー。蘭が人との約束を覚えてるはずがありませーん」
「んだと、テメェ。耳もがれてえのか?」
あまりにも生々しくて嫌な脅しだな。
しかし、蘭が人との約束を覚えている確率は低いので、やはり虚偽を述べている可能性が高い。
そもそも、あの人に捉われることを嫌う蘭が結婚の約束とか、ないない。
貴重な休憩時間を無駄話に使ってしまった、と思いながら仕事に戻ろうとしたら、蘭に手を掴まれた。
「本当に、覚えてねえの?」
不安そうな色をした目をする蘭。
珍しい。
だがしかし、本当に覚えてないものは覚えていない。
「覚えていないね」
ぎゅっ、と少し強めに手を握られ、下唇を噛んで上目遣いに睨んでくる姿は、拗ねた竜胆とよく似ている。
仕事が溜まってるから、離してほしいんだけどなあ。
「蘭、そんなしたかどうかわからない約束持ち出さないで、素直にプロポーズすればいいのに」
「……」
蘭はそのまま黙って、私の手を離して事務所から出ていった。
あんなしょぼくれた蘭、久々に見たな。
その日の夜に見た夢には、幼いときの蘭が現れた。
『撫子、大きくなったら結婚しような』
『いいけど。蘭、すぐ忘れちゃうじゃん』
『忘れねえよ。ずっと、ずっと、忘れない。だから、撫子も忘れんなよ』
朝イチから罪悪感を強く感じる夢見の悪さだ。
ああ、したね。したわ。
こんな子供の頃の約束を、あの蘭が忘れずにいたことにビックリだわ。
本当にしていたとは思っていなかったから完全否定してしまったが、これは謝った方がいいかな……。
いや、でもそれにかこつけて結婚迫られるのは嫌だな……。
いい感じに、やんわり謝りつつ、約束は覚えていないことにしたい。
事務所に行き、九井くんと三途にあいさつをしてから蘭に連絡をいれようとしたら、その蘭本人が出社してきた。
「……」
「……」
「……」
「……」
蘭の姿を見て、私と九井くんと三途は固まった。
「いや、なんか言えよ」
竜胆の言葉で我に返り、「なに、その花束」とようやく聞けた。
蘭の手には大きめの花束。
はっきり言って、似合わない。
プロポーズでもしに行くのか?と思って、プロポーズ……まさか……。と嫌な気配を察知してしまった。
「撫子、俺と結婚を前提に付き合ってほしい」
「あ……」
差し出された花束に困惑する私と、似合わない頬染めをする蘭と、殺気立った竜胆。
え、なにこの公開処刑……。
「……ご、ごめんなさい」
「え……」
見る間に顔色が悪くなる蘭に、「蘭のことは友だちとしか見れない……」と言うと、ノータイムで竜胆にタックルされ、流れる動作で腕ひしぎ十字固めを決められた。
「痛い!痛い!」
「オマエ!兄ちゃんがどんだけ長い間、オマエのこと好きだったと思ってんだよ!その気もないなら、その気にさせること言うな!」
「ごめんー!まさか、蘭がそんな本気だとは思わなかったからー!」
「兄ちゃんもなんか言ってや……れ……」
「……」
竜胆が言葉をつまらせるから、どうしたのかと上体を起こすと、蘭の目からボロボロと涙がこぼれ落ちていた。
「あ……あー!あー!撫子が蘭泣かせたー!いけないんだー!マイキーにいいつけてやろー!」
「うるせー、三途!小学生か!マイキーに言わないでください!」
「オマエの所為で、兄ちゃんが人間らしい感情を取り戻しちゃったじゃんか!」
「落ち着いて、竜胆!蘭は元から人間!」
「可哀想な兄ちゃん!何十年も好きだったのに今更フラレて!俺がきっちり、手足の骨折るから!」
やめてー!と騒ぐ私たちに、蘭は静かに「竜胆、もういいよ」と言う。
た、助かった?と安堵したのも束の間。
花束を置いた蘭がとりだしたのは、拳銃。わあ、よく似合うね……。
蘭は銃口を私の眉間に押し当て、泣き顔そのままに「俺と結婚するのと、いま眉間に風穴空けるの。どっちがいい?」と聞いてきた。
「そういうところが、嫌!」
「俺らしくていいだろ?で、それは後者がいいってことでいいんだよな?」
カチリ、とトリガーが引かれる。
ここからはもうチキンレースなのだが、蘭が本当に撃つかどうかの二択だと、こいつは絶対に撃つ。
自分の物にならないなら殺すタイプだって、私知ってるんだから。
「し……します……」
「なにを?」
「蘭と結婚します……」
震える声で言うと、蘭は微笑んで「幸せになろうな」と言うが、蘭の幸せは基本的に地獄でダンスを踊るような幸せなんだよな。