短編
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深々と降る雪。
都心では珍しい事で、降っても積もる事はなく雪質も水気の多い霙だから、絵本などで見る柔らかな積もり方はしない。
だが、今年はラニーニャ現象の所為か都心でも積雪量が十五センチを超え、雪質も柔らかい物で踏みしめれば静かに足は沈み、歩けばさくさくという小気味いい音がする。
窃野と宝生が雪を食べ様としている多部を必死に止めているのを見てから、今日の仕事でパートナーを組む女との待ち合わせ場所へと向かったが、姿が見えない。
下っ端が上の人間より先に来ていないなんて……後で説教だな。
そう考え一歩踏み出したら、なにか雪とは別の感触がする物を踏み潰した。
「ぐぇ!」
「は?」
下を見れば、白い服の所為で雪と同化しているけれども確かに顔の青い人間が横たわっていた。
「うわぁー!」
「ぎゃー! どうしました補佐ー!」
私の叫び声に驚いた白い人間の正体は待ち合わせ相手である女だった。
「どうしました、じゃないですよ! なにやってるんですか! オコジョですか、あんたは!」
バクバクする心臓を押さえて問いただせば、雪の中からもそもそと女は起き上がり「暇だったので空を眺めてました」と言う。
「暇の潰し方として最悪ですね……空を眺めるだけなら、地面に転がらなくてもいいでしょうが。汚いですよ」
「雪があるから大丈夫かなと思いまして」
「雪は有害物質を多く含んでいるので、見た目は綺麗でも汚いではないですよ」
「へー! ヒーロー社会みたいですね!」
嫌味の切れが凄いな、と思いながら未だに雪の上に座る彼女に「立った、立った」と急かす。
「空を眺めてたと言いますが、なにが楽しいんですか?雪が降ってるだけで、曇天じゃないですかい」
「楽しいですよ、雪の動きを見るの。それに、曇天でもちょっとずつ空は変わっていきますし、それに段々と雪に埋まっていくのもなんだか楽しくて」
「……一応、今後やらないとは限らないので忠告しやすが、雪は一定量埋もれると重さで動けなくなりやすよ」
「えっ……そんな、まさか……」
「おや? 私が嘘を言っているとでも?」
「あぁ、いや! そういう訳じゃないです! 信じてますよ、勿論! 吃驚しただけです! 以後、気を付けます!」
口早に否定した彼女に「そうしてください」とだけ返し、なにも言わず仕事先へと向かう為に歩き出せば、彼女もなにも言わず後ろを追いかけてきた。
足の長さが違うから、私のゆっくりとしたさく、さく、という音に対して、後ろから聞こえてくる足音はさくさくさく! と忙しない。
「歩くの速いですか?」
そう言いながら振り向けば、唇が紫色状態の彼女が「大丈夫です!」と空元気で返事をするが、いや、別の所が諸々ダメでしょ。
概ね、先程まで雪に埋もれていた所為で体温を奪われたのが原因かと思う。
自業自得だが、不安になる青さを通り越した紫だな。
「そんな軽装で、雪になんて埋まるからですよ。なんで、もっとちゃんとした防寒してこなかったんですか。オシャレは気合とでも思ってるんですか? 仕事ですよ?」
心配半分、説教半分の言葉を投げかければガタガタと震えながら「違います!」と否定をする。
違うのならば、なぜこんな寒い日に長袖長ズボンとは言え寒そうな格好をしているのか。
せめて、もう少し暖かそうなコートを着てくればいい物の。
「だって、補佐がそんな寒そうな格好をしているのに、下っ端の私があったかい格好出来るわけないじゃないですか!」
「さてはあんた、体育会系ですね」
別に気にせず、暖かい格好してくればいいのに。その程度の事を気にする程、みみっちい人間じゃないですよ。本部長じゃあるまいし。
「そもそも、私はあんたより筋肉があるんでそれなりに暖かいんですよ」
「えぇ?! そんな雪の妖精みたいな見た目をしているのに?!」
「変な認識持たないでくれやせんか」
ほら、と言いながら袖をめくって腕を見せれば「本当だ、綺麗な筋肉だ……」と感嘆の声と恍惚とした表情で腕の筋肉を触った。
気持ち悪いな……。
「で、でも、筋肉は発熱量はあっても保温力が低かったはず……。やはり、補佐。寒いですよね?」
「いいえ。コートの中は着こんでやすし、ホッカイロも貼ってやすから」
お腹をトントンと叩けば、恐る恐る私のお腹に手を当て目を見開き「なんでー! ずるい!」と叫んだ。
万人が思いつく防寒をずるいとは、寒さで頭がやられたか。
「うぅ……そんな……寒い……」
「雪の中で寝てるからですよ。殆ど自業自得で救いようがないですが……仕方ないですね。これ、あげやすよ」
コートの前を開け、お腹に貼っていたホッカイロを引っぺがし、尚も震える彼女に渡す。
「ほ、補佐……! いいんですか? 補佐が寒くなりますよ?」
「大丈夫です、新しいの持っているんで」
そう言いながら、ポケットから新しい貼るホッカイロを取り出せば「新しいのくれないんですね……」と心なしか恨めしそうな声で言う。
「私に古いのを使わせて、自分は新品ほかほかの物を使いたいと? 中々図太い性格をしていやすねぇ……?」
グイグイと頬骨の下を親指で強く押せば「あだだだだ! すみませんでした! 痛い! なにこれマジで痛い!」と半泣きで謝罪をした。
そこが痛いのは、顔の老廃物が溜まっている証拠ですよ。
「ほら、馬鹿やってないで行きやすよ」
「はい……」
「あぁ、それと。あとでホッカイロ買って返してくださいね」
「くれるんじゃないんですか?!」
「返したくないんですか? もう一回、顔のマッサージしてあげやしょうか?」
「喜んで買って返します!」
最初からそうしなさい。
※頬骨のリンパマッサージはとても痛い。
都心では珍しい事で、降っても積もる事はなく雪質も水気の多い霙だから、絵本などで見る柔らかな積もり方はしない。
だが、今年はラニーニャ現象の所為か都心でも積雪量が十五センチを超え、雪質も柔らかい物で踏みしめれば静かに足は沈み、歩けばさくさくという小気味いい音がする。
窃野と宝生が雪を食べ様としている多部を必死に止めているのを見てから、今日の仕事でパートナーを組む女との待ち合わせ場所へと向かったが、姿が見えない。
下っ端が上の人間より先に来ていないなんて……後で説教だな。
そう考え一歩踏み出したら、なにか雪とは別の感触がする物を踏み潰した。
「ぐぇ!」
「は?」
下を見れば、白い服の所為で雪と同化しているけれども確かに顔の青い人間が横たわっていた。
「うわぁー!」
「ぎゃー! どうしました補佐ー!」
私の叫び声に驚いた白い人間の正体は待ち合わせ相手である女だった。
「どうしました、じゃないですよ! なにやってるんですか! オコジョですか、あんたは!」
バクバクする心臓を押さえて問いただせば、雪の中からもそもそと女は起き上がり「暇だったので空を眺めてました」と言う。
「暇の潰し方として最悪ですね……空を眺めるだけなら、地面に転がらなくてもいいでしょうが。汚いですよ」
「雪があるから大丈夫かなと思いまして」
「雪は有害物質を多く含んでいるので、見た目は綺麗でも汚いではないですよ」
「へー! ヒーロー社会みたいですね!」
嫌味の切れが凄いな、と思いながら未だに雪の上に座る彼女に「立った、立った」と急かす。
「空を眺めてたと言いますが、なにが楽しいんですか?雪が降ってるだけで、曇天じゃないですかい」
「楽しいですよ、雪の動きを見るの。それに、曇天でもちょっとずつ空は変わっていきますし、それに段々と雪に埋まっていくのもなんだか楽しくて」
「……一応、今後やらないとは限らないので忠告しやすが、雪は一定量埋もれると重さで動けなくなりやすよ」
「えっ……そんな、まさか……」
「おや? 私が嘘を言っているとでも?」
「あぁ、いや! そういう訳じゃないです! 信じてますよ、勿論! 吃驚しただけです! 以後、気を付けます!」
口早に否定した彼女に「そうしてください」とだけ返し、なにも言わず仕事先へと向かう為に歩き出せば、彼女もなにも言わず後ろを追いかけてきた。
足の長さが違うから、私のゆっくりとしたさく、さく、という音に対して、後ろから聞こえてくる足音はさくさくさく! と忙しない。
「歩くの速いですか?」
そう言いながら振り向けば、唇が紫色状態の彼女が「大丈夫です!」と空元気で返事をするが、いや、別の所が諸々ダメでしょ。
概ね、先程まで雪に埋もれていた所為で体温を奪われたのが原因かと思う。
自業自得だが、不安になる青さを通り越した紫だな。
「そんな軽装で、雪になんて埋まるからですよ。なんで、もっとちゃんとした防寒してこなかったんですか。オシャレは気合とでも思ってるんですか? 仕事ですよ?」
心配半分、説教半分の言葉を投げかければガタガタと震えながら「違います!」と否定をする。
違うのならば、なぜこんな寒い日に長袖長ズボンとは言え寒そうな格好をしているのか。
せめて、もう少し暖かそうなコートを着てくればいい物の。
「だって、補佐がそんな寒そうな格好をしているのに、下っ端の私があったかい格好出来るわけないじゃないですか!」
「さてはあんた、体育会系ですね」
別に気にせず、暖かい格好してくればいいのに。その程度の事を気にする程、みみっちい人間じゃないですよ。本部長じゃあるまいし。
「そもそも、私はあんたより筋肉があるんでそれなりに暖かいんですよ」
「えぇ?! そんな雪の妖精みたいな見た目をしているのに?!」
「変な認識持たないでくれやせんか」
ほら、と言いながら袖をめくって腕を見せれば「本当だ、綺麗な筋肉だ……」と感嘆の声と恍惚とした表情で腕の筋肉を触った。
気持ち悪いな……。
「で、でも、筋肉は発熱量はあっても保温力が低かったはず……。やはり、補佐。寒いですよね?」
「いいえ。コートの中は着こんでやすし、ホッカイロも貼ってやすから」
お腹をトントンと叩けば、恐る恐る私のお腹に手を当て目を見開き「なんでー! ずるい!」と叫んだ。
万人が思いつく防寒をずるいとは、寒さで頭がやられたか。
「うぅ……そんな……寒い……」
「雪の中で寝てるからですよ。殆ど自業自得で救いようがないですが……仕方ないですね。これ、あげやすよ」
コートの前を開け、お腹に貼っていたホッカイロを引っぺがし、尚も震える彼女に渡す。
「ほ、補佐……! いいんですか? 補佐が寒くなりますよ?」
「大丈夫です、新しいの持っているんで」
そう言いながら、ポケットから新しい貼るホッカイロを取り出せば「新しいのくれないんですね……」と心なしか恨めしそうな声で言う。
「私に古いのを使わせて、自分は新品ほかほかの物を使いたいと? 中々図太い性格をしていやすねぇ……?」
グイグイと頬骨の下を親指で強く押せば「あだだだだ! すみませんでした! 痛い! なにこれマジで痛い!」と半泣きで謝罪をした。
そこが痛いのは、顔の老廃物が溜まっている証拠ですよ。
「ほら、馬鹿やってないで行きやすよ」
「はい……」
「あぁ、それと。あとでホッカイロ買って返してくださいね」
「くれるんじゃないんですか?!」
「返したくないんですか? もう一回、顔のマッサージしてあげやしょうか?」
「喜んで買って返します!」
最初からそうしなさい。
※頬骨のリンパマッサージはとても痛い。