短編
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ホームを歩いているノボリさんを呼び止め、「ピアスホールを開けてくれませんか」とお願いすると、大きな目を瞬かせ「ピアス、ですか?」と聞き返してきた。
「その、ダメでしょうか……?」
「構いませんが……。私、ピアスを開けた経験がございませんが、よろしいのでしょうか?」
確かに、ノボリさんの薄い耳たぶは傷一つない美しいものだった。
ノボリさんのことだ。ピアスを開けようという考えも、いままでなかっただろう。
失敗する恐れはあるが、それでも私はノボリさんにピアスホールを開けてほしかった。
「ノボリさんに、お願いしたいんです」
私の差し出したピアッサーを受け取り、物珍しそうに見てから「理由をお聞きしても?」と、できれば最も触れてほしくないところに触れてくる。
視線を彷徨わせながら、しどろもどろになる私にノボリさんは「なにか私に聞かれると不都合なことが?」と聞いてきた。
「い、いや、その……。ジンクスで、勝ちたい相手にピアスを開けてもらうと勝てる、ていうジンクスがありまして……」
「願掛け、ということですか。神頼みで勝てるほど、私は甘くないのはご存知でしょう?」
「うっ……はい……」
つくにしても、あまり上手くない嘘だったなと思いながら、ピアッサーを返してもらおうとしたが、「やらないとは言ってませんよ」と取り上げられた。
「さ、お座りくださいまし」
ホームのベンチに座ると、ノボリさんは手袋を外して優しく私の耳に触れた。
冷たそうだと思っていたノボリさんの指先は意外と温かく、意識がそちらの方にばかりいっていて、両耳開け終わったことに気が付かなかった。
「これで終わりですか?」
「あ、えっと、待ってください」
慌てて、ファーストピアスにと買っていた黒い三角形のピアスをとりだし、ノボリさんに鏡を持ってもらい四苦八苦しながらつける。
「よしっ!ありがとうございます、ノボリさん!次こそは勝ちますよ!」
「神頼みではなく、実力でお願いしますね」
「わかってますよ!」
それから暫くしてバトルサブウェイに挑むも、ノボリさんには容易に勝てなかった。
いつもなら、駅につくまでバトルの振り返りを一緒にするのだが、今日はなぜか無言。
沈黙に耐えきれず、ノボリさんに「そういえば、どうしてピアス開けてくれる気になったんですか?」と今更感のある質問をしてしまった。
「そうですね……。お慕いしている方の体に、合法的に傷をつけられるから、でしょうか」
「えっ……?」
嬉しい情報と猟奇的な情報を同時に得てしまい固まる私に、ノボリさんは「冗談です」と真意の読み取れない独特な笑みを浮かべる。
この動悸は、喜びによるものなのか。それとも、恐怖によるものなのか。私には判断がつかなかった。
「ところで私、面白い話を聞きましてね」
話題が変わる、と喜んで「どんな話ですか?」と聞くと「貴方様がお話していたジンクスについてです」と切り出され、心臓が不自然に跳ねた。
「カミツレ様にお尋ねしたところ、そのようなジンクスは流行っていないそうです」
「わ、私の周りだけだったんですかね……」
「代わりにこのようなジンクスが流行っているそうです。好意を寄せるお相手に開けてもらい、そのお相手をイメージしたピアスをつけると両思いになれるとか」
顔に熱が集まり俯く私の髪をノボリさんは耳にかけ、「このファーストピアスは、まるで私のようですね」と囁くように言う。
「自惚れても、よろしいでしょうか」
勇気を出して視線をノボリさんに向けると、こちらの反応を楽しむような表情をしていた。
自惚れるもなにも、もうわかっているくせに。
「ずるい……」
「バトル同様、回りくどいやり方ですね」
そう言いながら、ノボリさんは私の耳裏を軽く撫でた。
「その、ダメでしょうか……?」
「構いませんが……。私、ピアスを開けた経験がございませんが、よろしいのでしょうか?」
確かに、ノボリさんの薄い耳たぶは傷一つない美しいものだった。
ノボリさんのことだ。ピアスを開けようという考えも、いままでなかっただろう。
失敗する恐れはあるが、それでも私はノボリさんにピアスホールを開けてほしかった。
「ノボリさんに、お願いしたいんです」
私の差し出したピアッサーを受け取り、物珍しそうに見てから「理由をお聞きしても?」と、できれば最も触れてほしくないところに触れてくる。
視線を彷徨わせながら、しどろもどろになる私にノボリさんは「なにか私に聞かれると不都合なことが?」と聞いてきた。
「い、いや、その……。ジンクスで、勝ちたい相手にピアスを開けてもらうと勝てる、ていうジンクスがありまして……」
「願掛け、ということですか。神頼みで勝てるほど、私は甘くないのはご存知でしょう?」
「うっ……はい……」
つくにしても、あまり上手くない嘘だったなと思いながら、ピアッサーを返してもらおうとしたが、「やらないとは言ってませんよ」と取り上げられた。
「さ、お座りくださいまし」
ホームのベンチに座ると、ノボリさんは手袋を外して優しく私の耳に触れた。
冷たそうだと思っていたノボリさんの指先は意外と温かく、意識がそちらの方にばかりいっていて、両耳開け終わったことに気が付かなかった。
「これで終わりですか?」
「あ、えっと、待ってください」
慌てて、ファーストピアスにと買っていた黒い三角形のピアスをとりだし、ノボリさんに鏡を持ってもらい四苦八苦しながらつける。
「よしっ!ありがとうございます、ノボリさん!次こそは勝ちますよ!」
「神頼みではなく、実力でお願いしますね」
「わかってますよ!」
それから暫くしてバトルサブウェイに挑むも、ノボリさんには容易に勝てなかった。
いつもなら、駅につくまでバトルの振り返りを一緒にするのだが、今日はなぜか無言。
沈黙に耐えきれず、ノボリさんに「そういえば、どうしてピアス開けてくれる気になったんですか?」と今更感のある質問をしてしまった。
「そうですね……。お慕いしている方の体に、合法的に傷をつけられるから、でしょうか」
「えっ……?」
嬉しい情報と猟奇的な情報を同時に得てしまい固まる私に、ノボリさんは「冗談です」と真意の読み取れない独特な笑みを浮かべる。
この動悸は、喜びによるものなのか。それとも、恐怖によるものなのか。私には判断がつかなかった。
「ところで私、面白い話を聞きましてね」
話題が変わる、と喜んで「どんな話ですか?」と聞くと「貴方様がお話していたジンクスについてです」と切り出され、心臓が不自然に跳ねた。
「カミツレ様にお尋ねしたところ、そのようなジンクスは流行っていないそうです」
「わ、私の周りだけだったんですかね……」
「代わりにこのようなジンクスが流行っているそうです。好意を寄せるお相手に開けてもらい、そのお相手をイメージしたピアスをつけると両思いになれるとか」
顔に熱が集まり俯く私の髪をノボリさんは耳にかけ、「このファーストピアスは、まるで私のようですね」と囁くように言う。
「自惚れても、よろしいでしょうか」
勇気を出して視線をノボリさんに向けると、こちらの反応を楽しむような表情をしていた。
自惚れるもなにも、もうわかっているくせに。
「ずるい……」
「バトル同様、回りくどいやり方ですね」
そう言いながら、ノボリさんは私の耳裏を軽く撫でた。