短編
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「いまの彼氏、どんなところが好きですか?」
日直で日誌を書いていると、珍しく登校していた三途くんにそんなことを聞かれた。
なぜ、そんな話をこの男にせねばならんのか、と思ったが相手は不良だ。あまり刺激せんとこ。
「そうですね。強くて守ってくれるところが好きです」
月並みではあるが、やはり強い男には惹かれるものである。
私の言葉を聞くと、三途くんは「……そうですか」と言って、目元を微笑ませた。
数日後、彼氏が部活で遅くなると言うので、友だちとサイゼリヤに行ってから帰る途中、突然路地裏に引き込まれた。
「こんばんは、苗樫さん」
「さ、んず……くん?」
引きずり込んだのは三途くんで、その顔には返り血がついていた。
また喧嘩をしたのか、と足元を見たら見覚えのある男。いや、見覚えのあった男。その顔は、見る影もなく腫れ上がっていた。私の彼氏だ。
「ひっ」
なぜこんなことになっているのかと、問えないほど怯える私に、三途くんは「強いって言うから、どれくらい強いのかと思ったら、たいしたことなかったですね」と言ってくる。
なにが?どういうこと?混乱する私と視線を合わせる三途くん。
「ね。俺の方が強いし守ってあげられますよ」
優しい声色に対して、その瞳からは歪な感情を感じた。
腰を抜かした私の手を取り、「ねえ、俺と付き合ってくれますよね?」と聞いてくるから、ぞわり、と背筋に寒い物が走った。
やってはいけない、とはわかっていたが、反射的に手を振りほどき「嫌!」と叫んで走り出していた。
それからというもの、私は三途春千夜の嫌がらせに近いアピールを受け続けた。
どこに行っても現れる三途春千夜に、トラウマレベルの恐怖を覚え、私の中での恋人基準の最優先項目が「三途春千夜から守ってくれる人」になった。
しかし、まあ、あんな真顔で人をぶん殴る男から、誰が守ってくれるというのか、という話だ。
私はそのままトラウマを抱えて高校にあがり、なんとか三途春千夜との関係は薄まり、大学は一人暮らしを始めたので、完全に関わりは断てた。
もう、私は三途春千夜に怯えなくていいのだと言い聞かせるも、完全にトラウマとなってしまい、恋人を作ろうという気持ちにすらならない。
三途春千夜がいま何をしているのか、社会人となったいまはわからないが、まともな生活はしていない気がする。
その日も定時で上がり会社から出ると、ガードレールに座っているピンク髪の男がいた。
瞬時に「ヤバい人だ」と直感的に感じ、目を合わせないようにして、そそくさと帰ろうとしたら「苗樫撫子ー!どこ行くつもりだぁ?!」と明確に私の名前を呼んだ。
あんなヤベー知り合い、いたか?と思い出して、一人いたじゃないか、と思い出して息が止まる。
勢いよく振り向き、よくその目元を見れば朧気な記憶にある三途春千夜と酷似している。
「さん、ず……はるち、よ……」
「そうだぜ。お前の春千夜様が迎えに来たぞ」
マスクのない三途春千夜の初めて見る口元は、獲物を見つけた獣のように歪められていた。
怖い……!
恐怖にかられ走り出そうとする私の手を掴み「待て、こらぁ!」と凄まれ、体が萎縮する。
それでもなんとか「離してください!」と声を上げて手を振りほどこうとすれば、あっさりとその手は離れた。
しかし、代わりに腰にすがりつかれ「話くらい聞けよー!」とギャン泣きされた。
「食事だけ!食事だけでいいから、一緒に来てくれよ!デートとか付き合ってくれとか、いまは言わねえから、食事だけ!な!頼むよ!」
「な、なに!?嫌だ!」
「頼むってばー!もう、お前の嫌がることも怖がることもしねえからさー!」
「この状況が既に嫌だし、怖い!」
「なんでだよ、クソー!なら、アドレス交換だけでもしろよ!もう一回、友だちからならいいだろ!?」
「友だちになった記憶がないんだよ!」
「一緒に登下校したじゃねえかよ!同じ空気吸っただろうが!」
友だち判定がガバガバ過ぎて、本当に怖い。
なにこの人、ヤバい薬でもやってるんじゃないの?!
必死に引き剥がそうとするも、バカ力で剥がれない。
「俺はぜってえに別れねえからなー!」
「そもそも付き合ってねー!」
もうダメだ。
トラウマでも知り合いと思って見逃してやろうと思ったが、これはもう警察案件。
ケータイを取り出し、一一〇番しようとしたら、凄い勢いでケータイを奪われ、「俺以外の男と電話するんじゃねー!」とヒスられた。
「誰か!誰か助けてください!」
そんな私の悲鳴に、「助けたら、なにしてくれる?」と頭の色はさておき、女モテしそうなサラリーマンが声をかけてくれた。
この際、誰でもいい!
「助けてください!変な人に絡まれてるんです!」
「見りゃわかるっての。だから、助けたらなにしてくれるかって聞いてんだろ。ヤク中の惚れた女だけあって、頭悪いな」
この人が何者かは知らないが、三途春千夜の知り合いで尚且、性格が悪そうだというのがわかったので、頼るのは止めた。
「なぁ、なぁー。なにしてくれんのー?」
「うるせえ!撫子に話しかけんな、クソ性悪!」
「どっちも話しかけないで!」
本音をだだ漏れにした瞬間、場が静まった。
なにかまずいことになった気配を察知。
「そういうこと言う奴には、蘭ちゃんも引っ付いちゃお」
「ゔぇー!なんでそんなこと言うんだよー!」
「なんだ、この地獄は!」
背中には胡散臭いサラリーマン、腰には三途春千夜。
ど修羅場だが、片方はトラウマの男だし、もう片方に至っては誰だお前状態だ。
オーディエンスは、動画や写真を撮るだけで助けてくれやしない。
誰か、誰か、助けてくれ!と泣き出しそうになっていると、目付きの鋭い銀髪のワンレンボブの男の子が、「やめろ、みっともねえ」と二人に声をかけると、二人は「はい、首領」と言って離れた。
助かった、と安心する私に男の子は「うちの連中が悪かったな」と言って行ってしまった。
その後ろをついていくサラリーマンと、こちらを未練がましくチラチラ振り返りながらついていく三途春千夜。
なんだったんだ、本当に……。
げんなりして食事をしてから帰宅し、シャワーを浴びて、髪を乾かしている間も、なぜ三途春千夜が私の勤め先を知っているのかと怖くなる。
あまり深いことは考えないようにしよう、としていると、ケータイがメールの受信を通知した。
「誰だ」
ケータイを開けると、それは見知らぬアドレス。
送り間違いか?と思ったが、メール本文を見たら「絶対に登録しろ。消したら殺す」と書かれており、その下には「三途春千夜」の文字。
「ひっ……!」
ケータイを投げ出し、恐怖で震える。
なんで、アドレス知ってるの……!
消してしまおうかと思ったが、これで消したらなにをされるかわからない。
ストーカーは、行動が分からない方が怖いし、下手に刺激してはダメだ。
証拠となる物を揃えるんだ……。と必死に自分に言い聞かせていたら、また受信音。
怖怖確認すると、今度はまた別の見知らぬアドレス。
本文には「また遊ぼうね♡ 灰谷蘭」の文字と自撮りの写真が乗っていた。そこには、あの胡散臭いサラリーマンが。
二人目のストーカーに思わずえづいてしまった。
とりあえず、三途春千夜をストーカー1、灰谷蘭をストーカー2として登録しておいた。
日直で日誌を書いていると、珍しく登校していた三途くんにそんなことを聞かれた。
なぜ、そんな話をこの男にせねばならんのか、と思ったが相手は不良だ。あまり刺激せんとこ。
「そうですね。強くて守ってくれるところが好きです」
月並みではあるが、やはり強い男には惹かれるものである。
私の言葉を聞くと、三途くんは「……そうですか」と言って、目元を微笑ませた。
数日後、彼氏が部活で遅くなると言うので、友だちとサイゼリヤに行ってから帰る途中、突然路地裏に引き込まれた。
「こんばんは、苗樫さん」
「さ、んず……くん?」
引きずり込んだのは三途くんで、その顔には返り血がついていた。
また喧嘩をしたのか、と足元を見たら見覚えのある男。いや、見覚えのあった男。その顔は、見る影もなく腫れ上がっていた。私の彼氏だ。
「ひっ」
なぜこんなことになっているのかと、問えないほど怯える私に、三途くんは「強いって言うから、どれくらい強いのかと思ったら、たいしたことなかったですね」と言ってくる。
なにが?どういうこと?混乱する私と視線を合わせる三途くん。
「ね。俺の方が強いし守ってあげられますよ」
優しい声色に対して、その瞳からは歪な感情を感じた。
腰を抜かした私の手を取り、「ねえ、俺と付き合ってくれますよね?」と聞いてくるから、ぞわり、と背筋に寒い物が走った。
やってはいけない、とはわかっていたが、反射的に手を振りほどき「嫌!」と叫んで走り出していた。
それからというもの、私は三途春千夜の嫌がらせに近いアピールを受け続けた。
どこに行っても現れる三途春千夜に、トラウマレベルの恐怖を覚え、私の中での恋人基準の最優先項目が「三途春千夜から守ってくれる人」になった。
しかし、まあ、あんな真顔で人をぶん殴る男から、誰が守ってくれるというのか、という話だ。
私はそのままトラウマを抱えて高校にあがり、なんとか三途春千夜との関係は薄まり、大学は一人暮らしを始めたので、完全に関わりは断てた。
もう、私は三途春千夜に怯えなくていいのだと言い聞かせるも、完全にトラウマとなってしまい、恋人を作ろうという気持ちにすらならない。
三途春千夜がいま何をしているのか、社会人となったいまはわからないが、まともな生活はしていない気がする。
その日も定時で上がり会社から出ると、ガードレールに座っているピンク髪の男がいた。
瞬時に「ヤバい人だ」と直感的に感じ、目を合わせないようにして、そそくさと帰ろうとしたら「苗樫撫子ー!どこ行くつもりだぁ?!」と明確に私の名前を呼んだ。
あんなヤベー知り合い、いたか?と思い出して、一人いたじゃないか、と思い出して息が止まる。
勢いよく振り向き、よくその目元を見れば朧気な記憶にある三途春千夜と酷似している。
「さん、ず……はるち、よ……」
「そうだぜ。お前の春千夜様が迎えに来たぞ」
マスクのない三途春千夜の初めて見る口元は、獲物を見つけた獣のように歪められていた。
怖い……!
恐怖にかられ走り出そうとする私の手を掴み「待て、こらぁ!」と凄まれ、体が萎縮する。
それでもなんとか「離してください!」と声を上げて手を振りほどこうとすれば、あっさりとその手は離れた。
しかし、代わりに腰にすがりつかれ「話くらい聞けよー!」とギャン泣きされた。
「食事だけ!食事だけでいいから、一緒に来てくれよ!デートとか付き合ってくれとか、いまは言わねえから、食事だけ!な!頼むよ!」
「な、なに!?嫌だ!」
「頼むってばー!もう、お前の嫌がることも怖がることもしねえからさー!」
「この状況が既に嫌だし、怖い!」
「なんでだよ、クソー!なら、アドレス交換だけでもしろよ!もう一回、友だちからならいいだろ!?」
「友だちになった記憶がないんだよ!」
「一緒に登下校したじゃねえかよ!同じ空気吸っただろうが!」
友だち判定がガバガバ過ぎて、本当に怖い。
なにこの人、ヤバい薬でもやってるんじゃないの?!
必死に引き剥がそうとするも、バカ力で剥がれない。
「俺はぜってえに別れねえからなー!」
「そもそも付き合ってねー!」
もうダメだ。
トラウマでも知り合いと思って見逃してやろうと思ったが、これはもう警察案件。
ケータイを取り出し、一一〇番しようとしたら、凄い勢いでケータイを奪われ、「俺以外の男と電話するんじゃねー!」とヒスられた。
「誰か!誰か助けてください!」
そんな私の悲鳴に、「助けたら、なにしてくれる?」と頭の色はさておき、女モテしそうなサラリーマンが声をかけてくれた。
この際、誰でもいい!
「助けてください!変な人に絡まれてるんです!」
「見りゃわかるっての。だから、助けたらなにしてくれるかって聞いてんだろ。ヤク中の惚れた女だけあって、頭悪いな」
この人が何者かは知らないが、三途春千夜の知り合いで尚且、性格が悪そうだというのがわかったので、頼るのは止めた。
「なぁ、なぁー。なにしてくれんのー?」
「うるせえ!撫子に話しかけんな、クソ性悪!」
「どっちも話しかけないで!」
本音をだだ漏れにした瞬間、場が静まった。
なにかまずいことになった気配を察知。
「そういうこと言う奴には、蘭ちゃんも引っ付いちゃお」
「ゔぇー!なんでそんなこと言うんだよー!」
「なんだ、この地獄は!」
背中には胡散臭いサラリーマン、腰には三途春千夜。
ど修羅場だが、片方はトラウマの男だし、もう片方に至っては誰だお前状態だ。
オーディエンスは、動画や写真を撮るだけで助けてくれやしない。
誰か、誰か、助けてくれ!と泣き出しそうになっていると、目付きの鋭い銀髪のワンレンボブの男の子が、「やめろ、みっともねえ」と二人に声をかけると、二人は「はい、首領」と言って離れた。
助かった、と安心する私に男の子は「うちの連中が悪かったな」と言って行ってしまった。
その後ろをついていくサラリーマンと、こちらを未練がましくチラチラ振り返りながらついていく三途春千夜。
なんだったんだ、本当に……。
げんなりして食事をしてから帰宅し、シャワーを浴びて、髪を乾かしている間も、なぜ三途春千夜が私の勤め先を知っているのかと怖くなる。
あまり深いことは考えないようにしよう、としていると、ケータイがメールの受信を通知した。
「誰だ」
ケータイを開けると、それは見知らぬアドレス。
送り間違いか?と思ったが、メール本文を見たら「絶対に登録しろ。消したら殺す」と書かれており、その下には「三途春千夜」の文字。
「ひっ……!」
ケータイを投げ出し、恐怖で震える。
なんで、アドレス知ってるの……!
消してしまおうかと思ったが、これで消したらなにをされるかわからない。
ストーカーは、行動が分からない方が怖いし、下手に刺激してはダメだ。
証拠となる物を揃えるんだ……。と必死に自分に言い聞かせていたら、また受信音。
怖怖確認すると、今度はまた別の見知らぬアドレス。
本文には「また遊ぼうね♡ 灰谷蘭」の文字と自撮りの写真が乗っていた。そこには、あの胡散臭いサラリーマンが。
二人目のストーカーに思わずえづいてしまった。
とりあえず、三途春千夜をストーカー1、灰谷蘭をストーカー2として登録しておいた。