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飛行術の授業が嫌いだ。
私の世界では、飛行術は上流階級の特権だった。
故に、私は飛行経験がない。
落ちたら即死、とは行かずとも絶対に死んだ方がましな怪我をする。
ガタガタと震える私に、合同授業が故に私のパートナーになってしまったトレイ先輩に、迷惑をかける前に「すみません」と謝っておく。
「なんだ、珍しいな。いつもは余裕綽々だっていうのに」
「いや、今回ばかりはダメですね。いままでまともに飛べた試しがないですし」
「大丈夫だって。なにかあっても、俺が助けてやるから」
トレイ先輩とてもお兄ちゃんで安心感があるけれど、今日こそ飛べないと放課後に補習だとバルガス先生に言われている。
バルガス先生の根性論と筋肉論を聞きながらの補習、絶対に嫌だ。
「とりあえず、どれくらいできるか見せてくれ」
「はい……」
言われるままホウキに跨がり、足を地面から浮かした瞬間、体は落下し、地上数センチのところで停止した。
「これは……ちょっと……」
あの面倒見のよさ天元突破なトレイ先輩に引かれた事実が受け止めきれない。
アズール先輩よりましだと言って、トレイ先輩。
「いいか、ホウキが浮くイメージをしっかり持つんだ」
見てろ、と言って軽く飛んで見せてくれたトレイ先輩を凝視し、脳味噌にホウキが浮くイメージを叩き込むと、ゆっくりとトレイ先輩と同じ高さまで浮いたが、体勢が悪いのか安定しない。
「あんまり前傾姿勢にならない。バランスが崩れるぞ」
「ここから上体起こしたら頭から落ちます!」
「なら、手掴まってていいから、ゆっくり起き上がってみな」
差し出されたトレイ先輩の手を掴み、そろそろと前傾姿勢から起こしていけば、たしかに、安定はする。
「よしよし、できたじゃないか」
「は、はい……」
「じゃあ、手を離すぞ」
そう言って私の手を離そうとするトレイ先輩の手を強く握り、「やめてください!怖い!」と駄々をこねたら、「困ったな」と眉をハの字にしながらも握り返してくれた。
「大丈夫だって、ちゃんとできてる」
「そういうのではなく、いま手を離されたらコントロール失って、変なところに飛んで行っちゃうから!」
「その時は俺が追いかけるから」
「落ちたらどうするんですか!」
「受け止めるから、安心して落ちろ」
「洒落になりませんが!?」
ぴーきゃー騒いでいたら、突然、「うるさいぞ!人間!」と、お前の方がうるさいと言いたくなるような声量で怒鳴られ、驚いてトレイ先輩も私も手を離し、宣言通りに真っ直ぐ目にも止まらぬ勢いですっ飛んで行った。
その私を、バルガス先生とトレイ先輩が呼んだ気がした。
セベク、許さない。
そのまま、どこかの教室の窓を突き破り、授業に乱入するはめになり、床にワンバウンドし、勢いのまま転がり、棚かなにかに激突し停止しする。
目を回す私の耳にはたしかに混乱とも、驚きともとれる、クルーウェル先生の「仔犬ー!」という怒声だけは認識できた。
その後、怒り狂いながらも教師としての責務として保健室へ連れてきてくれたクルーウェル先生の治療を受けたのち、教室の掃除、棚の整理、窓の仮修繕、植物園の雑草むしりを命じられたが、怪我と暴走した状況を鑑みて雑草むしりは免除となった。
結局、言いつけられた罰をトレイ先輩に手伝ってもらい、放課後に飛行術の補習を受けることになったが、連帯責任としてトレイ先輩まで私がちゃんと飛べるようになるまで付き合わせることに……。
「誠に申し訳ございません」
痛む体で、トレイ先輩と、アズール先輩と双子先輩を見に行ったバルガス先生の代わりに来たクルーウェル先生に土下座して謝る。
「土下座が堂に入ってきたな」
さすが、俺に何度となく土下座しているだけある。という盛大な嫌味をクルーウェル先生からいただいた。
「まあまあ。俺は気にしてないから、練習しよう」
「はい……」
恐る恐る軽く浮いて見せたが、やはり先ほどの恐怖があるのか、高さが元に戻ってしまった。
クルーウェル先生の珍しい、心底同情した「アーシェングロットより酷いな」という言葉が追い討ちをかけてくる。
「さっきはそこそこ浮いたんですけどね。自信、なくなったか?」
「というより、怖いです」
「怯えるな、仔犬。今度は俺もいる。しっかり、基礎からゆっくり教えてやる」
「そうそう。さっきだって、驚いて暴走しただけだから、筋は悪くないさ」
両サイドからよしよし、頑張ろうなをされては頑張らなくてはならない。
付き合ってくれている、トレイ先輩とクルーウェル先生の為にも。
ゆっくり、ゆっくり、トレイ先輩とクルーウェル先生に体を支えてもらいながら浮き、そっと二人の手が離れ少し上の方まで来ても、ふわふわと浮き続けている。
「で、できました!」
「あぁ!すごいぞ!」
「Good girl.よし、そしたらゆっくり降りてこい」
「降りる……?」
降りる段階で、自分が降り方を知らないこと、そこそこその高さであることにパニックになり、またもや真っ直ぐにすっ飛んで行き、空中散歩中の学園長に激突し、回収された。
「暴走飛行にもあります!これからは、縄にでもつないで練習しなさい!万が一があってはいけませんので、私も付き合います!」
学園長の申し出に、「そんな!申し訳ないです!」と言う私に続き、クルーウェル先生が「学園長は仕事が溜まっていらっしゃるでしょう。ここは私に任せてください」と言う。
「いいえ?大抵の仕事は終わらせましたよ。クルーウェル先生こそ、補習に付き合いっている場合ではないのでは?課題の確認をしなくてはならないでしょう」
「夜にでも目を通せば終わりますよ。そういえば、クローバー。貴様もお茶会の準備とやらがあるのだろう?ここは俺が見ておくから、帰っていいぞ」
「問題ありません。リドルには説明して許可を得ていますし、連帯責任ですから。先生たちこそ、お忙しいのであれば俺に任せてください」
「……」
「……」
「……」
うっ、なんだか空気が重くピリピリしだした。
私があまりにもポンコツすぎて、三人共イライラしているんだ。
「すみません……。お礼に、私にできることはなんでもします……」
私の申し出に、三人はピタリと動きを止め素晴らしい笑顔をこちらに向けた。
え、なに、怖い。
「そんなこと気にしなくてもいいが、そうだな。なら、明日の朝昼夕の食事を一緒に食べてくれないか?」
「そうですね、人の好意は無下にはしませんよ。私、優しいので。では、私の部屋でマッサージをしていただきましょうか」
「仔犬の精一杯の罪滅ぼしに付き合ってやるのも、飼い主の務めだ。そうだな、あとで部屋に来い。犬として飼い主である俺を楽しませろ」
なんだかよくわらないが、面倒臭いことを言ってしまったな、というのは察した。
私の世界では、飛行術は上流階級の特権だった。
故に、私は飛行経験がない。
落ちたら即死、とは行かずとも絶対に死んだ方がましな怪我をする。
ガタガタと震える私に、合同授業が故に私のパートナーになってしまったトレイ先輩に、迷惑をかける前に「すみません」と謝っておく。
「なんだ、珍しいな。いつもは余裕綽々だっていうのに」
「いや、今回ばかりはダメですね。いままでまともに飛べた試しがないですし」
「大丈夫だって。なにかあっても、俺が助けてやるから」
トレイ先輩とてもお兄ちゃんで安心感があるけれど、今日こそ飛べないと放課後に補習だとバルガス先生に言われている。
バルガス先生の根性論と筋肉論を聞きながらの補習、絶対に嫌だ。
「とりあえず、どれくらいできるか見せてくれ」
「はい……」
言われるままホウキに跨がり、足を地面から浮かした瞬間、体は落下し、地上数センチのところで停止した。
「これは……ちょっと……」
あの面倒見のよさ天元突破なトレイ先輩に引かれた事実が受け止めきれない。
アズール先輩よりましだと言って、トレイ先輩。
「いいか、ホウキが浮くイメージをしっかり持つんだ」
見てろ、と言って軽く飛んで見せてくれたトレイ先輩を凝視し、脳味噌にホウキが浮くイメージを叩き込むと、ゆっくりとトレイ先輩と同じ高さまで浮いたが、体勢が悪いのか安定しない。
「あんまり前傾姿勢にならない。バランスが崩れるぞ」
「ここから上体起こしたら頭から落ちます!」
「なら、手掴まってていいから、ゆっくり起き上がってみな」
差し出されたトレイ先輩の手を掴み、そろそろと前傾姿勢から起こしていけば、たしかに、安定はする。
「よしよし、できたじゃないか」
「は、はい……」
「じゃあ、手を離すぞ」
そう言って私の手を離そうとするトレイ先輩の手を強く握り、「やめてください!怖い!」と駄々をこねたら、「困ったな」と眉をハの字にしながらも握り返してくれた。
「大丈夫だって、ちゃんとできてる」
「そういうのではなく、いま手を離されたらコントロール失って、変なところに飛んで行っちゃうから!」
「その時は俺が追いかけるから」
「落ちたらどうするんですか!」
「受け止めるから、安心して落ちろ」
「洒落になりませんが!?」
ぴーきゃー騒いでいたら、突然、「うるさいぞ!人間!」と、お前の方がうるさいと言いたくなるような声量で怒鳴られ、驚いてトレイ先輩も私も手を離し、宣言通りに真っ直ぐ目にも止まらぬ勢いですっ飛んで行った。
その私を、バルガス先生とトレイ先輩が呼んだ気がした。
セベク、許さない。
そのまま、どこかの教室の窓を突き破り、授業に乱入するはめになり、床にワンバウンドし、勢いのまま転がり、棚かなにかに激突し停止しする。
目を回す私の耳にはたしかに混乱とも、驚きともとれる、クルーウェル先生の「仔犬ー!」という怒声だけは認識できた。
その後、怒り狂いながらも教師としての責務として保健室へ連れてきてくれたクルーウェル先生の治療を受けたのち、教室の掃除、棚の整理、窓の仮修繕、植物園の雑草むしりを命じられたが、怪我と暴走した状況を鑑みて雑草むしりは免除となった。
結局、言いつけられた罰をトレイ先輩に手伝ってもらい、放課後に飛行術の補習を受けることになったが、連帯責任としてトレイ先輩まで私がちゃんと飛べるようになるまで付き合わせることに……。
「誠に申し訳ございません」
痛む体で、トレイ先輩と、アズール先輩と双子先輩を見に行ったバルガス先生の代わりに来たクルーウェル先生に土下座して謝る。
「土下座が堂に入ってきたな」
さすが、俺に何度となく土下座しているだけある。という盛大な嫌味をクルーウェル先生からいただいた。
「まあまあ。俺は気にしてないから、練習しよう」
「はい……」
恐る恐る軽く浮いて見せたが、やはり先ほどの恐怖があるのか、高さが元に戻ってしまった。
クルーウェル先生の珍しい、心底同情した「アーシェングロットより酷いな」という言葉が追い討ちをかけてくる。
「さっきはそこそこ浮いたんですけどね。自信、なくなったか?」
「というより、怖いです」
「怯えるな、仔犬。今度は俺もいる。しっかり、基礎からゆっくり教えてやる」
「そうそう。さっきだって、驚いて暴走しただけだから、筋は悪くないさ」
両サイドからよしよし、頑張ろうなをされては頑張らなくてはならない。
付き合ってくれている、トレイ先輩とクルーウェル先生の為にも。
ゆっくり、ゆっくり、トレイ先輩とクルーウェル先生に体を支えてもらいながら浮き、そっと二人の手が離れ少し上の方まで来ても、ふわふわと浮き続けている。
「で、できました!」
「あぁ!すごいぞ!」
「Good girl.よし、そしたらゆっくり降りてこい」
「降りる……?」
降りる段階で、自分が降り方を知らないこと、そこそこその高さであることにパニックになり、またもや真っ直ぐにすっ飛んで行き、空中散歩中の学園長に激突し、回収された。
「暴走飛行にもあります!これからは、縄にでもつないで練習しなさい!万が一があってはいけませんので、私も付き合います!」
学園長の申し出に、「そんな!申し訳ないです!」と言う私に続き、クルーウェル先生が「学園長は仕事が溜まっていらっしゃるでしょう。ここは私に任せてください」と言う。
「いいえ?大抵の仕事は終わらせましたよ。クルーウェル先生こそ、補習に付き合いっている場合ではないのでは?課題の確認をしなくてはならないでしょう」
「夜にでも目を通せば終わりますよ。そういえば、クローバー。貴様もお茶会の準備とやらがあるのだろう?ここは俺が見ておくから、帰っていいぞ」
「問題ありません。リドルには説明して許可を得ていますし、連帯責任ですから。先生たちこそ、お忙しいのであれば俺に任せてください」
「……」
「……」
「……」
うっ、なんだか空気が重くピリピリしだした。
私があまりにもポンコツすぎて、三人共イライラしているんだ。
「すみません……。お礼に、私にできることはなんでもします……」
私の申し出に、三人はピタリと動きを止め素晴らしい笑顔をこちらに向けた。
え、なに、怖い。
「そんなこと気にしなくてもいいが、そうだな。なら、明日の朝昼夕の食事を一緒に食べてくれないか?」
「そうですね、人の好意は無下にはしませんよ。私、優しいので。では、私の部屋でマッサージをしていただきましょうか」
「仔犬の精一杯の罪滅ぼしに付き合ってやるのも、飼い主の務めだ。そうだな、あとで部屋に来い。犬として飼い主である俺を楽しませろ」
なんだかよくわらないが、面倒臭いことを言ってしまったな、というのは察した。