2020バレンタイン部屋
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毎年、バレンタインになるとアランから花束となにかしらプレゼントが届いていたが、今年は私がHLにいるからか、はたまたバレンタインにモテないからとヤケクソ起こして震災召喚をするとネットに犯行予告流した馬鹿を止める為に徹夜続きで忘れているのか。
まあ、別に貰えないならそれはそれでいいのだけれど。
「撫子。そっちのデータ入力の進捗はどうだい」
「順調に終わっているので、八割方と言ったところです。このままスターフェイズさんが仕事を追加をしなければあと三時間ほどで終わり、私は帰れます」
「わかった。アニラ、君の仕事を撫子に任せて一度帰りなさい。ここ数日帰ってないだろ。少し休んでくれ」
私はここ数日どころか、お前と同じ日数帰ってないけどな?労れよ?という気持ちはあるが、アニラさんをこのまま拘束し続けるのは私も反対だ。
入力作業を一度切り上げ、アニラさんにどこまで終わっているか確認をして仕事を引き継ごうとしたが、やはり私がアランと同じ日数徹夜をしている事実が気になるようで、「大丈夫ですか?」と心配された。
これが正しい人間のあり方だよな、と思いながら「大丈夫ですよ」と答える。
「そうだぞ、アニラ。僕にできることは、撫子は大体できるんだ。『できません』なんて言って、尻尾巻いて逃げ出す子じゃないさ!」
「ああいう煽りをしてくるタスマニアデビルがいるので、帰るに帰れないんですよ」
「君が帰ったら、僕は任務終了後に死ぬかもな!」
「白々しい」
軽口を叩く余裕があるなら、当分死なないわよ。
困惑するアニラさんに、「大丈夫、信じてください」と手をそっと握り安心させる為に微笑めば、「スターフェイズさんの従妹ってだけありますね」と言われたが、待ってどういう意味。
アニラさんから仕事を引き継ぎ、残った私とアランはガタガタとお互い無言で作業を再開した。
私たちのあまりにも鬼気迫る空気に、いつもうるさいザップさんたちも静かにゲームをしている。
データ入力が終わり、アニラさんの作業に手をつけようと資料を取りに席を立ったら、クラウスさんとギルベルトさんが近寄ってきて花束と私が好きなハーブティーの茶葉とクッキーを差し出した。
「ありがとうございます……。ですが、これは?」
「少し早いが、バレンタインだ」
「クッキーは私が焼きました」
どうやら、バレンタイン当日は徹夜明けですぐ帰ってしまうだろうから、今のうちにわたして小腹の足しにしてほしかったそうだ。
こういう気遣い、素敵だわ。と荒んだ気持ちがほんわかしていたら、アランが「えっ?あっ?!バレンタイン?!」と声をあげた。
あなた、何の為にいまがんばってると思ってるのよ。
「待ってくれ、撫子!俺もいまから買いに行くから!薬指のサイズを測らせてくれ!」
「そういう露骨な独占欲の象徴やめてほしいですね。と言いますか、いまスターフェイズさんにいなくなられると困るんですが」
お前がメインの仕事やってんだから、抜けるんじゃない。
一気にやつれたアランだったが、なにか閃いたのか「知っているか、撫子」と聞いてきたので、「知りません、聞きません」と言ったのに「日本のバレンタインでは女性からチョコレートを送るらしいんだ」というトリビアを披露した。
知ってる。
「たまには君からどうだ!ホワイトデーは期待してくれていい!」
「別に返礼はいいんですけど、スターフェイズさん甘い物苦手でしたよね」
「今日だけはいける!疲れているから糖分もほしい!」
必死だなぁ……、とドン引きを通り越して憐れみすら感じる。
まあ、休憩貰えるならチョコレートくらいお使いしてきてもいいか、と完全に疲れと眠気でテンションとキャラがおかしくなっているアランに「食事休憩くれるなら、いいですよ」と了承をすれば、尻尾を振る犬のようにゆるい笑顔を浮かべられると弱いんだよなぁ。
財布を持ち、「じゃあ、ちょっと行ってきます」と休憩とお使いに出る。
先にケーキを物色しようとパティスリーのある地区へと向かっている途中、「よぉ、小さい方」と聞き覚えのある声に呼び止められ振り向けば、ロウ警部補が手を振っていた。
「こんにちは、ロウ警部補」
「おう」
いつものようにハンドシェイクしてから、「お疲れ様です」と言えば「お前もな」と言われ頭を乱暴に撫でられながら、そんなに疲れた顔してるかなぁ、と思っていたら「これでも食って元気だせ」とポケットからキャンディーを取り出して手のひらに乗せてくれた。
「ありがとうございます。ホワイトデーには期待してくださいね」
「んなもんいらねえから、震災召喚しっかり止めろよ」
「私が手伝ってるんですから、そこは大丈夫ですよ。じゃあ、うちのタスマニアデビルに日本式バレンタインしないといけないんで」
「巣穴に監禁されねえよう、気を付けろよ」
ロウ警部補の洒落にならない洒落に、「その時は助けに来てくださいね」と返してパティスリーで小さめの甘酸っぱい物を選んでから、帰りにでも買って帰ろうと店を出て食事に行く道すがら、アラン行き付けの仕立屋の前を通った。
いつも、私は花束とプラスアルファでなにか貰っていたのを考えると、私もなにか言われた物以外を買っていくべきかと悩む。
「……」
財布の中身を確認し、まあ、とりあえず見るだけでもと中へ立ち入れば、「いらっしゃいませ、撫子様」と顔見知った店員さんに迎え入れられ、ただアランにくっついて来てるだけの私は少し気まずくなりながら、「アランお兄ちゃんにバレンタインのプレゼントを買いに来ました……」と猫被って用件を伝えれば、「素敵ですね。ご予算をお伺いしてもよろしいですか?」と聞かれた。
まあ、こんな高級店に子供が来たら予算を聞くか。
「近所のお花屋さんでお手伝いしたんですけど、これでなにが買えますか?」
私の財布の中身を確認し、「これだけあれば、色々選べますね」と微笑んでくれて安心した。
「やはり、お仕事をされている方にはネクタイやネクタイピンがオススメですね」
面白柄にしてやろうかと思ったが、この高級店にそんな物があるはずもなく、シックな色味と柄ばかり並んでいた。
アランのイメージカラーはダークブルーだし、それに合わせた物でいいかと割かし投げやりに考えていた私の目に、ライトブルーのネクタイが飛び込んできた。
故郷の夏の乾いた空気と、高く青い空を背にしたありし日のアランを思い出し、無意識に「あの、ライトブルーのネクタイを」と口にしていた。
「かしこまりました。他にはよろしいですか?」
「できれば、ネクタイピンとキーケースもほしいんですけど、予算的に大丈夫ですか?アランお兄ちゃんには、いつも貰ってばかりだから」
「その二点でしたら……」
なんとか予算内に収まり、店員さんに礼を言って店を後にし、急いで食事とケーキを買って帰ればじと目のアランと冷や汗をかいた面々に迎え入れられた。
あー……ですよね……。
「お帰り、撫子……」
「ただいまです……」
「君は一人で出掛けさせると、本当に帰りが遅いな。歩幅の所為かい?それとも、そんなに真剣に僕へのプレゼントを考えてくれていたのか?」
刺々しく嫌味を投げ掛けてくるアランと、早く機嫌をとれとジェスチャーしてくるザップさんたち。
わかってる、わかってる。
ケーキの入った紙袋をローテーブルに置き、もうひとつの紙袋を差し出し「ちょっと選ぶのに手間取ったの」と言えば、面食らった表情をされた。
「たまたま、たまたまよ!アランがよく行く仕立屋の前を通ったし、いつもアランはバレンタインの時に花束以外にもくれてたから、私もそれに倣おうと思ったのよ。適当に選びたくなくて悩んでたら帰るの遅くなったけど、ここ以外には全然時間使ってないわよ!」
照れ隠しでまくし立てた私に、アランは「そうか……」と惚けたような表情をするから、やはりネクタイとかは沢山持っていたから要らなかったかと不安になり、聞かれてもいないことを話始めてしまう。
「べ、別に要らなかったらいいのよ。ネクタイの色、もしかしたら普段着てる物にあわないかも知れないし、ネクタイピンなんてたくさん持ってるでしょうし……。あ、でも、キーケースは新しい物にって言ってたから、丁度いい……んじゃないかな……」
尻すぼみになりアランの反応も見られなくなって俯く私に、アランは「要らないわけないだろ!」と酷く驚いたような声をあげた。
「すまない。まさか、ねだった物以外も貰えるとは思わなくて……感情が追い付かなかったんだ……。君が俺の為に悩んでくれて、嬉しいよ。ありがとう」
社交辞令ではない、本当に嬉しい時の顔をされて今度は別の意味で恥ずかしくなってきた。
いや、これは恥ずかしいのではなく嬉しいのだろう。
「あ……その……ケーキ!ケーキ用意するわね!血糖値上げましょう!」
「あぁ、お願いするよ」
嬉しそうに手元の紙袋から品物をだすアランが、嫌な笑みを浮かべ「一応言っておくが、俺は都合のいい意味合いにとるからな」と言われ「なにが?」と疑問に思ったが、アランが手元のネクタイの箱にキスをしたから何かしらネクタイに関連することだろうと察しはついた。
ネクタイ……ネクタイ……はて?
ピンとこない私に、アランは愉快そうに「君もずいぶん疲れているね」と言う。
「プレゼントには意味があるんだよ、撫子。ネクタイは『あなたに首ったけ』『束縛したい』、ネクタイピンは『あなたは私のもの』、キーケースは『いつも側にいたい』。まあ、他にも意味はあるが、俺は都合のいい方に解釈するよ」
してやったり、と言わんばかりのご満悦スマイルを浮かべられ、思わず「そ、そういう深い意味はないわ!」と大声で否定するも、アランは「むきになる所が、信憑性がないなぁ」とわかっていて返してくる。
「本当よ!あったとしても、尊敬とか見守ってるってだけで、キーケースも必要かと思っただけで!」
「はいはい、聞こえない。早くケーキ持ってきてくれ」
話を聞く気のないアランに腹を立て、文句を言ってやろうとしたが「バレンタイン前に終わらして、当日は出掛けよう。ホワイトデーまで待てそうにない」と、いつになくウキウキした顔をしていて思わず許して「そうね」と言ってしまったから、私は疲れているのかも知れない。
落ち着いて考えれば、その急ピッチに合わせて仕事が増えることは明白だったのだから。
まあ、別に貰えないならそれはそれでいいのだけれど。
「撫子。そっちのデータ入力の進捗はどうだい」
「順調に終わっているので、八割方と言ったところです。このままスターフェイズさんが仕事を追加をしなければあと三時間ほどで終わり、私は帰れます」
「わかった。アニラ、君の仕事を撫子に任せて一度帰りなさい。ここ数日帰ってないだろ。少し休んでくれ」
私はここ数日どころか、お前と同じ日数帰ってないけどな?労れよ?という気持ちはあるが、アニラさんをこのまま拘束し続けるのは私も反対だ。
入力作業を一度切り上げ、アニラさんにどこまで終わっているか確認をして仕事を引き継ごうとしたが、やはり私がアランと同じ日数徹夜をしている事実が気になるようで、「大丈夫ですか?」と心配された。
これが正しい人間のあり方だよな、と思いながら「大丈夫ですよ」と答える。
「そうだぞ、アニラ。僕にできることは、撫子は大体できるんだ。『できません』なんて言って、尻尾巻いて逃げ出す子じゃないさ!」
「ああいう煽りをしてくるタスマニアデビルがいるので、帰るに帰れないんですよ」
「君が帰ったら、僕は任務終了後に死ぬかもな!」
「白々しい」
軽口を叩く余裕があるなら、当分死なないわよ。
困惑するアニラさんに、「大丈夫、信じてください」と手をそっと握り安心させる為に微笑めば、「スターフェイズさんの従妹ってだけありますね」と言われたが、待ってどういう意味。
アニラさんから仕事を引き継ぎ、残った私とアランはガタガタとお互い無言で作業を再開した。
私たちのあまりにも鬼気迫る空気に、いつもうるさいザップさんたちも静かにゲームをしている。
データ入力が終わり、アニラさんの作業に手をつけようと資料を取りに席を立ったら、クラウスさんとギルベルトさんが近寄ってきて花束と私が好きなハーブティーの茶葉とクッキーを差し出した。
「ありがとうございます……。ですが、これは?」
「少し早いが、バレンタインだ」
「クッキーは私が焼きました」
どうやら、バレンタイン当日は徹夜明けですぐ帰ってしまうだろうから、今のうちにわたして小腹の足しにしてほしかったそうだ。
こういう気遣い、素敵だわ。と荒んだ気持ちがほんわかしていたら、アランが「えっ?あっ?!バレンタイン?!」と声をあげた。
あなた、何の為にいまがんばってると思ってるのよ。
「待ってくれ、撫子!俺もいまから買いに行くから!薬指のサイズを測らせてくれ!」
「そういう露骨な独占欲の象徴やめてほしいですね。と言いますか、いまスターフェイズさんにいなくなられると困るんですが」
お前がメインの仕事やってんだから、抜けるんじゃない。
一気にやつれたアランだったが、なにか閃いたのか「知っているか、撫子」と聞いてきたので、「知りません、聞きません」と言ったのに「日本のバレンタインでは女性からチョコレートを送るらしいんだ」というトリビアを披露した。
知ってる。
「たまには君からどうだ!ホワイトデーは期待してくれていい!」
「別に返礼はいいんですけど、スターフェイズさん甘い物苦手でしたよね」
「今日だけはいける!疲れているから糖分もほしい!」
必死だなぁ……、とドン引きを通り越して憐れみすら感じる。
まあ、休憩貰えるならチョコレートくらいお使いしてきてもいいか、と完全に疲れと眠気でテンションとキャラがおかしくなっているアランに「食事休憩くれるなら、いいですよ」と了承をすれば、尻尾を振る犬のようにゆるい笑顔を浮かべられると弱いんだよなぁ。
財布を持ち、「じゃあ、ちょっと行ってきます」と休憩とお使いに出る。
先にケーキを物色しようとパティスリーのある地区へと向かっている途中、「よぉ、小さい方」と聞き覚えのある声に呼び止められ振り向けば、ロウ警部補が手を振っていた。
「こんにちは、ロウ警部補」
「おう」
いつものようにハンドシェイクしてから、「お疲れ様です」と言えば「お前もな」と言われ頭を乱暴に撫でられながら、そんなに疲れた顔してるかなぁ、と思っていたら「これでも食って元気だせ」とポケットからキャンディーを取り出して手のひらに乗せてくれた。
「ありがとうございます。ホワイトデーには期待してくださいね」
「んなもんいらねえから、震災召喚しっかり止めろよ」
「私が手伝ってるんですから、そこは大丈夫ですよ。じゃあ、うちのタスマニアデビルに日本式バレンタインしないといけないんで」
「巣穴に監禁されねえよう、気を付けろよ」
ロウ警部補の洒落にならない洒落に、「その時は助けに来てくださいね」と返してパティスリーで小さめの甘酸っぱい物を選んでから、帰りにでも買って帰ろうと店を出て食事に行く道すがら、アラン行き付けの仕立屋の前を通った。
いつも、私は花束とプラスアルファでなにか貰っていたのを考えると、私もなにか言われた物以外を買っていくべきかと悩む。
「……」
財布の中身を確認し、まあ、とりあえず見るだけでもと中へ立ち入れば、「いらっしゃいませ、撫子様」と顔見知った店員さんに迎え入れられ、ただアランにくっついて来てるだけの私は少し気まずくなりながら、「アランお兄ちゃんにバレンタインのプレゼントを買いに来ました……」と猫被って用件を伝えれば、「素敵ですね。ご予算をお伺いしてもよろしいですか?」と聞かれた。
まあ、こんな高級店に子供が来たら予算を聞くか。
「近所のお花屋さんでお手伝いしたんですけど、これでなにが買えますか?」
私の財布の中身を確認し、「これだけあれば、色々選べますね」と微笑んでくれて安心した。
「やはり、お仕事をされている方にはネクタイやネクタイピンがオススメですね」
面白柄にしてやろうかと思ったが、この高級店にそんな物があるはずもなく、シックな色味と柄ばかり並んでいた。
アランのイメージカラーはダークブルーだし、それに合わせた物でいいかと割かし投げやりに考えていた私の目に、ライトブルーのネクタイが飛び込んできた。
故郷の夏の乾いた空気と、高く青い空を背にしたありし日のアランを思い出し、無意識に「あの、ライトブルーのネクタイを」と口にしていた。
「かしこまりました。他にはよろしいですか?」
「できれば、ネクタイピンとキーケースもほしいんですけど、予算的に大丈夫ですか?アランお兄ちゃんには、いつも貰ってばかりだから」
「その二点でしたら……」
なんとか予算内に収まり、店員さんに礼を言って店を後にし、急いで食事とケーキを買って帰ればじと目のアランと冷や汗をかいた面々に迎え入れられた。
あー……ですよね……。
「お帰り、撫子……」
「ただいまです……」
「君は一人で出掛けさせると、本当に帰りが遅いな。歩幅の所為かい?それとも、そんなに真剣に僕へのプレゼントを考えてくれていたのか?」
刺々しく嫌味を投げ掛けてくるアランと、早く機嫌をとれとジェスチャーしてくるザップさんたち。
わかってる、わかってる。
ケーキの入った紙袋をローテーブルに置き、もうひとつの紙袋を差し出し「ちょっと選ぶのに手間取ったの」と言えば、面食らった表情をされた。
「たまたま、たまたまよ!アランがよく行く仕立屋の前を通ったし、いつもアランはバレンタインの時に花束以外にもくれてたから、私もそれに倣おうと思ったのよ。適当に選びたくなくて悩んでたら帰るの遅くなったけど、ここ以外には全然時間使ってないわよ!」
照れ隠しでまくし立てた私に、アランは「そうか……」と惚けたような表情をするから、やはりネクタイとかは沢山持っていたから要らなかったかと不安になり、聞かれてもいないことを話始めてしまう。
「べ、別に要らなかったらいいのよ。ネクタイの色、もしかしたら普段着てる物にあわないかも知れないし、ネクタイピンなんてたくさん持ってるでしょうし……。あ、でも、キーケースは新しい物にって言ってたから、丁度いい……んじゃないかな……」
尻すぼみになりアランの反応も見られなくなって俯く私に、アランは「要らないわけないだろ!」と酷く驚いたような声をあげた。
「すまない。まさか、ねだった物以外も貰えるとは思わなくて……感情が追い付かなかったんだ……。君が俺の為に悩んでくれて、嬉しいよ。ありがとう」
社交辞令ではない、本当に嬉しい時の顔をされて今度は別の意味で恥ずかしくなってきた。
いや、これは恥ずかしいのではなく嬉しいのだろう。
「あ……その……ケーキ!ケーキ用意するわね!血糖値上げましょう!」
「あぁ、お願いするよ」
嬉しそうに手元の紙袋から品物をだすアランが、嫌な笑みを浮かべ「一応言っておくが、俺は都合のいい意味合いにとるからな」と言われ「なにが?」と疑問に思ったが、アランが手元のネクタイの箱にキスをしたから何かしらネクタイに関連することだろうと察しはついた。
ネクタイ……ネクタイ……はて?
ピンとこない私に、アランは愉快そうに「君もずいぶん疲れているね」と言う。
「プレゼントには意味があるんだよ、撫子。ネクタイは『あなたに首ったけ』『束縛したい』、ネクタイピンは『あなたは私のもの』、キーケースは『いつも側にいたい』。まあ、他にも意味はあるが、俺は都合のいい方に解釈するよ」
してやったり、と言わんばかりのご満悦スマイルを浮かべられ、思わず「そ、そういう深い意味はないわ!」と大声で否定するも、アランは「むきになる所が、信憑性がないなぁ」とわかっていて返してくる。
「本当よ!あったとしても、尊敬とか見守ってるってだけで、キーケースも必要かと思っただけで!」
「はいはい、聞こえない。早くケーキ持ってきてくれ」
話を聞く気のないアランに腹を立て、文句を言ってやろうとしたが「バレンタイン前に終わらして、当日は出掛けよう。ホワイトデーまで待てそうにない」と、いつになくウキウキした顔をしていて思わず許して「そうね」と言ってしまったから、私は疲れているのかも知れない。
落ち着いて考えれば、その急ピッチに合わせて仕事が増えることは明白だったのだから。