2020バレンタイン部屋
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昼時に、なにやら香ばしい匂いが庭先からしてきた。
匂いに誘われてきた窃野たちになにがあったのか聞こうとしたが、「お・せ・ん・べ・や・け・た・か・な♪」という陽気な声の主は、うちには一人しかいない。
庭を見れば、予想通り運の悪い座敷童子が器用に七輪で煎餅を焼いていた。
「撫子、なにやってんだ?」
「お煎餅?くれる?」
「あ、窃野さんに多部さんに宝生さん!よいところに!はい、ハッピーバレンタイン!焼きたてお煎餅ですよ!熱いので気をつけてくださいね!」
皿に焼けた煎餅を数枚乗せ窃野たちにわたしているが、こんなおばあちゃん感しかないバレンタインを認めたくないな。
見た目が女子高生なんだから、台所でエプロンつけて手作りチョコを作ったらどうなのか。
苗樫さんは私にも気がつき、まあ、貰ってやらんこともないと庭に出ようとしたのに、「あ、玄野さんのお煎餅は居間に買ったやつ置いてありますよ」と言われ止まった。
市販?
「なんでですか、私にも焼きたて煎餅くださいよ」
少し怒りをあらわにして要求すれば、心底驚いた顔で「食べられるんですか?!」と言われた。
どういう意味ですかい。
「玄野さん、治崎さん同様潔癖の気がある人だと思っていたので。そういう顔をしてたから……つい……」
そういう顔であることは自覚しているが、私は廻ほど潔癖ではない。
歩きながら柿の種を食べて怒られるくらいなのだから。
苗樫さんは「すみません。はい、どうぞ。ハッピーバレンタイン」と窃野たちとは別の皿に煎餅を乗せてわたしてくれた。
米と醤油で作った簡単な物らしいが、それでも醤油の風味と米の甘さで充分美味しかった。
「美味しいですね」
「ふふーん!お米を奮発して、A5米青天の霹靂ご用意しました!しかも炊きたてです!」
「そのお金はどこから?」
「治崎さんに怒られるので、自費です!」
でしょうね。
人の金で用意したバレンタインなんて、厚顔無恥もいいとこですよ。
私は人の金で用意された焼きたて煎餅を幸せに食べますが。
「なんだ、いい匂いがすると思ったら煎餅焼いてんのか」
ひょっこり現れたオヤジと、険しい顔の廻。
「ハッピーバレンタインです、オヤジさん、治崎さん。お二人の分は、居間に買ったやつがありますよ」
私の時同様に市販の煎餅を用意していたらしいが、オヤジは眉を下げて「なんでぇ。俺にはくれねぇのかよ」と焼きたて煎餅を見つめた。
苗樫さんは、オヤジの後ろで睨みを利かせる廻に視線をやってから、「治崎さんに怒られるので!」と責任を廻に押し付けた。
事実ではあるのだろうが、言ったらダメでしょ。
ぽこん、と苗樫さんの頭を窃野が叩き、宝生が口を塞いだが時既に遅し。
オヤジが廻に「なんか文句あるか、治崎」と尋ね、廻も「まさか」と普段の姿を装っているが、私には鬼が背後に見える。
「けど、オヤジ。外で素人が作った物なんて衛生上よくないんじゃないか?」
「都会のもやしじゃねぇんだ。その程度で腹なんざ壊すか。おい、撫子。俺にも焼いてくれ」
オヤジの言葉に、苗樫さんはハシビロコウ並みの目付きの廻を数秒見つめたが、ニコッ、といつもの笑みを浮かべ「組長の命令はー?ぜったーい!」と王様ゲームのようなノリのセリフを言ってまた煎餅を焼き始めた。
廻の眉間がマリアナ海溝になっているのも無視し、無邪気に煎餅を焼く姿は少し怖い。
結局、家にいた連中全員が醤油の焼けるいい匂いに誘われて来たので、七輪では煎餅を焼くスピードと人数があわず、バーベキューセットで焼くことになっていた。
そうなれば必然的に煙も大きくなり、指定敵団体の家から煙が出ているとなっては通報が入るのは当たり前で、警察とヒーローが事情を聞きに来たのは当たり前だった。
廻が応対しようとしたが、組長が「構わねぇ、庭先まで入れて煎餅食わせて帰せ」と言われた。
「オヤジ、それはどうかと思うぞ。相手はこっちを色眼鏡でみてるやつらだ。納得せずに、なにかしたら……」
「だから、撫子に任せるんだろ」
「お任せあれ!」
バチコーン!とウインクする御年数百年の若作りばあさん。
廻もオヤジには逆らえないので、渋々警察とヒーローを中に入れれば、おばあちゃんが「ちゃーっす!」と礼儀もなにもない頭の悪いギャルっぽい挨拶をした。
「なになに?ケーサツとかなんで?うひゃー、ヒーローまでいるじゃーん。マジどしたのー?」
畳み掛けられるギャルムーヴに、さすがの正義の味方たちもたじたじで「ここから煙がでてて、周りに住んでる人たちが心配しててね」としどろもどろだ。
苗樫さんの変わり身の早さにドン引きする者、笑いを耐える者千差万別。
「そーなの!ごめーん!あんね、お煎餅焼いてたの!今日、バレンタインじゃん?でも、あーしチョコとか甘いの苦手だから、前にばーちゃに教わったお煎餅焼いてたんだ!見て、見て!」
警察とヒーローの手を引いて煎餅を焼いているバーベキューセットまで連れていき、「どうよ!バーベキューセットで焼いたらたくさん焼ける!マジ天才的じゃね!」とどや顔され、警察もヒーローも「そ、そうだね」とひきつり笑いだ。
「あ、せっかく来たんだし、食べてってよ!」
「い、いや、私たちはもう行くよ!私たちから説明しておくけど、今度から周りのおうちに一言知らせるんだよ」
「あーっす!」
「それじゃあね」
「ばいばーい!」
パトカーが行ったのを確認すると、苗樫さんが「ミッションコンプリート」と親指をたてた。
「相変わらずの変わり身だなぁ、撫子!」
「オヤジさん命令は絶対コンプリートですからね!ささっ!邪魔者もいなくなりましたし、煎餅バレンタイン再開しましょう!」
パタパタと焼きに戻った苗樫さんを見ながら、苗樫さんの変わり身大嫌いで渋い顔をしている廻に「バカとハサミは使いようですよ」と言うも、「あいつはバカでもハサミでもないだろ……」と深くため息を吐いた。
「たしかに、女狐と両刃な危険な組み合わせでしたね」
「疲れた。玄野、茶の用意をしろ」
「彼女が用意した市販の煎餅は食べますか」
「置いとけ」
いらないって言わないってことは、食べるんだな。
まあ、この香ばしい匂いを吸い続けてたら食べたくもなるよな。
「苗樫さーん。私の分、とっておいてくださいねー」
「はいはーい!」
匂いに誘われてきた窃野たちになにがあったのか聞こうとしたが、「お・せ・ん・べ・や・け・た・か・な♪」という陽気な声の主は、うちには一人しかいない。
庭を見れば、予想通り運の悪い座敷童子が器用に七輪で煎餅を焼いていた。
「撫子、なにやってんだ?」
「お煎餅?くれる?」
「あ、窃野さんに多部さんに宝生さん!よいところに!はい、ハッピーバレンタイン!焼きたてお煎餅ですよ!熱いので気をつけてくださいね!」
皿に焼けた煎餅を数枚乗せ窃野たちにわたしているが、こんなおばあちゃん感しかないバレンタインを認めたくないな。
見た目が女子高生なんだから、台所でエプロンつけて手作りチョコを作ったらどうなのか。
苗樫さんは私にも気がつき、まあ、貰ってやらんこともないと庭に出ようとしたのに、「あ、玄野さんのお煎餅は居間に買ったやつ置いてありますよ」と言われ止まった。
市販?
「なんでですか、私にも焼きたて煎餅くださいよ」
少し怒りをあらわにして要求すれば、心底驚いた顔で「食べられるんですか?!」と言われた。
どういう意味ですかい。
「玄野さん、治崎さん同様潔癖の気がある人だと思っていたので。そういう顔をしてたから……つい……」
そういう顔であることは自覚しているが、私は廻ほど潔癖ではない。
歩きながら柿の種を食べて怒られるくらいなのだから。
苗樫さんは「すみません。はい、どうぞ。ハッピーバレンタイン」と窃野たちとは別の皿に煎餅を乗せてわたしてくれた。
米と醤油で作った簡単な物らしいが、それでも醤油の風味と米の甘さで充分美味しかった。
「美味しいですね」
「ふふーん!お米を奮発して、A5米青天の霹靂ご用意しました!しかも炊きたてです!」
「そのお金はどこから?」
「治崎さんに怒られるので、自費です!」
でしょうね。
人の金で用意したバレンタインなんて、厚顔無恥もいいとこですよ。
私は人の金で用意された焼きたて煎餅を幸せに食べますが。
「なんだ、いい匂いがすると思ったら煎餅焼いてんのか」
ひょっこり現れたオヤジと、険しい顔の廻。
「ハッピーバレンタインです、オヤジさん、治崎さん。お二人の分は、居間に買ったやつがありますよ」
私の時同様に市販の煎餅を用意していたらしいが、オヤジは眉を下げて「なんでぇ。俺にはくれねぇのかよ」と焼きたて煎餅を見つめた。
苗樫さんは、オヤジの後ろで睨みを利かせる廻に視線をやってから、「治崎さんに怒られるので!」と責任を廻に押し付けた。
事実ではあるのだろうが、言ったらダメでしょ。
ぽこん、と苗樫さんの頭を窃野が叩き、宝生が口を塞いだが時既に遅し。
オヤジが廻に「なんか文句あるか、治崎」と尋ね、廻も「まさか」と普段の姿を装っているが、私には鬼が背後に見える。
「けど、オヤジ。外で素人が作った物なんて衛生上よくないんじゃないか?」
「都会のもやしじゃねぇんだ。その程度で腹なんざ壊すか。おい、撫子。俺にも焼いてくれ」
オヤジの言葉に、苗樫さんはハシビロコウ並みの目付きの廻を数秒見つめたが、ニコッ、といつもの笑みを浮かべ「組長の命令はー?ぜったーい!」と王様ゲームのようなノリのセリフを言ってまた煎餅を焼き始めた。
廻の眉間がマリアナ海溝になっているのも無視し、無邪気に煎餅を焼く姿は少し怖い。
結局、家にいた連中全員が醤油の焼けるいい匂いに誘われて来たので、七輪では煎餅を焼くスピードと人数があわず、バーベキューセットで焼くことになっていた。
そうなれば必然的に煙も大きくなり、指定敵団体の家から煙が出ているとなっては通報が入るのは当たり前で、警察とヒーローが事情を聞きに来たのは当たり前だった。
廻が応対しようとしたが、組長が「構わねぇ、庭先まで入れて煎餅食わせて帰せ」と言われた。
「オヤジ、それはどうかと思うぞ。相手はこっちを色眼鏡でみてるやつらだ。納得せずに、なにかしたら……」
「だから、撫子に任せるんだろ」
「お任せあれ!」
バチコーン!とウインクする御年数百年の若作りばあさん。
廻もオヤジには逆らえないので、渋々警察とヒーローを中に入れれば、おばあちゃんが「ちゃーっす!」と礼儀もなにもない頭の悪いギャルっぽい挨拶をした。
「なになに?ケーサツとかなんで?うひゃー、ヒーローまでいるじゃーん。マジどしたのー?」
畳み掛けられるギャルムーヴに、さすがの正義の味方たちもたじたじで「ここから煙がでてて、周りに住んでる人たちが心配しててね」としどろもどろだ。
苗樫さんの変わり身の早さにドン引きする者、笑いを耐える者千差万別。
「そーなの!ごめーん!あんね、お煎餅焼いてたの!今日、バレンタインじゃん?でも、あーしチョコとか甘いの苦手だから、前にばーちゃに教わったお煎餅焼いてたんだ!見て、見て!」
警察とヒーローの手を引いて煎餅を焼いているバーベキューセットまで連れていき、「どうよ!バーベキューセットで焼いたらたくさん焼ける!マジ天才的じゃね!」とどや顔され、警察もヒーローも「そ、そうだね」とひきつり笑いだ。
「あ、せっかく来たんだし、食べてってよ!」
「い、いや、私たちはもう行くよ!私たちから説明しておくけど、今度から周りのおうちに一言知らせるんだよ」
「あーっす!」
「それじゃあね」
「ばいばーい!」
パトカーが行ったのを確認すると、苗樫さんが「ミッションコンプリート」と親指をたてた。
「相変わらずの変わり身だなぁ、撫子!」
「オヤジさん命令は絶対コンプリートですからね!ささっ!邪魔者もいなくなりましたし、煎餅バレンタイン再開しましょう!」
パタパタと焼きに戻った苗樫さんを見ながら、苗樫さんの変わり身大嫌いで渋い顔をしている廻に「バカとハサミは使いようですよ」と言うも、「あいつはバカでもハサミでもないだろ……」と深くため息を吐いた。
「たしかに、女狐と両刃な危険な組み合わせでしたね」
「疲れた。玄野、茶の用意をしろ」
「彼女が用意した市販の煎餅は食べますか」
「置いとけ」
いらないって言わないってことは、食べるんだな。
まあ、この香ばしい匂いを吸い続けてたら食べたくもなるよな。
「苗樫さーん。私の分、とっておいてくださいねー」
「はいはーい!」