2020バレンタイン部屋
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バレンタインと言えば手作りとは思うが、貧乏一人暮らしに調理器具や材料を揃えることは叶わないので、四粒で五百円とかする恐ろしいイベント価格チョコレートを練くん用に購入し学校へ行ったら、「苗樫!」と背後から切羽詰まった練くんの声がしたので、ダッシュで逃げた。
見なくてもわかる。女子から逃げてるんだろ、キミ。
「待て、苗樫!逃げるな!助けてくれ!」
「無理無理無理!足音の数が尋常じゃないから!待って!違う餌を撒くから!」
ケータイの連絡先から、練くんとの二大モテ巨頭来る者は拒まない男にSOSをだせば、「キミから連絡してくれるなんて、どうしたんだい?」と爽やかにシンドバッドくんが登場したので「あとは任せた!」と、ジャーファルくんの「テメーあとで覚えておけよ」という視線を見ない振りをして横を走り抜けると、大半の女子が逃げない標的へと流れていった。
残った女子たちを建物の影でやり過ごし、安全を確認した私に練くんが真っ先に言い放ったのが「貴様……!」だった。
「『貴様……!』じゃないよ!あんなの私にさばけるわけないでしょうが!」
「だとしても、逃げるとはどういうことだ!」
「練くんすら逃げるんだから、私も逃げるよ!でも、ごめん!謝るから、この不毛の気配しかしない喧嘩はやめよう!」
私のストップに練くんも同意して、「俺も巻き込んだのに、すまない」と謝ってくれたので、この話はもうお終いだ。
息も整ったし、慎重に講義室へ逃げ込もうと二人で辺りに気を配っていたのだが、どこから嗅ぎ付けてきたのか押しの強い超絶美少女が「はーくゆーくん!」と現れ、反射的に練くんが私の後ろに隠れた。
この練くんを怯えさせるとは、やるな超絶美少女……。
「あのね、今年もチョコレート作ってきたんだけど……今年は食べてくれるかなぁ?」
「何度も言っているが、贈答品は受けとるつもりはない」
チョコレートより甘ったるい超絶美少女の声に、練くんが私の背中部分の服をぎゅっ、と握りながらお堅いアイドルみたいなことを言っているのはまあまあ面白い。
「それから、俺は本命の女性以外から貰う気はないんだ」
「それは……本命がいるってことかなぁ……?」
超絶美少女の声が一段階下がり、私をフランス人形ばりの顔で見つめてきて、完全にとばっちりを受けている私は悲鳴をあげそうだった。
怖い怖い怖い、私じゃない。
「だとしても、キミに言う必要性はない。お引き取り願おうか」
人の服を握りしめながら威勢よく言うのやめてくれ。
超絶美少女も、練くんが絶対に受け取らないと察したのか、引き際はちゃんとしているので渋々立ち去った。
「怖い……」
「あれに付きまとわれている俺の心中察したか」
「察した」
あれは怖いな。
「そういえば、練くんよ。私は一応、キミにチョコレートを用意したのだが、受け取ってもらえないのかな?」
「受けとるに決まってるだろ」
「やっぱり口からでまかせだったか」
だろうなとは思ったよ、と笑いながら小さなチョコレートの箱を取り出したら「俺は嘘は吐かない」と真顔で言われた。
あ、うん。キミは嘘でもそういうこと言わない人だったね、そういえば。
「その心は?」
「大喜利はあまり得意じゃないんだが」
「そうではなく……。私が本命ってわけじゃないでしょ」
「苗樫以外から貰うつもりはないさ」
「つまり?」
「本命の友チョコ」
それはただの友チョコ、あるいは親友チョコと言うのではなかろうか、と思うが普段使わないであろう言葉を使ってご満悦な練くんに水をさしたくないので黙っておこう。
口にあうかどうかは知らないが、と釘を刺してわたしたチョコレートをニコニコしながら受け取り、ニコニコしながら鞄からラッピングされた包みを取り出したので逃げようとしたが、捕まった。
「逃がすか」
「いや!キミ、それチョコレートだろ!私の比にならないくらい美味しくて!高級で!量の多いチョコレートなんだろ!」
「食いしん坊な苗樫にはそっちの方がいいかと思ったが、警戒されるから別の物の方がいいと従弟たちから勧められたんだ。たいして高くないから、受け取ってくれ」
そう言われては受け取るしかない。
開けてみてくれ、と急かされるので開けてみればシンプルな瓶の香水だった。
「いや、これ高いやつやん」
「俺の感覚では安い」
「謀ったな?!というか、この香水この間連れて行かれたオリジナル香水作れる店だよね?!もしかして、あの時点で謀略張り巡らされてた?!」
私の質問に「香水は人によってあうものが違うからな!」と満面の笑みで肯定された。
「おのれ、孔明!」
「よくわかったな。紅明と紅覇の提案だ」
「そっちじゃないけど、彼らならやりそう~!」
スワイプで、「私たちが考えました」と言わんばかりにピースサインしてる紅明くんと紅覇くんが見えるわ。
ちくしょう、ちくしょう……。
完全に騙されたが、いい匂いだから全部許してしまう。
「家でちょっとずつ使って楽しむよ、ありがとう」
「そうか、なら今度キミの家に行くとしよう」
「なんで?」
突然のご来訪宣言に目ん玉転がり落ちるかと思ったよ。
私の疑問に、練くんは険しい顔で「苗樫がつけて大学にくるのを楽しみにしていたんだぞ!俺は!」と、顔がよくなかったら袋叩きにあいそうなことを宣った。
「わ、わかたっよ……。つけてくればいいんでしょ……」
「あぁ、じゃあ今つけてくれ」
「今?ナウ?」
「そうだ」
嫌だとは言えない期待に満ちた笑顔を向けられ、致し方なくワンプッシュ自分にかければ滅茶苦茶ラグジュアリーないい女の香りに包まれた。
匂いが高い。
「ああ、やはり素敵だな」
出会ってから一番の笑顔を向けてくれたので、まあ、友人が喜んでるならいいや。
なお、このあとジャーファルくんに捕まり、特別な贈り物を匂わせた市販のお菓子を詰めたただの義理チョコを頂いたので、下手に彼を怒らせてはいけないなと思いました。
見なくてもわかる。女子から逃げてるんだろ、キミ。
「待て、苗樫!逃げるな!助けてくれ!」
「無理無理無理!足音の数が尋常じゃないから!待って!違う餌を撒くから!」
ケータイの連絡先から、練くんとの二大モテ巨頭来る者は拒まない男にSOSをだせば、「キミから連絡してくれるなんて、どうしたんだい?」と爽やかにシンドバッドくんが登場したので「あとは任せた!」と、ジャーファルくんの「テメーあとで覚えておけよ」という視線を見ない振りをして横を走り抜けると、大半の女子が逃げない標的へと流れていった。
残った女子たちを建物の影でやり過ごし、安全を確認した私に練くんが真っ先に言い放ったのが「貴様……!」だった。
「『貴様……!』じゃないよ!あんなの私にさばけるわけないでしょうが!」
「だとしても、逃げるとはどういうことだ!」
「練くんすら逃げるんだから、私も逃げるよ!でも、ごめん!謝るから、この不毛の気配しかしない喧嘩はやめよう!」
私のストップに練くんも同意して、「俺も巻き込んだのに、すまない」と謝ってくれたので、この話はもうお終いだ。
息も整ったし、慎重に講義室へ逃げ込もうと二人で辺りに気を配っていたのだが、どこから嗅ぎ付けてきたのか押しの強い超絶美少女が「はーくゆーくん!」と現れ、反射的に練くんが私の後ろに隠れた。
この練くんを怯えさせるとは、やるな超絶美少女……。
「あのね、今年もチョコレート作ってきたんだけど……今年は食べてくれるかなぁ?」
「何度も言っているが、贈答品は受けとるつもりはない」
チョコレートより甘ったるい超絶美少女の声に、練くんが私の背中部分の服をぎゅっ、と握りながらお堅いアイドルみたいなことを言っているのはまあまあ面白い。
「それから、俺は本命の女性以外から貰う気はないんだ」
「それは……本命がいるってことかなぁ……?」
超絶美少女の声が一段階下がり、私をフランス人形ばりの顔で見つめてきて、完全にとばっちりを受けている私は悲鳴をあげそうだった。
怖い怖い怖い、私じゃない。
「だとしても、キミに言う必要性はない。お引き取り願おうか」
人の服を握りしめながら威勢よく言うのやめてくれ。
超絶美少女も、練くんが絶対に受け取らないと察したのか、引き際はちゃんとしているので渋々立ち去った。
「怖い……」
「あれに付きまとわれている俺の心中察したか」
「察した」
あれは怖いな。
「そういえば、練くんよ。私は一応、キミにチョコレートを用意したのだが、受け取ってもらえないのかな?」
「受けとるに決まってるだろ」
「やっぱり口からでまかせだったか」
だろうなとは思ったよ、と笑いながら小さなチョコレートの箱を取り出したら「俺は嘘は吐かない」と真顔で言われた。
あ、うん。キミは嘘でもそういうこと言わない人だったね、そういえば。
「その心は?」
「大喜利はあまり得意じゃないんだが」
「そうではなく……。私が本命ってわけじゃないでしょ」
「苗樫以外から貰うつもりはないさ」
「つまり?」
「本命の友チョコ」
それはただの友チョコ、あるいは親友チョコと言うのではなかろうか、と思うが普段使わないであろう言葉を使ってご満悦な練くんに水をさしたくないので黙っておこう。
口にあうかどうかは知らないが、と釘を刺してわたしたチョコレートをニコニコしながら受け取り、ニコニコしながら鞄からラッピングされた包みを取り出したので逃げようとしたが、捕まった。
「逃がすか」
「いや!キミ、それチョコレートだろ!私の比にならないくらい美味しくて!高級で!量の多いチョコレートなんだろ!」
「食いしん坊な苗樫にはそっちの方がいいかと思ったが、警戒されるから別の物の方がいいと従弟たちから勧められたんだ。たいして高くないから、受け取ってくれ」
そう言われては受け取るしかない。
開けてみてくれ、と急かされるので開けてみればシンプルな瓶の香水だった。
「いや、これ高いやつやん」
「俺の感覚では安い」
「謀ったな?!というか、この香水この間連れて行かれたオリジナル香水作れる店だよね?!もしかして、あの時点で謀略張り巡らされてた?!」
私の質問に「香水は人によってあうものが違うからな!」と満面の笑みで肯定された。
「おのれ、孔明!」
「よくわかったな。紅明と紅覇の提案だ」
「そっちじゃないけど、彼らならやりそう~!」
スワイプで、「私たちが考えました」と言わんばかりにピースサインしてる紅明くんと紅覇くんが見えるわ。
ちくしょう、ちくしょう……。
完全に騙されたが、いい匂いだから全部許してしまう。
「家でちょっとずつ使って楽しむよ、ありがとう」
「そうか、なら今度キミの家に行くとしよう」
「なんで?」
突然のご来訪宣言に目ん玉転がり落ちるかと思ったよ。
私の疑問に、練くんは険しい顔で「苗樫がつけて大学にくるのを楽しみにしていたんだぞ!俺は!」と、顔がよくなかったら袋叩きにあいそうなことを宣った。
「わ、わかたっよ……。つけてくればいいんでしょ……」
「あぁ、じゃあ今つけてくれ」
「今?ナウ?」
「そうだ」
嫌だとは言えない期待に満ちた笑顔を向けられ、致し方なくワンプッシュ自分にかければ滅茶苦茶ラグジュアリーないい女の香りに包まれた。
匂いが高い。
「ああ、やはり素敵だな」
出会ってから一番の笑顔を向けてくれたので、まあ、友人が喜んでるならいいや。
なお、このあとジャーファルくんに捕まり、特別な贈り物を匂わせた市販のお菓子を詰めたただの義理チョコを頂いたので、下手に彼を怒らせてはいけないなと思いました。