criminal
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「よーし!じゃあ、お出かけしますよ!アラン!どこに連れて行ってくれるの?」
「それじゃあ、まずはジュエリーショップに行こうか」
「とりあえずで行く場所じゃないわ、アラン」
あなた、本当に素でボケをするわね。
欲しいなとは思ったけど、正直どこにつけていけって言うのよ。
「なら、どこに行きたい?」
「そうね。なら、アランがよく行くお店がいいわ」
「俺が?そうなると、レストランとかバーとかになるよ。あとは、仕立屋」
レストランとかバーはわかるが、突然でてきた仕立屋という単語に金銭的格差を感じた。
いや、あのスーツはどう見てもオーダーメイドの質のよさだったけれども。
ぐぬぬ、下手に「安くて美味しい店」とか「お手頃価格な店」とか恥ずかしくて言えなくなってしまった。
「じゃあ、その辺案内してほしい……」
完全に強がりでお願いしたが、絶対に行くことはないだろう。
「構わないが……たぶん楽しくないぞ……」
「そこは、まぁ。アランのことを知るってことで、愛でカバーするわよ」
この先、この街を知る機会はあるだろうし。
いまは、アランがよく行く場所を知りたいと伝えれば、「じゃあ、今日はそうしようか」と言われた。
「あとで、うちの若い連中にオススメを聞いておくよ」
「アラン……また見た目に惑わされてるわね……」
「そうじゃないさ。たぶん、俺よりあいつらの方が君の感覚に近いと思っただけだよ」
年齢としてはアランの方が近いのに、感覚は若い子たちに近いと思われるのは複雑だし遺憾ではあるが、恐らくその子たちが行くリーズナブルなお店の方が私も利用しやすいという事実はわかってしまうので、ぐぅの音もでない。
ぐぅ。
「時間が勿体ないし、行こうか。プリンセス」
差し出された大きな手を握るには私の手は小さくて、控えめに指先を掴んだのに握り直されて完全にアランの手に包み込まれてしまい、「益々パパ感が増した」と思ってしまった。
そして、たぶんこれは途中で腕が疲れるな。
子供が途中で抱っこを要求する理由がわかる。
大きな通りを歩きながら、そういえば、とひとつ伝えなければならないことを思い出し、「アラン、あのね」と声をかけた瞬間。
ビルとビルの間から、爆音と共に火柱があがった。
「アラン……いまのは……」
「ここではよくあることだ。気にしなくていい」
「よくあること……」
とは言うものの、アランの表情はどこか強ばっていて、なにかよくないことが起こるのではとこちらまで緊張してしまう。
火柱があがった方からは変わらず爆音が響いているし、本当に大丈夫?と聞こうとしたがアランのケータイが鳴り言葉が引っ込んでしまった。
「……はい、スティーブン」
『お休み中、悪いはね!スティーブン先生!休みの時に仕事の話はしたくないんだけど、これは相性的にあなたじゃないときついわ!急ぎ向かってくれないかしら!』
「それは……僕じゃないとダメかい?」
『話聞いてたかしらぁ?まぁ、HLが溶岩地帯になってもいいなら、構わないわよ!』
「わかった!わかったよ!」
大声で遮り、二、三やりとりをしてから電話を切り、こちらを申し訳なさそうに見やった。
大方の事情は察したので、「私の方は気にしなくていいわ」と笑顔で首を振るもアランは申し訳ない顔をやめない。
「こういう仕事だもの。不測の事態があるのは、仕方がないことよ。休暇は始まったばかりだし、また明日楽しみにしてるわ」
「君のそういう聞き分けのいいところは、たまに不安になるね。ありがとう。じゃあ、一人で部屋に戻れるね。そんなに距離はないし」
「……えぇ、勿論。子供じゃないんだから」
うっかり「なんで?一人で観光するわよ」と口走りそうだったが、そうだった。一人で出歩くなって言われて、半ば軟禁されていたんだ。
忘れていただけで、思い出したらちゃんと帰るつもりではあったのだけれども、この疑い深い男が一度怪しい間を開けた人間を信じるとは思わない。
実際、戻れるか聞いたくせに手を放す気配がないどころか、掴む力が強くなっている。
「一人でちゃんと帰るからー!放してー!」
「それを俺が信じるとでも?」
「お仕事行ってらっしゃい!お兄ちゃん!アーティアおうちで待ってるね!」
「都合のいい“お兄ちゃん”は好きじゃないなぁ……」
体重をかけたり振り回したりしてみても、力の差でまったく振りほどけない。
「有事なのよー!私のことは気にしないで行っててばー!」
「そうだな。じゃ、ちょっと失礼するよっ、と」
軽々と抱き上げられ、そのまま駆け出すアランに「どこ行くの!?」としがみつき聞けば、「現場」と簡潔に答えられる。
「現場って……!私、まだ身辺調査終わってないんじゃないの?!行ってもいいの?!」
「調査は大体終わってるし、あとは雇用の申請通すだけだ!連れて行っても問題ないさ!」
「なにそれ!聞いてない!」
「言ってないからなー」
あっけらかんとした態度にただただ腹が立つ。
報連相は社会人として身に付けておくべき常識よ!と叫んだところで、砂漠に説教。
生返事が帰ってくるだけ。
騒いでたのもあるが、揺れるのを一切気にしないアランの走りで完全に酔ってしまった。
意識の遠くの方で、アランの「どれを生かせばいい」という声だけが聞こえた。
吐かないよう気を付けて、アランの技を見ようと上体を起こしたが、事態は一瞬で終わっていて、見るもなにもなかった。
異界人数名は下半身が凍り、クリーチャーは氷柱に貫かれ行動停止していた。
あぁ、やっぱりこの人は強い……。
私の助けなど必要ないほどの強さに、自分の弱さを実感させられた。
「よし、終わりだ!事後処理は任せる!僕は休暇に戻るぞ!……大丈夫か、アーティア?」
「え?あぁ、うん。大丈夫、少し酔っただけよ。どっかの大木が、同乗者のことも気にせず荒い運転をしてくれたお陰でね」
「それは済まなかったね。今度は安全運転を心がけるよ」
「結構よ。ここからは徒歩で行きますから」
「遠慮しなくていいのに。あぁ、そうだ。君、ハーブティー好きだったよな?クラウスがそういう店に詳しいと思うから、ちょっと待っていてくれるかい?」
こちらがYesともNoとも答えぬ間に、私を下ろして駆け出すアランの背をぼんやり見ていると、忍び寄る影。
見上げると、色黒銀髪の男の子とゴーグルを下げた男の子が私を見下ろしていた。
「こりゃ、違法だろ……。まさか身内から犯罪者がでるとは思わなかったぜ……」
「あんたじゃないんだから……。あのスティーブンさんですよ?合法でしょ……たぶん……」
人を見て、違法だとか合法だとか失礼ではあるが、こういうことを言われるのは予想の範疇だったのでショルダーバッグからパスポートをとりだし、「合法よ、少年たち」と見せつける。
パスポートを見た銀髪の男の子が、「うわ、本当だ。合法ロリババアじゃねえか」と口にし、ゴーグルの男の子に「おい!」と容赦ないツッコミを入れられていた。
「ふふっ、大丈夫。よく言われることだから。私は気にしないわ」
「すみません……」
「謝らないで。ところで、あなた達もライブラの一員なの?」
「おうよ」
「まぁ、一応」
「若いのに、凄いわね。私なんて、その頃まだ修行の最中だったわ。きっと、私ならすぐ死んでいたわね」
「いやぁ、そんなことないっすよ」
「才能の違いよ!さ・い・の・う!」
「あんた、少しは謙遜したらどうですか?!」
コントのような二人のやりとりに笑っていると、「楽しそうだね」とウェアウルフのような男性と話していたアランがいつの間にやら帰ってきていたようだ。
「妬いてしまいそうだ」
「そういうことを言うから、犯罪を疑われるのよ」
「なんのことだい?俺はいけないことをした記憶はないよ。真っ当に一人の女性を独り占めしたいだけさ」
「お上手だこと。それで、話は済んだの?」
「あぁ。他にも君の好きそうな店を聞けたから、行こうか」
「Listo. じゃあね、少年たち。君たちは死なないよう、頑張ってね」
言葉に引っ掛かりを覚えたのか、ゴーグルの男の子が首を傾げているのを横目に、アランに手を引かれながら歩き出すと「そういえば、さっきなにか言おうとしてなかったかい?」と聞かれ、言いそびれていた大切なことを思い出した。
「たいしたことじゃないの。きっと、あなたには言う必要はないけど、この先なにがあっても私よりも仕事を優先させてね、て言おうと思っていただけ」
「それは難しい話だなぁ」
難しいと口にしつつも、笑顔を崩さないアランに安堵する。
大丈夫、アランは言わなくても選択すべきものを間違えたりしないわ。
「それじゃあ、まずはジュエリーショップに行こうか」
「とりあえずで行く場所じゃないわ、アラン」
あなた、本当に素でボケをするわね。
欲しいなとは思ったけど、正直どこにつけていけって言うのよ。
「なら、どこに行きたい?」
「そうね。なら、アランがよく行くお店がいいわ」
「俺が?そうなると、レストランとかバーとかになるよ。あとは、仕立屋」
レストランとかバーはわかるが、突然でてきた仕立屋という単語に金銭的格差を感じた。
いや、あのスーツはどう見てもオーダーメイドの質のよさだったけれども。
ぐぬぬ、下手に「安くて美味しい店」とか「お手頃価格な店」とか恥ずかしくて言えなくなってしまった。
「じゃあ、その辺案内してほしい……」
完全に強がりでお願いしたが、絶対に行くことはないだろう。
「構わないが……たぶん楽しくないぞ……」
「そこは、まぁ。アランのことを知るってことで、愛でカバーするわよ」
この先、この街を知る機会はあるだろうし。
いまは、アランがよく行く場所を知りたいと伝えれば、「じゃあ、今日はそうしようか」と言われた。
「あとで、うちの若い連中にオススメを聞いておくよ」
「アラン……また見た目に惑わされてるわね……」
「そうじゃないさ。たぶん、俺よりあいつらの方が君の感覚に近いと思っただけだよ」
年齢としてはアランの方が近いのに、感覚は若い子たちに近いと思われるのは複雑だし遺憾ではあるが、恐らくその子たちが行くリーズナブルなお店の方が私も利用しやすいという事実はわかってしまうので、ぐぅの音もでない。
ぐぅ。
「時間が勿体ないし、行こうか。プリンセス」
差し出された大きな手を握るには私の手は小さくて、控えめに指先を掴んだのに握り直されて完全にアランの手に包み込まれてしまい、「益々パパ感が増した」と思ってしまった。
そして、たぶんこれは途中で腕が疲れるな。
子供が途中で抱っこを要求する理由がわかる。
大きな通りを歩きながら、そういえば、とひとつ伝えなければならないことを思い出し、「アラン、あのね」と声をかけた瞬間。
ビルとビルの間から、爆音と共に火柱があがった。
「アラン……いまのは……」
「ここではよくあることだ。気にしなくていい」
「よくあること……」
とは言うものの、アランの表情はどこか強ばっていて、なにかよくないことが起こるのではとこちらまで緊張してしまう。
火柱があがった方からは変わらず爆音が響いているし、本当に大丈夫?と聞こうとしたがアランのケータイが鳴り言葉が引っ込んでしまった。
「……はい、スティーブン」
『お休み中、悪いはね!スティーブン先生!休みの時に仕事の話はしたくないんだけど、これは相性的にあなたじゃないときついわ!急ぎ向かってくれないかしら!』
「それは……僕じゃないとダメかい?」
『話聞いてたかしらぁ?まぁ、HLが溶岩地帯になってもいいなら、構わないわよ!』
「わかった!わかったよ!」
大声で遮り、二、三やりとりをしてから電話を切り、こちらを申し訳なさそうに見やった。
大方の事情は察したので、「私の方は気にしなくていいわ」と笑顔で首を振るもアランは申し訳ない顔をやめない。
「こういう仕事だもの。不測の事態があるのは、仕方がないことよ。休暇は始まったばかりだし、また明日楽しみにしてるわ」
「君のそういう聞き分けのいいところは、たまに不安になるね。ありがとう。じゃあ、一人で部屋に戻れるね。そんなに距離はないし」
「……えぇ、勿論。子供じゃないんだから」
うっかり「なんで?一人で観光するわよ」と口走りそうだったが、そうだった。一人で出歩くなって言われて、半ば軟禁されていたんだ。
忘れていただけで、思い出したらちゃんと帰るつもりではあったのだけれども、この疑い深い男が一度怪しい間を開けた人間を信じるとは思わない。
実際、戻れるか聞いたくせに手を放す気配がないどころか、掴む力が強くなっている。
「一人でちゃんと帰るからー!放してー!」
「それを俺が信じるとでも?」
「お仕事行ってらっしゃい!お兄ちゃん!アーティアおうちで待ってるね!」
「都合のいい“お兄ちゃん”は好きじゃないなぁ……」
体重をかけたり振り回したりしてみても、力の差でまったく振りほどけない。
「有事なのよー!私のことは気にしないで行っててばー!」
「そうだな。じゃ、ちょっと失礼するよっ、と」
軽々と抱き上げられ、そのまま駆け出すアランに「どこ行くの!?」としがみつき聞けば、「現場」と簡潔に答えられる。
「現場って……!私、まだ身辺調査終わってないんじゃないの?!行ってもいいの?!」
「調査は大体終わってるし、あとは雇用の申請通すだけだ!連れて行っても問題ないさ!」
「なにそれ!聞いてない!」
「言ってないからなー」
あっけらかんとした態度にただただ腹が立つ。
報連相は社会人として身に付けておくべき常識よ!と叫んだところで、砂漠に説教。
生返事が帰ってくるだけ。
騒いでたのもあるが、揺れるのを一切気にしないアランの走りで完全に酔ってしまった。
意識の遠くの方で、アランの「どれを生かせばいい」という声だけが聞こえた。
吐かないよう気を付けて、アランの技を見ようと上体を起こしたが、事態は一瞬で終わっていて、見るもなにもなかった。
異界人数名は下半身が凍り、クリーチャーは氷柱に貫かれ行動停止していた。
あぁ、やっぱりこの人は強い……。
私の助けなど必要ないほどの強さに、自分の弱さを実感させられた。
「よし、終わりだ!事後処理は任せる!僕は休暇に戻るぞ!……大丈夫か、アーティア?」
「え?あぁ、うん。大丈夫、少し酔っただけよ。どっかの大木が、同乗者のことも気にせず荒い運転をしてくれたお陰でね」
「それは済まなかったね。今度は安全運転を心がけるよ」
「結構よ。ここからは徒歩で行きますから」
「遠慮しなくていいのに。あぁ、そうだ。君、ハーブティー好きだったよな?クラウスがそういう店に詳しいと思うから、ちょっと待っていてくれるかい?」
こちらがYesともNoとも答えぬ間に、私を下ろして駆け出すアランの背をぼんやり見ていると、忍び寄る影。
見上げると、色黒銀髪の男の子とゴーグルを下げた男の子が私を見下ろしていた。
「こりゃ、違法だろ……。まさか身内から犯罪者がでるとは思わなかったぜ……」
「あんたじゃないんだから……。あのスティーブンさんですよ?合法でしょ……たぶん……」
人を見て、違法だとか合法だとか失礼ではあるが、こういうことを言われるのは予想の範疇だったのでショルダーバッグからパスポートをとりだし、「合法よ、少年たち」と見せつける。
パスポートを見た銀髪の男の子が、「うわ、本当だ。合法ロリババアじゃねえか」と口にし、ゴーグルの男の子に「おい!」と容赦ないツッコミを入れられていた。
「ふふっ、大丈夫。よく言われることだから。私は気にしないわ」
「すみません……」
「謝らないで。ところで、あなた達もライブラの一員なの?」
「おうよ」
「まぁ、一応」
「若いのに、凄いわね。私なんて、その頃まだ修行の最中だったわ。きっと、私ならすぐ死んでいたわね」
「いやぁ、そんなことないっすよ」
「才能の違いよ!さ・い・の・う!」
「あんた、少しは謙遜したらどうですか?!」
コントのような二人のやりとりに笑っていると、「楽しそうだね」とウェアウルフのような男性と話していたアランがいつの間にやら帰ってきていたようだ。
「妬いてしまいそうだ」
「そういうことを言うから、犯罪を疑われるのよ」
「なんのことだい?俺はいけないことをした記憶はないよ。真っ当に一人の女性を独り占めしたいだけさ」
「お上手だこと。それで、話は済んだの?」
「あぁ。他にも君の好きそうな店を聞けたから、行こうか」
「Listo. じゃあね、少年たち。君たちは死なないよう、頑張ってね」
言葉に引っ掛かりを覚えたのか、ゴーグルの男の子が首を傾げているのを横目に、アランに手を引かれながら歩き出すと「そういえば、さっきなにか言おうとしてなかったかい?」と聞かれ、言いそびれていた大切なことを思い出した。
「たいしたことじゃないの。きっと、あなたには言う必要はないけど、この先なにがあっても私よりも仕事を優先させてね、て言おうと思っていただけ」
「それは難しい話だなぁ」
難しいと口にしつつも、笑顔を崩さないアランに安堵する。
大丈夫、アランは言わなくても選択すべきものを間違えたりしないわ。