criminal
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「アランお兄ちゃんは、私の王子様なの。優しくて、かっこよくて、頭がよくて。でもがんばり屋さんだから、私いつかアランお兄ちゃんを支えられる立派なお姫様になるわ」
いつもそう、テディベアを抱き締めながら純真な瞳をキラキラと輝かせ、幸せそうに語るアーティアに俺は毎回、「アーティアはもう立派な俺のお姫様だよ」と言って抱き締め、おでこにキスをしていた。
そんな懐かしい夢を見た。
ふわついた意識のままリビングへ出ると、夢の中ではふわふわしたワンピースを着ていたのに、いまやタンクトップにショートパンツ、その上にエプロン。
夢との落差に肩を落としながら「おはようアーティア」と挨拶すれば、「おはようございます、スターフェイズさん」と他人行儀に食事を作る手を止めず挨拶してきた。
「なんだい、突然。機嫌でも悪いのか」
「違いますよ。ただ、落ち着いて考えたら、アランお兄ちゃんってなんだか子供っぽいですし、ライブラに入ったら上司になるわけです。いまの内から身の程を弁えておこうかなと思いまして」
「そうかい。だが、アーティア。その対応に、僕がいまどれだけ傷ついているかわかるかい?」
「さぁ?」
そう素っ気なく返され、俺としてはあまり気分がよくない。
だから、「そうか。なら、別にそのままで構わないよ。構わないがーー」と意味深に言葉を切れば、さすがに気になったのか調理の手を止めこちらを見ていたのでニッコリ微笑み「もしかしたら、今日が僕の命日になるかも知れない」と言ってやる。
「はぁ?なんでそうなるの……んですか?」
「愛しい従妹が他人行儀に振る舞い、それが気になりすぎてうっかり死んでしまうかも知れない」
「そんな性格でもないし、弱くもないでしょ……」
「いやいや、HLではなにが起きるかわからない。牙狩りなんて、さらに危険な仕事。今日が最後になったっておかしくない。あぁ、アーティアと漸く再会できたっていうのに、僕は逝かないといけないのか……!」
大仰に言って見せれば、難しい顔をして悩み最終的にはアーティアが折れた。
「わかったよ。けど、せめてアランさんにさせてよ」
「なんでだい?」
「お兄ちゃんって子供っぽくて嫌!よくよく考えたら、いい大人が兄妹でもないのにお兄ちゃんって恥ずかしい!」
力説するが、残念。
俺もそこは折れるつもりはないぞ。
「アランさんだなんて、やっぱり他人行儀じゃないか」
「ワガママだね。じゃあ、なんて呼べば満足なのよ」
呆れ調子で尋ねられたが、そこはあまり気にせず考える振りをし、実は以前から呼んでほしかった呼び方を口にする。
「アラン、だけでいいんじゃないか?」
俺の提案に、アーティアは盛大に渋い顔をした。
そんなに嫌なのかと思ったら、「歳上を呼び捨てするのはなぁ……」という、礼儀部分での葛藤らしく安心した。
「うーん……」
「歳上って言っても、たかだか三つだろ。気にしなくてもいいんじゃないか?それに、気兼ねない相手を呼び捨てにする。最高に大人っぽくないか?」
適当なことを言ったつもりだったのだが、アーティアは「一理ある」と納得してしまった。
ちょっと、この子大丈夫だろうか……。
チョロ過ぎじゃないか?
益々ライブラ入りが心配になる俺の目の前に、コトリとサンドイッチとサラダ、スープを並べていった。
「朝ごはんくらいは作りたくってね。立派なお姫様にはなれなかったけど、これくらいならできるわよ」
自慢気に語るアーティアの腕を引き抱き締め、「アーティアはずっと昔から立派な僕のお姫様だって言ってるだろ」と言い額にキスをすれば「そんなんで騙される歳じゃないのよねぇ」と苦笑いをされた。
「アランお兄ちゃ……アラン、まだ私のこと信用してないでしょ」
「失敬だな。してるよ」
「嘘。アランは、私といる時はいっつも“俺”て言ってたし、距離おいてる相手には僕だった。つまり、アランはいま現在、私を信用していない」
「一人称が変わっただけさ」
「それも嘘。一回だけ、俺って言ってる時があった」
「目敏いなぁ」
向かいの席に腰を下ろし、「まぁ、自分でも昔に比べて随分と変わったなとは思ってるよ。……ごめんね」と、申し訳なさそうな笑顔を向けてきた。
なぜ謝るのかと尋ねれば、「期待を裏切っちゃったから」と言う。
「アランが見たかったのは、昔の純粋な頃の私なんだってわかってるから」
目を一度閉じてから、数秒置いてもう一度顔をあげ「ごめんね」と綺麗に笑って見せる姿に、もしや自分は彼女を傷付けたのではないかと思い至る。
「すまない。そんなつもりで接したわけじゃないんだ……。ただ、その……」
「なに?」
「……いや、そうだな。僕は昔の君の幻想を押し付けすぎていた。そうしないと、どう話していいかわからなくなりそうで……」
手紙や電話は当たり障りない話ばかりで、ちゃんと大人になったアーティアとどんな会話をすればいいのかわからず、つい昔のような扱いをしたり、俺自身の願望に従わせようとしていたのは確かだ。
それを、アーティアがいまの自分は求められていないと感じても仕方がない。
「これからは気を付けるよ」
「いいよ、気にしてないから」
「嘘を吐かなくていいんだよ、アーティア。君の『気にしてないから』が『気にしてないけど、小さい不幸に見舞われろ』ていう意味なのは知ってるから」
「な、なんのことかなぁー」
目を泳がすということは、本当に『小さい不幸に見舞われろ』と思っていたようだ。
外見や、言動、服装は確かに変わってはいるが、昔と変わらぬ部分を見るたびに「あぁ、彼女は俺が愛した女の子なんだな」と思う。
それがより一層、俺を混乱させているのだが。
「アーティア。僕たちは会わない時間が長かった。僕の知らないアーティアがいて、アーティアの知らない僕がいる。なら、少しずつでいいから、会わなかった間を埋めるためにたくさん話したり、出掛けたりして俺の知らないアーティアを教えてくれ」
いいだろ?と微笑めば、クスクス笑いながら「キザなセリフだね」と言い、「じゃあ、私にもアランのこと教えてね」と愛しそうに見られては、こちらが恥ずかしくなる。
食器をかたし、家を出ようて思ったがその前にひとつ、やらなくてはならないことがある。
「アーティア。どんなにいまの君を知っても、君は俺の愛しいお姫様だよ」
見送りに来ていたアーティアの頬に口付けをし囁けば、アーティアも「私もだよ、愛しの王子様」と頬に口付けをしてくれた。
「それじゃあ、行ってきます。アーティア」
「行ってらっしゃい、アラン」
いつもそう、テディベアを抱き締めながら純真な瞳をキラキラと輝かせ、幸せそうに語るアーティアに俺は毎回、「アーティアはもう立派な俺のお姫様だよ」と言って抱き締め、おでこにキスをしていた。
そんな懐かしい夢を見た。
ふわついた意識のままリビングへ出ると、夢の中ではふわふわしたワンピースを着ていたのに、いまやタンクトップにショートパンツ、その上にエプロン。
夢との落差に肩を落としながら「おはようアーティア」と挨拶すれば、「おはようございます、スターフェイズさん」と他人行儀に食事を作る手を止めず挨拶してきた。
「なんだい、突然。機嫌でも悪いのか」
「違いますよ。ただ、落ち着いて考えたら、アランお兄ちゃんってなんだか子供っぽいですし、ライブラに入ったら上司になるわけです。いまの内から身の程を弁えておこうかなと思いまして」
「そうかい。だが、アーティア。その対応に、僕がいまどれだけ傷ついているかわかるかい?」
「さぁ?」
そう素っ気なく返され、俺としてはあまり気分がよくない。
だから、「そうか。なら、別にそのままで構わないよ。構わないがーー」と意味深に言葉を切れば、さすがに気になったのか調理の手を止めこちらを見ていたのでニッコリ微笑み「もしかしたら、今日が僕の命日になるかも知れない」と言ってやる。
「はぁ?なんでそうなるの……んですか?」
「愛しい従妹が他人行儀に振る舞い、それが気になりすぎてうっかり死んでしまうかも知れない」
「そんな性格でもないし、弱くもないでしょ……」
「いやいや、HLではなにが起きるかわからない。牙狩りなんて、さらに危険な仕事。今日が最後になったっておかしくない。あぁ、アーティアと漸く再会できたっていうのに、僕は逝かないといけないのか……!」
大仰に言って見せれば、難しい顔をして悩み最終的にはアーティアが折れた。
「わかったよ。けど、せめてアランさんにさせてよ」
「なんでだい?」
「お兄ちゃんって子供っぽくて嫌!よくよく考えたら、いい大人が兄妹でもないのにお兄ちゃんって恥ずかしい!」
力説するが、残念。
俺もそこは折れるつもりはないぞ。
「アランさんだなんて、やっぱり他人行儀じゃないか」
「ワガママだね。じゃあ、なんて呼べば満足なのよ」
呆れ調子で尋ねられたが、そこはあまり気にせず考える振りをし、実は以前から呼んでほしかった呼び方を口にする。
「アラン、だけでいいんじゃないか?」
俺の提案に、アーティアは盛大に渋い顔をした。
そんなに嫌なのかと思ったら、「歳上を呼び捨てするのはなぁ……」という、礼儀部分での葛藤らしく安心した。
「うーん……」
「歳上って言っても、たかだか三つだろ。気にしなくてもいいんじゃないか?それに、気兼ねない相手を呼び捨てにする。最高に大人っぽくないか?」
適当なことを言ったつもりだったのだが、アーティアは「一理ある」と納得してしまった。
ちょっと、この子大丈夫だろうか……。
チョロ過ぎじゃないか?
益々ライブラ入りが心配になる俺の目の前に、コトリとサンドイッチとサラダ、スープを並べていった。
「朝ごはんくらいは作りたくってね。立派なお姫様にはなれなかったけど、これくらいならできるわよ」
自慢気に語るアーティアの腕を引き抱き締め、「アーティアはずっと昔から立派な僕のお姫様だって言ってるだろ」と言い額にキスをすれば「そんなんで騙される歳じゃないのよねぇ」と苦笑いをされた。
「アランお兄ちゃ……アラン、まだ私のこと信用してないでしょ」
「失敬だな。してるよ」
「嘘。アランは、私といる時はいっつも“俺”て言ってたし、距離おいてる相手には僕だった。つまり、アランはいま現在、私を信用していない」
「一人称が変わっただけさ」
「それも嘘。一回だけ、俺って言ってる時があった」
「目敏いなぁ」
向かいの席に腰を下ろし、「まぁ、自分でも昔に比べて随分と変わったなとは思ってるよ。……ごめんね」と、申し訳なさそうな笑顔を向けてきた。
なぜ謝るのかと尋ねれば、「期待を裏切っちゃったから」と言う。
「アランが見たかったのは、昔の純粋な頃の私なんだってわかってるから」
目を一度閉じてから、数秒置いてもう一度顔をあげ「ごめんね」と綺麗に笑って見せる姿に、もしや自分は彼女を傷付けたのではないかと思い至る。
「すまない。そんなつもりで接したわけじゃないんだ……。ただ、その……」
「なに?」
「……いや、そうだな。僕は昔の君の幻想を押し付けすぎていた。そうしないと、どう話していいかわからなくなりそうで……」
手紙や電話は当たり障りない話ばかりで、ちゃんと大人になったアーティアとどんな会話をすればいいのかわからず、つい昔のような扱いをしたり、俺自身の願望に従わせようとしていたのは確かだ。
それを、アーティアがいまの自分は求められていないと感じても仕方がない。
「これからは気を付けるよ」
「いいよ、気にしてないから」
「嘘を吐かなくていいんだよ、アーティア。君の『気にしてないから』が『気にしてないけど、小さい不幸に見舞われろ』ていう意味なのは知ってるから」
「な、なんのことかなぁー」
目を泳がすということは、本当に『小さい不幸に見舞われろ』と思っていたようだ。
外見や、言動、服装は確かに変わってはいるが、昔と変わらぬ部分を見るたびに「あぁ、彼女は俺が愛した女の子なんだな」と思う。
それがより一層、俺を混乱させているのだが。
「アーティア。僕たちは会わない時間が長かった。僕の知らないアーティアがいて、アーティアの知らない僕がいる。なら、少しずつでいいから、会わなかった間を埋めるためにたくさん話したり、出掛けたりして俺の知らないアーティアを教えてくれ」
いいだろ?と微笑めば、クスクス笑いながら「キザなセリフだね」と言い、「じゃあ、私にもアランのこと教えてね」と愛しそうに見られては、こちらが恥ずかしくなる。
食器をかたし、家を出ようて思ったがその前にひとつ、やらなくてはならないことがある。
「アーティア。どんなにいまの君を知っても、君は俺の愛しいお姫様だよ」
見送りに来ていたアーティアの頬に口付けをし囁けば、アーティアも「私もだよ、愛しの王子様」と頬に口付けをしてくれた。
「それじゃあ、行ってきます。アーティア」
「行ってらっしゃい、アラン」