criminal
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「Hi.ダニー!」
「おう、アーティア。元気か?」
そう言いながら、私の周囲を見回すダニーに「なにか、お探し?」と聞くと、「今日はスカーフェイスと一緒じゃねぇのか」と言われた。
「まあね。漸く最近、四六時中一緒状態から開放されたのよ」
それでも、なにかにつけて一緒に来ようとするが、基本的にあの人、事務所を簡単に離れられる立場じゃないのよね。
お陰さまで、こうしてダニーと雑談しても咎めに来るドSの悪魔はいない。
「折角だし、ご飯行きましょーー」
言い切るか言い切らないかのところで、私とダニーは頭から、無色透明な粘液質な何かをかぶった。
「ンだこりゃ!」
「き、気持ち悪い……」
なんなんだ、と上を向くとなにか巨大な生命体が落下してきていた。
「いぃ?!」
避けなければ、と、ダニーの手を掴んで走り出そうとするが、液体に足を取られ、ダニーを巻き込んですっ転んだ。
「馬鹿!なにやってんだ!」
「ごめん!」
そんなやり取りをしている間に、巨大な生命体がすぐそこまで来ている。
しかし、ローションのように滑る液体に二人して身動きがとれなくなり、もうダメかと思われたが、寸でのところで氷の坂が私たちを守るように伸び、生命体はそこを転がり落ちていった。
助かった……、と安心していると、「アーティア!無事か!もし、なにかしらの液体を浴びていたら、僕に触ってくれ!」と、意味不明なことを叫びながら、アランが駆け寄ってきたが、私をダニーが抱きとめているのを見て「うわー!」と悲鳴を上げた。
なんなんだ、とドン引きする私にダニーが「おい、アーティア。なんだ、これ」と言うので、「私にもさっぱり」と返す。
「だよな。さっきまで、いなかったよな」
「いなかったって、なに…が……」
「あうー」
私とダニーの間には、確かに先ほどまでいなかった赤ん坊が、無邪気に手を伸ばしていた。
え、なに、どういうこと?
混乱する私に、アランが「なんで、ロウ警部補といるときに!」と頭を抱えながら、泣きそうな声でまた叫んだ。
クラウスさんの説明によると、先ほど落ちて来た生命体の唾液を浴びると、触れた相手と一度限り子供が生まれるらしい。
生まれると言っても、唾液を培養液とし、皮膚片を合成したホムンクルスなのだが。
ということで、私はダニーとの間にベビーを授かり、アランは嘆いているという状況の完成だ。
「こんなことなら、ゴムなしでヤッておくんだった!」
錯乱して、だいぶ最低なことを言うアランに、「この子、どうするの?」と一応聞けば、「殺す……訳にもいかないし……」となんとか倫理は守ってくれた。
「お前らの子供として育てりゃいいだろ」
ダニーの提案に、アランは信じられないという顔をしながらも、「いいのか、ロウ警部補……」と育てる気満々だ。
まあ、どの道、育てないといけないわけだから、ダニーがそれでいいのなら、私も文句はない。
とは、思っていたのだが。
「ダニー。アランじゃダメらしい」
『あいつが父親って柄じゃねえのは知ってるが、早すぎねぇか?』
「いやぁ、それがさぁ……」
背後で騒いでいる二人にケータイを向ける。
「俺はてめぇを親父だなんて認めてねぇ!」
「イサーク。その乱暴な口の利き方はやめなさい」
「父親面すんじゃねぇ!」
ダニーによく似た十歳くらいの少年、イサークは確かに、あの日生まれた赤ん坊なのだが、どうも成長速度が常人より速いようだ。
そして反抗期なのか、ダニーの遺伝子の所為なのか、父親であるアランをめちゃくちゃ嫌っている。
「誰に似たのかしら」
『俺だって言いたいのか?お前だって、最初はスカーフェイスを警戒してたって聞いたが?』
「それを言われると、なにも言えないわね……」
「そもそも、こんなデカくなってまで親と一緒じゃねえと出歩けないなんて、恥ずかしいだろ!」
どこかで似たようなセリフを聞いたことがあるわね。
私の遺伝子も感じるわ。
イサークとアランの喧嘩が白熱し始めたので、イサークを連れて外に出てから、「パパと仲よくできない?」となんとか仲を取り持とうとするも「あいつ、いけすかねぇから嫌いだ!」と取り付く島もない。
困ったなぁ、と思っていると、「そいつが、この間の赤ん坊か?」と先ほどまで電話越しに聞いていた声がした。
「ダニー」
「随分と疲れてるな」
「そりゃそうよ。アランとイサークがずっと喧嘩してるんだもの」
「反抗期の息子を持つ母親は大変だな」
そう言いながら、私の頭を乱暴に撫でてくるダニーに「やめてちょうだいよ」と言おうとしたが、その前に「親父!」と言ってイサークがダニーに抱きついた。
「あんた、俺の親父だろ!」
確信を持って言うイサークに、「どうしてそう思うの?」と聞くと、「だって、前髪一緒じゃねえか!」と自信満々に答える。
笑いを耐える私に、ダニーが「おい」と言い睨んできたが、前髪で父親判定されているのだから、面白いに決まっている。
「おい、坊主。俺はお前の親父じゃねえ。お前の親父は、スティーブン・アラン・スターフェイズだ」
「嘘だ!俺にはわかる!あんたが、俺の本物の父親だって!」
「仮に俺がお前の父親だとして、どうするんだ。俺は、お前とそいつを他の男に渡した男だぞ」
なんで、わざわざ自分を悪く言うのかしら、と呆れながら、イサークがなんと答えるか黙って聞くことにする。
「俺は……俺は、親父とおふくろと一緒に暮らしたい……」
「いまの父親を大切にしろ。俺は、親にはなれねえ」
「っ……!お願いだ!俺が死ぬまででいいんだ!」
泣き出しそうなイサークの言葉に、ダニーが首を傾げ私を見るが、私も言葉の意味がわからない。
「イサーク。どういう意味か、説明できる?」
私が説明を促すと、イサークは目に涙を浮かべて「だって、俺、変なんだろ……?」と言う。
「俺だけ歳を取るのが速いことくらい、わかる。このままいったら、俺はおふくろより先に年取って死んじまう。だから、本当の親子で暮らしたいんだ」
「イサーク……」
ボロボロと泣くイサークを抱きしめダニーを見れば、ダニーが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「暮らすっつったって、どうすんだよ。あのスカーフェイスが許すとは、到底思えないぞ」
「そこは、私がなんとかするからさ。ダメ?こんなに泣いてるのに?」
私のお願いに、ダニーは渋々「スカーフェイスが許したらな」と承諾した。
「じゃあ、アランと交渉してくるから、それまでイサークお願いできる?」
「なんでだよ!」
「イサークがいると、また喧嘩はじめちゃうでしょ?お願い、ダニー。あとで、美味しいご飯作ってあげるから」
「お前の釣り文句は飯しかないのか……。さっさと迎えに来いよ。ほら、行くぞ。坊主」
イサークをダニーに預け駆け足で事務所に戻り、アランに事情を説明すれば、やはりと言うか、「ダメだ」と返された。
「お願い、アラン。一日なんでもするからさ」
「ダメなものは、ダメだ。というか、君はその提案を俺が飲むとでも思っているのか?」
「だから、なんでもする、て言ってるんじゃない」
「そんな安い条件で、この僕が、君が他の男と生活するのを許すとでも?」
安い、と言われてカチン、ときた私は「随分な言いようじゃない」と喧嘩腰になりながら、アランにメンチを切る。
「この私が、一日、素直に、大人しく、文句も言わず、あなたの言いなりになるってのが、そんなに安いって言うのかしら?」
私の言葉に、ザップさんが「どんだけ自分に価値があると思ってるんだ、この女……」とこぼしているが、アランにとって私がそれだけの価値があると自負している。
実際、アランはいま、悩んでいる。
一時、ダニーとの同居を許すことで一日、私を自由にする権利を得られるのだから。
ほら、どうするんだ。とにじり寄れば、「三日だ!三日、なんでもするなら認めよう!」と言う。
まあ、別にいいけど。なにさせられるのか知らないが。
「じゃあ私、ダニーのところに行くから、早上がりさせてもらうわね」
「アーティア、いいか。これだけは約束だ。必ず、僕のもとに帰ってくるんだ」
まるで、死地に送り出す上官みたいなことを言うな、こいつ。
私は、「はい、はい」と軽く返事をする。
不満そうなアランの頬にキスをし、「ちゃんと帰ってくるから」と言えば、額にキスをされ「約束だからな」と言われた。
心配性ね。
家に帰り、手早く荷物をまとめてダニーに連絡をすると、警察署の方へ行くと入口でダニーがイサークと待っていた。
「お待たせ、ダニー」
「おう、さっさと行くぞ」
いやに急ぐダニーに、「なにかあった?」と聞くと、中から「兄さん!待ってよ!」と、ダニーをマイルドにしたような見た目の男が出てきた。
誰?と聞く間もなく、男は私の手を握って「初めまして、お義姉さん。俺は、ダニエル・ロウの双子の弟、マーカス・ロウです」と挨拶をしてくれる。
お義姉さん?
助けを求めるように、ダニーへ視線を向けるが、あの野郎、いつの間にかイサークを連れて距離をおいていた。
に、逃げたな……!
「これからも、末永く!末永く!兄をよろしくお願いします!」
「いや、あの……!」
「兄は仕事に打ち込みすぎて私生活が乱れがちなので、よろしくお願いします!」
「ダニー!助けて!」
私のSOSに、ダニーがため息吐きながら「マーカス、お前まだ仕事の途中だろ」と遠くから声をかけ、ようやく、「兄はひねくれてますけど、いい男なんで!」と言い残し署に帰っていった。
「な、なかなか、人の話を聞かない弟さんね……」
「普段は、もっと冷静なんだがな」
やれやれ、と首を振り私からキャリーケースを奪って歩きだしたダニーの手をイサークが握り、空いた手で私の手を握り「へへっ、帰ろう。親父、おふくろ」と幸せそうに言うから、世帯を持つのは躊躇われるが、悪くないと思ってしまう。
「……悪かねえな」
「え?」
「なんでもねえよ。さっさと行くぞ」
「おう、アーティア。元気か?」
そう言いながら、私の周囲を見回すダニーに「なにか、お探し?」と聞くと、「今日はスカーフェイスと一緒じゃねぇのか」と言われた。
「まあね。漸く最近、四六時中一緒状態から開放されたのよ」
それでも、なにかにつけて一緒に来ようとするが、基本的にあの人、事務所を簡単に離れられる立場じゃないのよね。
お陰さまで、こうしてダニーと雑談しても咎めに来るドSの悪魔はいない。
「折角だし、ご飯行きましょーー」
言い切るか言い切らないかのところで、私とダニーは頭から、無色透明な粘液質な何かをかぶった。
「ンだこりゃ!」
「き、気持ち悪い……」
なんなんだ、と上を向くとなにか巨大な生命体が落下してきていた。
「いぃ?!」
避けなければ、と、ダニーの手を掴んで走り出そうとするが、液体に足を取られ、ダニーを巻き込んですっ転んだ。
「馬鹿!なにやってんだ!」
「ごめん!」
そんなやり取りをしている間に、巨大な生命体がすぐそこまで来ている。
しかし、ローションのように滑る液体に二人して身動きがとれなくなり、もうダメかと思われたが、寸でのところで氷の坂が私たちを守るように伸び、生命体はそこを転がり落ちていった。
助かった……、と安心していると、「アーティア!無事か!もし、なにかしらの液体を浴びていたら、僕に触ってくれ!」と、意味不明なことを叫びながら、アランが駆け寄ってきたが、私をダニーが抱きとめているのを見て「うわー!」と悲鳴を上げた。
なんなんだ、とドン引きする私にダニーが「おい、アーティア。なんだ、これ」と言うので、「私にもさっぱり」と返す。
「だよな。さっきまで、いなかったよな」
「いなかったって、なに…が……」
「あうー」
私とダニーの間には、確かに先ほどまでいなかった赤ん坊が、無邪気に手を伸ばしていた。
え、なに、どういうこと?
混乱する私に、アランが「なんで、ロウ警部補といるときに!」と頭を抱えながら、泣きそうな声でまた叫んだ。
クラウスさんの説明によると、先ほど落ちて来た生命体の唾液を浴びると、触れた相手と一度限り子供が生まれるらしい。
生まれると言っても、唾液を培養液とし、皮膚片を合成したホムンクルスなのだが。
ということで、私はダニーとの間にベビーを授かり、アランは嘆いているという状況の完成だ。
「こんなことなら、ゴムなしでヤッておくんだった!」
錯乱して、だいぶ最低なことを言うアランに、「この子、どうするの?」と一応聞けば、「殺す……訳にもいかないし……」となんとか倫理は守ってくれた。
「お前らの子供として育てりゃいいだろ」
ダニーの提案に、アランは信じられないという顔をしながらも、「いいのか、ロウ警部補……」と育てる気満々だ。
まあ、どの道、育てないといけないわけだから、ダニーがそれでいいのなら、私も文句はない。
とは、思っていたのだが。
「ダニー。アランじゃダメらしい」
『あいつが父親って柄じゃねえのは知ってるが、早すぎねぇか?』
「いやぁ、それがさぁ……」
背後で騒いでいる二人にケータイを向ける。
「俺はてめぇを親父だなんて認めてねぇ!」
「イサーク。その乱暴な口の利き方はやめなさい」
「父親面すんじゃねぇ!」
ダニーによく似た十歳くらいの少年、イサークは確かに、あの日生まれた赤ん坊なのだが、どうも成長速度が常人より速いようだ。
そして反抗期なのか、ダニーの遺伝子の所為なのか、父親であるアランをめちゃくちゃ嫌っている。
「誰に似たのかしら」
『俺だって言いたいのか?お前だって、最初はスカーフェイスを警戒してたって聞いたが?』
「それを言われると、なにも言えないわね……」
「そもそも、こんなデカくなってまで親と一緒じゃねえと出歩けないなんて、恥ずかしいだろ!」
どこかで似たようなセリフを聞いたことがあるわね。
私の遺伝子も感じるわ。
イサークとアランの喧嘩が白熱し始めたので、イサークを連れて外に出てから、「パパと仲よくできない?」となんとか仲を取り持とうとするも「あいつ、いけすかねぇから嫌いだ!」と取り付く島もない。
困ったなぁ、と思っていると、「そいつが、この間の赤ん坊か?」と先ほどまで電話越しに聞いていた声がした。
「ダニー」
「随分と疲れてるな」
「そりゃそうよ。アランとイサークがずっと喧嘩してるんだもの」
「反抗期の息子を持つ母親は大変だな」
そう言いながら、私の頭を乱暴に撫でてくるダニーに「やめてちょうだいよ」と言おうとしたが、その前に「親父!」と言ってイサークがダニーに抱きついた。
「あんた、俺の親父だろ!」
確信を持って言うイサークに、「どうしてそう思うの?」と聞くと、「だって、前髪一緒じゃねえか!」と自信満々に答える。
笑いを耐える私に、ダニーが「おい」と言い睨んできたが、前髪で父親判定されているのだから、面白いに決まっている。
「おい、坊主。俺はお前の親父じゃねえ。お前の親父は、スティーブン・アラン・スターフェイズだ」
「嘘だ!俺にはわかる!あんたが、俺の本物の父親だって!」
「仮に俺がお前の父親だとして、どうするんだ。俺は、お前とそいつを他の男に渡した男だぞ」
なんで、わざわざ自分を悪く言うのかしら、と呆れながら、イサークがなんと答えるか黙って聞くことにする。
「俺は……俺は、親父とおふくろと一緒に暮らしたい……」
「いまの父親を大切にしろ。俺は、親にはなれねえ」
「っ……!お願いだ!俺が死ぬまででいいんだ!」
泣き出しそうなイサークの言葉に、ダニーが首を傾げ私を見るが、私も言葉の意味がわからない。
「イサーク。どういう意味か、説明できる?」
私が説明を促すと、イサークは目に涙を浮かべて「だって、俺、変なんだろ……?」と言う。
「俺だけ歳を取るのが速いことくらい、わかる。このままいったら、俺はおふくろより先に年取って死んじまう。だから、本当の親子で暮らしたいんだ」
「イサーク……」
ボロボロと泣くイサークを抱きしめダニーを見れば、ダニーが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「暮らすっつったって、どうすんだよ。あのスカーフェイスが許すとは、到底思えないぞ」
「そこは、私がなんとかするからさ。ダメ?こんなに泣いてるのに?」
私のお願いに、ダニーは渋々「スカーフェイスが許したらな」と承諾した。
「じゃあ、アランと交渉してくるから、それまでイサークお願いできる?」
「なんでだよ!」
「イサークがいると、また喧嘩はじめちゃうでしょ?お願い、ダニー。あとで、美味しいご飯作ってあげるから」
「お前の釣り文句は飯しかないのか……。さっさと迎えに来いよ。ほら、行くぞ。坊主」
イサークをダニーに預け駆け足で事務所に戻り、アランに事情を説明すれば、やはりと言うか、「ダメだ」と返された。
「お願い、アラン。一日なんでもするからさ」
「ダメなものは、ダメだ。というか、君はその提案を俺が飲むとでも思っているのか?」
「だから、なんでもする、て言ってるんじゃない」
「そんな安い条件で、この僕が、君が他の男と生活するのを許すとでも?」
安い、と言われてカチン、ときた私は「随分な言いようじゃない」と喧嘩腰になりながら、アランにメンチを切る。
「この私が、一日、素直に、大人しく、文句も言わず、あなたの言いなりになるってのが、そんなに安いって言うのかしら?」
私の言葉に、ザップさんが「どんだけ自分に価値があると思ってるんだ、この女……」とこぼしているが、アランにとって私がそれだけの価値があると自負している。
実際、アランはいま、悩んでいる。
一時、ダニーとの同居を許すことで一日、私を自由にする権利を得られるのだから。
ほら、どうするんだ。とにじり寄れば、「三日だ!三日、なんでもするなら認めよう!」と言う。
まあ、別にいいけど。なにさせられるのか知らないが。
「じゃあ私、ダニーのところに行くから、早上がりさせてもらうわね」
「アーティア、いいか。これだけは約束だ。必ず、僕のもとに帰ってくるんだ」
まるで、死地に送り出す上官みたいなことを言うな、こいつ。
私は、「はい、はい」と軽く返事をする。
不満そうなアランの頬にキスをし、「ちゃんと帰ってくるから」と言えば、額にキスをされ「約束だからな」と言われた。
心配性ね。
家に帰り、手早く荷物をまとめてダニーに連絡をすると、警察署の方へ行くと入口でダニーがイサークと待っていた。
「お待たせ、ダニー」
「おう、さっさと行くぞ」
いやに急ぐダニーに、「なにかあった?」と聞くと、中から「兄さん!待ってよ!」と、ダニーをマイルドにしたような見た目の男が出てきた。
誰?と聞く間もなく、男は私の手を握って「初めまして、お義姉さん。俺は、ダニエル・ロウの双子の弟、マーカス・ロウです」と挨拶をしてくれる。
お義姉さん?
助けを求めるように、ダニーへ視線を向けるが、あの野郎、いつの間にかイサークを連れて距離をおいていた。
に、逃げたな……!
「これからも、末永く!末永く!兄をよろしくお願いします!」
「いや、あの……!」
「兄は仕事に打ち込みすぎて私生活が乱れがちなので、よろしくお願いします!」
「ダニー!助けて!」
私のSOSに、ダニーがため息吐きながら「マーカス、お前まだ仕事の途中だろ」と遠くから声をかけ、ようやく、「兄はひねくれてますけど、いい男なんで!」と言い残し署に帰っていった。
「な、なかなか、人の話を聞かない弟さんね……」
「普段は、もっと冷静なんだがな」
やれやれ、と首を振り私からキャリーケースを奪って歩きだしたダニーの手をイサークが握り、空いた手で私の手を握り「へへっ、帰ろう。親父、おふくろ」と幸せそうに言うから、世帯を持つのは躊躇われるが、悪くないと思ってしまう。
「……悪かねえな」
「え?」
「なんでもねえよ。さっさと行くぞ」
34/34ページ