criminal
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私が昼食に出て暫くすると、遠くの方が騒がしくなる。
いつもの喧騒に数多の悲鳴が混じっているのを聞く限り、なにかまた暴動でも起こっているのだろう。
それでも、アランから連絡が来ないということは、お昼休みしていていいよ。という意味合いと解釈しよう。
そういえばアランもお昼がまだだった気がするし、帰りにサブウェイでテイクアウトして持って帰ってあげるかと思い、アランお気に入りの組み合わせを頼み帰れば、まだ誰も帰っていなかった。
仕方なく、紙袋をローテーブルに置こうとして、ふと、テーブルの上に本が置かれているのに気がつく。
表紙は童話のようなファンシーなもので、タイトルは「幸せな夢」とある。
初めてアランに会った時に暇潰しで読み聞かせられた本を思い出し、懐かしくなりテーブルの端に紙袋を起き、ペラペラと捲るが中は白紙。
「なに、この本」
不審に思い閉じようとした瞬間、本が光意識が遠退いた気がする。
恐る恐る目を開けると、そこは海がきらめき太陽が輝く街だった。
この場所は祖父母が住んでいた、私が夏にアランと過ごしていた街。
どうして、と辺りを見回していたら「アーティア!」とアランに呼ばれ振り向けば、いつものお堅い真っ黒なスーツ姿から白いワイシャツに黒のスラックスという比較的ラフな姿で、慌てた様子で駆け寄ってくるのが見えた。
「アラン!」
「あぁ、まったく!どこに行ったかと思ったよ!」
「どこにって、そもそもここどこなの?」
困惑する私に、アランは「覚えていないのかい?」と心配そうに聞くが、覚えてないとはどういうことか。
アランに説明を求めれば、ある日、暴動鎮圧後に帰ってきたら事務所で私は意識を失っていたそうだ。
その後、私が眠っている間に世界は平和になり、意識を取り戻した私と思い出の地であるこの場所へと移り住んだと、彼は説明する。
「だから、もう戦う必要はなくなったんだ」
「そう……。それで……真実はなにかしら?」
腐蝕の剣で一太刀凪ぎ払うも、威嚇程度の速度だったために距離を置かれた。
「なにをするんだい、アーティア……?」
「それはこっちの台詞だわ。こんな精巧な仮想空間を作れるってのに、アランの性格分析が甘いわね」
平和になった?その程度で、あの男が簡単に平和な生活に甘んじるわけないでしょ。
侮蔑の表情で睨み付ければ、アランの姿と声で「おかしいですね。貴方の願望を完全に再現したはずなのですが」と言うから、いやいや、気持ち悪い。
「アランの姿で私を騙そうだなんて、いい度胸ね。情報だけ吐いて死んでちょうだい」
「私をこの世界で殺すのは不可能ですよ。私は人工精霊です。現在の貴方は、私に精神を本の中に引き寄せられている状態です。私なくして、この世界から脱出できませんよ」
にこり、と胡散臭いアランの笑みを浮かべながら、嘘か本当か判断つきにくいことを言う。
「本って、あの何も書いていない本?」
「えぇ、それです。私は触れた者の精神に干渉して、その者が望む世界を再現します」
「なるほど、それで幸せな夢。それで?私を引きずり込んで、なにをさせたいって言うの?」
私の疑問に、アラン改め人工精霊は手を組み「私の処遇についてです」と、アランの顔でハの字眉にするから気味が悪い。
「その姿、どうにかならないの?気味が悪いわ」
「貴方の中で一番好意を寄せている人間のはずですが」
「そうよ。でも、その姿でへりくだられるのは最悪」
「かしこまりました」
人工精霊は一礼すると、今度はツェッドさんの姿になった。
なにがなんでも私の知り合いになりたいのか、と不機嫌まるだしな顔をすると、人工精霊は困ったように「私には姿がありません。ご容赦ください」と言う。
それなら仕方がない、容赦しよう。
「で、処遇がなんだっけ」
「はい。私は、とある科学者に造られライブラに押収されました。このままでは、処分されてしまいます」
「それで、私に処分しないように説得しろと?」
「いえ、貴方にその権限がないことは、精神に干渉した時点でわかりました」
なんだか、バカにされたような気がするが、「じゃあ、私になにしろって言うのよ」と聞くと困惑しながら、「問題が発生しまして」と嫌な予感しかしない発言をする。
聞きたくないが、聞かないと話が進まないんだろうな……。
どうぞ、と手で先を促せば、「スティーブン・アラン・スターフェイズを引き込んだら、現実に戻ってこなくなりまして」と、予想だにしていない問題に理解に窮した。
「な……なんで、そんなことに?」
「貴方を追って、彼も本の中に入ろうとしたのですが、願望に干渉しようにもロックが強くかかっており、無理に外したらどっぷりはまってしまって……。たがが外れると怖いタイプですよ、彼」
「それは知ってるけど、どうして願望に干渉するのよ」
普通に精神に干渉して、引きずり込むのではダメだったのか。
私の質問に、人工精霊は「そう造られたのです」と申し訳なさそうに言う。
融通が利かないわね。
「私も、彼にここは仮想空間であることを伝えたのですが、夢の中に完全に没入してしまい帰ってこないのです」
「それ、私になんとかできる話?」
この世界の造り手である人工精霊がどうしようもないことを、私がどうにかできるとは到底思えない。
しかし、人工精霊は「見ていただければ、わかります」と指を鳴らすと、景色が変わり一軒の家の前へと連れてこられる。
空いた窓から人工精霊が中を指差すので中を見れば、ゆったりと新聞を読みながらコーヒーを飲んでいるアランがいた。
その膝には、幼い頃の私が座っていて、なによ、なんだかんだ言って昔の私に未練たらたらじゃない、と思い見ていたら、アランは私ではない名前で子供を呼んだ。
「そろそろママのお手伝いに行かないとね」
「うん!行く!ママー!」
「アーティア、なにかまだ手伝うことはあるかい?」
「ありがとう、アラン。じゃあ、サラダの盛り付けお願い」
そこには、アランの願望である私との幸せ計画が繰り広げられていて、このあと私はどんな顔でアランと会えばいいんだ。
頭を抱える私に、人工精霊は「本物の貴方が現れれば、現実に引き戻されるはずなんです」と言うが、あの幸せ二百パーセントの顔をしたアランを現実に引き戻さないといけないのか……。
罪悪感がわくな……。
でも、引き戻さないと話が進まないんでしょ?と観念して、窓から身をのりだし「Hi. 楽しそうね、アラン」と努めて明るい声で話しかければ、勢いよくアランは振り返り、私と幻想の私を交互に見た。
「私も仲間に入れてくれないかしら?何役?愛人とか?」
「えっ?……え?!」
「パパ……。あの人、誰?」
未だに現実に戻って来ないアランに、「本物と偽物の区別がつかないだなんて、そんな悲しいこと言わないわよね?」と問いかければ、ふわり、と幻想の私と娘は消え、その場には羞恥で丸まったアランだけが残った。
「幸せな夢を見てるところ、ごめんなさいね」
「忘れてくれ、アーティア」
「努力するわ。それで、話があるんだけどいいかしら?」
よろよろと私のところまで来たアランに、斯々然々説明したところ「そいつ殺してなんとかならないか?」と言い出す。
気持ちはわからないことはないが、落ち着いてほしい。
アランをなだめて、なんとか処分しないことを約束させると、人工精霊は謝辞述べてすぐさま帰してくれた。
意識を取り戻すと、アランが本に火をつけようとしていて慌てて止めたが、「燃やさせてくれ!」と本から手を離さない。
「可哀想でしょ!人工とはいえ、生きてるのよ!」
「こいつは、ドラッグと一緒だ!燃やした方が世界の為だ!」
「とか言って、単に自分の恥ずかしい願望を再現された腹いせに燃やすだけでしょ!」
「あれは俺の大切で柔らかい部分だったんだ!それなのに……!」
思い出し羞恥で転がりだしたアランから本をぶん取り、「約束は守りなさい!」と一喝すれば、諦めたのか「わかった……」と小さく言った。
本は然るべき機関で封印措置がされる運びになったが、アランへのダメージが大きい。
「アラン、別にそんな恥ずかしい願望じゃなかったと思うわ」
「その願望を君に見られたのが問題なんだ」
項垂れるアランをせっせと励ますが、その願望を向けている人間が励ましても効果が薄い。
どうすれば元気になるかな、と思案していたら「君は、どんな夢を見たんだ」と聞いてきた。
「そうね。世界が平和になって……隠居する夢よ」
「随分と年寄り染みた夢だな」
「平和に平凡が一番よ。まあ、私が生きているうちは、世界平和だなんて夢のまた夢だってわかってるから、すぐに仮想現実だって気がついたけど」
笑って言う私に、アランが「そこに……君の側に、俺はいたかい?」と聞く。
「……いたわ」
「そうか、それはよかった」
私の答えに満足したのか、アランはゆるく笑みを浮かべた。
いつもの喧騒に数多の悲鳴が混じっているのを聞く限り、なにかまた暴動でも起こっているのだろう。
それでも、アランから連絡が来ないということは、お昼休みしていていいよ。という意味合いと解釈しよう。
そういえばアランもお昼がまだだった気がするし、帰りにサブウェイでテイクアウトして持って帰ってあげるかと思い、アランお気に入りの組み合わせを頼み帰れば、まだ誰も帰っていなかった。
仕方なく、紙袋をローテーブルに置こうとして、ふと、テーブルの上に本が置かれているのに気がつく。
表紙は童話のようなファンシーなもので、タイトルは「幸せな夢」とある。
初めてアランに会った時に暇潰しで読み聞かせられた本を思い出し、懐かしくなりテーブルの端に紙袋を起き、ペラペラと捲るが中は白紙。
「なに、この本」
不審に思い閉じようとした瞬間、本が光意識が遠退いた気がする。
恐る恐る目を開けると、そこは海がきらめき太陽が輝く街だった。
この場所は祖父母が住んでいた、私が夏にアランと過ごしていた街。
どうして、と辺りを見回していたら「アーティア!」とアランに呼ばれ振り向けば、いつものお堅い真っ黒なスーツ姿から白いワイシャツに黒のスラックスという比較的ラフな姿で、慌てた様子で駆け寄ってくるのが見えた。
「アラン!」
「あぁ、まったく!どこに行ったかと思ったよ!」
「どこにって、そもそもここどこなの?」
困惑する私に、アランは「覚えていないのかい?」と心配そうに聞くが、覚えてないとはどういうことか。
アランに説明を求めれば、ある日、暴動鎮圧後に帰ってきたら事務所で私は意識を失っていたそうだ。
その後、私が眠っている間に世界は平和になり、意識を取り戻した私と思い出の地であるこの場所へと移り住んだと、彼は説明する。
「だから、もう戦う必要はなくなったんだ」
「そう……。それで……真実はなにかしら?」
腐蝕の剣で一太刀凪ぎ払うも、威嚇程度の速度だったために距離を置かれた。
「なにをするんだい、アーティア……?」
「それはこっちの台詞だわ。こんな精巧な仮想空間を作れるってのに、アランの性格分析が甘いわね」
平和になった?その程度で、あの男が簡単に平和な生活に甘んじるわけないでしょ。
侮蔑の表情で睨み付ければ、アランの姿と声で「おかしいですね。貴方の願望を完全に再現したはずなのですが」と言うから、いやいや、気持ち悪い。
「アランの姿で私を騙そうだなんて、いい度胸ね。情報だけ吐いて死んでちょうだい」
「私をこの世界で殺すのは不可能ですよ。私は人工精霊です。現在の貴方は、私に精神を本の中に引き寄せられている状態です。私なくして、この世界から脱出できませんよ」
にこり、と胡散臭いアランの笑みを浮かべながら、嘘か本当か判断つきにくいことを言う。
「本って、あの何も書いていない本?」
「えぇ、それです。私は触れた者の精神に干渉して、その者が望む世界を再現します」
「なるほど、それで幸せな夢。それで?私を引きずり込んで、なにをさせたいって言うの?」
私の疑問に、アラン改め人工精霊は手を組み「私の処遇についてです」と、アランの顔でハの字眉にするから気味が悪い。
「その姿、どうにかならないの?気味が悪いわ」
「貴方の中で一番好意を寄せている人間のはずですが」
「そうよ。でも、その姿でへりくだられるのは最悪」
「かしこまりました」
人工精霊は一礼すると、今度はツェッドさんの姿になった。
なにがなんでも私の知り合いになりたいのか、と不機嫌まるだしな顔をすると、人工精霊は困ったように「私には姿がありません。ご容赦ください」と言う。
それなら仕方がない、容赦しよう。
「で、処遇がなんだっけ」
「はい。私は、とある科学者に造られライブラに押収されました。このままでは、処分されてしまいます」
「それで、私に処分しないように説得しろと?」
「いえ、貴方にその権限がないことは、精神に干渉した時点でわかりました」
なんだか、バカにされたような気がするが、「じゃあ、私になにしろって言うのよ」と聞くと困惑しながら、「問題が発生しまして」と嫌な予感しかしない発言をする。
聞きたくないが、聞かないと話が進まないんだろうな……。
どうぞ、と手で先を促せば、「スティーブン・アラン・スターフェイズを引き込んだら、現実に戻ってこなくなりまして」と、予想だにしていない問題に理解に窮した。
「な……なんで、そんなことに?」
「貴方を追って、彼も本の中に入ろうとしたのですが、願望に干渉しようにもロックが強くかかっており、無理に外したらどっぷりはまってしまって……。たがが外れると怖いタイプですよ、彼」
「それは知ってるけど、どうして願望に干渉するのよ」
普通に精神に干渉して、引きずり込むのではダメだったのか。
私の質問に、人工精霊は「そう造られたのです」と申し訳なさそうに言う。
融通が利かないわね。
「私も、彼にここは仮想空間であることを伝えたのですが、夢の中に完全に没入してしまい帰ってこないのです」
「それ、私になんとかできる話?」
この世界の造り手である人工精霊がどうしようもないことを、私がどうにかできるとは到底思えない。
しかし、人工精霊は「見ていただければ、わかります」と指を鳴らすと、景色が変わり一軒の家の前へと連れてこられる。
空いた窓から人工精霊が中を指差すので中を見れば、ゆったりと新聞を読みながらコーヒーを飲んでいるアランがいた。
その膝には、幼い頃の私が座っていて、なによ、なんだかんだ言って昔の私に未練たらたらじゃない、と思い見ていたら、アランは私ではない名前で子供を呼んだ。
「そろそろママのお手伝いに行かないとね」
「うん!行く!ママー!」
「アーティア、なにかまだ手伝うことはあるかい?」
「ありがとう、アラン。じゃあ、サラダの盛り付けお願い」
そこには、アランの願望である私との幸せ計画が繰り広げられていて、このあと私はどんな顔でアランと会えばいいんだ。
頭を抱える私に、人工精霊は「本物の貴方が現れれば、現実に引き戻されるはずなんです」と言うが、あの幸せ二百パーセントの顔をしたアランを現実に引き戻さないといけないのか……。
罪悪感がわくな……。
でも、引き戻さないと話が進まないんでしょ?と観念して、窓から身をのりだし「Hi. 楽しそうね、アラン」と努めて明るい声で話しかければ、勢いよくアランは振り返り、私と幻想の私を交互に見た。
「私も仲間に入れてくれないかしら?何役?愛人とか?」
「えっ?……え?!」
「パパ……。あの人、誰?」
未だに現実に戻って来ないアランに、「本物と偽物の区別がつかないだなんて、そんな悲しいこと言わないわよね?」と問いかければ、ふわり、と幻想の私と娘は消え、その場には羞恥で丸まったアランだけが残った。
「幸せな夢を見てるところ、ごめんなさいね」
「忘れてくれ、アーティア」
「努力するわ。それで、話があるんだけどいいかしら?」
よろよろと私のところまで来たアランに、斯々然々説明したところ「そいつ殺してなんとかならないか?」と言い出す。
気持ちはわからないことはないが、落ち着いてほしい。
アランをなだめて、なんとか処分しないことを約束させると、人工精霊は謝辞述べてすぐさま帰してくれた。
意識を取り戻すと、アランが本に火をつけようとしていて慌てて止めたが、「燃やさせてくれ!」と本から手を離さない。
「可哀想でしょ!人工とはいえ、生きてるのよ!」
「こいつは、ドラッグと一緒だ!燃やした方が世界の為だ!」
「とか言って、単に自分の恥ずかしい願望を再現された腹いせに燃やすだけでしょ!」
「あれは俺の大切で柔らかい部分だったんだ!それなのに……!」
思い出し羞恥で転がりだしたアランから本をぶん取り、「約束は守りなさい!」と一喝すれば、諦めたのか「わかった……」と小さく言った。
本は然るべき機関で封印措置がされる運びになったが、アランへのダメージが大きい。
「アラン、別にそんな恥ずかしい願望じゃなかったと思うわ」
「その願望を君に見られたのが問題なんだ」
項垂れるアランをせっせと励ますが、その願望を向けている人間が励ましても効果が薄い。
どうすれば元気になるかな、と思案していたら「君は、どんな夢を見たんだ」と聞いてきた。
「そうね。世界が平和になって……隠居する夢よ」
「随分と年寄り染みた夢だな」
「平和に平凡が一番よ。まあ、私が生きているうちは、世界平和だなんて夢のまた夢だってわかってるから、すぐに仮想現実だって気がついたけど」
笑って言う私に、アランが「そこに……君の側に、俺はいたかい?」と聞く。
「……いたわ」
「そうか、それはよかった」
私の答えに満足したのか、アランはゆるく笑みを浮かべた。