criminal
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昼間だけでも心身共に疲弊しきっているのに、夜ともなればジャパニーズホラーの本領発揮となり、返送装置の使用率が右肩上がり。
それに伴い報告件数も多くなり、私の精神が折れそうになる。
「もういや……。ジャパニーズホラー大嫌い。この時期はトマティーナのことだけ考えてたい……」
私の泣き言に、アランが「もうそんな時期か」と顔をあげた。
「返送装置のプログラムの容量を増やしたから、暫く休憩ついでにお喋りするかい?」
「そうね……。夜はただでさえ気が滅入るもの……」
ソファーに行きたいが、いまソファーに座ったら確実に熟睡するので、椅子だけをアランの方に向け「トマティーナ、随分長いこと行ってないのよね」と言えば、驚いたように「そうなのか?あんなに好きだったじゃないか」と言われた。
「好きだったけど、アランがいないとつまらないもの」
アランは寄宿制のミドルスクールに行ってから、ぱったりと夏におじいちゃんの家に来なくなった。
家にも帰省していなかったらしく会いに行ってもいないし、さりげなく「会いたいわ」と手紙で書いてもかわされていた。
「あの時はショックだったわ。なにかしたんじゃないかって、不安にもなったし」
「あれは……君にはなにも責任はなかったよ。俺の方に問題があったんだ」
「問題って?」
私の質問にアランは視線をさ迷わせながら、「いや……これは……ちょっと……」と言葉を濁すので、「なによ、そんな言いにくいことなの?」と聞けば「……たぶん、嫌われるから」と伊達男らしからぬ気弱な発言に笑いだしそうになったが、ツェッドさんを起こしてしまっては悪いので我慢した。
「いまさらだし、昔の話でしょ?時効よ、時効」
「本当に聞いても嫌いにならないか?」
「子供の頃の話で嫌いになってたら、ずっと前から嫌いよ」
伊達男のちょっと言いにくい話とか聞いてみたいに決まってるでしょ。
ほら、早く早く。と急かせば「君に手を出しそうだったから」と小さい声で言ったが、いまこの場で音が出ているのはコンピューターの駆動音だけなので私の耳にしっかり届いた。
「……ちょっと嫌いになった」
「ほらみろ!」
「いや、でも元の値からちょっと減っただけだから、まだ好きよ!安心して!」
「君の中で好感度が下がった事実が耐えられない!」
「仕方がないじゃない!そんな子供の時から理性煮崩れおこしてるとは思わないでしょ!」
私の反論に「俺にも思春期はあったんだ!」と人間としてあってもおかしくない時期を主張されては、もう「そうね」としか言いようがない。
アランも人間だったのね、忘れていたわ。
「隣で年々可愛さと愛しさが増す女性がいるんだぞ。劣情だって抱くさ。しかも、隣で寝てるんだぞ?手を出さなかっただけ、褒められるべきだと思わないか?」
「私は劣情を抱いたことがないから、同意を求められても……」
「俺は気が気じゃなかったんだ。そのうち、この無知な天使を汚してしまうんじゃないかと」
でたな、謎の天使比喩。と思いながら「酔った女には手を出したくせに」と非難したら「だって無知じゃなくなったろ」と言われ、思わず真顔になる。
そんな判断基準だったのか。
「他になにか言ってないことないわよね」
「……ないよ」
「あるのね」
そんな間をあけられて誤魔化せると思ったわけ?
言え、と視線で催促すれば「寝てる君にキスしました」と白状した。
「理性煮崩れー!手出してるじゃない!」
「だから、俺もまずいなって思って距離とったんだろ!それに、これは一応君には懺悔した!」
「いつよ!」
「君に会った最後の夏だ!」
最後の夏?
そういえば、唐突に教会に行かないと言い出して心配になり訳を聞いたら「俺は許されないことをしたんだ。もう、教会には行けない」とうから、「神様なんていないから、そんなに思い詰める必要ないわ」なんて励ました記憶があるが……。
「は?そういうことだったの?あなたに嫌われたと思って泣き伏した私に謝りなさいよ」
「その節は大変すまなかった」
謝罪されるも「謝罪で済むと思っているの?」という理不尽極まりないキレ芸をしてしまった。
いやしかし、私の流した涙の数を謝罪だけで許すわけにはいかないじゃない。
「距離を置くにしても、なにか一言、二言あってもいいでしょ?!突然手紙やら電話やらにシフトチェンジしたら、不安になるに決まっているじゃない!」
「言ったら幻滅されるのが関の山だろ!」
「そのお上手な口でいくらでも誤魔化しがきくでしょうが!」
「君に嘘を吐くのが苦手なんだよ!君ならわかるだろ!」
そう言われてしまうと、わかってしまう。
アランのキラキラした目を見つめていると、嘘が吐けなくなってしまうのだ。
なので気持ちはわかるのだが。
「やっぱり一言くらいほしかったわ。だって、嫌われたのは私が頼りないからだってずっと思っていて、会いに行くの怖かったんだから」
「会いに来ようとしてくれてたのかい?」
「えぇ。でも、また上手くかわされたらって思ったら、怖くて言えなかった」
「それで、来たときあんなに緊張してたのか」
「いつも通りに振る舞っていたつもりだったんだけどね」
ふぅ、と一息吐き、空になったカップに新しいハーブティーをそそぎ気持ちを落ち着かせる。
「でも、時効ね。年月はかかったけど、アランが私を嫌ってなかったってわかったし」
「ごめん。お詫びに、来年はトマティーナに一緒に行こう」
「来年……。そうね、来年は行きましょう」
上手く笑えない私に、アランが「どうしたんだい?」と心配してくれたが、無理矢理話題を変えるために「そういえば、天使ってなんなの?」と聞けば、緩い笑みを浮かべて「アーティアは俺が唯一信じる天使だよ」と歯の浮くようなことを言う。
「君、夜によくベッドを抜け出して中庭で泣いていただろ」
「……見てたの?」
「眠りが浅い方でね。すぐ、気がついたよ。月明かりの中、泣いている君は美しかった。俺はあの時、君は空に帰る手段を失った天使だと確信したよ。だから、俺だけの天使を幸せにしようって決めたんだ」
いやにロマンチックな幻覚を見ているアランに、「夏が終わって、おばあちゃんたちやアランと離れるのが嫌だったのよ。別に空に帰れなかったからじゃないわ」と現実を叩きつけたつもりだったのだが、幸せそうな緩い笑みで「そんなに俺と一緒にいたいと思ってくれてたんだね」と言われ、少し恥ずかしくなった。
「そりゃ……アランの側は落ち着くから……」
「俺も、アーティアの側にいると幸せだよ。さて、もう少し愛の語らいと行きたいところだが、仕事に戻らないとな」
引きずり戻された現実に、重く長々しいため息が漏れた。
戻りたくない。
それに伴い報告件数も多くなり、私の精神が折れそうになる。
「もういや……。ジャパニーズホラー大嫌い。この時期はトマティーナのことだけ考えてたい……」
私の泣き言に、アランが「もうそんな時期か」と顔をあげた。
「返送装置のプログラムの容量を増やしたから、暫く休憩ついでにお喋りするかい?」
「そうね……。夜はただでさえ気が滅入るもの……」
ソファーに行きたいが、いまソファーに座ったら確実に熟睡するので、椅子だけをアランの方に向け「トマティーナ、随分長いこと行ってないのよね」と言えば、驚いたように「そうなのか?あんなに好きだったじゃないか」と言われた。
「好きだったけど、アランがいないとつまらないもの」
アランは寄宿制のミドルスクールに行ってから、ぱったりと夏におじいちゃんの家に来なくなった。
家にも帰省していなかったらしく会いに行ってもいないし、さりげなく「会いたいわ」と手紙で書いてもかわされていた。
「あの時はショックだったわ。なにかしたんじゃないかって、不安にもなったし」
「あれは……君にはなにも責任はなかったよ。俺の方に問題があったんだ」
「問題って?」
私の質問にアランは視線をさ迷わせながら、「いや……これは……ちょっと……」と言葉を濁すので、「なによ、そんな言いにくいことなの?」と聞けば「……たぶん、嫌われるから」と伊達男らしからぬ気弱な発言に笑いだしそうになったが、ツェッドさんを起こしてしまっては悪いので我慢した。
「いまさらだし、昔の話でしょ?時効よ、時効」
「本当に聞いても嫌いにならないか?」
「子供の頃の話で嫌いになってたら、ずっと前から嫌いよ」
伊達男のちょっと言いにくい話とか聞いてみたいに決まってるでしょ。
ほら、早く早く。と急かせば「君に手を出しそうだったから」と小さい声で言ったが、いまこの場で音が出ているのはコンピューターの駆動音だけなので私の耳にしっかり届いた。
「……ちょっと嫌いになった」
「ほらみろ!」
「いや、でも元の値からちょっと減っただけだから、まだ好きよ!安心して!」
「君の中で好感度が下がった事実が耐えられない!」
「仕方がないじゃない!そんな子供の時から理性煮崩れおこしてるとは思わないでしょ!」
私の反論に「俺にも思春期はあったんだ!」と人間としてあってもおかしくない時期を主張されては、もう「そうね」としか言いようがない。
アランも人間だったのね、忘れていたわ。
「隣で年々可愛さと愛しさが増す女性がいるんだぞ。劣情だって抱くさ。しかも、隣で寝てるんだぞ?手を出さなかっただけ、褒められるべきだと思わないか?」
「私は劣情を抱いたことがないから、同意を求められても……」
「俺は気が気じゃなかったんだ。そのうち、この無知な天使を汚してしまうんじゃないかと」
でたな、謎の天使比喩。と思いながら「酔った女には手を出したくせに」と非難したら「だって無知じゃなくなったろ」と言われ、思わず真顔になる。
そんな判断基準だったのか。
「他になにか言ってないことないわよね」
「……ないよ」
「あるのね」
そんな間をあけられて誤魔化せると思ったわけ?
言え、と視線で催促すれば「寝てる君にキスしました」と白状した。
「理性煮崩れー!手出してるじゃない!」
「だから、俺もまずいなって思って距離とったんだろ!それに、これは一応君には懺悔した!」
「いつよ!」
「君に会った最後の夏だ!」
最後の夏?
そういえば、唐突に教会に行かないと言い出して心配になり訳を聞いたら「俺は許されないことをしたんだ。もう、教会には行けない」とうから、「神様なんていないから、そんなに思い詰める必要ないわ」なんて励ました記憶があるが……。
「は?そういうことだったの?あなたに嫌われたと思って泣き伏した私に謝りなさいよ」
「その節は大変すまなかった」
謝罪されるも「謝罪で済むと思っているの?」という理不尽極まりないキレ芸をしてしまった。
いやしかし、私の流した涙の数を謝罪だけで許すわけにはいかないじゃない。
「距離を置くにしても、なにか一言、二言あってもいいでしょ?!突然手紙やら電話やらにシフトチェンジしたら、不安になるに決まっているじゃない!」
「言ったら幻滅されるのが関の山だろ!」
「そのお上手な口でいくらでも誤魔化しがきくでしょうが!」
「君に嘘を吐くのが苦手なんだよ!君ならわかるだろ!」
そう言われてしまうと、わかってしまう。
アランのキラキラした目を見つめていると、嘘が吐けなくなってしまうのだ。
なので気持ちはわかるのだが。
「やっぱり一言くらいほしかったわ。だって、嫌われたのは私が頼りないからだってずっと思っていて、会いに行くの怖かったんだから」
「会いに来ようとしてくれてたのかい?」
「えぇ。でも、また上手くかわされたらって思ったら、怖くて言えなかった」
「それで、来たときあんなに緊張してたのか」
「いつも通りに振る舞っていたつもりだったんだけどね」
ふぅ、と一息吐き、空になったカップに新しいハーブティーをそそぎ気持ちを落ち着かせる。
「でも、時効ね。年月はかかったけど、アランが私を嫌ってなかったってわかったし」
「ごめん。お詫びに、来年はトマティーナに一緒に行こう」
「来年……。そうね、来年は行きましょう」
上手く笑えない私に、アランが「どうしたんだい?」と心配してくれたが、無理矢理話題を変えるために「そういえば、天使ってなんなの?」と聞けば、緩い笑みを浮かべて「アーティアは俺が唯一信じる天使だよ」と歯の浮くようなことを言う。
「君、夜によくベッドを抜け出して中庭で泣いていただろ」
「……見てたの?」
「眠りが浅い方でね。すぐ、気がついたよ。月明かりの中、泣いている君は美しかった。俺はあの時、君は空に帰る手段を失った天使だと確信したよ。だから、俺だけの天使を幸せにしようって決めたんだ」
いやにロマンチックな幻覚を見ているアランに、「夏が終わって、おばあちゃんたちやアランと離れるのが嫌だったのよ。別に空に帰れなかったからじゃないわ」と現実を叩きつけたつもりだったのだが、幸せそうな緩い笑みで「そんなに俺と一緒にいたいと思ってくれてたんだね」と言われ、少し恥ずかしくなった。
「そりゃ……アランの側は落ち着くから……」
「俺も、アーティアの側にいると幸せだよ。さて、もう少し愛の語らいと行きたいところだが、仕事に戻らないとな」
引きずり戻された現実に、重く長々しいため息が漏れた。
戻りたくない。