criminal
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今日は待ちに待った歓迎会の日。
朝からアランに口酸っぱく「アルコール類は口にするな」と言われ、各員に「アーティアに酒を飲ませるな」と通達がいった。
まるで父親だな、と思ったので冗談で「大丈夫よ、パパ。そこまで弱くないわ」と言ったら、爽やかな笑顔で「なら、またべろべろに酔わせて足腰立たなくさせてあげようか?」と脅されたので、素直に謝った。
「それじゃあ、長ったらしい挨拶はなしで。俺の愛しい従妹、アーティア・レストシャーナに乾杯!」
アランの掛け声に「かんぱーい!」という声が店に響いた。
店にはたくさんの人がいて、少しドキドキする。
いつもはアランが睨みをきかせていて、中々会話することがままならない人たちとも、これを機に話せそうだと意気込んで話しかけようとしたのに、背後に人が立った気配がし、振り返ればいつものアデリーペンギンが。
「なによ」
「別に。ただ、大人初心者の君がはめを外さない様に見守っているだけだよ」
「子供扱いしないでほしいわね。それくらい、自分で管理できるわよ」
「そういうセリフは、俺に簡単に酔い潰されて美味しく食べられた子に言われたくないな」
あの日の自分の失態を思い出して顔を手で押さえる私に、「返事は」と詰め寄ってくる。
ぐぬぬ、となっている私に助け船をだしてくれたのは、ライブラの姐さんK・Kさんだった。
「なら、その警護役アタシが買うわよ」
「K・Kさーん!」
「四六時中監視されてたら息がつまるわよね、アーティア?」
「本当ですよ」
アランの側を離れK・Kさんの側に行けば、露骨に不満そうな真顔になった。
怖くなんかないわよー、だ。
「アナタみたいな腹黒陰険束縛男が張り付いてたら、お喋りも楽しめないわよ。ささ、行くわよアーティアー!」
「はーい!K・Kさーん!」
K・Kさんと肩を組み歩き出したら、後ろから「アーティア!」と呼び止められたので、「主役命令よ。楽しんで、アラン」とだけ返した。
紹介された構成員の人たちと一頻り話に花を咲かせたあと、食事を取りつつ休憩をしていたら「見てるわねぇ、アイツ」とK・Kさんが言うから視線の先を追えば、やはりと言うかアランが厳しい視線を送ってきていた。
「余裕がないわよね」
「恋愛百戦錬磨みたいな顔してるのに、なんでですかね」
「そりゃ、逃がしたくないからじゃないの?あとアイツ、恋愛事態はしたことないんじゃないかしら」
そんなまさか、と目玉を落とす勢いで見開くと「だって、アイツずっとアナタしか見てないもの」と言われ固まった。
いや、うん、まあ、そうあれば嬉しいとは思っていたけども、そんな一途な男だったのか。
「牙狩りの時から、なにかとアナタの話ばっかりだったわ」
「へぇ……」
「他に目がいかなかったから、恋愛なんてしてこなかったんじゃないかしら。だから、アナタが側から離れるのが不安なんでしょうね。アナタ以外愛した経験がないから、引き止める手段がわからない」
K・Kさんの話に「そんな、まさか」と思うものの、チェインさんの気持ちに気が付かない姿を見ると納得してしまう。
「あれ、ただの鈍感だと思ってました」
こちらを睨むアランの背中を見つめるチェインさんを見れば、K・Kさんが「なんで気が付かないのかわからないわよね」と言い、やれやれと二人でため息を吐く。
「アナタといい、チェインといい、アイツのなにがいいんだか」
「チェインさんの頃合いだと、ああいうコーラみたいな男にはまるんでしょうね」
「コーラ?」
「甘くて刺激的で癖になるけど体に悪い男」
「なるほどね。けど、そのコーラ男にアナタもはまっているんでしょ?」
「私は、アランがまだホットミルクに砂糖入れたような頃の初恋を引きずってるところがありますからね」
「あぁ、あの時代ね」
この間の、アラン子供化事件を思い出したのか「可愛かったわよね、アイツもアナタも」とケラケラ笑うK・Kさん。
私はちょっと笑えない事件だったけれど。
「その口振りだと、いまのアイツはそうでもないってことなの?」
「さて、どうでしょうか」
「思わせ振りじゃない。教えなさいよー」
「いやぁ、私もよくわからなくなっていて。愛せているのかどうかが」
幸せになってほしいとは願う気持ちはあるけれど、その幸せの中に自分がいないのだ。
それを愛と呼んでもよいか、私には判断つかない。
独り善がりな善意ではないのか。
そんな漠然とした悩みをK・Kさんに打ち明けると、「アナタたち、同じ考え方するわねぇ」と呆れたような声で言われた。
「アイツも、結局は願う幸せのなかに自分がいないのよね」
「ですね」
「よくないわよ。あの腹黒男の為にずっと頑張ってきたんでしょ?愛がなかったらできないことよ。ちゃんと自分も幸せのなかにいなさい」
よしよしと頭を撫でられながら、「ですね」と答えるも、心にもない言葉だとバレたのかおでこを突っつかれた。
「そういう悪いとこまで似ちゃって、もう……」
「へへっ……。あれ?なんだか入口の方、騒がしくないですか?」
笑って誤魔化していたら、にわかに入口の方がざわざわしているのに気がついた。
K・Kさんとなんだろうと話していると、バタバタとレオナルドさんが駆け寄ってきて、「スティーブンさんとロウ警部補がキャットファイトしてます!」と言われ、「おっと、まずいわね」とアランにだけ伝え忘れていたのを思い出した。
なぜ伝え忘れていたかというと、ダニーを呼んだと言ったら確実にうるさいから。
面倒くさいが、原因の私が行かないわけにはいかないか。
レオナルドさんに引っ張られるまま入口まで行けば、アランとダニーが言い争いをしていて、その間でクラウスさんがおろおろしていた。
「どこで嗅ぎ付けてきたか知らないが、お呼びじゃないんだ!」
「こっちは主役直々に呼ばれてんだよ」
「やめないか、二人とも!」
ダニーに気を取られて私に気が付かないアランの膝裏を、「クラウスさんの言う通りよ」と言いながら軽く蹴れば、ガクン、と倒れそうになるのを支えてから「ハァイ!ダニー!本当に来てくれると思わなかったわ!」と、随分前に決めた私たちのハンドシェイクをしてからハグをした。
「アーティア、どういうことなんだ!」
「どうもなにも、ダニーを友人として招待しただけよ。クラウスさんにも相談して了承も得たわ」
「クラーウス!」
「すまない。友人ならば、誘うべきだと思ったのだ」
「そう!そこだよ!友人って、一体いつからそんなに仲良くなったんだ、君たち!」
「外ぶらぶらしてる時に見つけたら声かけたり、食事に行ったら仲良くなったわ」
私の言葉に「やっぱり一人で出歩かせるんじゃなかった!」と不穏なセリフをアランは吐いた。
そんなアランを無視し、「ごめんなさいね、ダニー」と謝れば「本当だよ」と不機嫌な顔をしていた。
「けど、来てくれて嬉しいわ」
「なかなか仕事が区切りつかなくてな。ん、なにわたしゃいいかわかんなかったから、花束なんて月並みだけど、文句言うなよ」
いつもの粗雑さが嘘のような紳士的な動きで花束を渡され、つい笑みがこぼれた。
「ありがとう、ダニー。嬉しいわ」
「んじゃま、俺は仕事に戻るぜ」
「パーティーには参加してくれないの?」
「参加したいのは山々だが、仕事が立て込んでいてな。それにさっさと退散しないと、お前さんの後ろにいるジャガーに氷漬けにされちまうからな」
名残惜しいが、確かに背後から感じる殺気を考慮したらそれが得策だろう。
「またね、ダニー」
「おう」
そう挨拶をし、パーティー中はアランの機嫌を取ろうとしたが、無言でひたすらお酒を煽っているので、諦めてK・Kさんたちとお喋りすることにした。
帰りの道中もずっとむくれ面で黙り。
そんな子供みたいな拗ね方しなくてもいいのに。
帰宅しても一言も口をきかないので、しびれを切らして「言い忘れてたのは悪かったと思っているわ、ごめんなさい」と謝るも無視。
「そんなにダニーを呼んだことが不満なの?私だって、せっかくできた友人くらい呼びたかったのよ」
「俺に相談もなくかい」
「相談しても『いいよ』なんて言う気なかったでしょ」
「それがわかっていて呼んだのは、俺への嫌がらせかなにかか?」
ゆらり、と目の前に立つアランに寒気を覚えたが、それでも「友人を呼びたいと思うのは当たり前じゃない」と言った瞬間、視界が一変した。
気がついた時には、アランに組敷かれていた。
「……なに」
「君はわかっていないんだ、俺の不安が……」
「不安?」
「君は空に帰れなくていつも泣いていた。だから、俺が守らないとって、笑顔にしてやらないとって思っていた。俺だけの天使だったのに。それがどんどん羽を取り戻して、空に帰ろうとするんだ。俺の手が届かない場所に行ってしまって、俺じゃないやつの手を取って……不安なんだ、アーティア……。どこにも行かないでくれ……」
なんの話だ、と困惑する私の胸元でぐずりだした恐らく酔っているアランを落ち着かせるように、頭を抱き背中をさすりつつ返事を考える。
「ねぇ、アラン。私は天使じゃないわ。けど、そうね。もし、本当に私が天使なら、あなたは私の神様ね。自由をくれて、世界を教えてくれて、生きる理由をくれて、愛を与えてくれる。天使は神様のものでしょ?なら、私もあなたのものよ」
「君、神様なんて信じてないじゃないか」
「アランという神様は信じるわ」
私の言葉に、ゆっくりと起き上がると「俺は神なんて柄じゃないけど、君という天使のためなら神にでもなるよ」と言って口付けをした。
「取り乱してすまなかった」
「私も言うのを忘れていて、ごめんなさい」
「それはもう聞いたから、いいよ」
「聞こえてたのね」
「まあね」
「アラン、仲直りはどうするんだっけ?」
私の問いかけに、アランは「愛してるよ、アーティア」と言って抱き締めてくれたから、「私も愛してるわ、アラン」と抱き締め返す。
「今日は一緒に寝てくれるかな。なにもしないと約束するから」
「寂しがらせちゃったからね、それくらいするわ」
シャワーを浴びて、アランのベッドに体を横たわらせると、「こうして一緒に寝ると、子供の頃を思い出すね」と懐かしい話をしだした。
「夏はいつもお祖母ちゃんたちの家に泊まってたわよね」
「ベッドがひとつしかないから、一緒に寝ようって誘ったんだよな」
「アラン、私が嫌がっているの気がついてて言ったでしょ」
「俺なりに君と仲良くなろうとしたんだよ」
懐かしい思出話に、二人揃ってクスクス笑いあう時間が心地いい。
「アーティア。この先も俺の側で笑って愛してくれよ」
アランの、願いのような言葉に「えぇ、勿論よ」とすぐに答えられなかった。
きっと、これも違和感を覚えてくれたわよね。
そういえば、天使ってなんだったのかしら。
朝からアランに口酸っぱく「アルコール類は口にするな」と言われ、各員に「アーティアに酒を飲ませるな」と通達がいった。
まるで父親だな、と思ったので冗談で「大丈夫よ、パパ。そこまで弱くないわ」と言ったら、爽やかな笑顔で「なら、またべろべろに酔わせて足腰立たなくさせてあげようか?」と脅されたので、素直に謝った。
「それじゃあ、長ったらしい挨拶はなしで。俺の愛しい従妹、アーティア・レストシャーナに乾杯!」
アランの掛け声に「かんぱーい!」という声が店に響いた。
店にはたくさんの人がいて、少しドキドキする。
いつもはアランが睨みをきかせていて、中々会話することがままならない人たちとも、これを機に話せそうだと意気込んで話しかけようとしたのに、背後に人が立った気配がし、振り返ればいつものアデリーペンギンが。
「なによ」
「別に。ただ、大人初心者の君がはめを外さない様に見守っているだけだよ」
「子供扱いしないでほしいわね。それくらい、自分で管理できるわよ」
「そういうセリフは、俺に簡単に酔い潰されて美味しく食べられた子に言われたくないな」
あの日の自分の失態を思い出して顔を手で押さえる私に、「返事は」と詰め寄ってくる。
ぐぬぬ、となっている私に助け船をだしてくれたのは、ライブラの姐さんK・Kさんだった。
「なら、その警護役アタシが買うわよ」
「K・Kさーん!」
「四六時中監視されてたら息がつまるわよね、アーティア?」
「本当ですよ」
アランの側を離れK・Kさんの側に行けば、露骨に不満そうな真顔になった。
怖くなんかないわよー、だ。
「アナタみたいな腹黒陰険束縛男が張り付いてたら、お喋りも楽しめないわよ。ささ、行くわよアーティアー!」
「はーい!K・Kさーん!」
K・Kさんと肩を組み歩き出したら、後ろから「アーティア!」と呼び止められたので、「主役命令よ。楽しんで、アラン」とだけ返した。
紹介された構成員の人たちと一頻り話に花を咲かせたあと、食事を取りつつ休憩をしていたら「見てるわねぇ、アイツ」とK・Kさんが言うから視線の先を追えば、やはりと言うかアランが厳しい視線を送ってきていた。
「余裕がないわよね」
「恋愛百戦錬磨みたいな顔してるのに、なんでですかね」
「そりゃ、逃がしたくないからじゃないの?あとアイツ、恋愛事態はしたことないんじゃないかしら」
そんなまさか、と目玉を落とす勢いで見開くと「だって、アイツずっとアナタしか見てないもの」と言われ固まった。
いや、うん、まあ、そうあれば嬉しいとは思っていたけども、そんな一途な男だったのか。
「牙狩りの時から、なにかとアナタの話ばっかりだったわ」
「へぇ……」
「他に目がいかなかったから、恋愛なんてしてこなかったんじゃないかしら。だから、アナタが側から離れるのが不安なんでしょうね。アナタ以外愛した経験がないから、引き止める手段がわからない」
K・Kさんの話に「そんな、まさか」と思うものの、チェインさんの気持ちに気が付かない姿を見ると納得してしまう。
「あれ、ただの鈍感だと思ってました」
こちらを睨むアランの背中を見つめるチェインさんを見れば、K・Kさんが「なんで気が付かないのかわからないわよね」と言い、やれやれと二人でため息を吐く。
「アナタといい、チェインといい、アイツのなにがいいんだか」
「チェインさんの頃合いだと、ああいうコーラみたいな男にはまるんでしょうね」
「コーラ?」
「甘くて刺激的で癖になるけど体に悪い男」
「なるほどね。けど、そのコーラ男にアナタもはまっているんでしょ?」
「私は、アランがまだホットミルクに砂糖入れたような頃の初恋を引きずってるところがありますからね」
「あぁ、あの時代ね」
この間の、アラン子供化事件を思い出したのか「可愛かったわよね、アイツもアナタも」とケラケラ笑うK・Kさん。
私はちょっと笑えない事件だったけれど。
「その口振りだと、いまのアイツはそうでもないってことなの?」
「さて、どうでしょうか」
「思わせ振りじゃない。教えなさいよー」
「いやぁ、私もよくわからなくなっていて。愛せているのかどうかが」
幸せになってほしいとは願う気持ちはあるけれど、その幸せの中に自分がいないのだ。
それを愛と呼んでもよいか、私には判断つかない。
独り善がりな善意ではないのか。
そんな漠然とした悩みをK・Kさんに打ち明けると、「アナタたち、同じ考え方するわねぇ」と呆れたような声で言われた。
「アイツも、結局は願う幸せのなかに自分がいないのよね」
「ですね」
「よくないわよ。あの腹黒男の為にずっと頑張ってきたんでしょ?愛がなかったらできないことよ。ちゃんと自分も幸せのなかにいなさい」
よしよしと頭を撫でられながら、「ですね」と答えるも、心にもない言葉だとバレたのかおでこを突っつかれた。
「そういう悪いとこまで似ちゃって、もう……」
「へへっ……。あれ?なんだか入口の方、騒がしくないですか?」
笑って誤魔化していたら、にわかに入口の方がざわざわしているのに気がついた。
K・Kさんとなんだろうと話していると、バタバタとレオナルドさんが駆け寄ってきて、「スティーブンさんとロウ警部補がキャットファイトしてます!」と言われ、「おっと、まずいわね」とアランにだけ伝え忘れていたのを思い出した。
なぜ伝え忘れていたかというと、ダニーを呼んだと言ったら確実にうるさいから。
面倒くさいが、原因の私が行かないわけにはいかないか。
レオナルドさんに引っ張られるまま入口まで行けば、アランとダニーが言い争いをしていて、その間でクラウスさんがおろおろしていた。
「どこで嗅ぎ付けてきたか知らないが、お呼びじゃないんだ!」
「こっちは主役直々に呼ばれてんだよ」
「やめないか、二人とも!」
ダニーに気を取られて私に気が付かないアランの膝裏を、「クラウスさんの言う通りよ」と言いながら軽く蹴れば、ガクン、と倒れそうになるのを支えてから「ハァイ!ダニー!本当に来てくれると思わなかったわ!」と、随分前に決めた私たちのハンドシェイクをしてからハグをした。
「アーティア、どういうことなんだ!」
「どうもなにも、ダニーを友人として招待しただけよ。クラウスさんにも相談して了承も得たわ」
「クラーウス!」
「すまない。友人ならば、誘うべきだと思ったのだ」
「そう!そこだよ!友人って、一体いつからそんなに仲良くなったんだ、君たち!」
「外ぶらぶらしてる時に見つけたら声かけたり、食事に行ったら仲良くなったわ」
私の言葉に「やっぱり一人で出歩かせるんじゃなかった!」と不穏なセリフをアランは吐いた。
そんなアランを無視し、「ごめんなさいね、ダニー」と謝れば「本当だよ」と不機嫌な顔をしていた。
「けど、来てくれて嬉しいわ」
「なかなか仕事が区切りつかなくてな。ん、なにわたしゃいいかわかんなかったから、花束なんて月並みだけど、文句言うなよ」
いつもの粗雑さが嘘のような紳士的な動きで花束を渡され、つい笑みがこぼれた。
「ありがとう、ダニー。嬉しいわ」
「んじゃま、俺は仕事に戻るぜ」
「パーティーには参加してくれないの?」
「参加したいのは山々だが、仕事が立て込んでいてな。それにさっさと退散しないと、お前さんの後ろにいるジャガーに氷漬けにされちまうからな」
名残惜しいが、確かに背後から感じる殺気を考慮したらそれが得策だろう。
「またね、ダニー」
「おう」
そう挨拶をし、パーティー中はアランの機嫌を取ろうとしたが、無言でひたすらお酒を煽っているので、諦めてK・Kさんたちとお喋りすることにした。
帰りの道中もずっとむくれ面で黙り。
そんな子供みたいな拗ね方しなくてもいいのに。
帰宅しても一言も口をきかないので、しびれを切らして「言い忘れてたのは悪かったと思っているわ、ごめんなさい」と謝るも無視。
「そんなにダニーを呼んだことが不満なの?私だって、せっかくできた友人くらい呼びたかったのよ」
「俺に相談もなくかい」
「相談しても『いいよ』なんて言う気なかったでしょ」
「それがわかっていて呼んだのは、俺への嫌がらせかなにかか?」
ゆらり、と目の前に立つアランに寒気を覚えたが、それでも「友人を呼びたいと思うのは当たり前じゃない」と言った瞬間、視界が一変した。
気がついた時には、アランに組敷かれていた。
「……なに」
「君はわかっていないんだ、俺の不安が……」
「不安?」
「君は空に帰れなくていつも泣いていた。だから、俺が守らないとって、笑顔にしてやらないとって思っていた。俺だけの天使だったのに。それがどんどん羽を取り戻して、空に帰ろうとするんだ。俺の手が届かない場所に行ってしまって、俺じゃないやつの手を取って……不安なんだ、アーティア……。どこにも行かないでくれ……」
なんの話だ、と困惑する私の胸元でぐずりだした恐らく酔っているアランを落ち着かせるように、頭を抱き背中をさすりつつ返事を考える。
「ねぇ、アラン。私は天使じゃないわ。けど、そうね。もし、本当に私が天使なら、あなたは私の神様ね。自由をくれて、世界を教えてくれて、生きる理由をくれて、愛を与えてくれる。天使は神様のものでしょ?なら、私もあなたのものよ」
「君、神様なんて信じてないじゃないか」
「アランという神様は信じるわ」
私の言葉に、ゆっくりと起き上がると「俺は神なんて柄じゃないけど、君という天使のためなら神にでもなるよ」と言って口付けをした。
「取り乱してすまなかった」
「私も言うのを忘れていて、ごめんなさい」
「それはもう聞いたから、いいよ」
「聞こえてたのね」
「まあね」
「アラン、仲直りはどうするんだっけ?」
私の問いかけに、アランは「愛してるよ、アーティア」と言って抱き締めてくれたから、「私も愛してるわ、アラン」と抱き締め返す。
「今日は一緒に寝てくれるかな。なにもしないと約束するから」
「寂しがらせちゃったからね、それくらいするわ」
シャワーを浴びて、アランのベッドに体を横たわらせると、「こうして一緒に寝ると、子供の頃を思い出すね」と懐かしい話をしだした。
「夏はいつもお祖母ちゃんたちの家に泊まってたわよね」
「ベッドがひとつしかないから、一緒に寝ようって誘ったんだよな」
「アラン、私が嫌がっているの気がついてて言ったでしょ」
「俺なりに君と仲良くなろうとしたんだよ」
懐かしい思出話に、二人揃ってクスクス笑いあう時間が心地いい。
「アーティア。この先も俺の側で笑って愛してくれよ」
アランの、願いのような言葉に「えぇ、勿論よ」とすぐに答えられなかった。
きっと、これも違和感を覚えてくれたわよね。
そういえば、天使ってなんだったのかしら。