criminal
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ケータイのアラームが鳴り響き、身動ぎをしながら手を伸ばすが体は動かず手も届かない。
眠い目を開けると、胸元にはすっかり元の大きさに戻ったアランが、私を抱えて気持ちよさそうに眠っていた。
その姿に安堵し、形のいい頭を抱きしめ「お帰りなさい、アラン」と起こさないように言ったつもりだったのだが、「ただいま、アーティア」と穏やかな声が返ってきた。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いや、起きてただけさ」
甘えるように胸元にすり寄ってくるので、「どうしたの?」と聞けば「これで一緒に寝られるのは終わりだと思うと名残惜しい」とバカなことを言う。
「朝ご飯作るから離れてちょうだい」
「いいじゃないか、もう少し」
そう言い抱きしめる力を強くするアランに、安心感を覚えてしまった。
そうそう、こういう人の話を聞かない感じ。
「子供の俺に振り回されて、なにか心境の変化でもあったのかな」とからかわれても、「いまの私にはあなたくらい黒い方が安心するだけよ」とくせっ毛をなで回す余裕すらある。
「あの黒さ五パーセントくらいしかないアランは、いまの私には精神的にきついわ」
「あんなに照れた君を見られて、俺は楽しかったけどね」
「……覚えてるの?」
「まあね。キスなんて俺には許さなかったのに、簡単にファーストキスを奪われたのは子供の俺に油断していたからかな?」
調子が戻ってきたのか、清純成分がなくなりだしどんどんいつものアランに戻りつつある。
どうなんだい?と、ねっとりとした熱さを含んだ声で聞かれ、まずい、と判断しても完全に動きを封じられどうしようもない。
「油断は……していたわ。まさか、子供のあなたがあんな行動をとるとは思っていなかったから」
「君は本当に俺を美化するね。俺はいつだってしたかったよ。いまだってしたいさ。だから、アーティア。セカンドキスくらいは、俺がもらってもいいよな?」
するりと唇の上をアランの指が這う感覚に背筋がざわついた。
このまま乗せられてはいけない、と気を強く持ち指を掴んで「いまはダメ」と拒否すれば、不機嫌な顔で「まだお預けなのか」と言う。
「一体いつまで待てばいいんだい」
「師匠があと二、三日で来るから待って」
予想していた返答でなかったからか、アランは一瞬言葉見失った。
「師匠って、幼草の魔女か?」
「そうよ」
「なんの為に?」
「解呪の為に」
私の簡潔な返答に、「その気になったのか?」と一番催促していた人間が驚いている。
「子供のあなたと話して、思うことがあったのよ。アランは最初にHLで会った時から、たぶんいまも変わらずライブラの仕事はしないでほしいと思っているんじゃないかしら」
「そりゃね。君には安全な場所にいてほしいさ」
「そうよね。それでも、最初みたいに帰れなんて言わないのは、本当に私の力を認めてくれてライブラの一員として見てくれているから。それなら、私もちゃんと力にならないと、て思ったの。いまのままじゃ、指咥えて見ているのと同じだものね」
なにを意地になっていたのかしら、とため息を吐きながら自分に呆れたら、「天邪鬼なのは変わらないな」と懐かしむように含み笑いをするアランに、こちらは「なによ」と不服を含んだ声で返す。
私が珍しく素直になっているのだから、アランも素直に受け取ってほしいものだわ。
「だって、君。昔から『これは無理だよ』て俺が言うと、絶対に『できるわ!』て言って次の日に『ほら見て、できたわ!』てチワワみたいに尻尾振って知らせに来てたじゃないか。そのくせ、『できるよ』て言葉はろくに信じなくってさ」
思い出し笑いするアランと、あまり思い出したくない私。
「まさか、その天邪鬼がいまだに健在だとは思わなかったなぁ」
「私だって思わなかったわよ。もうこの話はいいでしょ。ほら起きて、起きて!朝ご飯作って行かないと、遅刻するわよ!アランがいなかった間の仕事が待ってるのよ!」
「仕事なら、君とクラウスで代わってくれたじゃないか。忘れたとは言わせないぞ」
一向に動こうとせず、だらっ、と私に抱きつくアランの頭をべしべし叩けば、「痛い、痛い」とたいして痛がっていない声をあげてやっと離れた。
まったくもう。
「着替えるから早く出ていってちょうだい」
「ここにいたらダメかい?」
「出ていかないなら、私が出ていくからご自由に」
どうぞ、どうぞ、と言って服を持ちそそくさとバスルームに移動して着替えた。
あまり悠長にアランの相手をしていると、本当に遅刻してしまう。
私が着替え終わっても、まだ出てくる様子のないアランに「おーきーてー!」と声をかければ、のっそりとあくびをしながら出てきた。
「どうも、君におはようと言ってもらえないとすっきりしないね」
「そういえば言ってなかったわね。おはよう、アラン」
「おはよう、アーティア」
ふやけた笑みを浮かべるアランを不審に思いながら、朝食の準備を始めつつ「なに?」と聞けば、「いや、俺も思うことがあっただけだ」と言いながらニヤニヤするアランに、聞くべきかどうか悩んでしまう。
聞いたらまた、砂を吐きたくなるセリフが飛んできそうで怖い気持ちがある。
「……よし、大丈夫。気持ちの用意はできたわ。来なさい」
「なんだ、気持ちの用意って」
「色々あるのよ。ほら、話すならいまのうちよ」
「そうだなぁ、君がどんな気持ちで俺の側にいるのかって知って愛しい気持ちに歯止めがきかないんだ」
「歯止めてほしいわね」
ハートが視認できたら、大量のハートマークが突き刺さりそうな甘い視線と声に砂を吐きそうだ。
「……アーティア。俺は君の安全と平和よりも世界平和を優先させた。こんな俺を責めるかな」
「責めるわけないじゃない。あなたの一番近くにいられる場所で力になりたいのは、私の願い。それに、選ぶべき物を選べるあなが私は好きよ」
朝食の準備を中断し、アランに腰を屈めて、と指でジェスチャーをして近くなった頭を抱きしめ「愛してるわ、アラン」と囁けば、「俺はいつまで君の人生を俺に縛りつけておけるかな」とか細い声で問われた。
私の人生は、スティーブン・アラン・スターフェイズという人間に出会った日から彼に縛られていると言っても過言ではないだろう。
最初は鼻の穴を明かしてやりたかった。
そこから段々と、認められたい、力になりたい、支えになりたい。
その一心で勉強も運動も頑張ったし、血瘴術も学んだ。
そうなったのも、真摯なアランの愛情が居心地よくて、それに応えたかったから。
だからいまさら、スティーブン・アラン・スターフェイズなしで生きていけと言われたら、私は人生に迷うだろう。
「きっと私が死ぬまでよ」
人はこの感情を愛ではなく依存と呼ぶのかも知れないが、いいのだ。
私の人生はアランがくれた物だから、それが堪らなく愛しいから。
それが幸せだから。
眠い目を開けると、胸元にはすっかり元の大きさに戻ったアランが、私を抱えて気持ちよさそうに眠っていた。
その姿に安堵し、形のいい頭を抱きしめ「お帰りなさい、アラン」と起こさないように言ったつもりだったのだが、「ただいま、アーティア」と穏やかな声が返ってきた。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いや、起きてただけさ」
甘えるように胸元にすり寄ってくるので、「どうしたの?」と聞けば「これで一緒に寝られるのは終わりだと思うと名残惜しい」とバカなことを言う。
「朝ご飯作るから離れてちょうだい」
「いいじゃないか、もう少し」
そう言い抱きしめる力を強くするアランに、安心感を覚えてしまった。
そうそう、こういう人の話を聞かない感じ。
「子供の俺に振り回されて、なにか心境の変化でもあったのかな」とからかわれても、「いまの私にはあなたくらい黒い方が安心するだけよ」とくせっ毛をなで回す余裕すらある。
「あの黒さ五パーセントくらいしかないアランは、いまの私には精神的にきついわ」
「あんなに照れた君を見られて、俺は楽しかったけどね」
「……覚えてるの?」
「まあね。キスなんて俺には許さなかったのに、簡単にファーストキスを奪われたのは子供の俺に油断していたからかな?」
調子が戻ってきたのか、清純成分がなくなりだしどんどんいつものアランに戻りつつある。
どうなんだい?と、ねっとりとした熱さを含んだ声で聞かれ、まずい、と判断しても完全に動きを封じられどうしようもない。
「油断は……していたわ。まさか、子供のあなたがあんな行動をとるとは思っていなかったから」
「君は本当に俺を美化するね。俺はいつだってしたかったよ。いまだってしたいさ。だから、アーティア。セカンドキスくらいは、俺がもらってもいいよな?」
するりと唇の上をアランの指が這う感覚に背筋がざわついた。
このまま乗せられてはいけない、と気を強く持ち指を掴んで「いまはダメ」と拒否すれば、不機嫌な顔で「まだお預けなのか」と言う。
「一体いつまで待てばいいんだい」
「師匠があと二、三日で来るから待って」
予想していた返答でなかったからか、アランは一瞬言葉見失った。
「師匠って、幼草の魔女か?」
「そうよ」
「なんの為に?」
「解呪の為に」
私の簡潔な返答に、「その気になったのか?」と一番催促していた人間が驚いている。
「子供のあなたと話して、思うことがあったのよ。アランは最初にHLで会った時から、たぶんいまも変わらずライブラの仕事はしないでほしいと思っているんじゃないかしら」
「そりゃね。君には安全な場所にいてほしいさ」
「そうよね。それでも、最初みたいに帰れなんて言わないのは、本当に私の力を認めてくれてライブラの一員として見てくれているから。それなら、私もちゃんと力にならないと、て思ったの。いまのままじゃ、指咥えて見ているのと同じだものね」
なにを意地になっていたのかしら、とため息を吐きながら自分に呆れたら、「天邪鬼なのは変わらないな」と懐かしむように含み笑いをするアランに、こちらは「なによ」と不服を含んだ声で返す。
私が珍しく素直になっているのだから、アランも素直に受け取ってほしいものだわ。
「だって、君。昔から『これは無理だよ』て俺が言うと、絶対に『できるわ!』て言って次の日に『ほら見て、できたわ!』てチワワみたいに尻尾振って知らせに来てたじゃないか。そのくせ、『できるよ』て言葉はろくに信じなくってさ」
思い出し笑いするアランと、あまり思い出したくない私。
「まさか、その天邪鬼がいまだに健在だとは思わなかったなぁ」
「私だって思わなかったわよ。もうこの話はいいでしょ。ほら起きて、起きて!朝ご飯作って行かないと、遅刻するわよ!アランがいなかった間の仕事が待ってるのよ!」
「仕事なら、君とクラウスで代わってくれたじゃないか。忘れたとは言わせないぞ」
一向に動こうとせず、だらっ、と私に抱きつくアランの頭をべしべし叩けば、「痛い、痛い」とたいして痛がっていない声をあげてやっと離れた。
まったくもう。
「着替えるから早く出ていってちょうだい」
「ここにいたらダメかい?」
「出ていかないなら、私が出ていくからご自由に」
どうぞ、どうぞ、と言って服を持ちそそくさとバスルームに移動して着替えた。
あまり悠長にアランの相手をしていると、本当に遅刻してしまう。
私が着替え終わっても、まだ出てくる様子のないアランに「おーきーてー!」と声をかければ、のっそりとあくびをしながら出てきた。
「どうも、君におはようと言ってもらえないとすっきりしないね」
「そういえば言ってなかったわね。おはよう、アラン」
「おはよう、アーティア」
ふやけた笑みを浮かべるアランを不審に思いながら、朝食の準備を始めつつ「なに?」と聞けば、「いや、俺も思うことがあっただけだ」と言いながらニヤニヤするアランに、聞くべきかどうか悩んでしまう。
聞いたらまた、砂を吐きたくなるセリフが飛んできそうで怖い気持ちがある。
「……よし、大丈夫。気持ちの用意はできたわ。来なさい」
「なんだ、気持ちの用意って」
「色々あるのよ。ほら、話すならいまのうちよ」
「そうだなぁ、君がどんな気持ちで俺の側にいるのかって知って愛しい気持ちに歯止めがきかないんだ」
「歯止めてほしいわね」
ハートが視認できたら、大量のハートマークが突き刺さりそうな甘い視線と声に砂を吐きそうだ。
「……アーティア。俺は君の安全と平和よりも世界平和を優先させた。こんな俺を責めるかな」
「責めるわけないじゃない。あなたの一番近くにいられる場所で力になりたいのは、私の願い。それに、選ぶべき物を選べるあなが私は好きよ」
朝食の準備を中断し、アランに腰を屈めて、と指でジェスチャーをして近くなった頭を抱きしめ「愛してるわ、アラン」と囁けば、「俺はいつまで君の人生を俺に縛りつけておけるかな」とか細い声で問われた。
私の人生は、スティーブン・アラン・スターフェイズという人間に出会った日から彼に縛られていると言っても過言ではないだろう。
最初は鼻の穴を明かしてやりたかった。
そこから段々と、認められたい、力になりたい、支えになりたい。
その一心で勉強も運動も頑張ったし、血瘴術も学んだ。
そうなったのも、真摯なアランの愛情が居心地よくて、それに応えたかったから。
だからいまさら、スティーブン・アラン・スターフェイズなしで生きていけと言われたら、私は人生に迷うだろう。
「きっと私が死ぬまでよ」
人はこの感情を愛ではなく依存と呼ぶのかも知れないが、いいのだ。
私の人生はアランがくれた物だから、それが堪らなく愛しいから。
それが幸せだから。