criminal
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件の鬼ごっこ以来、負けはしたものの一応は移動手段としてローラーブレードを許可してくれたアランだったが、何かにつけて「大人の君ならもっと仕事の幅が広がるのになー」とチクチク言ってくる。
なによ、最初は子供の私がいいみたいな態度だった癖に。面白くない。
自分で自分に嫉妬するなんて虚しい以外なにものでもないが、今のままの私をもっと求めて欲しいわよね。仕事として。
すいすいとローラーブレードで人を避けながら、ロイスのテイクアウトハーブティーを持ち事務所へと帰り、「戻りました」とエレベーターが開いたと同時に言えば、一人の少年がゆっくりと振り返った。
いや体感時間なので早さとしては普通なのだろうけど、私にはゆっくりとした動作に見えた。
その少年は私が憧れ、愛した幼き日のアランと瓜二つ。
「アラン……お兄ちゃん……?」
思わず“お兄ちゃん”と呼んでしまってが、そんなわけないと否定したのに「アーティア……なのか……?」と、戸惑いながら尋ねてきた。
「そうだけど……どういう事なの……」
「それは私から説明しよう、アーティア。だが、先に一言謝らせてほしい。スティーブンを守りきれず、申し訳なかった」
聞けば、術者の奇襲を受けたクラウスさんを守ったアランが子供になってしまったそうだ。
見た目だけならよかったが、どうやら中身も一緒に退行したと聞き、冷や汗がぶわっ、とでた。
つまり、あのアランは私が憧れて愛した、一番苦手な時期のアラン。
「あの、私、スターフェイズさんが元に戻るまでここに来ません……」
カタカタと青い顔で震える私に、ザップさんは非道にも「おめえが面倒みるに決まってんだろ!」と宣告した。
「あの、完全に警戒スマイルの番頭を俺らが世話できると思ってんのか?」
確かに一瞬見えたあの笑顔は、アランが相手に心を完全に閉ざしている時の笑顔だった。
アランの精神面を考慮すれば、私が面倒を見るのが最適解だろう。
それはわかっているのだけれども。
ちらりとアランを見れば、しっかりと目が合いぎこちないながらも手を振られた。
私も軽く振り返し、ザップさんたちに向き直り「無理です」と手でバッテンを作り拒否をする。
「なんでだよ!」
「理由を聞いていいかな、アーティア?」
クラウスさんの質問に震えながら、「マシュマロのハチミツ砂糖漬けにされる」と答えれば、レオナルドさんが「なんすか、そのゲロ甘そうな比喩」と聞いてきたが、事実ゲロ甘な甘やかし方をするのだ、あのアランは。
言葉が、所作が、視線が全て甘いのだ。
「私が、スターフェイズさんは絶対に王子様だと錯覚するレベルの甘さなんですよ。一度、あのどす黒いスターフェイズさんで慣れた私には、ピュアピュア白砂糖王子のあの人とまともな精神で向き合えません」
「うるせえ!お前が犠牲になれば、俺らはあの作り笑い貼り付けた番頭から解放されんだよ!」
「知りません!知りません!」
知らないって言っているのに、ザップさんはアランの所まで私を引きずって行き、「あんたの面倒はこいつが見てくれるんで」とだけ言い残し距離をとった。
許さない。
大きな目でじっ、と見てくるアランから目がはなせず、心臓がバクバクと大きな音を奏でる。
「アーティアで……いいんだよな?」
「はい……」
「俺が知っている姿より少し大人びていたから自信はなかったけど、そうか」
緊張が解けたのか、強ばっていた表情を柔らかくして私の手を掴み「よかった」と呟く。
ひっ……!
「正直、現状がわからないんだ。説明、してくれるかな?」
「も……勿論だわ、アランお兄ちゃん……!私に任せて!」
ピュアピュア白砂糖王子に見つめられ、思わずこちらもピュアピュア蜂蜜姫モードになってしまった。
きゅるるん、とさせた顔とキャラを維持させながら説明するが、異界やら大崩落なんて話はにわかに信じがたいだろう。
事務所に来る途中にでも街の様子を見ていればまた違っただろうが、道中気絶していたらしいし、ツェッドさんも特殊メイクではないかと疑っているそうで。
「アーティアの言うことだから、信じたいんだが……」
「しかたないわ。こんなお話、私がアランお兄ちゃんの立場だったら信じないもの。よかったら街を案内するわ。見た方が早いもの」
「なに言ってるんだ!危ない場所なんだろ?いま、俺は君を守れないんだから馬鹿言わないでくれ!」
そうだった、いまのアランの目には私は非力な少女にしか映っていないのだった。
見た目は子供だが中身は大人なのよ、と説明したところで混乱させるだけ。
「じゃあ、守ってくれる人と一緒に行きましょう!」
クラウスさんたちは強いのよ、と言えば怒りを押し殺した時の薄い笑みを浮かべるものだから、背筋を冷や汗が伝った。
「アーティア、悪いが俺はまだ彼ら信用をしていないんだ。それに、俺以外の男に君が守られているのを見るのは気分がよくないなぁ……」
確実に笑っていない笑みを向けられ一歩後ずさるが、手を掴まれてそれ以上下がれない。
この時代から、私情の暴論振りかざしてきていたんだなぁ……。
「そうは言っても、アランお兄ちゃんに現状を理解してもらう為には街を見てもらえないと、どうにも……」
だからお願い、私を信じて?と、今度は私から詰め寄ればアランは「アーティアのお願いじゃ、聞くしかないじゃないか」と観念して了承してくれた。
よかった、と安心したところにチェインさんとK・Kさんが「面白いことが起きたと聞いて!」と、意気揚々としながら事務所に入ってきた。
「あらぁ!本当に小さくなってるじゃない!あの腹黒男にも、こんな可愛い時代があったのね!」
「小さいスターフェイズさん、可愛い……!」
チェインさんが思わずケータイを構え写真を撮ろうとした瞬間、心を閉ざした笑みを浮かべ「申し訳ありません、お姉さん。写真は遠慮してもらえますか?」と他人行儀に言うものだから、チェインさんが軽く精神的ダメージを負った。
「アランお兄ちゃん、チェインさんを怒らないで。アランお兄ちゃんだって、私が大人の姿だったら写真撮ろうとしちゃうでしょ?」
「そりゃそうだけど……」
と言ったかと思ったら、ふっ、と笑顔を消し「君は本当にアーティアなのか?」と聞いた。
なにが引っ掛かったのかと動揺しながらも、「そうよ。アーティア・レストシャーナ、あなたの従妹よ」と答えるも、疑惑の真顔は消えない。
「それなら、おかしいじゃないか。彼女たちの口ぶりからして、僕はある程度成長していないとおかしい。なのに、どうして僕と三つしか変わらない君は幼い姿のままなんだい?」
自力で気がついちゃったよ、さすがはアランお兄ちゃんだー!と、いまからまたその説明をしないといけないのか、混乱させずになんと説明すればよいのかと思考を巡らせていたら、「アーティアの姿形を使って、僕を騙そうとしているなら命はないと思え」と悪魔も真っ青な顔と声で言われては配慮なんてするのをやめようと思うじゃないですか。
混乱もやむなしと判断し、自分に呪いがかかり体が成長しないと説明をしたが、どう見ても信用していない。
一度疑ったアランから信用を勝ち取るのは、至難の技。
「……ちょっと、耳借りてもいいかな?」
「なんだい」
アランと私しか知らない、八割方私の恥ずかしい思い出を耳打ちするも、思案したのちに「それだけじゃ、信じられないな。他にないのか」と言うから、恥を忍んで四つ、五つと言うも「それだけかい?」と一向に信じてくれない。
どうしよう、と慌てる私に「アーティア。遊ばれてるわよ」とK・Kさんに声をかけられ、数秒間アランを見つめれば「すまない」と気の抜ける笑みを浮かべられた。
「なっ……!」
「恥ずかしがりながら慌てる君が、どうも可愛くて」
悪びれる様子のないアランに「そういう意地悪は酷いわ!」と怒るも、おもむろに抱き締められ「すまない、アーティア。許してくれ」と絶対にどの女にもやっているであろう、必勝女を黙らせる技を繰り出された。
元の木炭トーテムポールなら、「それで許されると思ったら甘すぎるわね!」と吐き捨てられるが、いまのアランはまだ白い部分も多くて私の中で完全に美化されている王子様状態なので、簡単に落ちてしまった。
「信じてくれたらいいの、アランお兄ちゃん……」
抱き締め返したら、「これで仲直りだな」とふわふわぽやぽやした声で言いながら頭を撫でられたら。
もとに戻ったら覚えていろ。
なによ、最初は子供の私がいいみたいな態度だった癖に。面白くない。
自分で自分に嫉妬するなんて虚しい以外なにものでもないが、今のままの私をもっと求めて欲しいわよね。仕事として。
すいすいとローラーブレードで人を避けながら、ロイスのテイクアウトハーブティーを持ち事務所へと帰り、「戻りました」とエレベーターが開いたと同時に言えば、一人の少年がゆっくりと振り返った。
いや体感時間なので早さとしては普通なのだろうけど、私にはゆっくりとした動作に見えた。
その少年は私が憧れ、愛した幼き日のアランと瓜二つ。
「アラン……お兄ちゃん……?」
思わず“お兄ちゃん”と呼んでしまってが、そんなわけないと否定したのに「アーティア……なのか……?」と、戸惑いながら尋ねてきた。
「そうだけど……どういう事なの……」
「それは私から説明しよう、アーティア。だが、先に一言謝らせてほしい。スティーブンを守りきれず、申し訳なかった」
聞けば、術者の奇襲を受けたクラウスさんを守ったアランが子供になってしまったそうだ。
見た目だけならよかったが、どうやら中身も一緒に退行したと聞き、冷や汗がぶわっ、とでた。
つまり、あのアランは私が憧れて愛した、一番苦手な時期のアラン。
「あの、私、スターフェイズさんが元に戻るまでここに来ません……」
カタカタと青い顔で震える私に、ザップさんは非道にも「おめえが面倒みるに決まってんだろ!」と宣告した。
「あの、完全に警戒スマイルの番頭を俺らが世話できると思ってんのか?」
確かに一瞬見えたあの笑顔は、アランが相手に心を完全に閉ざしている時の笑顔だった。
アランの精神面を考慮すれば、私が面倒を見るのが最適解だろう。
それはわかっているのだけれども。
ちらりとアランを見れば、しっかりと目が合いぎこちないながらも手を振られた。
私も軽く振り返し、ザップさんたちに向き直り「無理です」と手でバッテンを作り拒否をする。
「なんでだよ!」
「理由を聞いていいかな、アーティア?」
クラウスさんの質問に震えながら、「マシュマロのハチミツ砂糖漬けにされる」と答えれば、レオナルドさんが「なんすか、そのゲロ甘そうな比喩」と聞いてきたが、事実ゲロ甘な甘やかし方をするのだ、あのアランは。
言葉が、所作が、視線が全て甘いのだ。
「私が、スターフェイズさんは絶対に王子様だと錯覚するレベルの甘さなんですよ。一度、あのどす黒いスターフェイズさんで慣れた私には、ピュアピュア白砂糖王子のあの人とまともな精神で向き合えません」
「うるせえ!お前が犠牲になれば、俺らはあの作り笑い貼り付けた番頭から解放されんだよ!」
「知りません!知りません!」
知らないって言っているのに、ザップさんはアランの所まで私を引きずって行き、「あんたの面倒はこいつが見てくれるんで」とだけ言い残し距離をとった。
許さない。
大きな目でじっ、と見てくるアランから目がはなせず、心臓がバクバクと大きな音を奏でる。
「アーティアで……いいんだよな?」
「はい……」
「俺が知っている姿より少し大人びていたから自信はなかったけど、そうか」
緊張が解けたのか、強ばっていた表情を柔らかくして私の手を掴み「よかった」と呟く。
ひっ……!
「正直、現状がわからないんだ。説明、してくれるかな?」
「も……勿論だわ、アランお兄ちゃん……!私に任せて!」
ピュアピュア白砂糖王子に見つめられ、思わずこちらもピュアピュア蜂蜜姫モードになってしまった。
きゅるるん、とさせた顔とキャラを維持させながら説明するが、異界やら大崩落なんて話はにわかに信じがたいだろう。
事務所に来る途中にでも街の様子を見ていればまた違っただろうが、道中気絶していたらしいし、ツェッドさんも特殊メイクではないかと疑っているそうで。
「アーティアの言うことだから、信じたいんだが……」
「しかたないわ。こんなお話、私がアランお兄ちゃんの立場だったら信じないもの。よかったら街を案内するわ。見た方が早いもの」
「なに言ってるんだ!危ない場所なんだろ?いま、俺は君を守れないんだから馬鹿言わないでくれ!」
そうだった、いまのアランの目には私は非力な少女にしか映っていないのだった。
見た目は子供だが中身は大人なのよ、と説明したところで混乱させるだけ。
「じゃあ、守ってくれる人と一緒に行きましょう!」
クラウスさんたちは強いのよ、と言えば怒りを押し殺した時の薄い笑みを浮かべるものだから、背筋を冷や汗が伝った。
「アーティア、悪いが俺はまだ彼ら信用をしていないんだ。それに、俺以外の男に君が守られているのを見るのは気分がよくないなぁ……」
確実に笑っていない笑みを向けられ一歩後ずさるが、手を掴まれてそれ以上下がれない。
この時代から、私情の暴論振りかざしてきていたんだなぁ……。
「そうは言っても、アランお兄ちゃんに現状を理解してもらう為には街を見てもらえないと、どうにも……」
だからお願い、私を信じて?と、今度は私から詰め寄ればアランは「アーティアのお願いじゃ、聞くしかないじゃないか」と観念して了承してくれた。
よかった、と安心したところにチェインさんとK・Kさんが「面白いことが起きたと聞いて!」と、意気揚々としながら事務所に入ってきた。
「あらぁ!本当に小さくなってるじゃない!あの腹黒男にも、こんな可愛い時代があったのね!」
「小さいスターフェイズさん、可愛い……!」
チェインさんが思わずケータイを構え写真を撮ろうとした瞬間、心を閉ざした笑みを浮かべ「申し訳ありません、お姉さん。写真は遠慮してもらえますか?」と他人行儀に言うものだから、チェインさんが軽く精神的ダメージを負った。
「アランお兄ちゃん、チェインさんを怒らないで。アランお兄ちゃんだって、私が大人の姿だったら写真撮ろうとしちゃうでしょ?」
「そりゃそうだけど……」
と言ったかと思ったら、ふっ、と笑顔を消し「君は本当にアーティアなのか?」と聞いた。
なにが引っ掛かったのかと動揺しながらも、「そうよ。アーティア・レストシャーナ、あなたの従妹よ」と答えるも、疑惑の真顔は消えない。
「それなら、おかしいじゃないか。彼女たちの口ぶりからして、僕はある程度成長していないとおかしい。なのに、どうして僕と三つしか変わらない君は幼い姿のままなんだい?」
自力で気がついちゃったよ、さすがはアランお兄ちゃんだー!と、いまからまたその説明をしないといけないのか、混乱させずになんと説明すればよいのかと思考を巡らせていたら、「アーティアの姿形を使って、僕を騙そうとしているなら命はないと思え」と悪魔も真っ青な顔と声で言われては配慮なんてするのをやめようと思うじゃないですか。
混乱もやむなしと判断し、自分に呪いがかかり体が成長しないと説明をしたが、どう見ても信用していない。
一度疑ったアランから信用を勝ち取るのは、至難の技。
「……ちょっと、耳借りてもいいかな?」
「なんだい」
アランと私しか知らない、八割方私の恥ずかしい思い出を耳打ちするも、思案したのちに「それだけじゃ、信じられないな。他にないのか」と言うから、恥を忍んで四つ、五つと言うも「それだけかい?」と一向に信じてくれない。
どうしよう、と慌てる私に「アーティア。遊ばれてるわよ」とK・Kさんに声をかけられ、数秒間アランを見つめれば「すまない」と気の抜ける笑みを浮かべられた。
「なっ……!」
「恥ずかしがりながら慌てる君が、どうも可愛くて」
悪びれる様子のないアランに「そういう意地悪は酷いわ!」と怒るも、おもむろに抱き締められ「すまない、アーティア。許してくれ」と絶対にどの女にもやっているであろう、必勝女を黙らせる技を繰り出された。
元の木炭トーテムポールなら、「それで許されると思ったら甘すぎるわね!」と吐き捨てられるが、いまのアランはまだ白い部分も多くて私の中で完全に美化されている王子様状態なので、簡単に落ちてしまった。
「信じてくれたらいいの、アランお兄ちゃん……」
抱き締め返したら、「これで仲直りだな」とふわふわぽやぽやした声で言いながら頭を撫でられたら。
もとに戻ったら覚えていろ。