criminal
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「アーティアー。この資料まとめといてくれ」
「はい」
「それ終わったらこっちの事件のプロファイリング。ついでに、犯人の足取りもマッピング」
「はい」
スティーブンさんから渡される事務作業をちょこちょこと動き回りながら確実にこなしていくアーティアさんはなんというか、やっぱりスティーブンさんの従妹だけあって万能に全てを器用に手早くこなしている。
アーティアさんのお陰で、スティーブンさんの激務はだいぶ減ったと思われる。
「おーおー。すっかり雑用が板についてんな」
「ザップさん。そういう言い方ないでしょ」
「言ってもよぉ。こっち来て、あいつほとんど戦闘に出てねーじゃん」
ザップさんの言う通り、アーティアさんは事務作業ばかりでドライアド事件以降戦闘には出ていない。
出ていない、というか出してもらえていない。
なにか戦闘が起きたとしても、スティーブンさんが「アーティアは待機!なにかあったら、ギルベルトさんに聞け!」と指示をだして置いていってしまうのだ。
その度に、悔しそうに顔を歪める姿は悪鬼のごとし。
そんなことを思い出していると、早速事件が起きたらしく、「アーティアとレオは待機だ!」と言い残して行ってしまった。
バタバタと人が出ていった瞬間、俺とアーティアさんの間に緊張が走る。
「……えっと、大丈夫っすか?」
「んぐぐぐ……!」
下唇を噛んで悔しさを耐えているが、耐えきれていない。
「いいっすよ!いいんですよ!我慢しないで!」
「お言葉に甘えて!なんなのよ!なんなのよ!なんなのよ!認めてるって言ったじゃない!なんで連れていってくれないのよ!私は戦闘要員よ!事務要員じゃないのよ!」
怒り狂いながらもしっかりと頼まれた資料整理をこなす姿は、修羅場の時のスティーブンさんとダブる。
ばんっ!と音をたてて、資料がファイリングされているリングファイルの表紙を閉め、棚へとしまい、つかつかと俺の方へと来るから怒りの矛先がこっちに向いたのかと思って超焦ったのに、「私のなにが問題だと思いますかー!レオナルドさん!」と抱きつかれて別の意味で焦った。
「わー!わー!離れてください!こんなとこスティーブンさんに見られたら、俺が殺されますから!」
「そうは言いますが、レオナルドさん!この数週間、私なりに問題点を考えてスターフェイズさんに相談しているのに、砂漠に説教!あまりに手応えなさすぎて、ただよしよしされたくてしょうがないんです!」
「それこそ、スティーブンさんに言ってくれませんか?!」
あの人なら、ゲロゲロに甘やかしてくれますよ!という俺の提案に、首を振って「スターフェイズさんじゃやだー!」と本人に聞かれたら泡吹いて倒れそうなことを叫ぶ。
歳上とはわかっているが、なまじ見た目が子供なので無理に引き剥がすのも気が引ける。
「それなら、ギルベルトさんに甘やかしてもらってくださいよ」
ギルベルトさんなら、さしものスティーブンさんも嫉妬で怒り狂ったりしないでしょうし。
ほら、とギルベルトさんの方へと行くように促すが、頑なに離れない。
「私、実のおじいちゃんに対しては、手間のかからないいい子で通していたので、おじいちゃんに甘えるのはちょっと苦手で。その点、レオナルドさんはガチお兄ちゃんなので優しそう」
「歳下に甘やかされて悲しくならないんすか」
「この際、もうなんでもいいです。えーん、レオナルドお兄ちゃん。スティーブンおじちゃんがお仕事くれないよぉ」
「やめろ、やめろ!スティーブンさんが、悲しみと俺への怒りで情緒死ぬようなことを言うのは!」
ギルベルトさんにヘルプをだせば、そっと近寄ってきて「アーティアさん。少々、焦りすぎではございませんか?」と話しかけた。
あ、あの、できれば、引き離してからにしてほしいっす。
「焦りすぎ、ですか?」
「はい。功を成し認められなければ、という焦りが私から見てもわかります。それでは、本来の力は発揮されずかえって危険です。そんな状態では、スターフェイズ氏も安心して仕事は任せられませんよ」
そろり、と俺から離れ「そうですね……」と叱られた子犬のように悄気るアーティアさんの姿は、こちらは悪いことをしていないのに無条件で罪悪感を煽る。
「スターフェイズ氏に認められたいお気持ちは痛いほど伝わりますが、余裕を持ちましょう」
「そうっすよ、アーティアさん。なにも、スティーブンさんだってアーティアさんのこと事務要員とは思ってないでしょうし、そのうちデカイ仕事がくるっすよ!」
俺の励ましに、アーティアさんは表情を明るくして「そうですね!がんばります!」と立ち直ってくれた。
「それはそうと、アーティアさん。ご所望であれば、私はいつでも甘やかしますよ」
「えっ!いや、その……ご迷惑では……」
「はっはっはっ。孫に甘えられて嬉しくない老人はおりませぬよ」
「おじいちゃぁん……!」
おろおろとどうしようか悩んでいたが、人恋しさには勝てなかったようで、おずおずとギルベルトさんにハグをした。
パタパタと尻尾があれば振っていそうな勢いで喜んでいたアーティアさんだが、事件解決して戻ってきたスティーブンさんに「遊んでいないで、任せた仕事をしなさい」と言われ、隠すことなく舌打ちをした。
「な、なんだ!その舌打ちは!」
「いーえー。もう少し遅く帰ってきてくれればよかったのに、なんて微塵も思ってませんよ?」
「思ってるだろ!疲れてるんだから、少しくらい労ってくれてもいいだろ!」
怒るスティーブンさんを数秒真顔で見つめてから「アランお兄ちゃん、お帰りなさーい!お疲れ様ー!」と、無邪気な子供の顔でスティーブンさんに駆け寄るアーティアさんに薄ら寒いものを感じたが、それ以上に「ただいま、アーティアー!」と迎え撃っているスティーブンさんも怖かった。
「アランお兄ちゃん。アーティアお腹減ったから、ご飯食べに行ってもいいかしら?」
「お願いした仕事はどこまで終わったんだい?」
「資料はまとめ終わったわ。けど、これから頭を使う作業じゃない?いまのうちに、ご飯食べておいた方がいいって、アーティア思うの」
「そうだなー。いいよ、行っておいで」
「はーい!」
財布を持ってエレベーターへ駆けていくアーティアさんを、デレデレになりながら見送るスティーブンさんに「甘くないっすか?」とザップさんが言うが、まあ、言いたいことはわかる。
ザップさんが仕事を途中で抜けだそうもなのなら無言の圧力をかけてくるであろうに、すんなり食事に行かせたのだから。
甘い、と言いたくはなるだろう。
「可愛いから仕方ないじゃないか」
「贔屓だ!依怙贔屓だ!」
ザップさんがきーきーと騒ぐが、スティーブンさんの「彼女はお前と違って、少し休憩入れても頼んだ仕事は完璧にこなすからなぁ……」という言葉で黙った。
ぐうの音もでねえな。
「まぁ、多少肩の力を抜いてほしいものだがな。真面目すぎるからなぁ、あの子は」
「あぁ、それでさっき凄いしょげてたっすよ」
先ほどあった、都合の悪い部分以外を話すと深々と溜め息を吐いて「ありがとうございます、ギルベルトさん」とお礼を言った。
「あの子はどうも、僕を絶対視というか神聖視し過ぎているきらいがあるんで。その所為で、僕相手になると嫌に卑屈になる」
「番頭相手に神聖視ってあいつ目大丈夫っすか」
「言いたいことはあるが、概ね僕も同じ感想ではある。アーティアが初めて会った、自分より優秀な存在が僕だったからか、なんだか盲目的でね。困ったもんだよ」
「さらっと自分凄い自慢したよ、この人!」
事実スティーブンさんは優秀だが、自分で言っちゃうか!?普通!?
「一回落ち着かせようかと思って、事務手伝わせてたんだけど逆効果だったか。そんな、外を駆け回るタイプじゃなかったはずなんだけどなぁ」
「人は成長するものですからね。まぁ、約一名成長していない人間がいますが」
「だーれを見て言ってんだ、魚類?」
喧嘩を始めるザップさんとツェッドさんを横目に、「アーティアさんって、どんな子だったんですか?」と聞けば「大人しくて利発な子だったよ」と言ったが、暫く考えてから「いや、あれは大人しいってわけじゃなかったな」と苦笑した。
どういうことっすか?
「どちらかと言うと、人付き合いが嫌いで引きこもっていたと言った方が正しいだろうな」
「へー。そんな風には見えないっすね。社交的な方だと思いました」
「家庭環境が面倒だったからなぁ、あの子は。あんな家じゃなけりゃ、今頃もっと別の道を行ってたさ」
その別の道を考えたのか、スティーブンさんは「なんでこうなった、アーティア……」と嘆いた。
他人の事情に首は突っ込むべきじゃないとは思うが、ちょっと気になるな。
「はい」
「それ終わったらこっちの事件のプロファイリング。ついでに、犯人の足取りもマッピング」
「はい」
スティーブンさんから渡される事務作業をちょこちょこと動き回りながら確実にこなしていくアーティアさんはなんというか、やっぱりスティーブンさんの従妹だけあって万能に全てを器用に手早くこなしている。
アーティアさんのお陰で、スティーブンさんの激務はだいぶ減ったと思われる。
「おーおー。すっかり雑用が板についてんな」
「ザップさん。そういう言い方ないでしょ」
「言ってもよぉ。こっち来て、あいつほとんど戦闘に出てねーじゃん」
ザップさんの言う通り、アーティアさんは事務作業ばかりでドライアド事件以降戦闘には出ていない。
出ていない、というか出してもらえていない。
なにか戦闘が起きたとしても、スティーブンさんが「アーティアは待機!なにかあったら、ギルベルトさんに聞け!」と指示をだして置いていってしまうのだ。
その度に、悔しそうに顔を歪める姿は悪鬼のごとし。
そんなことを思い出していると、早速事件が起きたらしく、「アーティアとレオは待機だ!」と言い残して行ってしまった。
バタバタと人が出ていった瞬間、俺とアーティアさんの間に緊張が走る。
「……えっと、大丈夫っすか?」
「んぐぐぐ……!」
下唇を噛んで悔しさを耐えているが、耐えきれていない。
「いいっすよ!いいんですよ!我慢しないで!」
「お言葉に甘えて!なんなのよ!なんなのよ!なんなのよ!認めてるって言ったじゃない!なんで連れていってくれないのよ!私は戦闘要員よ!事務要員じゃないのよ!」
怒り狂いながらもしっかりと頼まれた資料整理をこなす姿は、修羅場の時のスティーブンさんとダブる。
ばんっ!と音をたてて、資料がファイリングされているリングファイルの表紙を閉め、棚へとしまい、つかつかと俺の方へと来るから怒りの矛先がこっちに向いたのかと思って超焦ったのに、「私のなにが問題だと思いますかー!レオナルドさん!」と抱きつかれて別の意味で焦った。
「わー!わー!離れてください!こんなとこスティーブンさんに見られたら、俺が殺されますから!」
「そうは言いますが、レオナルドさん!この数週間、私なりに問題点を考えてスターフェイズさんに相談しているのに、砂漠に説教!あまりに手応えなさすぎて、ただよしよしされたくてしょうがないんです!」
「それこそ、スティーブンさんに言ってくれませんか?!」
あの人なら、ゲロゲロに甘やかしてくれますよ!という俺の提案に、首を振って「スターフェイズさんじゃやだー!」と本人に聞かれたら泡吹いて倒れそうなことを叫ぶ。
歳上とはわかっているが、なまじ見た目が子供なので無理に引き剥がすのも気が引ける。
「それなら、ギルベルトさんに甘やかしてもらってくださいよ」
ギルベルトさんなら、さしものスティーブンさんも嫉妬で怒り狂ったりしないでしょうし。
ほら、とギルベルトさんの方へと行くように促すが、頑なに離れない。
「私、実のおじいちゃんに対しては、手間のかからないいい子で通していたので、おじいちゃんに甘えるのはちょっと苦手で。その点、レオナルドさんはガチお兄ちゃんなので優しそう」
「歳下に甘やかされて悲しくならないんすか」
「この際、もうなんでもいいです。えーん、レオナルドお兄ちゃん。スティーブンおじちゃんがお仕事くれないよぉ」
「やめろ、やめろ!スティーブンさんが、悲しみと俺への怒りで情緒死ぬようなことを言うのは!」
ギルベルトさんにヘルプをだせば、そっと近寄ってきて「アーティアさん。少々、焦りすぎではございませんか?」と話しかけた。
あ、あの、できれば、引き離してからにしてほしいっす。
「焦りすぎ、ですか?」
「はい。功を成し認められなければ、という焦りが私から見てもわかります。それでは、本来の力は発揮されずかえって危険です。そんな状態では、スターフェイズ氏も安心して仕事は任せられませんよ」
そろり、と俺から離れ「そうですね……」と叱られた子犬のように悄気るアーティアさんの姿は、こちらは悪いことをしていないのに無条件で罪悪感を煽る。
「スターフェイズ氏に認められたいお気持ちは痛いほど伝わりますが、余裕を持ちましょう」
「そうっすよ、アーティアさん。なにも、スティーブンさんだってアーティアさんのこと事務要員とは思ってないでしょうし、そのうちデカイ仕事がくるっすよ!」
俺の励ましに、アーティアさんは表情を明るくして「そうですね!がんばります!」と立ち直ってくれた。
「それはそうと、アーティアさん。ご所望であれば、私はいつでも甘やかしますよ」
「えっ!いや、その……ご迷惑では……」
「はっはっはっ。孫に甘えられて嬉しくない老人はおりませぬよ」
「おじいちゃぁん……!」
おろおろとどうしようか悩んでいたが、人恋しさには勝てなかったようで、おずおずとギルベルトさんにハグをした。
パタパタと尻尾があれば振っていそうな勢いで喜んでいたアーティアさんだが、事件解決して戻ってきたスティーブンさんに「遊んでいないで、任せた仕事をしなさい」と言われ、隠すことなく舌打ちをした。
「な、なんだ!その舌打ちは!」
「いーえー。もう少し遅く帰ってきてくれればよかったのに、なんて微塵も思ってませんよ?」
「思ってるだろ!疲れてるんだから、少しくらい労ってくれてもいいだろ!」
怒るスティーブンさんを数秒真顔で見つめてから「アランお兄ちゃん、お帰りなさーい!お疲れ様ー!」と、無邪気な子供の顔でスティーブンさんに駆け寄るアーティアさんに薄ら寒いものを感じたが、それ以上に「ただいま、アーティアー!」と迎え撃っているスティーブンさんも怖かった。
「アランお兄ちゃん。アーティアお腹減ったから、ご飯食べに行ってもいいかしら?」
「お願いした仕事はどこまで終わったんだい?」
「資料はまとめ終わったわ。けど、これから頭を使う作業じゃない?いまのうちに、ご飯食べておいた方がいいって、アーティア思うの」
「そうだなー。いいよ、行っておいで」
「はーい!」
財布を持ってエレベーターへ駆けていくアーティアさんを、デレデレになりながら見送るスティーブンさんに「甘くないっすか?」とザップさんが言うが、まあ、言いたいことはわかる。
ザップさんが仕事を途中で抜けだそうもなのなら無言の圧力をかけてくるであろうに、すんなり食事に行かせたのだから。
甘い、と言いたくはなるだろう。
「可愛いから仕方ないじゃないか」
「贔屓だ!依怙贔屓だ!」
ザップさんがきーきーと騒ぐが、スティーブンさんの「彼女はお前と違って、少し休憩入れても頼んだ仕事は完璧にこなすからなぁ……」という言葉で黙った。
ぐうの音もでねえな。
「まぁ、多少肩の力を抜いてほしいものだがな。真面目すぎるからなぁ、あの子は」
「あぁ、それでさっき凄いしょげてたっすよ」
先ほどあった、都合の悪い部分以外を話すと深々と溜め息を吐いて「ありがとうございます、ギルベルトさん」とお礼を言った。
「あの子はどうも、僕を絶対視というか神聖視し過ぎているきらいがあるんで。その所為で、僕相手になると嫌に卑屈になる」
「番頭相手に神聖視ってあいつ目大丈夫っすか」
「言いたいことはあるが、概ね僕も同じ感想ではある。アーティアが初めて会った、自分より優秀な存在が僕だったからか、なんだか盲目的でね。困ったもんだよ」
「さらっと自分凄い自慢したよ、この人!」
事実スティーブンさんは優秀だが、自分で言っちゃうか!?普通!?
「一回落ち着かせようかと思って、事務手伝わせてたんだけど逆効果だったか。そんな、外を駆け回るタイプじゃなかったはずなんだけどなぁ」
「人は成長するものですからね。まぁ、約一名成長していない人間がいますが」
「だーれを見て言ってんだ、魚類?」
喧嘩を始めるザップさんとツェッドさんを横目に、「アーティアさんって、どんな子だったんですか?」と聞けば「大人しくて利発な子だったよ」と言ったが、暫く考えてから「いや、あれは大人しいってわけじゃなかったな」と苦笑した。
どういうことっすか?
「どちらかと言うと、人付き合いが嫌いで引きこもっていたと言った方が正しいだろうな」
「へー。そんな風には見えないっすね。社交的な方だと思いました」
「家庭環境が面倒だったからなぁ、あの子は。あんな家じゃなけりゃ、今頃もっと別の道を行ってたさ」
その別の道を考えたのか、スティーブンさんは「なんでこうなった、アーティア……」と嘆いた。
他人の事情に首は突っ込むべきじゃないとは思うが、ちょっと気になるな。