criminal
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「おはようございます……」
「おはよう……」
全身に包帯やら湿布を貼り満身創痍な私とアランに、ザップさんが「随分と派手に楽しんだみたいっすね」と笑えない冗談を不用意に言うもんだから、機嫌の悪いアランに蹴られていた。
レオナルドさんが側に来て「大丈夫っすか?」と心配してくれる。
「大丈夫……と言いたいですが、ちょっと……」
「なにがあったんすか……」
「昨日の延長戦を夜にしましてね」
結局、一人暮らしをしたい私とさせたくないアランの意見は食い違い続け、誰も止める者がいない状態で能力なしの素殴りでの喧嘩が始まったのだ。
手加減はされていただろうが、それでもノックダウンの決め手になった腹への蹴りの痛みが未だに引かない。
ずきずきと痛むお腹をさする私に、ザップさんが無遠慮にご想像にお任せしますな下品なジョークを飛ばして、アランに中々の飛距離を蹴り飛ばされていた。
学習しないなぁ。
「それで、一人暮らしは諦めたんですか?」
「負けた方が折れるって約束でしたから」
正味、勝算なんてなかったがどんな妥協案を提案してもアランが折れなかった結果の約束で、実質私が折れたようなものだ。
「地道に信頼を勝ち取ります」
「信頼しても、たぶんOKはしないと思いますよ。あの人」
私もそう思います。
ガックリくる私をなにやら電話をしていたアランが不機嫌そうな顔でこちらを見たと思ったら、「アーティア、仕事だ。着いてきなさい」と声をかけた。
初仕事だ、と少し嬉しくなりながら一緒に入り組んだ路地まで着いてきたら、特徴的な前髪のトレンチコートを来た男が待っていた。
「おい、スカーフェイス。なんだ、そのガキは。職場体験なら他所でやれ」
「彼女はアーティア・レストシャーナ。最近ライブラに入った。こんな成りだが、成人女性だし実力は僕が保証する。アーティア、こちらダニエル・ロウ警部補だ」
「アーティアです、はじめまして」
お辞儀をすると、警部補は私の顔をまじまじと見て「娘か?」と真面目な顔で言うものだから、アランが「成人女性と言っただろ!従妹だ!」とツッコミを入れた。
警部補は指折り数えてから「さすがに無理があんな」と年齢的に納得をした。
「そういうことを言ってると、捜査協力しないぞ」
「んなこと言ってるとしょっぴくぞ」
険悪な雰囲気の二人に、恐る恐る挙手をして「質問いいですか?」と聞けば二人して「手短に」と言われたので手短に「警察とライブラは敵対関係では?」と聞く。
世界を救うとは言っても非公式に戦っているライブラは、警察とは仲良しな関係ではないはず。
それが何故、捜査協力を?という当たり前な疑問。
「まあ、取引だよ。僕らを見逃す代わりに捜査協力をするっていう」
「本当なら、すぐにでもブタ箱にぶちこんでやりたいとこだがな」
「ははは、警察程度が僕らを捕まえられると?」
取引相手なだけで仲はよろしくないようだ。
質問に答えてもらったので、これ以上喧嘩しないでもらう為に「今日はなにを捜査するんですか?」と話を促せば、「植物少女の話は聞いたことあるか?」と聞かれ、「ニュースでやってましたね」と新聞で得た情報を思い出す。
少女ばかりを狙った誘拐殺人事件で、誘拐された少女は数日のうちに身体中に植物を寄生させられ、半死半生の植物状態にされ木の側に置き去りにされている。
「通称、ドライアド事件」
「んで、うちじゃ追いきれねぇのと、対象になるような人間がいねぇからそっちで用意できないかってことで聞いたら、お前が連れてこられた……。どういう意味かわかるか?」
「囮、ですか?」
私の答えに、「ちっとばかし、おしいな」とニヒルに笑って警部補に否定された。
「囮になって捕まえて、一応生け捕りにして俺の前に引きずり出すのが仕事だ」
「少しではないですね」
ほぼ大部分の仕事を新人だけにやらせるのか?とアランを見上げれば、「そういうことだ、がんばってくれ」と言われただけであった。
え?本当に言ってる?私に一人で仕事しろって?
「スターフェイズさん、私の実力認めてなかったのに。いいんですか?」
「なに言ってるんだい?僕は言ったじゃないか。アーティアの実力は僕が保証するって」
「社交辞令かと……」
「心配ではあるが、仕事を任せることに関してなにも不安はないよ。やれるな、アーティア?」
「ま……任せてよ!」
ついはしゃいでしまった私を見て、警部補が不安そうな顔をしたが「ま、あとは任せるわ」と言って去っていってしまった。
初仕事に浮かれる私に、アランが「じゃあ、服を買いに行こうか」と晴れやかな表情で言った。
「服?」
「被害者の共通点。それは、君が過去演じていたゆるふわ花畑ハチミツ漬け少女趣味な子たちばかりだ」
露骨に嫌な顔をしてみせたが、「おやぁ?いい大人が、一度引き受けた仕事を放棄するのかい?」と嫌味ったらしく聞かれては引き下がれない。
「スターフェイズさんが趣味に走ったのかと思って、つい」
「嫌いではないよ」
君が纏う衣装、すべてが俺の好みだ。
そんな甘ったるいことを言われれば大抵の女は落ちるだろうが、何度も言うように私は慣れてしまっているので砂と唾しか吐けない。
そんなわけで、ウキウキなアランに連れられ囮用に数着服を買って、拐われたと思われる場所からどこを彷徨くかを話し合った。
どの子も、いつも公園で一人遊ぶような子だったらしい。
なので、私もフリフリエプロンドレスを身に纏い、片手には童話の本を持ち、もう片手にはウサギの人形を持った格好をしている。
「違和感ねえー!」
「可愛い」
大笑いするザップさんと親指を立てるチェインさんに、少なからず悪態を吐きたくなった。
「だが、ミス・レストシャーナ。本当に一人で大丈夫かい?」
不安そうなクラウスさんに、私が「大丈夫です」と言う前に、アランが「大丈夫さ」と軽く請け負う。
「なんてったって僕の従妹だぞ、クラウス。こんな事件くらい平気だ」
変にハードルをあげないでほしいが、希望には沿ってあげよう。
その日から一週間ほど公園で世界童話集をペラペラと読んでいるが、釣れるのは幼女趣味の変態ばかりだった。
まあ、こういうのも捕まえておこうということで、連れ去られる振りをして路地裏でぼこぼこにしてから警部補に通報しておいた。
「こういう囮捜査官の方が向いてるんじゃないか?」
と、警部補にからかわれた。
待てど暮らせど不審な人物は現れず、釣り場を変えた方がいいかと思っていた時だった。
「お嬢ちゃん、いつもここにいるね」
声をかけてきたのは、いつもワゴンで花を売っている男だった。
「おじ様はいつもここでお花を売ってらっしゃるのね」
「おや、知ってたかい?」
「勿論よ。毎日通ってるんだもの。いやでも知っているわ」
「そっか。お父さんやお母さんは?」
「お仕事よ。朝も夜もお仕事でいないの。私、いつも一人なの」
「そうか、それは寂しいね。よければ、寂しくなくなるようにしてあげようか?」
「本当に!とっても気になるわ!」
「じゃあ……一緒に行こうか……」
そう男が不穏に呟くと、ワゴンの下から木の根が延びてきて引きずり込まれた。
よし、釣れた。
「おはよう……」
全身に包帯やら湿布を貼り満身創痍な私とアランに、ザップさんが「随分と派手に楽しんだみたいっすね」と笑えない冗談を不用意に言うもんだから、機嫌の悪いアランに蹴られていた。
レオナルドさんが側に来て「大丈夫っすか?」と心配してくれる。
「大丈夫……と言いたいですが、ちょっと……」
「なにがあったんすか……」
「昨日の延長戦を夜にしましてね」
結局、一人暮らしをしたい私とさせたくないアランの意見は食い違い続け、誰も止める者がいない状態で能力なしの素殴りでの喧嘩が始まったのだ。
手加減はされていただろうが、それでもノックダウンの決め手になった腹への蹴りの痛みが未だに引かない。
ずきずきと痛むお腹をさする私に、ザップさんが無遠慮にご想像にお任せしますな下品なジョークを飛ばして、アランに中々の飛距離を蹴り飛ばされていた。
学習しないなぁ。
「それで、一人暮らしは諦めたんですか?」
「負けた方が折れるって約束でしたから」
正味、勝算なんてなかったがどんな妥協案を提案してもアランが折れなかった結果の約束で、実質私が折れたようなものだ。
「地道に信頼を勝ち取ります」
「信頼しても、たぶんOKはしないと思いますよ。あの人」
私もそう思います。
ガックリくる私をなにやら電話をしていたアランが不機嫌そうな顔でこちらを見たと思ったら、「アーティア、仕事だ。着いてきなさい」と声をかけた。
初仕事だ、と少し嬉しくなりながら一緒に入り組んだ路地まで着いてきたら、特徴的な前髪のトレンチコートを来た男が待っていた。
「おい、スカーフェイス。なんだ、そのガキは。職場体験なら他所でやれ」
「彼女はアーティア・レストシャーナ。最近ライブラに入った。こんな成りだが、成人女性だし実力は僕が保証する。アーティア、こちらダニエル・ロウ警部補だ」
「アーティアです、はじめまして」
お辞儀をすると、警部補は私の顔をまじまじと見て「娘か?」と真面目な顔で言うものだから、アランが「成人女性と言っただろ!従妹だ!」とツッコミを入れた。
警部補は指折り数えてから「さすがに無理があんな」と年齢的に納得をした。
「そういうことを言ってると、捜査協力しないぞ」
「んなこと言ってるとしょっぴくぞ」
険悪な雰囲気の二人に、恐る恐る挙手をして「質問いいですか?」と聞けば二人して「手短に」と言われたので手短に「警察とライブラは敵対関係では?」と聞く。
世界を救うとは言っても非公式に戦っているライブラは、警察とは仲良しな関係ではないはず。
それが何故、捜査協力を?という当たり前な疑問。
「まあ、取引だよ。僕らを見逃す代わりに捜査協力をするっていう」
「本当なら、すぐにでもブタ箱にぶちこんでやりたいとこだがな」
「ははは、警察程度が僕らを捕まえられると?」
取引相手なだけで仲はよろしくないようだ。
質問に答えてもらったので、これ以上喧嘩しないでもらう為に「今日はなにを捜査するんですか?」と話を促せば、「植物少女の話は聞いたことあるか?」と聞かれ、「ニュースでやってましたね」と新聞で得た情報を思い出す。
少女ばかりを狙った誘拐殺人事件で、誘拐された少女は数日のうちに身体中に植物を寄生させられ、半死半生の植物状態にされ木の側に置き去りにされている。
「通称、ドライアド事件」
「んで、うちじゃ追いきれねぇのと、対象になるような人間がいねぇからそっちで用意できないかってことで聞いたら、お前が連れてこられた……。どういう意味かわかるか?」
「囮、ですか?」
私の答えに、「ちっとばかし、おしいな」とニヒルに笑って警部補に否定された。
「囮になって捕まえて、一応生け捕りにして俺の前に引きずり出すのが仕事だ」
「少しではないですね」
ほぼ大部分の仕事を新人だけにやらせるのか?とアランを見上げれば、「そういうことだ、がんばってくれ」と言われただけであった。
え?本当に言ってる?私に一人で仕事しろって?
「スターフェイズさん、私の実力認めてなかったのに。いいんですか?」
「なに言ってるんだい?僕は言ったじゃないか。アーティアの実力は僕が保証するって」
「社交辞令かと……」
「心配ではあるが、仕事を任せることに関してなにも不安はないよ。やれるな、アーティア?」
「ま……任せてよ!」
ついはしゃいでしまった私を見て、警部補が不安そうな顔をしたが「ま、あとは任せるわ」と言って去っていってしまった。
初仕事に浮かれる私に、アランが「じゃあ、服を買いに行こうか」と晴れやかな表情で言った。
「服?」
「被害者の共通点。それは、君が過去演じていたゆるふわ花畑ハチミツ漬け少女趣味な子たちばかりだ」
露骨に嫌な顔をしてみせたが、「おやぁ?いい大人が、一度引き受けた仕事を放棄するのかい?」と嫌味ったらしく聞かれては引き下がれない。
「スターフェイズさんが趣味に走ったのかと思って、つい」
「嫌いではないよ」
君が纏う衣装、すべてが俺の好みだ。
そんな甘ったるいことを言われれば大抵の女は落ちるだろうが、何度も言うように私は慣れてしまっているので砂と唾しか吐けない。
そんなわけで、ウキウキなアランに連れられ囮用に数着服を買って、拐われたと思われる場所からどこを彷徨くかを話し合った。
どの子も、いつも公園で一人遊ぶような子だったらしい。
なので、私もフリフリエプロンドレスを身に纏い、片手には童話の本を持ち、もう片手にはウサギの人形を持った格好をしている。
「違和感ねえー!」
「可愛い」
大笑いするザップさんと親指を立てるチェインさんに、少なからず悪態を吐きたくなった。
「だが、ミス・レストシャーナ。本当に一人で大丈夫かい?」
不安そうなクラウスさんに、私が「大丈夫です」と言う前に、アランが「大丈夫さ」と軽く請け負う。
「なんてったって僕の従妹だぞ、クラウス。こんな事件くらい平気だ」
変にハードルをあげないでほしいが、希望には沿ってあげよう。
その日から一週間ほど公園で世界童話集をペラペラと読んでいるが、釣れるのは幼女趣味の変態ばかりだった。
まあ、こういうのも捕まえておこうということで、連れ去られる振りをして路地裏でぼこぼこにしてから警部補に通報しておいた。
「こういう囮捜査官の方が向いてるんじゃないか?」
と、警部補にからかわれた。
待てど暮らせど不審な人物は現れず、釣り場を変えた方がいいかと思っていた時だった。
「お嬢ちゃん、いつもここにいるね」
声をかけてきたのは、いつもワゴンで花を売っている男だった。
「おじ様はいつもここでお花を売ってらっしゃるのね」
「おや、知ってたかい?」
「勿論よ。毎日通ってるんだもの。いやでも知っているわ」
「そっか。お父さんやお母さんは?」
「お仕事よ。朝も夜もお仕事でいないの。私、いつも一人なの」
「そうか、それは寂しいね。よければ、寂しくなくなるようにしてあげようか?」
「本当に!とっても気になるわ!」
「じゃあ……一緒に行こうか……」
そう男が不穏に呟くと、ワゴンの下から木の根が延びてきて引きずり込まれた。
よし、釣れた。