平隊員時代
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虚との戦闘で負傷し、副隊長継続が難しくなり三番隊副隊長を吉良に譲ってから、数ヶ月経った。
いまの私は一介の隊員。
最初こそ腫れ物を扱うようだったが、いまでは書類の相談は全部私に来るようになった。
あと、ギンの相談窓口。
「日葦副隊長……また市丸隊長が……」
「……吉良“副隊長”」
「あ……すみません……」
「それで、どうしました?」
そう聞くと、情けない顔で「またいなくなりました……」と嫌な報告をしてきた。
一度外に出てからギンの霊圧を探るが、完全に沈黙。
これはつまり、探すなということだろう。
「帰ってくるまで待ちましょう」
「だ、大丈夫なんですか……期日迫ってる書類が結構あるのですが……」
「市丸隊長はやらせれば仕上げますから、いまは自分の仕事に専念してください」
ほら、執務室に戻った、戻った。と背中を押すと、「あの、日葦さん。一緒に執務室で仕事してくれませんか?」と言われて、ずっこけそうになった。
な、なんで……。
「隊首室で、一人で書類の山を見てると胃が……」
「胃薬飲んで頑張ってください。じゃ、私は十番隊に書類届けに行きますので」
では!と吉良を置いて十番隊の隊社に向かい、回ってきた書類を十番隊の隊員に確認してもらっていると、「やっぱり日葦か」と声をかけられた。
「日番谷隊長」
「松本見なかったか?」
「こちらは市丸隊長が消えたので、最悪の可能性としては二人で飲みに行ってますね」
「一番考えたくねえ可能性だな……」
しかし、二人が同時におらず探すなということは飲んでいる可能性が高い。
二人で深々としたため息を吐き、お互いにがんばりましょう、と励まし合い解散としようとしたら「昼飯行かねえか」と誘われた。
「でも私、お財布持ってきてないですよ?」
「いい、いい。奢ってやるよ。その代わり、仕事手伝え」
「なんでそうなるんですか」
「松本の仕事まで肩代わりしてると、たまる一方なんだよ。かと言って、他の連中だと教えながらのこともあるからな。その点、お前は副隊長経験があるから、できるだろ?」
ニヤリ、と悪い笑みを浮かべた。
過去を思い出す。
副隊長時代。ギンにサボられ、ひたすら黙々と事務処理をしていたとき、たしかに事務処理でかなり手一杯だった。
それでも、うちはギンが最終的にたまったら一気に片付けていたから、まだましだった。
けど、乱菊は絶対にやらないだろうし。
「……わかりました、お手伝いします」
「なら、飯食いに行くぞ」
「はーい」
日番谷隊長と軽く食事をし、吉良に十番隊の手伝いをしてくると伝え、十番隊執務室で乱菊の分の書類を片付けていると、地獄蝶が飛んできた。
「あー……やば……」
「どうした?」
「うちの隊長が帰ってきたらしいんですが……」
「なんかあったのか?」
「……目茶苦茶機嫌悪くて、助けて欲しいと」
なんで機嫌悪いんだよ、とこっちが少し機嫌が悪くなりそうになりながらも、日番谷隊長に断りを入れて隊舎に帰ると吉良に捕まった。
なすがまま執務室に放り込まれ、「あとよろしくお願いします!」と言って逃げられた。
「お帰り、秋露……」
「……ただいま戻りました」
息がつまるくらいの殺気に逃げ出したい気持ちになるが、逃がしてはくれないだろう。
「どこに行っていたんですか?」
「んー?乱菊とちょーっと飲んでただけ」
職務中に飲むな、とキレそうになりそうだったが、その前に「秋露はどこいっとったん?」と聞かれた。
「十番隊の仕事を手伝っていました」
「へぇ?自分とこの仕事せんと?」
「私は平隊員です。席官ならば責められるのはわかりますが、仕事も隊長の物以外は滞りなく進んでおり、私一人抜けても問題ありませんでした。なにより、隊長格の命令には背けません」
まあ、正しくは命令ではなかったわけだが。
ここで吉良が良いと言ったなど言えば、怒りの矛先が吉良に向きかねない。
しかし、このままでは怒りが収まりそうにもないな。
「勝手をしたことは問題であったとは思います。処分は受けますので、なんなりと」
「つまり、なんでもお願いを聞いてくれる」
「違います」
そうはならない。
「えー?じゃあ、許さへん」
「つまり、お咎めなし」
「ちゃう。なんでも言うこと聞いてくれへんと、イヅルが倒れてまうかも知れへんなー」
それは仕事をしない宣言なのか、嫌がらせして胃に穴開けるぞ宣言なのか。
どのみち可哀想だ。
「承知しました」
「ほんまに?」
「本当に」
顔を輝かせながら、「なんにしようかな~」と鼻歌交じりに呟くのを白い目で見ながら待つ。
「ほなら、ちゅー……」
「……」
「あかん?」
「いや、それで得るものがあるのかと思っただけです」
「そうでもせんと、してくれへんやん!」
「する必要がないですし、したくないので」
なんで付き合ってもいない男としないといけないんだ。
「ボクはこんなに秋露が好きなのに……」
「で、結局なにすればいいんですか」
「ほなら、ぎゅっ、てして」
まあ、それなら。と、飛び込んでこいと腕を広げて待つギンの側まで行き、昔ギンがまだチビだったときのようにギンの頭を抱き締めて頭を撫でる。
「秋露、ほんまそれ卑怯。ボクがそれ好きなん、知っててやっとる?」
「やってる」
「卑怯やぁ……」
いまの私は一介の隊員。
最初こそ腫れ物を扱うようだったが、いまでは書類の相談は全部私に来るようになった。
あと、ギンの相談窓口。
「日葦副隊長……また市丸隊長が……」
「……吉良“副隊長”」
「あ……すみません……」
「それで、どうしました?」
そう聞くと、情けない顔で「またいなくなりました……」と嫌な報告をしてきた。
一度外に出てからギンの霊圧を探るが、完全に沈黙。
これはつまり、探すなということだろう。
「帰ってくるまで待ちましょう」
「だ、大丈夫なんですか……期日迫ってる書類が結構あるのですが……」
「市丸隊長はやらせれば仕上げますから、いまは自分の仕事に専念してください」
ほら、執務室に戻った、戻った。と背中を押すと、「あの、日葦さん。一緒に執務室で仕事してくれませんか?」と言われて、ずっこけそうになった。
な、なんで……。
「隊首室で、一人で書類の山を見てると胃が……」
「胃薬飲んで頑張ってください。じゃ、私は十番隊に書類届けに行きますので」
では!と吉良を置いて十番隊の隊社に向かい、回ってきた書類を十番隊の隊員に確認してもらっていると、「やっぱり日葦か」と声をかけられた。
「日番谷隊長」
「松本見なかったか?」
「こちらは市丸隊長が消えたので、最悪の可能性としては二人で飲みに行ってますね」
「一番考えたくねえ可能性だな……」
しかし、二人が同時におらず探すなということは飲んでいる可能性が高い。
二人で深々としたため息を吐き、お互いにがんばりましょう、と励まし合い解散としようとしたら「昼飯行かねえか」と誘われた。
「でも私、お財布持ってきてないですよ?」
「いい、いい。奢ってやるよ。その代わり、仕事手伝え」
「なんでそうなるんですか」
「松本の仕事まで肩代わりしてると、たまる一方なんだよ。かと言って、他の連中だと教えながらのこともあるからな。その点、お前は副隊長経験があるから、できるだろ?」
ニヤリ、と悪い笑みを浮かべた。
過去を思い出す。
副隊長時代。ギンにサボられ、ひたすら黙々と事務処理をしていたとき、たしかに事務処理でかなり手一杯だった。
それでも、うちはギンが最終的にたまったら一気に片付けていたから、まだましだった。
けど、乱菊は絶対にやらないだろうし。
「……わかりました、お手伝いします」
「なら、飯食いに行くぞ」
「はーい」
日番谷隊長と軽く食事をし、吉良に十番隊の手伝いをしてくると伝え、十番隊執務室で乱菊の分の書類を片付けていると、地獄蝶が飛んできた。
「あー……やば……」
「どうした?」
「うちの隊長が帰ってきたらしいんですが……」
「なんかあったのか?」
「……目茶苦茶機嫌悪くて、助けて欲しいと」
なんで機嫌悪いんだよ、とこっちが少し機嫌が悪くなりそうになりながらも、日番谷隊長に断りを入れて隊舎に帰ると吉良に捕まった。
なすがまま執務室に放り込まれ、「あとよろしくお願いします!」と言って逃げられた。
「お帰り、秋露……」
「……ただいま戻りました」
息がつまるくらいの殺気に逃げ出したい気持ちになるが、逃がしてはくれないだろう。
「どこに行っていたんですか?」
「んー?乱菊とちょーっと飲んでただけ」
職務中に飲むな、とキレそうになりそうだったが、その前に「秋露はどこいっとったん?」と聞かれた。
「十番隊の仕事を手伝っていました」
「へぇ?自分とこの仕事せんと?」
「私は平隊員です。席官ならば責められるのはわかりますが、仕事も隊長の物以外は滞りなく進んでおり、私一人抜けても問題ありませんでした。なにより、隊長格の命令には背けません」
まあ、正しくは命令ではなかったわけだが。
ここで吉良が良いと言ったなど言えば、怒りの矛先が吉良に向きかねない。
しかし、このままでは怒りが収まりそうにもないな。
「勝手をしたことは問題であったとは思います。処分は受けますので、なんなりと」
「つまり、なんでもお願いを聞いてくれる」
「違います」
そうはならない。
「えー?じゃあ、許さへん」
「つまり、お咎めなし」
「ちゃう。なんでも言うこと聞いてくれへんと、イヅルが倒れてまうかも知れへんなー」
それは仕事をしない宣言なのか、嫌がらせして胃に穴開けるぞ宣言なのか。
どのみち可哀想だ。
「承知しました」
「ほんまに?」
「本当に」
顔を輝かせながら、「なんにしようかな~」と鼻歌交じりに呟くのを白い目で見ながら待つ。
「ほなら、ちゅー……」
「……」
「あかん?」
「いや、それで得るものがあるのかと思っただけです」
「そうでもせんと、してくれへんやん!」
「する必要がないですし、したくないので」
なんで付き合ってもいない男としないといけないんだ。
「ボクはこんなに秋露が好きなのに……」
「で、結局なにすればいいんですか」
「ほなら、ぎゅっ、てして」
まあ、それなら。と、飛び込んでこいと腕を広げて待つギンの側まで行き、昔ギンがまだチビだったときのようにギンの頭を抱き締めて頭を撫でる。
「秋露、ほんまそれ卑怯。ボクがそれ好きなん、知っててやっとる?」
「やってる」
「卑怯やぁ……」
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