お憑かれspring 1年目
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放送委員の役割分担はくじ引きの筈が、高田先輩が「俺、放送作家!」と言い、結城先輩が「ほなら俺、音響!」と言い、忍足先輩が「やっぱ、俺がメインMCやろ!」と言い、最後に声を合わせて「そしてサブMCは、スターセラピニスト夕日さんやー!」と勝手に決められてしまった。
うぐうううう。
「忍足謙也の銀河戦隊スターレンジャー始まるで!メインMCは浪速のスピードスター、忍足謙也がお送りするで!」
「サブMCは、浪速のスターセラピニスト夕日一二三がお送りします……」
「なんやー?テンション低いで、スターセラピニスト~」
「はい、では時間が惜しいので一通目のリクエスト&お便りです」
「スルーか!?」
大阪のテンションに付き合っていたら、確実に疲労困憊になるので敢えて流す。
私がお便りを読み、忍足先輩がコメントして、私がぶった切って曲を流す。
そんな感じでやっていたら、放送終了時間となる。
「それでは、最後にお知らせのお時間です」
「まだ入部届け出しとらん奴は今日中に至急!提出するように。特に夕日さんやって。なんや、自分まだ入部届けだしとらんのか?」
「はい。どこの部活もレベルが高いので気後れしてしまいまして」
「そんなん気にせんと、入ればええねん!せや!テニス部のマネージャーやらん?」
「前向きに考えさせていただきます」
そんな会話で締め括られた放送は上々な評判だったらしく、来週も私と忍足先輩のMCで行くと言われた。
くじ引きってなんだったっけ……。
あぁ、それより入部届けか。
文化部も運動部も、入りたいのがないんだよなぁ。
放課後、どうしたものかと部活一覧と紹介文を見るがどれも文字だけなのに伝わるテンションの高さ。
文化部は辛うじて、文芸部が大人しく感じるので文芸部にしておこう。
運動部、本当にどうしよう……。
ペンをクルクル回していると、弾かれるようにペンが吹き飛び廊下へと転がっていった。
弾かれた原因である浮遊霊はクスクス笑いながら漂っている。
そろそろ黄昏時の所為か、ああいう類いが元気になる。
大きく溜め息を吐き、ペンを取りに行くと廊下の殆どを覆うように鎮座する陰の気の塊。
何でこんな所に……、と疑問に思うが、取り合えずこの大きさはいけないな。
人がいないのを確認して、カメハメ波のポーズをする。
別にカメハメ波ではなくてもいいのだが、気の持ちようというやつだ。
手の中に陽の気を集め勢いよく前へと押し出す。
「破っ!」
陰の気は霧散したが、その中から左手に包帯を巻いた男子生徒が現れた。
片膝をついた男子生徒は、ポカンとした表情でこちらを見ている。
見られたという羞恥心で真っ赤になり動きが止まった私を動かしたのは、男子生徒の「自分……今……」という言葉だった。
「え、えっと……今のは……」
「もしかして、キミが謙也のいっとったスターセラピニスト……!」
そう言いフラフラと立ち上がる男子生徒の肩には、先程吹き飛ばしたのに早くも陰の気が塊になり始めている。
さっきの塊は、この人が背負っていたのか。
そして、重さに堪えきれず動けなくなっていた所に私が現れた、と。
それにしても、この人の体内は気の巡りが悪くなっている。
これではまた、陰の気に押し潰されてしまう。
致し方ない。
「すみませんが、両手を貸してもらえますか?」
「あ、あぁ……」
差し出された手をとり、男子生徒の中に私の陽の気を一気に流し込み、陰の気を体から追い出す。
「っ……!」
気の巡りを強制的に変えたので、男子生徒は驚いて手を引いた。
まあ、概ね巡りはよくなったからいいだろう。
「何を思い詰めていたのかは知りませんが、定期的に負の感情は吐き出した方がいいですよ。また、動けなくなりますから」
「……そんなん、できん」
「え?」
「俺は……!俺は部長やから完璧やないとあかんのや!弱音も愚痴も言ったらあかんねん!」
うーん、私は部長とかやった事がないから分からないけど、部長ってそういうものなんだろうか。
こんなに追い詰められるものなのか。
よくは分からないが、これだけは言える。
「自分の本質を見誤らないようにしてくださいね」
「本質……?」
「はい。自分が何をしたいのか、どうありたいのか、どうしたいのか。それを見誤ると、感情に亀裂が入りまた同じことの繰り返しですよ」
それだけ伝え、私は教室に入り入部届けとのにらめっこを再開する。
やっぱり、個人競技の方が気分的に楽だし陸上部にしようかなー、と記入しようとしたら前の席に先程の部長さんが座った。
「俺、どないすればええん?」
「私はそもそも、先輩が何に悩んでいるのかも知らないので、なんとも……」
そう、やんわり何もできませんよアピールをしたのだが、先輩はぽつりぽつりと語り始めた。
二年で部長を任されたが上手く部員をまとめられない、絶対に勝つためには完璧なテニスをしなくてはいけない、優しい優等生を求められる事、それら全てがプレッシャーである事。
それを聞いて、私は気になった事を口にする。
「先輩は、どうしてこの学校に入ったんですか?」
「どうして……?」
「家が近いからですか?テニスがしたかったからですか?」
先輩は少し考え「校風が、好きやったから……」と答えた。
「ここの校風ってどんなですか?」
「自由で、お笑いができて、文武両道で……」
「じゃあ、今の先輩は文武両道しか目指せてない。不完全ですね」
「あっ……」
「月並みですが、人間なんて皆不完全な生き物ですよ。先輩が優しい優等生になったとしても、そこに自由で面白味はありません。必ず欠如する部分はあるんですよ。全力投球と完璧は似て非なるものです。全部完璧じゃなくていいんです。一つだけ完璧にすればいいんですよ」
「一つだけ……」
「先輩が完璧にしたいものはなんですか?」
先輩は机の一点を見つめ、徐に立ち上がり「俺、いかな!」と言った。
うん、吹っ切れたのか気の巡りはよくなったようだ。
そのまま出ていったかと思うと、また戻ってきたかと思うと私からペンを奪い部活一覧の冊子に何やら書き始めた。
「連絡したってな!」
そう言い、颯爽と去っていった。
冊子にはメールアドレスと電話番号、そして白石蔵ノ介の名前が書かれていた。
うぐうううう。
「忍足謙也の銀河戦隊スターレンジャー始まるで!メインMCは浪速のスピードスター、忍足謙也がお送りするで!」
「サブMCは、浪速のスターセラピニスト夕日一二三がお送りします……」
「なんやー?テンション低いで、スターセラピニスト~」
「はい、では時間が惜しいので一通目のリクエスト&お便りです」
「スルーか!?」
大阪のテンションに付き合っていたら、確実に疲労困憊になるので敢えて流す。
私がお便りを読み、忍足先輩がコメントして、私がぶった切って曲を流す。
そんな感じでやっていたら、放送終了時間となる。
「それでは、最後にお知らせのお時間です」
「まだ入部届け出しとらん奴は今日中に至急!提出するように。特に夕日さんやって。なんや、自分まだ入部届けだしとらんのか?」
「はい。どこの部活もレベルが高いので気後れしてしまいまして」
「そんなん気にせんと、入ればええねん!せや!テニス部のマネージャーやらん?」
「前向きに考えさせていただきます」
そんな会話で締め括られた放送は上々な評判だったらしく、来週も私と忍足先輩のMCで行くと言われた。
くじ引きってなんだったっけ……。
あぁ、それより入部届けか。
文化部も運動部も、入りたいのがないんだよなぁ。
放課後、どうしたものかと部活一覧と紹介文を見るがどれも文字だけなのに伝わるテンションの高さ。
文化部は辛うじて、文芸部が大人しく感じるので文芸部にしておこう。
運動部、本当にどうしよう……。
ペンをクルクル回していると、弾かれるようにペンが吹き飛び廊下へと転がっていった。
弾かれた原因である浮遊霊はクスクス笑いながら漂っている。
そろそろ黄昏時の所為か、ああいう類いが元気になる。
大きく溜め息を吐き、ペンを取りに行くと廊下の殆どを覆うように鎮座する陰の気の塊。
何でこんな所に……、と疑問に思うが、取り合えずこの大きさはいけないな。
人がいないのを確認して、カメハメ波のポーズをする。
別にカメハメ波ではなくてもいいのだが、気の持ちようというやつだ。
手の中に陽の気を集め勢いよく前へと押し出す。
「破っ!」
陰の気は霧散したが、その中から左手に包帯を巻いた男子生徒が現れた。
片膝をついた男子生徒は、ポカンとした表情でこちらを見ている。
見られたという羞恥心で真っ赤になり動きが止まった私を動かしたのは、男子生徒の「自分……今……」という言葉だった。
「え、えっと……今のは……」
「もしかして、キミが謙也のいっとったスターセラピニスト……!」
そう言いフラフラと立ち上がる男子生徒の肩には、先程吹き飛ばしたのに早くも陰の気が塊になり始めている。
さっきの塊は、この人が背負っていたのか。
そして、重さに堪えきれず動けなくなっていた所に私が現れた、と。
それにしても、この人の体内は気の巡りが悪くなっている。
これではまた、陰の気に押し潰されてしまう。
致し方ない。
「すみませんが、両手を貸してもらえますか?」
「あ、あぁ……」
差し出された手をとり、男子生徒の中に私の陽の気を一気に流し込み、陰の気を体から追い出す。
「っ……!」
気の巡りを強制的に変えたので、男子生徒は驚いて手を引いた。
まあ、概ね巡りはよくなったからいいだろう。
「何を思い詰めていたのかは知りませんが、定期的に負の感情は吐き出した方がいいですよ。また、動けなくなりますから」
「……そんなん、できん」
「え?」
「俺は……!俺は部長やから完璧やないとあかんのや!弱音も愚痴も言ったらあかんねん!」
うーん、私は部長とかやった事がないから分からないけど、部長ってそういうものなんだろうか。
こんなに追い詰められるものなのか。
よくは分からないが、これだけは言える。
「自分の本質を見誤らないようにしてくださいね」
「本質……?」
「はい。自分が何をしたいのか、どうありたいのか、どうしたいのか。それを見誤ると、感情に亀裂が入りまた同じことの繰り返しですよ」
それだけ伝え、私は教室に入り入部届けとのにらめっこを再開する。
やっぱり、個人競技の方が気分的に楽だし陸上部にしようかなー、と記入しようとしたら前の席に先程の部長さんが座った。
「俺、どないすればええん?」
「私はそもそも、先輩が何に悩んでいるのかも知らないので、なんとも……」
そう、やんわり何もできませんよアピールをしたのだが、先輩はぽつりぽつりと語り始めた。
二年で部長を任されたが上手く部員をまとめられない、絶対に勝つためには完璧なテニスをしなくてはいけない、優しい優等生を求められる事、それら全てがプレッシャーである事。
それを聞いて、私は気になった事を口にする。
「先輩は、どうしてこの学校に入ったんですか?」
「どうして……?」
「家が近いからですか?テニスがしたかったからですか?」
先輩は少し考え「校風が、好きやったから……」と答えた。
「ここの校風ってどんなですか?」
「自由で、お笑いができて、文武両道で……」
「じゃあ、今の先輩は文武両道しか目指せてない。不完全ですね」
「あっ……」
「月並みですが、人間なんて皆不完全な生き物ですよ。先輩が優しい優等生になったとしても、そこに自由で面白味はありません。必ず欠如する部分はあるんですよ。全力投球と完璧は似て非なるものです。全部完璧じゃなくていいんです。一つだけ完璧にすればいいんですよ」
「一つだけ……」
「先輩が完璧にしたいものはなんですか?」
先輩は机の一点を見つめ、徐に立ち上がり「俺、いかな!」と言った。
うん、吹っ切れたのか気の巡りはよくなったようだ。
そのまま出ていったかと思うと、また戻ってきたかと思うと私からペンを奪い部活一覧の冊子に何やら書き始めた。
「連絡したってな!」
そう言い、颯爽と去っていった。
冊子にはメールアドレスと電話番号、そして白石蔵ノ介の名前が書かれていた。