お憑かれspring 2年目
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その日の朝の空気は酷く澄みきっていた。
新学期という晴れの日には相応しい空気だが、これは澄みきりすぎではないか。
私が白石先輩に憑いたモノを一掃した時、いや、それ以上に澄みきっている。
なにか、神聖な存在が来たのか?
それなら別に構わないのだが、脚である首なし馬や大天狗が滅せられるとちょっと困るな。
その脚も今日は捕まらなかったので、久しぶりに自転車で光くんを迎えに行こうとしたら、境内にタンクトップの赤茶髪の男の子がぐったりした様子で座っていた。
バチバチの神聖レベルの生命エネルギーをほとばしらせながら。
「……キミ、なにしてるの?」
躊躇ったが一応声をかければ、男の子は「腹へったぁ……」と情けない声をあげる。
そんな生命エネルギーみなぎらせておいて、お腹が減ったとは。
「えっと……うちの人に事情話してくるから、ちょっと待ってて……」
今日は確か、テニス部の練習はなかったはずだし少し行くのが遅くなっても大丈夫だろう。
来た道を戻り、おばさんと住職に事情を話して一緒に境内まで行くと、「この子はワテらが見とくから、一二三ちゃんはもう行き」と住職が引き受けてくれたのでお願いして、急いで光くんを迎えに行くとレンくんの「ひーくん、おきやー!姉ねきたでー!」という元気な声と足音がした。
おばさんとお姉さんに挨拶をし、二階へとあがるとベッドから半分程ずり落ちた光くんがレンくんの頭を鷲掴んでいた。
「ひーくん、はなしてやー!」
「うっさい、言うとんねん……クソチビ……」
相変わらずの低血圧に苦笑いしながら、「光くん、朝だよ」と軽く揺すれば「寝かせろや……」と悪態を吐きつつも、ゆっくりとした動作で起き上がる。
「レンくん、ひーくん着替えるから下で待っててね」
「はーい!」
元気なレンくんの声に光くんが頭を抱えながら布団に戻ろうとするのでストップをかけ、いつも通り着替えやら荷物の用意をして一階へと追い立て食事をさせる。
「今日、来るん遅かったな。なんかあったんか?」
食事をゆっくりとる光くんが聞いてきたので、「虎柄?のタンクトップ着た子がお腹空かせていて」と言った瞬間、ぴたりと動きを止めて「それ、虎柄やなくて豹柄とちゃうか?」と聞いてきたが、そういう厳密な柄の違いはわからないんだよね、私。
「いや、ちゃうやろ。虎と豹なんやから」
「わからない」
「まあ、ええわ。そいつ、赤茶の髪でテニスラケット背負ってへんかったか?」
「あー、背負ってたかも」
おぼろ気だが、あった気がする。
私の答えに、光くんは面倒くさいそうに「金太郎か」と呟いた。
「ここら辺でテニス部言うたら四天宝寺しかあらへんから、当たり前やけど」
「知り合い?」
「小学校ん時の後輩や。めっちゃ喧しいゴンタクレや」
「ヘイ、光くん。ゴンタクレ とは」
「ゴンタクレ わんぱく小僧という 意味 です」
律儀にSiriっぽく返してくれた光くんに「ありがとう、光くん」と返せば「どういたしまして」としっかり答えてくれる。
「四天宝寺に染まってきたね」
「自分にだけは言われたないわ。せやけど、あの金太郎が来るとなると波乱の予感しかせんわ」
「その時、光くんはまだ自分の運命を知らなかった」
「洒落にならん、やめろ」
冗談もそこそこに光くん宅を出て駐輪場に着くと、待ってましたと言わんばかりに金色先輩と一氏先輩が現れ「突撃!お笑いレベルチェックー!」と言い出したので、光くんとスルーしたのだが、この二人がそう簡単に見逃してくれるはずもない。
「あかんで!これは、うちらに認められし子らの試験や!」
「光栄に思うんやな!」
二人が胸を張って言うので、こちらも迎え撃ってダブル舌打ちをした。
「頼んどりませんわ」
「先輩たち、ずっと張ってたんですか?暇なんですか?」
「人に試験与えとる暇あるんやったら、ネタのひとつでも考えた方が有意義なんとちゃいますか?」
「それとも、後輩のネタを見ないとインスピレーション得られないレベルの窮地なんですか?」
「そらあきませんわ。解散した方がええんとちゃいます?」
怒濤の私の毒舌(故意)と光くんの毒舌(故意)で蜂の巣になったお笑いコンビは地にひれ伏した。
「さ、さすがの切れ味やわ……!さながら死海……いや!毒の海!」
「夕日……自分、塩対応を毒舌に昇華させるとはさすが俺の弟子や……!」
昇華させた覚えも弟子になった覚えもないんだよなぁ、これが。
もう、このまま逃げようとしたのに、無駄にしぶといお笑いコンビは「しかーし!」と言いながら復活した。
「光!あんたは、毒舌キャラから進化してへん!停滞は死や!」
「そして、夕日!毒舌キャラに進化したことは褒めたるが、それやと相方の光とキャラ被りやし、お前の持ち味であるモノマネが生きん!」
お返しとばかりにダメ出しをされたが、私も
光くんも「はぁ」と生返事したら「このソルトツインズが!」と泣き真似を始められた。
「これはもう、ネタをやるしかないのかな」
「そもそも俺ら、コンビ活動もしとらんしネタなんてあらんやろ」
「というか、私そういうキャラじゃないし」
「自分、その冴え渡るブラックジョークでキャラやないとかどの口で言うとるん?」
「いや、あれはジョークじゃなくて本心だから」
「余計怖いわ。純な一二三はどこに行ったんや」
「そんな時代があった?」
「なかったな」
「せやろ?」
という雑談をしていたら、「自分ら、それ漫談か?」とお笑いコンビがざわざわしながら「斬新な毒舌漫談や……」と、またも都合のいい解釈を始めた。
この人たち、頭の回転が速すぎて遠心力で明後日の方向に解釈吹っ飛ばすよね。
「あの、どうでもええんですけど、時間ヤバいんで行きますね」
「本当だ。じゃっ」
ざわざわしている先輩たちの隙を突いて同時に走りだし、一緒にクラス訳を見に行ったら見事にクラスを離されていて、若干不安になった。
「一二三、大丈夫か?」
「不安でエクトプラズム吐きそう」
「ちょっと見てみたなるやろうが」
新学期という晴れの日には相応しい空気だが、これは澄みきりすぎではないか。
私が白石先輩に憑いたモノを一掃した時、いや、それ以上に澄みきっている。
なにか、神聖な存在が来たのか?
それなら別に構わないのだが、脚である首なし馬や大天狗が滅せられるとちょっと困るな。
その脚も今日は捕まらなかったので、久しぶりに自転車で光くんを迎えに行こうとしたら、境内にタンクトップの赤茶髪の男の子がぐったりした様子で座っていた。
バチバチの神聖レベルの生命エネルギーをほとばしらせながら。
「……キミ、なにしてるの?」
躊躇ったが一応声をかければ、男の子は「腹へったぁ……」と情けない声をあげる。
そんな生命エネルギーみなぎらせておいて、お腹が減ったとは。
「えっと……うちの人に事情話してくるから、ちょっと待ってて……」
今日は確か、テニス部の練習はなかったはずだし少し行くのが遅くなっても大丈夫だろう。
来た道を戻り、おばさんと住職に事情を話して一緒に境内まで行くと、「この子はワテらが見とくから、一二三ちゃんはもう行き」と住職が引き受けてくれたのでお願いして、急いで光くんを迎えに行くとレンくんの「ひーくん、おきやー!姉ねきたでー!」という元気な声と足音がした。
おばさんとお姉さんに挨拶をし、二階へとあがるとベッドから半分程ずり落ちた光くんがレンくんの頭を鷲掴んでいた。
「ひーくん、はなしてやー!」
「うっさい、言うとんねん……クソチビ……」
相変わらずの低血圧に苦笑いしながら、「光くん、朝だよ」と軽く揺すれば「寝かせろや……」と悪態を吐きつつも、ゆっくりとした動作で起き上がる。
「レンくん、ひーくん着替えるから下で待っててね」
「はーい!」
元気なレンくんの声に光くんが頭を抱えながら布団に戻ろうとするのでストップをかけ、いつも通り着替えやら荷物の用意をして一階へと追い立て食事をさせる。
「今日、来るん遅かったな。なんかあったんか?」
食事をゆっくりとる光くんが聞いてきたので、「虎柄?のタンクトップ着た子がお腹空かせていて」と言った瞬間、ぴたりと動きを止めて「それ、虎柄やなくて豹柄とちゃうか?」と聞いてきたが、そういう厳密な柄の違いはわからないんだよね、私。
「いや、ちゃうやろ。虎と豹なんやから」
「わからない」
「まあ、ええわ。そいつ、赤茶の髪でテニスラケット背負ってへんかったか?」
「あー、背負ってたかも」
おぼろ気だが、あった気がする。
私の答えに、光くんは面倒くさいそうに「金太郎か」と呟いた。
「ここら辺でテニス部言うたら四天宝寺しかあらへんから、当たり前やけど」
「知り合い?」
「小学校ん時の後輩や。めっちゃ喧しいゴンタクレや」
「ヘイ、光くん。ゴンタクレ とは」
「ゴンタクレ わんぱく小僧という 意味 です」
律儀にSiriっぽく返してくれた光くんに「ありがとう、光くん」と返せば「どういたしまして」としっかり答えてくれる。
「四天宝寺に染まってきたね」
「自分にだけは言われたないわ。せやけど、あの金太郎が来るとなると波乱の予感しかせんわ」
「その時、光くんはまだ自分の運命を知らなかった」
「洒落にならん、やめろ」
冗談もそこそこに光くん宅を出て駐輪場に着くと、待ってましたと言わんばかりに金色先輩と一氏先輩が現れ「突撃!お笑いレベルチェックー!」と言い出したので、光くんとスルーしたのだが、この二人がそう簡単に見逃してくれるはずもない。
「あかんで!これは、うちらに認められし子らの試験や!」
「光栄に思うんやな!」
二人が胸を張って言うので、こちらも迎え撃ってダブル舌打ちをした。
「頼んどりませんわ」
「先輩たち、ずっと張ってたんですか?暇なんですか?」
「人に試験与えとる暇あるんやったら、ネタのひとつでも考えた方が有意義なんとちゃいますか?」
「それとも、後輩のネタを見ないとインスピレーション得られないレベルの窮地なんですか?」
「そらあきませんわ。解散した方がええんとちゃいます?」
怒濤の私の毒舌(故意)と光くんの毒舌(故意)で蜂の巣になったお笑いコンビは地にひれ伏した。
「さ、さすがの切れ味やわ……!さながら死海……いや!毒の海!」
「夕日……自分、塩対応を毒舌に昇華させるとはさすが俺の弟子や……!」
昇華させた覚えも弟子になった覚えもないんだよなぁ、これが。
もう、このまま逃げようとしたのに、無駄にしぶといお笑いコンビは「しかーし!」と言いながら復活した。
「光!あんたは、毒舌キャラから進化してへん!停滞は死や!」
「そして、夕日!毒舌キャラに進化したことは褒めたるが、それやと相方の光とキャラ被りやし、お前の持ち味であるモノマネが生きん!」
お返しとばかりにダメ出しをされたが、私も
光くんも「はぁ」と生返事したら「このソルトツインズが!」と泣き真似を始められた。
「これはもう、ネタをやるしかないのかな」
「そもそも俺ら、コンビ活動もしとらんしネタなんてあらんやろ」
「というか、私そういうキャラじゃないし」
「自分、その冴え渡るブラックジョークでキャラやないとかどの口で言うとるん?」
「いや、あれはジョークじゃなくて本心だから」
「余計怖いわ。純な一二三はどこに行ったんや」
「そんな時代があった?」
「なかったな」
「せやろ?」
という雑談をしていたら、「自分ら、それ漫談か?」とお笑いコンビがざわざわしながら「斬新な毒舌漫談や……」と、またも都合のいい解釈を始めた。
この人たち、頭の回転が速すぎて遠心力で明後日の方向に解釈吹っ飛ばすよね。
「あの、どうでもええんですけど、時間ヤバいんで行きますね」
「本当だ。じゃっ」
ざわざわしている先輩たちの隙を突いて同時に走りだし、一緒にクラス訳を見に行ったら見事にクラスを離されていて、若干不安になった。
「一二三、大丈夫か?」
「不安でエクトプラズム吐きそう」
「ちょっと見てみたなるやろうが」
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