お憑かれwinter 1年目
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一二三の告白からなんか変わったかと聞かれると、周りは特に変わりはなかった。
先輩らは相変わらずアホで、やることもネタもしょーもない。
俺もなんか変わるはずもなく、同じ付き合いをしていた。
唯一変わったのは一二三で、今まで一歩引いた位置から付き合っていたようなよそよそしさが、憑き物が落ちたようになくなった。
表情も柔らかくなり、控えめながら笑うようにもなったし、なによりも幽霊やら妖怪への振り切れ方が潔くなった。
この間、俺を迎えに来た時は首なし馬に乗せられ、そのまま空駆けて学校まで行かせていたくらいだ。
あの世に連れていかれるのでは、と心配したが「そんなことしようものなら、絞めるから」と手綱を絞めていて「妖怪を脅すな」と思わず妖怪に同情してしまった。
可哀想に。
「おはようございます、忍足先輩。今日も元気に沢山憑けてますね」
「おはようさん!朝からそういうおっかないトーク展開するんやめて?!」
半泣きの謙也さんに、「はい、はい」と軽く返事をして肩を叩くと謙也さんが「軽なったー!おおきに!」とはしゃぐ。
「なんや、謙也くん。またなんか憑けとったん?」
「人気者はつらいなぁ」
「もっとちゃうモテ方したい!」
じたばたする謙也さんに、一二三は玄関を指し「モテすぎるとああなりますよ」と言うので全員で見れば、げっそりした部長がおった。
なんやまた溜め込んどるのかと思えば、ユウジさんが「うっわ、うるさ!白石!自分、どこでそんなもん憑けてきたん?!」と言いながら耳を塞いだ。
「夕日、ヤバい!頭痛い!頭痛が痛い!」
「白石先輩って、本当に生き霊飛ばすの得意な人間に惚れられやすいですよね」
「悠長言うとる場合か?!」
すみませーん、と軽くユウジさんと会話をしていたかと思えば、前触れなく空中に裏拳をかました。
なんなん?どうしたん?情緒不安定?
心配になったが、どうもいつも通り殴り倒すタイプの除霊だったらしく、部長が「息できるって素晴らしい!」と深呼吸を始める。
いや、でも部長と距離あったやん?どうやったん?と聞けば、「いや、なんか生き霊の女性が嫉妬したのか襲いかかってきた」と面倒くさそうな顔で言い、続けざまに「そんなんじゃないのにね」と笑い飛ばしているのを見て、二重の意味で部長が可哀想やった。
「ちゅーか、生き霊ってぶちのめしてよかったん?」
「なんで?」
「ほら、生き霊を祓うと生き霊本人にダメージがいって場合によっては死んでまうんやろ?」
大丈夫なん?と心配してみせれば、うっすら笑みを浮かべ「見ず知らずの他人の命より、大切な知人の安全」と返され、怖い方向に振り切れたなぁ、と思った。
「俺、自分のことは善性の人間やと思ったわ」
「買い被りすぎだよ。私が善性なら、石田先輩は超善性だって」
「いや、あの人は規格外やろ」
「だよねー」
力を抜いた自然体な一二三は意外と無邪気で残酷なところがあったが、それでも変わらぬ情の厚さと鈍感さは健全で。
「俺はいまの悪い一二三の方が生き生きしとって、好きやで」
「ありがとう。あのね、痛いとか思われるかも知れないけど、最近世界が色付いてキラキラしてるの。光くんといたときも淡いパステルカラーな世界だったけど、それが世界中になったの」
「幸せそうやな」
「幸せだよ、見も心も軽い」
「楽しそうやな」
「楽しいよ、毎日」
頬を薄く染め、慣れないながらも口角を軽く上げてウキウキしている。
「やっぱり、春が近いからかな」
「一二三にはもう、春が来たな」
「……出会いと旅立ちの季節だね」
「長い冬やったな。おめでとう、一二三」
「ありがとう、光くん」
にへら、と下手な笑みを浮かべ軽く上げられた一二三の拳に自分の拳をぶつけた。
「これからも宜しくね、相棒」
「あぁ、宜しゅうな。相棒」
こうして、俺たちの出会いの一年は終わった。
先輩らは相変わらずアホで、やることもネタもしょーもない。
俺もなんか変わるはずもなく、同じ付き合いをしていた。
唯一変わったのは一二三で、今まで一歩引いた位置から付き合っていたようなよそよそしさが、憑き物が落ちたようになくなった。
表情も柔らかくなり、控えめながら笑うようにもなったし、なによりも幽霊やら妖怪への振り切れ方が潔くなった。
この間、俺を迎えに来た時は首なし馬に乗せられ、そのまま空駆けて学校まで行かせていたくらいだ。
あの世に連れていかれるのでは、と心配したが「そんなことしようものなら、絞めるから」と手綱を絞めていて「妖怪を脅すな」と思わず妖怪に同情してしまった。
可哀想に。
「おはようございます、忍足先輩。今日も元気に沢山憑けてますね」
「おはようさん!朝からそういうおっかないトーク展開するんやめて?!」
半泣きの謙也さんに、「はい、はい」と軽く返事をして肩を叩くと謙也さんが「軽なったー!おおきに!」とはしゃぐ。
「なんや、謙也くん。またなんか憑けとったん?」
「人気者はつらいなぁ」
「もっとちゃうモテ方したい!」
じたばたする謙也さんに、一二三は玄関を指し「モテすぎるとああなりますよ」と言うので全員で見れば、げっそりした部長がおった。
なんやまた溜め込んどるのかと思えば、ユウジさんが「うっわ、うるさ!白石!自分、どこでそんなもん憑けてきたん?!」と言いながら耳を塞いだ。
「夕日、ヤバい!頭痛い!頭痛が痛い!」
「白石先輩って、本当に生き霊飛ばすの得意な人間に惚れられやすいですよね」
「悠長言うとる場合か?!」
すみませーん、と軽くユウジさんと会話をしていたかと思えば、前触れなく空中に裏拳をかました。
なんなん?どうしたん?情緒不安定?
心配になったが、どうもいつも通り殴り倒すタイプの除霊だったらしく、部長が「息できるって素晴らしい!」と深呼吸を始める。
いや、でも部長と距離あったやん?どうやったん?と聞けば、「いや、なんか生き霊の女性が嫉妬したのか襲いかかってきた」と面倒くさそうな顔で言い、続けざまに「そんなんじゃないのにね」と笑い飛ばしているのを見て、二重の意味で部長が可哀想やった。
「ちゅーか、生き霊ってぶちのめしてよかったん?」
「なんで?」
「ほら、生き霊を祓うと生き霊本人にダメージがいって場合によっては死んでまうんやろ?」
大丈夫なん?と心配してみせれば、うっすら笑みを浮かべ「見ず知らずの他人の命より、大切な知人の安全」と返され、怖い方向に振り切れたなぁ、と思った。
「俺、自分のことは善性の人間やと思ったわ」
「買い被りすぎだよ。私が善性なら、石田先輩は超善性だって」
「いや、あの人は規格外やろ」
「だよねー」
力を抜いた自然体な一二三は意外と無邪気で残酷なところがあったが、それでも変わらぬ情の厚さと鈍感さは健全で。
「俺はいまの悪い一二三の方が生き生きしとって、好きやで」
「ありがとう。あのね、痛いとか思われるかも知れないけど、最近世界が色付いてキラキラしてるの。光くんといたときも淡いパステルカラーな世界だったけど、それが世界中になったの」
「幸せそうやな」
「幸せだよ、見も心も軽い」
「楽しそうやな」
「楽しいよ、毎日」
頬を薄く染め、慣れないながらも口角を軽く上げてウキウキしている。
「やっぱり、春が近いからかな」
「一二三にはもう、春が来たな」
「……出会いと旅立ちの季節だね」
「長い冬やったな。おめでとう、一二三」
「ありがとう、光くん」
にへら、と下手な笑みを浮かべ軽く上げられた一二三の拳に自分の拳をぶつけた。
「これからも宜しくね、相棒」
「あぁ、宜しゅうな。相棒」
こうして、俺たちの出会いの一年は終わった。