お憑かれwinter 1年目
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いつもなら、一二三の淡白な声でゆっくり目を覚まし、朝食をゆっくり食べてから、一二三のチャリンコでニケツして朝練に行くのだが、今朝は違った。
「光くん!光くん起きて!朝練遅刻するよ!」
「なんやねん。朝からうっさいわ……」
「そうじゃなくて!本当に遅刻するから!」
そう言って、俺の目の前に目覚まし時計を突きつけてきた。
目覚まし時計は、急いで着替えて朝食を掻き込んでタクシー使えばギリギリ間に合う時間。
「どういうことやねん」
「あとで謝るし説明するから、ユニフォームに着替えてご飯食べて!」
言われるまま準備を済ませ朝食を食べ外に出ると、いつものチャリンコがない。
どないするんや、と聞こうとしたがその前に、一二三が手を叩いて「お願いします!」と言うと、目の前に羽のはえた人間が降り立った。
顔には天狗面をしており、まさかと思ったら、「大天狗さん、学校までお願いします!」と宣った。
大天狗と呼ばれた大男は、俺と一二三を片腕ずつに乗せ飛び立つ。
「俺、まさかこない雑な未知との遭遇するとは思わんかったわ……」
「わしもこない雑に運搬係りにされる日が来るとは思わんかったわ」
「ごめんなさい!考え事してたら、時間が……!」
「まぁ、よい。修行せし者の頼みくらい、ひとつ聞いても功徳になる程度よ」
「ありがとうございます……!」
礼を言う一二三に、飛んでいるところを見られてはまずいのでは、と尋ねたら「神通力で姿は見えないから大丈夫」と言われた。
妖怪って便利やなぁ。
大天狗のおかげで、いつも通りの時間に裏門まで来られた。
お礼を言ってわかれ、二人揃って部室へ向かう。
その道すがら、「ユニフォーム着替えんくてもよかったやん」と文句を言えば、「万が一間に合わなかった場合を考えたんだよ」と少しげっそりした感じで言われた。
それでも、まぁーー
「吹っ切れたみたいでよかったわ」
「わかる?」
「わかる。それで、どうするん?」
「うん。光くんの言う通り、先輩たちを信じて話してみるよ。その時に話す内容考えてたら、時間過ぎちゃってさ」
晴れ晴れとした表情で告げられたことに、「さよか」以上は言うのはやめておいた。
キャラ的にも激励なんて似合わないし、俺が「がんばれ」なんて言わなくとも一二三は十分がんばって考え抜いて決めたのだ。
それこそ、「がんばれ」なんて言葉は無粋だ。
「光くん、ありがとうね」
「なにが」
「背中押してくれて」
「押したつもりはないんやけどな」
俺の言葉に、「そっか」とだけ返して突っ込んでこなかったのは、それ以上なにか言っても俺が認めることはないと判断したからだろう。
実際、俺は背中を押したつもりはない。
一二三が先輩ら信じないで怯えているのが嫌だったから「心配するな」とは言っただけ。
別に言う必要もなく、一二三がやはり言わないと言う選択をしても、俺は責めるつもりも発破をかけるつもりもなかった。
決断したのは一二三の力で、俺は本当になにもしていない。
「ほら、いまならまだ練習始まらんし着替えも終わっとると思うから行ってくればええんとちゃう?」
「えっ、光くん来てくれないの?」
「レギュラーでもない俺が部室行くんは不自然やろ」
「そこをなんとか!光様ー!」
「俺は見返りを求めるタイプの友達や」
「わかったよ!帰りにぜんざい奢ればいいんでしょ!」
「しゃーないなー」
タダぜんざいを確約し、部室の扉をノックすれば「入りー」と部長の声がした。
入れと言われているのに、ガチガチになって中に入らない一二三の後ろから扉を開け、無理矢理中に入れ扉を閉じれば完全に逃げ道はなくなった。
恨めしそうな顔をする一二三に、行け、と顎で示せば腹をくくったのか、深呼吸をして「あの、少しお話いいですか?」と切り出した。
謙也さんはなにか察したのか、緊張の面差しになった。
「どないしたん、夕日ちゃん?」
「あ、あの、みなさんは、幽霊とか妖怪って信じますか?」
うつむきながら震える声で尋ねる一二三に先輩らは顔を見合わせ、部長が「オカルト系をってことでええ?」と優しく聞けば、一二三は無言で小さく頷いた。
「せやなぁ。俺は信じとるで」
「本当ですか……?」
「夕日さんに嘘は吐きたないけど、こればっかりは夕日さんが信じてくれんとな」
「俺も人並みにはおるんちゃうかなぁ、て思うで」
「ケンちゃん、人並みってどれくらいやねん」
部長が副部長に苦笑いしながらツッコミを入れ、「自分らは?」と他の先輩らに聞いていく。
「ワシは信じとらんかったら修行なんぞせんからな」
「あっ、そうか!」
今さらなことに気が付き驚きの声をあげる一二三に、アホ、と心で思った。
ほんまに変なとこで抜けとる。
「アタイも別に信じとらんわけちゃうで。科学的に証明できひんことなんて、世の中には山ほどあるしね」
「えっ?!そうなん?!俺、小春がそういうん嫌いやと思って黙っとったのに……」
「あらぁ?以心伝心できてへんのとちゃう?」
「そんなことはあらへんけど、いまからラブレッスンしよか、小春!」
「いまは夕日ちゃんが優先やろうが一氏!」
「小春ぅ!えっと、なんやったっけ?信じるか信じへんかなら、俺は聞こえるから信じとるで」
ユウジさんの爆弾発言に、一同「ユウジ、霊感体質なんか?!」と驚愕した。
一番、そういうのから縁遠そうなのに。
ユウジさんも「聞こえたり、ちょっと感じるだけや。ただ、最近ちょっと前よりよく聞こえたりするけどな」と、鬱陶しそうに言う。
「そ、そんなオープンにしていいものなんですか?!」
「別に?こんくらいでやいやい言いよるやつなんか、知ったこっちゃないわ」
「メンタルが強い……」
「それで、夕日さんはなにが話したかったん?」
大体の内容に察しがついているであろうに、ちゃんと意を決した本人の口から言わせたらなと思ったのか、部長が尋ねれば「わ、私もなんです!私も見えて、それで、お祓いとかもできて!」あわあわと話す一二三に、部長が微笑み「知っとった」と言えば一二三はポカンと間抜けな表情になる。
「ちゅーか、夕日さんが俺のこと助けてくれた時のこと考えれば、自然とそうなんやろうなって思うし」
「あっ……」
「あー、道理でお前からもらったプレゼント持ち歩くようにしたら、耳鳴り減ったわけやな」
「一応、お守りとして祈祷しました……」
「そうなん?ありがとうね、夕日ちゃん」
「そんな……」
「ほなら、今度修行一緒にするか?」
「はい……」
「なぁなぁ、夕日さん。お化けってどんなんいるか聞いてもええ」
「小石川先輩、きっと後悔しちゃいますよ……」
副部長の質問に答えてから、その場にへたりこんだ一二三に真っ先に駆け寄ったのは謙也さんで「よおがんばったなぁ、夕日さーん!」と言いながら、一二三の頭を無遠慮に撫で回す。
これだからモテないのだ、謙也さんは……。
いま、謙也さんではなく部長が泣きそうな一二三を慰めれば、一二三の中で部長の好感度も上がり自然と感動的なシーンになっていたのに。
見てみろ、一二三の虚無顔を。
「いや、あの、忍足先輩痛い……」
「ええんやで!泣いてええんやで!」
「引っ込んだんで、もういいです。すみません、みなさん。ずっと、みなさんに話さず過ごすのが怖くて、話したんですけど……割りと軽い話でしたね」
「夕日さんにとっては軽い話やなかったんやろ?それを信じて話してくれて、俺は嬉しかったで」
おおきに、と謙也さんとは大違いの優しい頭の撫で方をした。
それに気が緩んだのか、ぶり返したのか、結局、泣きながら「ありがとうございます」と一二三は言っていた。
あの下手くそな笑顔で。
「光くん!光くん起きて!朝練遅刻するよ!」
「なんやねん。朝からうっさいわ……」
「そうじゃなくて!本当に遅刻するから!」
そう言って、俺の目の前に目覚まし時計を突きつけてきた。
目覚まし時計は、急いで着替えて朝食を掻き込んでタクシー使えばギリギリ間に合う時間。
「どういうことやねん」
「あとで謝るし説明するから、ユニフォームに着替えてご飯食べて!」
言われるまま準備を済ませ朝食を食べ外に出ると、いつものチャリンコがない。
どないするんや、と聞こうとしたがその前に、一二三が手を叩いて「お願いします!」と言うと、目の前に羽のはえた人間が降り立った。
顔には天狗面をしており、まさかと思ったら、「大天狗さん、学校までお願いします!」と宣った。
大天狗と呼ばれた大男は、俺と一二三を片腕ずつに乗せ飛び立つ。
「俺、まさかこない雑な未知との遭遇するとは思わんかったわ……」
「わしもこない雑に運搬係りにされる日が来るとは思わんかったわ」
「ごめんなさい!考え事してたら、時間が……!」
「まぁ、よい。修行せし者の頼みくらい、ひとつ聞いても功徳になる程度よ」
「ありがとうございます……!」
礼を言う一二三に、飛んでいるところを見られてはまずいのでは、と尋ねたら「神通力で姿は見えないから大丈夫」と言われた。
妖怪って便利やなぁ。
大天狗のおかげで、いつも通りの時間に裏門まで来られた。
お礼を言ってわかれ、二人揃って部室へ向かう。
その道すがら、「ユニフォーム着替えんくてもよかったやん」と文句を言えば、「万が一間に合わなかった場合を考えたんだよ」と少しげっそりした感じで言われた。
それでも、まぁーー
「吹っ切れたみたいでよかったわ」
「わかる?」
「わかる。それで、どうするん?」
「うん。光くんの言う通り、先輩たちを信じて話してみるよ。その時に話す内容考えてたら、時間過ぎちゃってさ」
晴れ晴れとした表情で告げられたことに、「さよか」以上は言うのはやめておいた。
キャラ的にも激励なんて似合わないし、俺が「がんばれ」なんて言わなくとも一二三は十分がんばって考え抜いて決めたのだ。
それこそ、「がんばれ」なんて言葉は無粋だ。
「光くん、ありがとうね」
「なにが」
「背中押してくれて」
「押したつもりはないんやけどな」
俺の言葉に、「そっか」とだけ返して突っ込んでこなかったのは、それ以上なにか言っても俺が認めることはないと判断したからだろう。
実際、俺は背中を押したつもりはない。
一二三が先輩ら信じないで怯えているのが嫌だったから「心配するな」とは言っただけ。
別に言う必要もなく、一二三がやはり言わないと言う選択をしても、俺は責めるつもりも発破をかけるつもりもなかった。
決断したのは一二三の力で、俺は本当になにもしていない。
「ほら、いまならまだ練習始まらんし着替えも終わっとると思うから行ってくればええんとちゃう?」
「えっ、光くん来てくれないの?」
「レギュラーでもない俺が部室行くんは不自然やろ」
「そこをなんとか!光様ー!」
「俺は見返りを求めるタイプの友達や」
「わかったよ!帰りにぜんざい奢ればいいんでしょ!」
「しゃーないなー」
タダぜんざいを確約し、部室の扉をノックすれば「入りー」と部長の声がした。
入れと言われているのに、ガチガチになって中に入らない一二三の後ろから扉を開け、無理矢理中に入れ扉を閉じれば完全に逃げ道はなくなった。
恨めしそうな顔をする一二三に、行け、と顎で示せば腹をくくったのか、深呼吸をして「あの、少しお話いいですか?」と切り出した。
謙也さんはなにか察したのか、緊張の面差しになった。
「どないしたん、夕日ちゃん?」
「あ、あの、みなさんは、幽霊とか妖怪って信じますか?」
うつむきながら震える声で尋ねる一二三に先輩らは顔を見合わせ、部長が「オカルト系をってことでええ?」と優しく聞けば、一二三は無言で小さく頷いた。
「せやなぁ。俺は信じとるで」
「本当ですか……?」
「夕日さんに嘘は吐きたないけど、こればっかりは夕日さんが信じてくれんとな」
「俺も人並みにはおるんちゃうかなぁ、て思うで」
「ケンちゃん、人並みってどれくらいやねん」
部長が副部長に苦笑いしながらツッコミを入れ、「自分らは?」と他の先輩らに聞いていく。
「ワシは信じとらんかったら修行なんぞせんからな」
「あっ、そうか!」
今さらなことに気が付き驚きの声をあげる一二三に、アホ、と心で思った。
ほんまに変なとこで抜けとる。
「アタイも別に信じとらんわけちゃうで。科学的に証明できひんことなんて、世の中には山ほどあるしね」
「えっ?!そうなん?!俺、小春がそういうん嫌いやと思って黙っとったのに……」
「あらぁ?以心伝心できてへんのとちゃう?」
「そんなことはあらへんけど、いまからラブレッスンしよか、小春!」
「いまは夕日ちゃんが優先やろうが一氏!」
「小春ぅ!えっと、なんやったっけ?信じるか信じへんかなら、俺は聞こえるから信じとるで」
ユウジさんの爆弾発言に、一同「ユウジ、霊感体質なんか?!」と驚愕した。
一番、そういうのから縁遠そうなのに。
ユウジさんも「聞こえたり、ちょっと感じるだけや。ただ、最近ちょっと前よりよく聞こえたりするけどな」と、鬱陶しそうに言う。
「そ、そんなオープンにしていいものなんですか?!」
「別に?こんくらいでやいやい言いよるやつなんか、知ったこっちゃないわ」
「メンタルが強い……」
「それで、夕日さんはなにが話したかったん?」
大体の内容に察しがついているであろうに、ちゃんと意を決した本人の口から言わせたらなと思ったのか、部長が尋ねれば「わ、私もなんです!私も見えて、それで、お祓いとかもできて!」あわあわと話す一二三に、部長が微笑み「知っとった」と言えば一二三はポカンと間抜けな表情になる。
「ちゅーか、夕日さんが俺のこと助けてくれた時のこと考えれば、自然とそうなんやろうなって思うし」
「あっ……」
「あー、道理でお前からもらったプレゼント持ち歩くようにしたら、耳鳴り減ったわけやな」
「一応、お守りとして祈祷しました……」
「そうなん?ありがとうね、夕日ちゃん」
「そんな……」
「ほなら、今度修行一緒にするか?」
「はい……」
「なぁなぁ、夕日さん。お化けってどんなんいるか聞いてもええ」
「小石川先輩、きっと後悔しちゃいますよ……」
副部長の質問に答えてから、その場にへたりこんだ一二三に真っ先に駆け寄ったのは謙也さんで「よおがんばったなぁ、夕日さーん!」と言いながら、一二三の頭を無遠慮に撫で回す。
これだからモテないのだ、謙也さんは……。
いま、謙也さんではなく部長が泣きそうな一二三を慰めれば、一二三の中で部長の好感度も上がり自然と感動的なシーンになっていたのに。
見てみろ、一二三の虚無顔を。
「いや、あの、忍足先輩痛い……」
「ええんやで!泣いてええんやで!」
「引っ込んだんで、もういいです。すみません、みなさん。ずっと、みなさんに話さず過ごすのが怖くて、話したんですけど……割りと軽い話でしたね」
「夕日さんにとっては軽い話やなかったんやろ?それを信じて話してくれて、俺は嬉しかったで」
おおきに、と謙也さんとは大違いの優しい頭の撫で方をした。
それに気が緩んだのか、ぶり返したのか、結局、泣きながら「ありがとうございます」と一二三は言っていた。
あの下手くそな笑顔で。