十一月に入り、文化祭の準備期間となる。
部活動の参加は自由なので、私の所属している助っ人部は参加しないらしいのだが、各部活から助っ人として参加するよう頼まれている。
私も例外なく、テニス部に助っ人として呼ばれている。
テニス部は女装喫茶らしいので、私は裏方……、と思っていたのに忍足先輩の「夕日さんは男装な」という発案が採用されてしまった。
許さん。

「夕日ちゃんは、髪短いからウィッグはいらんわね～！」
「執事は鉄板過ぎやし、軍服なんてどや小春？」
「や～ん！ときめいちゃう！色はやっぱり、白がええわぁ！」

金色先輩と一氏先輩がやる気満々だ。
他の人達の衣装も着々と決まっていく。
光君は大正時代の女学生の衣装で、黒髪ロングのウィッグを着用するらしい。
あとは、忍足先輩がナース服、白石先輩が赤ずきん、石田先輩が尼僧。
金色先輩と一氏先輩は当日のお楽しみという事で教えてもらえなかった。

「女装喫茶に男装って絶対おかしいって」

光君と甘味処に寄り道して愚痴をこぼすと「しゃーないんとちゃうか？需要っちゅうやつ」と言われてしまった。
まあ、うん、これも部活動実績の為だしもう諦めるよ。

「俺はクラス出店の方が頭おかしいんとちゃうかって思うけどな」
「あぁ、びしょぬれぞうさんね」

店の名前の時点で、既に分かる人には分かるアウトなのだが、店の中身自体はもうアウトだと思われる店だ。

「水着プラスエプロンって絶対アウトだよ……」
「申請通ったんやからセーフなんやろうなぁ……」

普通なら、女子とかからブーイングが起こるはずなのにうちのクラスの女子達は「勝負水着持ってくるで！」「うちのワガママボディ披露したるわ！」と異様にノリノリだった。
大阪女子、強い……。

「ちゅーか、自分。水着もっとるん？」
「スクール水着なら……」
「マニアックな連中にうけそうやな」

喉で笑う光君。

「あ～もう文化祭休んじゃおうかな～」
「無理やろ。衣装担当の二人がめっちゃやる気やし。引きずってでも参加させられるで」

否めない……。
文化祭って、もっとこう、キラキラした青春じゃないのかな？
こんな如何わしい催し物じゃないよね？

「そういえば、俺らのクラスの話を謙也さんが東京の従兄弟に話したら絶対来る言うとったらしいから覚悟した方がええで」
「うわ、何それ嫌な予感しかしない」

忍足先輩、安定して余計な事をしやがる。
東京の人から見たら絶対に変な学校だと思われるよ。
いや、変な学校だけどさ、四天宝寺は。

「俄然休みたい」
「諦め」