筋肉と天邪鬼
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109の冷やかしツアーは中々に面白かった。
不破も、普通に服選びしてサイズを頻りに気にしていた。
まあ、気にし方が「これは二の腕が通らない」とか「これは足の筋肉が露出しすぎる」だから、普通と言えるかどうかちょっと不安になってきた。
試しに俺の見立てでセクシー系の服を試着したが、筋肉が全てのセクシー成分を奪い去っていた。
爆笑する俺と、驚愕した顔で固まる店員と出会してしまった客。
その後、渋谷を散策している間、ずっと不破はブーブー文句を言っていた。
「ああいう目で見られるから、一緒に行く人に悪いから露出の多い服は着たくないんだよ。というか、猿飛くん。ああいう結果になるって分かってたでしょ!」
「笑って悪かったって」
「笑ったのは気にしないけどさ。私の筋肉は安売りしたくないの!見せるならもっと多くの人に見てもらいたい!」
偶にこいつの頭はおかしいんじゃないかと思うときがある。
不破は熱心に、どんな舞台で自身の筋肉を披露したいという話しをしていた。
適当に相槌を打っていると、不破が「あ、ケバブ」と言ったがそれにも適当に相槌を打つ。
暫く歩いていると、声がしない事に気が付き振り返る。
奴はいなかった。
何時から消えた?!
記憶する限りでは「あ、ケバブ」からそういえば、静かになった気がする。
まあ、落ち着け。
俺達には文明の利器、ケータイがあるじゃないか。
ケータイを取りだし、不破灯花の名前を探すがない。
……。
…………。
………………。
あ!俺達、アドレス交換してない!
気が付けばそこに不破がいるのは当たり前だと思っていたから、交換するの忘れてた……。
ここで三択。
待ち合わせ場所の定番ハチ公前まで行く。
上映時間まで映画館前で待つ。
ケバブ。
……ケバブだろうな。
たぶん、「ケバブ食べてからハチ公に行こう」とか考えて、暢気にケバブを嬉しそうに頬張ってそう。
人の波を掻き分け来た道を辿っていくと、予想通り不破は幸せそうにテイクアウトのケバブを頬張っていた。
早足で不破に近付き、額を思いっきり叩く。
「迷子の自覚を持て!」
不破はモゴモゴと口を動かし、口に入っていた物を飲み込み「やっぱり来てくれた」と嬉しそうに笑った。
「猿飛くんなら、こっちに来てくれるだろうなって思ってた」
照れ笑いをする不破。
なにそれ。
まるで俺の事、信じてたみたいじゃん。
そんなの、そんなの……。
ーー嬉しい
その感情を押し潰すように、またも不安や恐怖が襲いかかってきた。
しかも質が悪いことに、幻聴まで聞こえてきた。
ーーその女に信用されて喜んでるのか?本当に、信用されてると思ってるのか?こっちが信じた瞬間、あの女は裏切るかも知れないぞ?
誰が言っているのかわからない。
視界が回る。
口から不破を傷付ける言葉が出てきそうになり、必死で口を押さえつける。
俺の異常に気が付いた不破は、ケバブ屋備え付けのベンチに俺を座らせる。
その気遣いさえ嬉しくて、でも更に不安や恐怖や声が大きくなり、頭の中がグチャグチャになって涙が止まらない。
言わない、言いたくない。
もう、不破を傷付けたくない。
もう、ほぼパニック状態で回りが真っ暗に見えていた俺の耳に「猿飛くん」と不破の声が入ってきて、手首に俺ではない誰かの温もりを感じる。
「猿飛くん。言うの我慢しないで。猿飛くんの嫌いは自分を守る為の言葉だって分かってるから。本当は嫌いじゃない事、知ってるから。言って?」
不破はゆっくりと、口を塞いでいる俺の手を口から引き離し、しっかりと握りしめてくれた。
今まで押さえ込んでいた言葉が次々に飛び出していく。
嫌い、嫌い、あんたなんて大っ嫌いだ。俺に関わるなよ。俺に触るな。どうせ、あんたも俺の事なんて見てないんだろ。俺自身の事なんてどうでもいいんだろ。いつか裏切るんだろ。
何度も何度も嫌いを繰り返すと、視界が段々開けてきた。
涙でぼんやりはしているが、目の前に不破がいるのはわかった。
不破は俺の顔をタオルで拭いて「落ち着いた?」と優しく聞いてきた。
涙のベールが取り払われると、不破は穏やかに笑みを浮かべていた。
「ありがとうね、猿飛くん」
「ありがとう……?」
「猿飛くんの嫌いは、全部好きって意味でしょ?だから、ありがとう。でもね、猿飛くん。私が好きなのは猿飛くんであって、猿飛くんの肩書きじゃない。それこそ、どうだっていい。最初は、確かにトレーニング手伝って貰えればいいな位だったけど、今は猿飛くん自身を知りたい。私は、猿飛佐助って人間が好きで、友達でいたいと思ってるの。裏切らないよ、絶対に」
「やめろよ……そんな事言うなよ……」
また泣き出しそうになる俺に、不破は小さく「ごめん」と言った。
「でも、伝えたかったから。猿飛くんが大切な友達なんだって」
あぁ、あぁ……。
もう、あんたなんて大嫌いーー大好きーーだ。
不破も、普通に服選びしてサイズを頻りに気にしていた。
まあ、気にし方が「これは二の腕が通らない」とか「これは足の筋肉が露出しすぎる」だから、普通と言えるかどうかちょっと不安になってきた。
試しに俺の見立てでセクシー系の服を試着したが、筋肉が全てのセクシー成分を奪い去っていた。
爆笑する俺と、驚愕した顔で固まる店員と出会してしまった客。
その後、渋谷を散策している間、ずっと不破はブーブー文句を言っていた。
「ああいう目で見られるから、一緒に行く人に悪いから露出の多い服は着たくないんだよ。というか、猿飛くん。ああいう結果になるって分かってたでしょ!」
「笑って悪かったって」
「笑ったのは気にしないけどさ。私の筋肉は安売りしたくないの!見せるならもっと多くの人に見てもらいたい!」
偶にこいつの頭はおかしいんじゃないかと思うときがある。
不破は熱心に、どんな舞台で自身の筋肉を披露したいという話しをしていた。
適当に相槌を打っていると、不破が「あ、ケバブ」と言ったがそれにも適当に相槌を打つ。
暫く歩いていると、声がしない事に気が付き振り返る。
奴はいなかった。
何時から消えた?!
記憶する限りでは「あ、ケバブ」からそういえば、静かになった気がする。
まあ、落ち着け。
俺達には文明の利器、ケータイがあるじゃないか。
ケータイを取りだし、不破灯花の名前を探すがない。
……。
…………。
………………。
あ!俺達、アドレス交換してない!
気が付けばそこに不破がいるのは当たり前だと思っていたから、交換するの忘れてた……。
ここで三択。
待ち合わせ場所の定番ハチ公前まで行く。
上映時間まで映画館前で待つ。
ケバブ。
……ケバブだろうな。
たぶん、「ケバブ食べてからハチ公に行こう」とか考えて、暢気にケバブを嬉しそうに頬張ってそう。
人の波を掻き分け来た道を辿っていくと、予想通り不破は幸せそうにテイクアウトのケバブを頬張っていた。
早足で不破に近付き、額を思いっきり叩く。
「迷子の自覚を持て!」
不破はモゴモゴと口を動かし、口に入っていた物を飲み込み「やっぱり来てくれた」と嬉しそうに笑った。
「猿飛くんなら、こっちに来てくれるだろうなって思ってた」
照れ笑いをする不破。
なにそれ。
まるで俺の事、信じてたみたいじゃん。
そんなの、そんなの……。
ーー嬉しい
その感情を押し潰すように、またも不安や恐怖が襲いかかってきた。
しかも質が悪いことに、幻聴まで聞こえてきた。
ーーその女に信用されて喜んでるのか?本当に、信用されてると思ってるのか?こっちが信じた瞬間、あの女は裏切るかも知れないぞ?
誰が言っているのかわからない。
視界が回る。
口から不破を傷付ける言葉が出てきそうになり、必死で口を押さえつける。
俺の異常に気が付いた不破は、ケバブ屋備え付けのベンチに俺を座らせる。
その気遣いさえ嬉しくて、でも更に不安や恐怖や声が大きくなり、頭の中がグチャグチャになって涙が止まらない。
言わない、言いたくない。
もう、不破を傷付けたくない。
もう、ほぼパニック状態で回りが真っ暗に見えていた俺の耳に「猿飛くん」と不破の声が入ってきて、手首に俺ではない誰かの温もりを感じる。
「猿飛くん。言うの我慢しないで。猿飛くんの嫌いは自分を守る為の言葉だって分かってるから。本当は嫌いじゃない事、知ってるから。言って?」
不破はゆっくりと、口を塞いでいる俺の手を口から引き離し、しっかりと握りしめてくれた。
今まで押さえ込んでいた言葉が次々に飛び出していく。
嫌い、嫌い、あんたなんて大っ嫌いだ。俺に関わるなよ。俺に触るな。どうせ、あんたも俺の事なんて見てないんだろ。俺自身の事なんてどうでもいいんだろ。いつか裏切るんだろ。
何度も何度も嫌いを繰り返すと、視界が段々開けてきた。
涙でぼんやりはしているが、目の前に不破がいるのはわかった。
不破は俺の顔をタオルで拭いて「落ち着いた?」と優しく聞いてきた。
涙のベールが取り払われると、不破は穏やかに笑みを浮かべていた。
「ありがとうね、猿飛くん」
「ありがとう……?」
「猿飛くんの嫌いは、全部好きって意味でしょ?だから、ありがとう。でもね、猿飛くん。私が好きなのは猿飛くんであって、猿飛くんの肩書きじゃない。それこそ、どうだっていい。最初は、確かにトレーニング手伝って貰えればいいな位だったけど、今は猿飛くん自身を知りたい。私は、猿飛佐助って人間が好きで、友達でいたいと思ってるの。裏切らないよ、絶対に」
「やめろよ……そんな事言うなよ……」
また泣き出しそうになる俺に、不破は小さく「ごめん」と言った。
「でも、伝えたかったから。猿飛くんが大切な友達なんだって」
あぁ、あぁ……。
もう、あんたなんて大嫌いーー大好きーーだ。