共に智たれウォーターフォールスター
7日もあれば解決すると出された計算。
それはどうやら「人探しが出来る者」が加わることを前提とした結果だった。
マスター達のレイシフト直後、ホームズはモリアーティにのみ自己の見解を伝え、2人はすぐにレイシフトの為ポットへ。
ホームズはダ・ヴィンチから時間が余る様なら少し長めに滞在してもいいという言い付けだけ預かり、マスター達の目の前に現れた。
レイシフトから3日目…著者が行方をくらませてから実に76時間以上。
情報伝達を早々に済まされたと同時に2人は反対に動き出す。
「見つけるなら今日中がベストだ」
「ホームズ、私はマネージャーにブーディカと当たる」
「話が早くて助かるよ」
それだけ交わすと、ホームズはマスターとマシュを連れて著者の自宅へ向かった。
その場に残ったモリアーティは、ブーディカにマネージャーのところまでの案内を頼む。
「この際だし急ぎな分チャリオットで移動しようか。ところで…なんであたし?」
「なに、夫婦になってもらいたくてネ」
「――え…えー…?」
動揺と照れと困惑が混ざったブーディカの声と共に、時代にそぐわない馬車が2人を乗せて走りだす。
都心に向かうべく、砂利だらけの土を蹴る馬の足音と盛り上がったそれを踏み固める車輪の音が、モリアーティの笑い声をかき消していった。
搔き消されないように大きな声で交わされていた会話も、都心手前になったことでチャリオットは解除され、普段通りの声と歩きになる。
その道すがらブーディカにこの時代の服をモリアーティが見繕うと、彼女の明るい赤髪は頭巾で隠された。
「うんうん、この時代のものもよくお似合いだヨ」
淡いクリーム色のワンピースに紺色のローブを羽織り、髪を隠すことで端正な顔立ちがより目立つ。
モリアーティ自身もブーディカが身にまとうものと似た服を選び、仕上げとして彼女とは対照的に前髪を垂らした。
歳の離れた夫婦に見えることを移動しながら確認し、問題が無いとわかると背丈がほぼ同じである2人はズンズンと大股で歩きだす。
(この時代の夫婦は女性が髪を隠すのが主流なんだ…だからあたし目立ったのかも…子供引き連れてたから余計……)
マスターとマシュの3人で行動をしていた時…長身の赤髪女だと色んな者に後ろ指を指された。
だがまずはマスターとマシュに奇異の目が向かない様に、聞かなくてもいいことを聞かない様に身を挺していた彼女は、モリアーティと共にいる今の自分に何の悪口も飛ばず、目を向けられることもないと気付く。
ホームズとモリアーティには、人目を避けながらの行動で情報収集が遅くなったのだと伝えただけだったのに。
「…ねぇ、その、もしかして…あたしの為に、夫婦を?」
「まさか。これからマネージャーの後をつける為の変装だヨ」
真横で大股歩きをする初老の紳士は、弾む声でウインクをしてみせる。
そんな彼に、ブーディカは眉を下げて嬉しそうな笑顔を見せた。
「はは、そういうことにしといてあげるよ」
都心に入る午後3時前。
「見つかりますように」と呟いた彼女の小さな声が人の波に溶けていった。
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それはどうやら「人探しが出来る者」が加わることを前提とした結果だった。
マスター達のレイシフト直後、ホームズはモリアーティにのみ自己の見解を伝え、2人はすぐにレイシフトの為ポットへ。
ホームズはダ・ヴィンチから時間が余る様なら少し長めに滞在してもいいという言い付けだけ預かり、マスター達の目の前に現れた。
レイシフトから3日目…著者が行方をくらませてから実に76時間以上。
情報伝達を早々に済まされたと同時に2人は反対に動き出す。
「見つけるなら今日中がベストだ」
「ホームズ、私はマネージャーにブーディカと当たる」
「話が早くて助かるよ」
それだけ交わすと、ホームズはマスターとマシュを連れて著者の自宅へ向かった。
その場に残ったモリアーティは、ブーディカにマネージャーのところまでの案内を頼む。
「この際だし急ぎな分チャリオットで移動しようか。ところで…なんであたし?」
「なに、夫婦になってもらいたくてネ」
「――え…えー…?」
動揺と照れと困惑が混ざったブーディカの声と共に、時代にそぐわない馬車が2人を乗せて走りだす。
都心に向かうべく、砂利だらけの土を蹴る馬の足音と盛り上がったそれを踏み固める車輪の音が、モリアーティの笑い声をかき消していった。
搔き消されないように大きな声で交わされていた会話も、都心手前になったことでチャリオットは解除され、普段通りの声と歩きになる。
その道すがらブーディカにこの時代の服をモリアーティが見繕うと、彼女の明るい赤髪は頭巾で隠された。
「うんうん、この時代のものもよくお似合いだヨ」
淡いクリーム色のワンピースに紺色のローブを羽織り、髪を隠すことで端正な顔立ちがより目立つ。
モリアーティ自身もブーディカが身にまとうものと似た服を選び、仕上げとして彼女とは対照的に前髪を垂らした。
歳の離れた夫婦に見えることを移動しながら確認し、問題が無いとわかると背丈がほぼ同じである2人はズンズンと大股で歩きだす。
(この時代の夫婦は女性が髪を隠すのが主流なんだ…だからあたし目立ったのかも…子供引き連れてたから余計……)
マスターとマシュの3人で行動をしていた時…長身の赤髪女だと色んな者に後ろ指を指された。
だがまずはマスターとマシュに奇異の目が向かない様に、聞かなくてもいいことを聞かない様に身を挺していた彼女は、モリアーティと共にいる今の自分に何の悪口も飛ばず、目を向けられることもないと気付く。
ホームズとモリアーティには、人目を避けながらの行動で情報収集が遅くなったのだと伝えただけだったのに。
「…ねぇ、その、もしかして…あたしの為に、夫婦を?」
「まさか。これからマネージャーの後をつける為の変装だヨ」
真横で大股歩きをする初老の紳士は、弾む声でウインクをしてみせる。
そんな彼に、ブーディカは眉を下げて嬉しそうな笑顔を見せた。
「はは、そういうことにしといてあげるよ」
都心に入る午後3時前。
「見つかりますように」と呟いた彼女の小さな声が人の波に溶けていった。
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