ユビの兄

「それじゃ、白雪(しらゆき)一姫(かずき)と証拠(しょうこ)で決まりだな」
「っだ~…やっぱそうなるか……っ」
「悪くないが良くもないとこだぞ、情報屋。ハッタリにこちらが乗ってやると言っているんだ、詳細であることを期待する」
「うっす…」
 項垂(うなだ)れながら片手を上げ、了解の意思を見せたS(エス)を横目に、辰海(たつみ)とツヅリが席を立つ。
「それでは、我々は失礼します。ご迷惑をお掛けしました、赤松さん」
 辰海(たつみ)はそう博雪(ひろゆき)に告げて頭を下げると、その横からツヅリが茶封筒(ちゃぶうとう)を差し出した。
「お釣りは結構ですんで~」
「……一応、中を確認しても?」
「勿論(もちろん)どうぞ~」
 手渡されたそれを開き、中を確認すると、コーヒーと紅茶があと数十杯は飲める金額が顔を覗(のぞ)かせている。
 昨日から買収続きの博雪(ひろゆき)は目頭を揉(も)んだ。
「ご迷惑をお掛けしたお詫(わ)びの印ということで、お受け取り下さい。もし本日の件について何かありましたら、遠慮(えんりょ)無く名刺(めいし)に記載(きさい)してある番号へご連絡頂(いただ)けますと」
「それではまた~」
 扉の開閉される音と共に、嵐のような美女達は去った。
 予定とは大きく変わったスケジュールに博雪(ひろゆき)はまた目頭を揉(も)む。
「もうS(エス)も帰りなよ」
「勘弁(かんべん)してください…」
「俺と博雪(ひろゆき)が疲れた」
「…むしろ早く来るのは社会人的に花丸百点満点じゃないですか?」
「タイミングが最悪」
「そーれは、さーせんしたぁ…」
 3人は各々(おのおの)頭を抱えながら、これからまだ話をしなければならない現実に少しの間蓋(ふた)をしたのだった。


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